091_有能スキル保持者を求めて
「では、今日は隠れ有能スキル保持者探しとしゃれこみますか。」
「いいですけど、誰にですか?」
昨日のエレフさんのオーパーツ作成から一夜。僕はパフィさんと一緒に集落の広場でとある人達と待ち合わせをしていた。今日はこの前思いついた隠れ有用スキル持ちの住人を探していこうと思ってる。
ほら、この世界にはパフィさんの『ガス操作』みたいに実は有用だけど、知識が無くて使い道が分からないスキルを持っている人がたくさんいるみたいじゃない。
そこで僕の出番ってわけだ。これはあくまでも想像なんだけど、この世界のスキルって地球では割と一般的な知識のモノが多いみたいなんだよね。
パフィさんの『ガス操作』やヒヨリさんの『空手』『合気道』がいい例だね。
だからこの集落でスキルを使っていない人から少しずつ当たっていこうと思う。
今回は…
「こんにちは、ラクスさん、カリーナさん。」
「こんにちはなの、コンヨウ君。私に会いに来てくれたなの?」
「こんにちはですね~、パフィちゃん。今日も可愛いですね~。」
「うぅ~、カリーナさん。暑いです。」
アライグマの美人双子姉妹、ラクスさんとカリーナさん(12歳)。二人合わせてアライグマ_ラスカリって結構ギリギリだね。
ちなみにやたら僕に構ってくるラクスさんが姉で、今現在パフィちゃんに抱き着いているカリーナさんが妹だ。
二人は僕らに対してかなり好意的なんだけど、ちょっと距離感が近すぎると言うか、人間不信一歩手前の僕にとっては若干苦手なタイプだったりする。
さて、二人の紹介も済んだ所で話を始めようかな。
「実は、今日お二人に来てもらったのは…」
ここで僕は今回の趣旨について説明する。
「…なるほどなの。つまりコンヨウ君は私の全てを知りたいって事なの。もう、コンヨウ君はエッチなの。」
「こら~、子供がそういう冗談を言うんじゃありません。僕がロリコンだったら危なかったよ。」
「パフィちゃんと秘密の共有ですね~…これはもう私達スールになったのと同義ですよね~。」
「よく分かりませんけど、嫌な予感がしますのでお断りします。」
まったくこの子達は…もしかして僕が集落に来た初日にお芋を食べさせてあげた記憶が美化されてるのかな?そう言えば、僕はラクスさんにパフィさんはカリーナさんにお芋を食べさせたもんな。
まぁ、その内好きな人でも出来たら熱も冷めるかな。じゃあ本題に入りましょうかね。
「まず、ラクスさんのスキルから。」
「私のスキルは『スーパーせんとう』って言うんだけど、何のことか分かるなの?」
「えっ!『スーパー銭湯』マジ?ちなみにスキルを使った事は?」
「あるけど、なんかぬるま湯が出て終わりだったなの。しかも白く濁ってて飲み水じゃなかったみたいなの。」
ヤバい、これは我が集落の問題点の一つ、衛生面が一気に解決する予感。
おそらくラクスさんが出したのは濁り湯だろう。これはミルさんやクズミ様の時みたいに複数の選択肢があるパターンかもしれない。ここは状況確認だ。
「ラクスさん、スキルを使うと頭に文字が浮かんだりしない?」
「あぁ~!そうなの。どうして分かったなの?」
「ちょっとそういうスキルがあるって知る機会があって。ちなみにどんな文字が浮かぶのかな?」
「えっとね~、『にごりゆ』『やくとう』『あわぶろ』『おんせん』『みずぶろ』『あしゆ』『でんきぶろ』だったと思うなの。」
濁り湯、薬湯、泡風呂、温泉、水風呂、足湯、電気風呂か。バリエーション豊富だな~。でもエレフさんみたいに器は作れないのかも。
この世界でお風呂見た事無いし。お湯とタオルで身体を拭くのがせいぜいだもんね。これは半ば諦めかけていたお風呂の夢が叶うかも。
湯舟はスミスのジジイにでも作って貰おう。結構大きな仕事だし50万くらい叩きつければいいかな。おっと、いけない。ラクスさんを置いてけぼりにしてた。
「えっと、コンヨウ君。もしかして私のスキルって役立たずなの?」
「いや、恐ろしく有用だよ。みんなはお風呂って知ってるかい?」
「おふろ?」×3
「うん、身体全部が浸かるくらいにお湯を溜めてその中に入って身体を洗ったり、温めたりするんだ。
とっても体にいいし、気持ちいいし、お肌にもいい。一度入ったら、きっと癖になるよ。」
「へぇ~、そうなの。ちょっと気になるなの。とくにお肌にいいってところがなの。」
「お肌がきれいになるって事は、ますますパフィちゃんのグランにふさわしくなれるって事ですね~。」
「さっきも言いましたが、ぼくにそういう趣味はありませんから。」
おっと、やっぱり女の子だなぁ。子供でも美容には興味ありか。
