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089_万能料理人誕生

「さて、せっかく帰って来た事だし、今日はのんびり…と思ってたのに。」


「さぁ、コンヨウ君~!僕との約束を3日もすっぽかしてくれたんだから~、今日はみっちり付き合ってもらうよ~!」


これは僕らがナプールから帰って来た次の日。春も終わりかけ、少しずつ暑くなり始めた頃。

その日の朝、集落全員分の焼き芋を作って、スキル強化の通知があったので、次の強化についてボーッと考えていた時にそれは訪れた。

激おこぷんぷん丸のエレフさんである。エレフさんとは最初のナプール訪問が終わった後、そこで買い揃えた食材で新しいレシピ作りをする約束をしてたんだけど、色々ゴタゴタがあってすっかり後回しになっていた。

一応、『芋文』でその旨は連絡したんだけど、料理バカのエレフさんに3日は待たせ過ぎだったみたいだね。

今までにないくらい目がマジのエレフさんに僕とついでにパフィさんはビビり気味である。


「コンヨウ君~、早速僕の家に行くよ~。いい加減スイートポテトばかり作るのにも飽きてきたし~。」


「分かりました…では今日のお昼ご飯は新しいレシピでという事で。」


「エッ!本当ですか!!すっごく楽しみです!!」


こうして僕とパフィさんはエレフさんのおウチに行く事になったわけだけど、


「すみません。ちょっと準備がありますので30分程時間を下さい。」


「ん~?いいけど~どうしたの~?」


「今日作るレシピを一度頭の中で整理して、紙に書いておきたいですので。」


「うん~。分かったよ~。じゃあ僕は先に戻って準備をしておくから~。」


「はい、お願いします。パフィさんもエレフさんの準備を手伝ってくれるかな。」


「はい!分かりました!エレフさん、行きましょう!」


「パフィちゃん~、凄い気合いだね~。」


こうして気合十分のエレフさんと気合十二分のパフィさんは一足先にその場を後にする。

さて僕はこれからレシピの整理をするわけだけど、その前に…


「では、スキル強化しますかね。お休み~…」


………


強化完了っと、時間は…5分経過。ちなみに僕がどうして時間が分かるかと言うと、ラビリさんのお店で買った砂時計のお陰だ。

僕が買ったのは1分と3分と5分と10分のやつで全部ひっくり返した後、1分と3分と5分の砂が完全に落ちていて、10分が半分くらい残ってたから、5分くらいって分かったわけ。

この集落には時計が無いからレシピ作りにはこの砂時計は必須だね。


そして強化した項目は


『特殊効果付与(スキル強化)』…お腹に入っている間(約1時間)食べた人間のスキルを強化できる特殊なサツマイモを生成可能。追加で食べる事で時間延長可能。


この『特殊効果付与』なんだけど、今までは他人に協力して貰って何かしようと思っていなかったから保留にしていたけど、僕の野望(食道楽ともいう)を達成する為には独りじゃ無理だって事が分かったからね。

それでまずはこれをエレフさんに食べて貰って色々と試してみようと思ったわけ。

ではレシピを書いて…これは箇条書きだから5分もあれば出来るね。それからもう一つこっちは…ちょっと絵とか書かないといけないから苦戦、でも何とか15分で完了。

合計25分経過、急いでエレフさんの家に行かないとね。


……


とうちゃ~く。何とか間に合ったみたいだね。


「お待たせしました。準備の方はどうですか?」


「うん~、バッチリだよ。」


「その右手にあるのがレシピですよね。早く作りましょう。」


ノックをして家の中に入るとエレフさんとパフィさんが楽しそうにお料理の準備をしていた。

今日はチーズとか牛乳とか色々乳製品が必要だからあらかじめミルさんの所に行って作ってもらうようお願いしてたんだ。


「じゃあ始めようか。今日はサツマイモの蒸しパンとサツマイモコロッケとサツマイモグラタンです。皆さん、拍手~。」


「わぁ~~!!パチパチ!!」×2


では始めましょうかね。まずは下拵えから。


最初にサツマイモコロッケの材料はサツマイモ『鳴子銀時』、ひき肉、玉ねぎ、塩、牛乳、小麦粉、溶き卵、パン粉、油。本当はコショウもあった方がいいけど今回はないので省略。

