092_しめすへんに兄
「う~ん、何だったんだろうね?」
僕とパフィさんとラクスさんとカリーナさんの4人で足湯を楽しんでいたところにゼブラさんが乱入した後の話。
ちょっと様子がおかしいゼブラさんに困惑する僕。その様子を察したのかラスカリ姉妹が身の上話をしてくれた。
「ゼブラさんって私達一家がここに来た時から色々気に掛けてくれていたなの。」
「そうですね~。多分私達がプラム村の出身だからだと思いますね~。」
「プラム村?」×2
疑問の表情で聞き返す僕とパフィさんにラスカリ姉妹は少し表情を曇らせながら話を続ける。
「うん。私達が前に住んでた村なの。少し前の話なんだけど、村が不作で食料不足になったなの。食べるに困って国にも食料支援を要請したんだけど、届いたのは悪い商人が高値で売りつけてきた商品だったなの。」
「村の人達はそれを知らずに食料を受け取って、後で多額の代金を請求されたんですね~。
村でもそんな事は知らないって裁判所に訴えたんだけど、結果は敗訴ですね~。それで借金漬けにされた村人は家も土地も取り上げられ、それでも支払いきれなかった人達は村に出来たリゾート施設で無理やり働かされてるんですね~。
私達一家は借金返済は出来たんですけど、行く宛ても無かったのでここに逃げてきたんですけどね~。」
「えっ!それってヒドイ話ですよね!悪いのは商人なのにどうして裁判所は村人の訴えを聞いてくれなかったんですか?」
うん、確かにヒドイ話だね。根が純粋なパフィさんなら憤慨するだろう。でも何故だろうね。この話を聞いて僕は身に覚えがあり過ぎてウンザリした気分になるんだよね。
そんな事を思っていたからだろうね。思わず前世の事を漏らしてしまう。
「はぁ~、どこの世界でもお偉方がやってる事は一緒みたいだね。
これはあくまで想像だけど、裁判所はその商人から賄賂を受け取っていたんだと思うよ。」
「えっ!そんな事が許されるんですか!」
「普通は許されないね。でもその許す、許さないを決める側が悪事を働いているなら裁きようがない。結局法律なんてものは権力者の都合で作られるものだからね。」
まったくこれじゃ前世と何も変わらないね。どっかの理事長が業者からリベートを受け取っても権力者は所得隠しでしか裁こうとしない。リベートを失くしたりとか、リベートを強要した事で脅迫罪を適用するとか、根本的な解決をしようとはしないんだ。
大体リベートが所得ってなんだよ!なんで誕生日のお祝いにウン百万円も包むんだよ!頭おかしいんじゃねぇの!それって本来、従業員に払われるべき給料の一部だろうが!!そんな事ばっかりやってるから僕みたいに飢え死にする人間が後を絶たないんだよ!!クソが〜〜〜ッ!!!
これは僕の勝手な想像だけど、きっと法律を作る側もこういうリベートみたいなモノを受け取っているから裁けないんだろうね。
まぁ、前世の事は置いておくとして、少なくともこの世界のリンガ共和国ではこういう事が横行しているみたいだ。
これはリンガに対する考え方を少し変えていく必要があるかも。むしろグレプ王国の方がお付き合いしやすいかも。ヤーゴ帝国?いや、ないわ~。人族至上主義国家なんて。
今度、ドクさんにお願いして各国の政治について聞いてみよう。あぁ、パフィさんが秒で撃沈する姿が目に浮かぶなぁ~。
そんな事を考えながら黙り込んでいたものだから、
「コンヨウさん?どうしたんですか?社会全体を憎むクロキコンヨウモードになってましたけど。」
「そうですよ~。私のプティを困らせるなんて悪いお兄さんですね~。」
「でも、ちょっと影のあるコンヨウ君も危険な香りがして素敵なの。」
「まったく、ラクス姉はコンヨウさんなら何でもいいんですね~。」
「…ラクスさん。コンヨウさんを甘やかさないで下さい。」
僕の周りが騒がしくなってきたな。まさに女性3人で姦しいだね。我に返った僕は努めて(怖がられない)笑顔で答える。
「ゴメン、ちょっと考え事をしてた。
ゼブラさんの話に戻るけど、あのシマウマは二人の身の上を知ってて色々気に掛けてくれてるわけだね。」
「そうなの。見た目は少し怖いけどとってもいい人なの。」
「そうですね~。あれで顔が怖くなければさぞモテたと思うんですね~。」
「ちょっと、二人とも失礼ですよ。確かにちょっと強面ですけど。」
えっ!ちょっと待て~~~~~~~~!!!今3人は何って言ったの?あの三枚目が強面?スフィーダさんのタイプって確か…いやまさかそんな事は…
「どうしたんですか?今度は絶対に起きてはいけない事が起こった、みたいな絶望の表情を浮かべてますけど。」
「えっと…パフィさん。質問なんだけど、ゼブラさんって完全三枚目のギャグキャラだよね?」
「はぁ?何わけの分からない事を言ってるんですか?ゼブラさんはギャングも顔負けの超強面ですよ。」
「コンヨウさん、今の冗談ですよね~。もし本気ならネイチャンさんにお薬を処方して貰った方がいいと思うんですね~。」
「二人とも、コンヨウ君に失礼なの。ちなみに私の事はどう見えるなの?」
「美少女アライグマさん。」
「コンヨウ君の目は正常なの!!」
「…ラクス姉がそれでいいならいいけど。」
なんかみんなが僕の事をボロカス言ってるけど、僕は今それどころじゃない。
「あのね…スフィーダさんの好みってちょっと強面だけど、普段は優しくて、いざという時に頼りなる人みたいなんだ。」
「!!!」×3
僕の一言に女子3人が色めき立つ。
「それってもしかして、ゼブラさんに春が来たって事ですか!」
「えっと、スフィーダさんと言えば、ゼブラさんが慕っているというリス獣人の女性ですよね~。」
「きゃぁ~!もしかしてゼブラさん、両想いなの!」
「コンヨウさん!ちなみにその事をゼブラさんは?」
「知らないよ。そんな喜劇…じゃなかった、悲劇をわざわざ僕の口から伝えられないから。」
「今、喜劇って言おうとしたですよね~。このひねくれモノ。」
「でもそんな斜に構えたコンヨウ君も素敵なの。」
「ラクスさん。さっきも言いましたけど、あんまりコンヨウさんを甘やかさないで下さい。」
女性陣が少し騒がしいが今はそんな事どうでもいい。
あのゼブラさんがリア充だと。前世からずっとチビ、根暗、腐れ外道の三重苦を持つ僕の唯一の味方だと思ってたのに。
裏切りモノ~、神社の御神木に藁人形打ち付けてやる…神社ねぇよ~!じゃああれだ、しめすへんに兄でのろいだ…えっとくちへんだったかな?いや多分しめすへんで合ってる。
クソ!リア充め!祝ってやる!祝ってやる!盛大に祝ってやる!僕だってボインで大人の女性の彼女が欲しいよ~~~!!
女性陣が恋バナに花を咲かせる中、僕の心の中ではゼブラさんへの祝いが渦巻いているのであった。