じゃあ、取り敢えず出来そうな事から試してみるかな。
「3人とも、ちょっとスキルを試してみたいからついて来てくれるかな。」
「は~い。」×3
それから移動する事暫し……僕らがやって来たのは、
「コンヨウさん、ここって干乾びた溜め池ですよね。」
パフィさんの言う通り、ここは昔集落に住んでいた人達が使っていたと思われる深さ50センチ程の今は干乾びた溜め池だ。
今は湯舟がないから今回はこれがその代わりだね。
「じゃあ、ラクスさん。試しにここに足湯を作って貰えるかな。」
「えっ!でも私この前スキル使った時は少ししかお湯が出なかったなの。」
なるほど、おそらくだけど湯舟が無かったから、お湯が張れなかったんだろうね。
僕は不安そうにするラクスさんを安心させるべく、控えめに笑いながら話を進める。本気の笑顔になると何故かみんなビビるし。
「大丈夫だよ。この溜め池にお湯で一杯にしたいって思いながらスキルを使ってみて。きっとうまく行くから。」
そう言うと安心した様な表情でラクスさんが答える。
「うん、分かったなの。スキル『スーパーせんとう(あしゆ)』なの。」
次の瞬間、ラクスさんの手のひらから大量のお湯が放出され、みるみる溜め池を満たしていく。
その光景にここにいる人間は全員呆気に取られる。
「…本当にできちゃった…なの。」
「出来るとは思ってたけど、こんなに早く溜まるとは思ってなかったよ。」
「これってどうするんですかね~。」
「これは足湯っていって、お湯に足をつけて疲れを取るものなんだ。」
「じゃあ、試しに浸かってみましょうよ。」
「だね。」
こうして、僕らは靴を脱いで足湯を堪能した。
「はぁ~足湯だけでもいいもんだなぁ~~。」
「お湯に足を浸しているだけなのにとっても気持ちいいです。」
「なんか身体もポカポカしてきた気がするなの。」
「確かにこれは、癖になりそうですね~。」
こんな感じで僕ら4人がリラックスしながら話をしているところに、
「よぉ!コンヨウっち。なんか面白そうな事してんな。俺っちも混ぜて貰ってもいいか?」
「あっ!ゼブラさん。じゃあ僕の隣にどうぞ。」
ナプールから戻って来たゼブラさんも仲間になりたそうにこちらを見ていたので、僕の隣に誘う事にした。
女の子達とは反対の方だよ。だって足湯とは言えスケベ親父のゼブラさんを女の子の隣になんて配置出来ないもんね。
そんな僕の心を読み取ったのか、
「言っておくけど、俺っちは18過ぎた成人女性にしか興味ないからな。」
「別に何も言ってませんよ〜。」
等とのたまってきた。わざわざそんな事を言うなんて、なにかやましい事でもあるのかな?
僕が自分でも分かるくらいゲスい笑みを浮かべながら受け答えすると、ゼブラさんが若干イラっとしながら話を切り出してくる。
「ところでコンヨウっち、今日は赤の日(日曜日)だから休みとして明日から干し芋販売始めるから準備頼むぜ。昨日販売して在庫分売り切れたみたいだからよ。」
「そうでしたね、今日の内に準備しておきますね。」
「しかし、コンヨウっち。集落に戻って来て早々色々やってんな。」
「えぇ。僕らが焼き芋販売に行くのが次の緑の日(水曜日)だから、それまでに集落でやれることは色々やっておきたいと思いまして。
ところでスイートポテトの売り上げはどうですか。昨日からお土産用の販売も始まってますよね。」
「午前中にほぼ完売。ラビリの姉御が言うには前もって数量限定にしておいて正解だったとの事だ。」
「そうなんですね。所でそのラビリさんは何時頃手が空きそうですか?」
「暫くは無理だとよ。コービット氏の暗殺未遂やら『ラビアンローズ』への営業妨害やらの資料を作ったり、『ゴージャスずんだ』を始めとしたズンダダ関連の失業者の再雇用をしたり、色々やってるみたいだ。」
「あのDQN店員は雇ってないでしょうね?」
「あぁ、流石に地雷はお断りだそうだ。多分あの店員、再就職に難儀してるだろうな。まったくお前だけは敵に回したくないわ。」
「奴については自業自得です。大銅貨の恨みもありますし。」
「まぁ、そうだな。じゃあ俺っちそろそろ行くわ。」
そう言ってゼブラさんは僕が持ってきたタオルで足を拭いてから立ち上がり、ふとラスカリ姉妹に目を向ける。
「二人共、もう集落には慣れたか?」
「うん、みんな親切なの。」
「えぇ、スールもいますしとっても快適ですね~。」
「そっか、そりゃなによりだ。」
それだけ言い残してゼブラさんは今度こそ、その場を後にした。なんと言うか、その顔には哀愁のようなものが漂っていた気がする。