ふかして潰したサツマイモ(スキルで一発生成)に炒めたひき肉、みじん切りの玉ねぎ、塩、牛乳を加えて混ぜ合わせた後に小判型に成形し、小麦粉、溶き卵、パン粉の順番にまぶす。

そして後は170℃の油できつね色になるまで上げれば完成だけど、これは最後にだね。


次にサツマイモグラタンの材料はサツマイモ『鳴子銀時』、玉ねぎ、ベーコン、バター、小麦粉、牛乳、チーズ、塩、香草、パン粉。本当はコショウ(以下略)

まずサツマイモを水で晒し、加熱して潰した後に粗熱を取ったものを準備しておく。(スキルで一発生成)

それから薄切りのベーコンと玉ねぎを炒め、小麦粉を加えた後に牛乳でのばして、塩で味を整えてホワイトソースを作る。

それを先ほどのサツマイモと一緒に耐熱皿に盛り、チーズ、パン粉、香草を乗せたら下拵えは完成。

後は竈で焼き色が付くまで加熱すれば完成。勿論仕上げは食べる直前にね。


そしてある意味これが今回のメイン、サツマイモの蒸しパン。

材料はサツマイモ『絹甘スイート』、卵、牛乳、砂糖、植物油、小麦粉、ベーキングパウダーだね。

ちなみに小麦粉、ベーキングパウダーと砂糖を合わせるとホットケーキミックスになるので地球で作るなら、ホットケーキミックスを使った方が早いと思うよ。

まずは生地作りから。小麦粉、ベーキングパウダー、砂糖でホットケーキミックスを作っておく。それから1センチ角の大きさに切ったサツマイモを水に浸してあく抜きした後に加熱(スキルで一発生成)。

それからボウルに卵、砂糖、牛乳、植物油を加え混ぜ合わせた後に、ホットケーキミックスとサツマイモも混ぜ合わせて、容器に移した後に蒸すんだけど…


「エレフさん、こういう形の道具って見た事ありますか?」


「いや~、ないけど~。何なの、これ~。」


僕が見せたのは日本の家庭にはだいたいある、針金状の金属数本を茶筅状に束ねて取っ手を付けた泡だて器のイラストだ。

ここで僕は身振り手振りを交えながら、道具の使い方を説明した。


「…という風に使うんですけど、スキルで作ったりできますか?」


「う~ん~…見た事がないモノって作った事が無いんだけど~、試してみるよ~。」


ここでエレフさんのスキル『調理器具生成』で作れないかお願いしてみた。

この前のサツマイモスープ作りの時に思ったんだけど、食材を混ぜる時、泡だて器が無いと物凄い疲れる。

こういう時こそスキルの出番だ。と言うわけでエレフさん、宜しくお願いします。


「じゃあ行くよ~。『調理器具生成』泡だて器~。」


エレフさんのスキルが発動。音も光も無くいつものように静かにエレフさんの手から泡だて器が生えてくる。どうやら成功のようだ。


「うまくいったみたいですね。」


「う~ん、まさか作れちゃうなんて~自分でも驚きだよ~。」


「変わった形ですね。どうやって使うんですか?」


「えっと~、こんな感じだよ。」


ここでパフィさんの質問に答えながら、僕は泡だて器で卵と砂糖を撹拌する。


「おぉ~、凄いね~。あっという間に材料が混ざったよ~。」


「エレフさん、これって凄いんですか?」


「うん~、普通はフォークとかでやるからもっと時間が掛かるし~、結構疲れるんだ~。」


ここで感心するエルフさんに僕は不敵な笑みを浮かべながら、


「…エレフさん、感心している所申し訳ありませんがここからが本番です。今度はこれをスキルで生成してみてくれますか?」


僕が見せたのは電動のハンドミキサーのイラスト、つまり調理家電だ。イラストと一緒に使い方や仕組みなんかも書いた力作(もっともモーターとか電気関係については本当にふんわりとだけど)。これを書くのに準備時間の大半を使ったと言っても過言ではない。

