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009_新たな食材を目指して

「さぁ、清々しい朝だ!パフィさん、起きて!焼き芋の時間だよ!」


「……ふぁ~~…なんですか。まだ日の出前じゃないですか。まだ眠いですよ…」


パフィさんが非難する通り、僕は日の出前から起きていた。理由は簡単。日の入りと共に寝たのだけど既に8時間以上経過している。つまり寝すぎなのだ。僕は転生前は1日4時間半睡眠だったからそんなに長くは眠れないのだ。


何故、子供がそんなに睡眠時間が少ないかって?それはお腹が空いて目が覚めるからだよ!!

子供は少なくとも6時間以上寝ろだぁ!ざっけんなよ!!寝るって事は副交感神経が働いてないといけないんだよ!つまりお腹いっぱいじゃないといけないんだよ!睡眠欲が食欲に負けてんだよ!それは今もそう!お腹が空いたから目覚めた!何が悪いって言うんだよ、クソが!


それに今は布団もないから、この一番冷え込む時間は寒くて目が覚めちゃうし。早く布団が欲しい。

だからパフィさんも巻き込んで焼き芋パーティーだぜ!!ヒャッハーーーーーー!!!

とパフィさんに話したら、


「そうですか…ぼくは日の出までもうひと眠りしますので、どうぞお一人で…」


素っ気ない…そりゃそっか…パフィさんはたらふく焼き芋食べてお腹いっぱいの上に、自前の毛皮であったかポカポカだったね。なんかゴメン。

僕は胃が受け付けなかったからそんなに食べられなかったし。でも一回お腹にものを入れてひと眠りしたら、体調が戻って来たみたいなんだ。

だからだろうか。今は妙にテンションが高い。そう言うわけで早速、


『食物生成(焼き芋)』


今回出した焼き芋は紅音姫(べにおとひめ)。甘味と食感のバランスがいい品種で朝ごはんに食べるならこれくらいがいいと僕は思っている。

ホクホク食感と強すぎないがしっかりした甘味が実に嬉しい一品だ。それを朝食に3つほど食べるとちょうど空も白み出したので今度こそパフィさんを起こす。


「パフィさん!朝だよ!今度こそ起きて~~!」


「うぅ~~…眠いです…」


「ほら、焼き芋作るから起きてよ。」


「…焼き芋!!はい!すぐ起きます!!」


あっ!さっきの素っ気ない態度とは大違いだ。どうやら睡眠は十分に取れたらしい。そして何よりお腹が空いたんだろうな。では早速彼女には実験台になってもらおうかね。


「はい、どうぞ。」


僕は彼女に3つの焼き芋を手渡す。


「では、頂きます…甘くってホクホクしていておいしいです。」


最初に食べたのはさっき僕が食べたのと同じ紅音姫。甘さと食感のバランスが素晴らしいのが特徴。


「あぁ、美味しかったです。では次は…あっ!昨日食べたすっごく甘い奴です。これすっごく好きです。」


次に食べたのは甘納芋(かんのういも)だ。非常に糖度の高い品種で、ねっとり系の食感が特徴。特殊な焼き方をする事で蜜芋という、甘い汁が滴り落ちるねっとりとした焼き芋に仕上がる。

その糖度はなんと40以上という脅威のサツマイモ。


「では、最後に…これはさっきほどじゃないけど甘味もそれなりにあって、ホクホク食感が凄くいいです。」


最後に出したのは鳴子銀時(なるこぎんとき)。どこか懐かしい上品な甘さ、ホクホク食感がいい焼き芋だけじゃなく主食や料理の材料にも使える一品。

さて、それでは意見を聞いてみるかな。


「パフィさん。3つの内どれが一番好きだった?」


「そうですね・・・2番目のすっごく甘い奴が一番ですね。あっ!でも、どれもそれぞれの良さがあって美味しかったですよ。」


「うん、ありがとう。参考になったよ。それじゃおかわりはいるかい?」


「はい!甘い奴でお願いします。」


「ははぁ、了解。」


この後、僕は甘納芋を3つ出してパフィさんに渡した。それを美味しそうにペロリと平らげるパフィさん。その顔を見ているだけで嬉しくなってくる。

えっ!あのクソ親父と同じことをしているんじゃないのかって?違うね。これは彼女に護衛の料金を払うのと同時にモニターをお願いしてるんだよ。決して無償だったり、採算度外視だったりとかそういう事はしない。しっかりとギブアンドテイクを守っての行動だ。

