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090_多分この調理場だけ文明が300年くらい進んでると思います

「…と言う事が可能になると思います。」


「これって~、かなりマズイよね~。」


「有用スキルどころの騒ぎじゃありませんね。燃料と水が使い放題で特殊な調理法もやりたい放題の料理人だなんて。」


僕はスキル強化後のエレフさんの可能性について、一部家電や蛇口を生成して貰った後に説明したんだけど、エレフさんもパフィさんもドン引きしている。

なんかどこかの悪魔を合成して強化するRPGの特殊合体みたいに一足跳びにトンデモスキルが生み出されてしまった。


「これは勿論、他言無用ですよね。」


「そうだね~…秘密を守るためにドクさん達には相談する必要がありそうだけど~。」


「エレフさんのスキルもそうですけど、コンヨウさんのスキルもですよ。」


そりゃそうか。他人のスキルを強化するって言うのが如何にヤバいか、たった今思い知らされたばかりなんだよね。

事の大きさに静まり返る僕ら。重い沈黙が僕らの肩にのしかかる。


「…よし、ご飯を作りましょう。」


「そうだね~、取り敢えず君が知ってる便利な道具、手当たり次第教えて~。」


「エレフさん…自重するの辞めましたね。」


僕とエレフさんが現実逃避をしながら、自重0でお料理を進める中、パフィさんのツッコミだけが虚しく部屋の中に響き渡る。


Now お料理ing……


「ふ~、やっぱ家電があると作るのも早いですね。集落のみんなの分も含めて一気に出来ちゃいましたね。」


「この便利さを覚えたら~、抜け出すのが大変そうだよ~。」


「ダメですからね!それに慣れたらもう一生コンヨウさんのスキルに依存して生きていくしかなくなっちゃいますよ!」


「なるほど、それもいいかもね。僕、エレフさんの家で一生寄生虫のように暮らします。」


「どうしよう~。こんな有能な寄生虫~、無下に出来ないよ~。」


「止めて下さい!寄生虫に纏わり付かれて人生ダメになっちゃいますよ!!」


パフィさんは、何をそんなに怒っているのかな?僕はお料理をするエレフさんのお手伝いと言う重大な使命を果たすだけなのに。

そしてあわよくば、スキル強化だけして後はエレフさんに食べさせて貰うんだ。夢の4食昼寝付き生活…そっか~僕の望んだ未来はここにあったんだ。


「はぁ~、そんな叶わない夢を見るのは止めて現実を直視して下さい。

二人だけじゃ他の食材とか手に入らないですよね。」


「ほら、そこはエレフさんの料理の腕で稼いでもらえば。」


「販売用のお料理はこれじゃ作れないですよね。」


「……」


「そもそもコンヨウさんはエレフさんのヒモ志望みたいですけど、お得意のギブアンドテイクはいいんですか?」


「えっと…それは~。」


「僕は~家で喰っちゃ寝するだけの~、穀潰しを養うなんて嫌だよ~。」


くッ!どうやらエレフさんが冷静さを取り戻したみたいだ。このままうまく行けば夢の寄生虫生活を送れると思ってたのに。

おのれパフィさんめ~。あっ!ごめんなさい。今の無しです。だから『ガス装填完了』みたいな目でこっちを見るのは止めて下さい。

まあお金を稼ぐ方法はゼブラ運輸を雇って遠隔で料理やお芋を売るとか、僕の頭の中のレシピを売るとか色々方法はあるんだけど、それをやるとパフィさんに怒られそうだからやめておこう。

僕だって妹分に愛想尽かされるのは嫌だからね。さて、そろそろ楽しい現実に戻りますかね。


「では、ちょっと早いですけど、お昼ご飯にしますか。」


「そうだね~。では今日はパフィちゃんに~。」


「はい、では皆さん…いただきます!」


「いただきます!」×2


こうして本日の昼食、サツマイモ蒸しパン、サツマイモコロッケ、サツマイモグラタンと、ついでに大型圧力鍋(10リットル)とIHコンロで作ってもらった腸詰と野菜のスープを頂くとしましょうかね。

ちなみに今日の食事は集落全員分作っているので、ホットケース(コンビニとかで揚げ物を入れているあれ)で保管して、『芋文』で全員に連絡。多分僕らが食事をしている最中にでもくるでしょう。