さて、少し嫌な事を思い出しそうになったが、そんな事に気持ちを持っていかれるだけ損だ。

早速行動に移ろう。僕はパフィさんから水を受け取り(水の管理はパフィさんにお願いしている)それを飲んで少し休んでから、2人でドクさんの家まで足を運ぶ。


「コンヨウさんにパフィさんだね。どうぞ入ってください。」


ドクさんの家の扉の前に行くと、やはりというか、ノックする前に家に入る許可が下りる。

まぁ、許可も貰った事だし僕が先頭に挨拶をしながら扉をくぐる。

どうも昨日説教された関係でドクさんの口調が少し砕けた感じになっているけど、向こうが年上だしその方が気楽でいい。


「おはようございます、ドクさん。朝ごはんはお済ですか?」


「おはよう、コンヨウさん。昨日いただいた焼き芋ならありがたく頂いたよ。

まだ残りはあるから今日はもうスキルは使わなくてもいいからね。」


どうやら気を遣わせたようだ。僕は取り敢えず愛想笑いを浮かべながら屋内を見回す。

するとドクさんの他に4人、象と牛とシマウマと鳥の獣人さんの姿が見える。


「まずは彼等の紹介からだね。象獣人のエレフ、牛獣人のミル、シマウマ獣人のゼブラ、鳥獣人のネイチャンだよ。」


「初めまして~。僕はエレフ~。象で料理人だよ~。」


「おおきに。ウチはミルや。畜産やってるんやけど、今は牛さんのミルクの出が悪うてなぁ。お芋、ホンマありがとな。」


「よっ!俺っちは配達人のゼブラ。街に行きたい時は俺っちが案内してやるぜぇ。」


「…ネイチャンよ。医者兼薬師をやっているわ。」


4人の自己紹介を受けた後に僕とパフィさんも自己紹介を終わらせる。

印象としては、まず象のエレフさんがおっとりした感じの優しいおじさん。

牛のミルさんは関西風のオカン。

シマウマのゼブラさんが少し軽い調子の気のいいお兄さん。

最後に鳥のネイチャンさんが少しきつめの出来るお姉さんという感じかな。

みんなの顔合わせが済んだ所でドクさんがこの場を締める。


「取り敢えず今動けて、コンヨウさん達の悩みを相談できそうなのはこの4人だね。

他にも何人かお役に立てそうな者はいるけど、まだ体調が戻っていなかったり、怪我をしていたりで今は動けない。

暫くはこのメンバーで頑張っていこう。それじゃ今日のところは解散としようか。」


流石にみんな飢餓状態から回復したばっかりで体調が万全ではないようだ。

取り敢えずこの場は解散となった。そしてドクさんの元に残った僕とパフィさんは現状について相談をする。


「ドクさん。今の状況を確認したいんですけど、今まで食事はどうしていたんですか?」


この質問にドクさんが少し渋い顔で答える。


「今まではミルさんの旦那のバックルさんを始め、何人かで狩りをしていたのだけど、つい先日強いモンスターに襲われて怪我をしちゃったんだ。

そのせいで狩りでの収穫が無くなり、結果として昨日の事態になったわけだよ。」


「狩りの他には?」


「ミルさんの家の牛乳とネイチャンさんの野草取りで少しってところかな。

ネイチャンさんは植物にも詳しいから食べられる草を時々取ってきてくれているんだ。」


「外での食料の購入などは?」


「やってないね。現状、ウチでお金を得る手段はないからね。」


なるほど、状況は大体理解できた。では最後に最も重要な質問だ。


「では、最後に質問です。村を襲ったモンスターって食べれますか?」


「…イノシシ型だから食べられるけど…まさか退治する気かい?」


どうやら予想外の質問だったようだ。目を見開くドクさんをそのままに僕は話を続ける。


「はい、パフィさんの力があれば大丈夫だと思います。」


「えっ!ぼくがですか!!無理ですよ!!」


僕の提案に今度は話を振られたパフィさんが抗議をする。う~ん、この子は自分が如何に有能かまだ分かっていないようだ。

僕はそんな彼女を落ち着かせながら話を進める。


「大丈夫、作戦ならあるから。それから、モンスターを倒した後、運ぶ人が必要ですので人手を借りても?」


「…分かったよ。人手はこちらで手配しよう。明日の朝には間に合う様に準備を整えるからね。」


「はい、ありがとうございます。」


「ちょっと!本当に大丈夫なんですか!!」


こうして不安がるパフィさんを余所に、焼き芋以外の食材を手に入れるべく、僕らの初めてのミッションがスタートする事になった。

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