さて、ではまずはコロッケから…


「はぁ~、サツマイモの優しい甘さと衣のサクサク食感。」


「ひき肉の旨味と玉ねぎの甘味と食感がまたいいアクセントになってます。」


「うん~、我ながらよく出来たと思っていたけど~、見事に素材が調和しているね~。これを看板メニューにしたお店なら~間違いなく流行るだろうね~。」


端的に換言すれば…


「美味~~~ぃいいいいい!!!!!!」×3


二人共~、コロッケは1人2個だからね。足りないなら僕が焼き芋出すから。そうしないとみんなの分無くなっちゃうし。

ちなみにこれを揚げる時って大型フライヤーを使ったんだよね。まさか揚げ油まで出て来るとは思わなかったよ。ただし他の事には使えないみたいだけど。だから生成した油を売るとかは出来ないみたい。

イケナイ、話が逸れたね。次はグラタンだ。


「はぁ~、チーズとお芋、それから久しぶりのホワイトソースの旨味がヤバい…」


「この白いソースはもはや革命です!このアツアツでトロっとした舌触り!クリーミーな味わい!素材を包み込む包容力!」


「うん~、正直ソースにここまで手間をかけた事ってなかったから分からなかったけど~、コンヨウ君の世界の料理って凄いんだね~。」


今の気持ちを率直に表現すると…


「はぁ~~、美味すぎる…」×3


今まで、調理と言えば塩とハーブで焼くか煮るかぐらいだったところにホワイトソースをぶち込んだらこうもなるよね。

ちなみにこれを作る時はオーブンレンジを約30台並べて一気に仕上げました。いや~、エレフさんのおウチが一瞬で家電量販店になった時はちょっとびっくりしたね。グラタンを盛る耐熱皿もエレフさんのスキル製だったりする。

さて、では今度は蒸しパンを…


「久しぶりの菓子パン…ホッとする味だね。」


「フワフワ食感と優しい甘さが嬉しいです。」


「貴重なお砂糖をたくさん使ったから~どうなるかと思ったけど~これは凄いね~。パンと角切りにしたお芋の別々の甘味と食感のお陰で全然飽きが来ないよ~。」


これに対する僕らの反応は…


「もぐもぐもぐもぐ…」×3


ひたすら咀嚼音、真に人は美味しいモノに出会った時、無言になるものなんだよ。

そして合間に飲むスープも野菜と腸詰の旨味がしっかり溶けだして実に美味。

その後は無言のままパン、コロッケ、グラタン、スープと一気に食べ進める。


……もぐもぐ……もぐもぐ……


「はぁ~~~~ぁぁ…ごちそうさまでした!!」×3


今の心境を一言で表すなら……至福。

人間は美味しいモノでお腹が満たされた時、真の幸せを感じるものなのだ。

食後、大の字になって寝転がるという怠惰の極みの中にいる僕ら3人。

食器もエレフさんのスキルで作ったものだから消しちゃえば洗い物もしなくていいしね。

ちなみにエレフさんのスキルで作ったお皿は盛り付けたお料理が無くなったら勝手に消える仕様らしい。

あぁ~もう一生エレフさんのおウチで食事のお世話になりたい。


コンコン…

ドアの方からノックの音。ダメ人間一直線の僕らのもとに来客が来たみたいだ。


「こんにちは、エレフさん、コンヨウ君、パフィさん、美味しそうな匂いだね。昼食を取りに来たんだけど…なんだね、これは?」


ドクさんがパンとコロッケとグラタンが入ったホットケースとスープが入った圧力鍋を見ながら絶賛困惑中だ。

そりゃそうだよね。だってどっちも異世界の道具だもん。さて、ドクさんにはどう説明したものか。

うん、こりゃもうドストレートに説明するしかないね。


「ドクさん、実は………」


「……コンヨウ君、君って子は。」


予想はしてたけど、ドクさんの眉間の皺が半端ないね。目頭を押さえながら全力で頭痛を堪えている顔だもん。


「コンヨウ君、分かってると思うけどこれは他言無用だよ。いいね。」


「勿論…分かっております…」


「ガクブルガクブル…」×2


僕ら3人はドクさんの絶対零度の笑顔にガクブルしながら、本日のメニューをお渡しするのであった。

でも食事が終わった後、ドクさんに感想を聞いてみると、どれも美味しかったらしくとてもご機嫌になっていた。その時のドクさんの言葉だけど、


「…とても美味しかったよ。まぁ、集落の中限定でならいいんじゃないかな。またあの蒸しパンが食べたいし。」


とドクさんらしからぬ現金な事を言っていた。どうもドクさんは優しい味わいの蒸しパンが特にお気に召したらしい。

やっぱり美味しいは正義なんだね。こうしてエレフさんの料理は集落の胃袋を鷲掴みにし、その地位を確固たるものにするのであった。

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