これを見た瞬間、エレフさんの目が大きく見開く。


「何これ~、さっきの泡だて器だけでも凄いのに~、更に自動で動くだって~。」


「えっと、これってもしかして…」


「うん、僕の故郷では割とありふれた道具だよ。」


パフィさんの訝しむ様なの視線で投げられた質問に僕は笑顔で答える。そこへ、


「ありえないよ~!こんな道具グレプ、リンガ、ヤーゴは勿論、この大陸全土を探したって存在しないよ~。」


「そりゃそうですよ。だって僕の故郷って『異世界』ですもん。」


「あっ!コンヨウさんのおバカ!」


珍しく声を荒げるエレフさんに僕はあっけらかんと出自を暴露する。なんかパフィさんがめっちゃ慌ててるけど。


「パフィさん、別にいいじゃない。この集落のみんなにはいずれ暴露するつもりだったんだから。」


「いや、心の準備とか色々あるでしょう!知ってたぼくだってコンヨウさんの口から聞いた時は色々混乱したんですから!」


そうだったかな?パフィさんに暴露した時は普通に怒られてた気がするんだけど。


「まぁ、そんな些末な事は置いておいて、エレフさん、作れそうですか?」


「コンヨウ君~、君の事は色々凄いと思ってたけど~、まさかこれほどとは~。」


エレフさんはちょっと驚いた様子だけど、それよりも呆れの感情の方が強いみたいだね。肩をすくめながらハンドミキサーの生成を優先してくれる。


「じゃあ行くよ~…出来たみたいだけど~…動かないね~。」


まぁ、ある意味予想通りだね。電動だから当然電気が必要なんだけど、当然ここにはそんなものはない。おそらく電池式にしても空っぽの電池が入ったハンドミキサーが生成されただろうね。

だけどそんな事で諦める僕じゃないんだよね。


「じゃあ、今度はこれを食べてみて下さい。」


僕が差し出したのは、エレフさんの好きな『絹甘スイート』にさっき手に入れたばかりの『スキル強化』を付与した焼き芋だ。

これでエレフさんのスキルに変化があればもしかしたらと思ったんだけど、正直うまく行かない可能性の方が大きい。まぁ物は試しだね。

エレフさんはなんだかよく分からない言った風情で焼き芋をパクっと平らげる。相変わらず一口が大きい。焼き芋一個を二口でいったよ。

久しぶりの『絹甘スイート』の焼き芋(村を離れている時は生芋を生成していたので)にご満悦のエレフさんに僕は問いかける。


「すみませんけど、ちょっとご自身のスキルの状況を見て貰ってもいいですか?」


「ん~?いいけど~…エッ!!なにこれ~!!!」


「エレフさん?どうしたんですか?」


「コンヨウ君~!さっきの焼き芋は一体何だったのさ~!!」


エレフさんがパフィさんの問いかけに気づかない程驚いた様子で、僕に焼き芋の詳細について問い詰めて来る。

まぁ当然だよね。他人のスキルを強化する焼き芋が作れますなんて、普通は誰も思わないだろうから。僕もその事を説明しながら話を進める。


「…というわけです。ところでスキルにどんな変化がありましたか?」


「君は…なんて言うか~、本当に出鱈目だね~。ちなみに僕のスキルは『調理器具生成(燃料供給可能)』に変化したよ〜。」


「えっと、今ハンドミキサーは動かせますか?」


「やってみるね~…」


ぎゅるる~~~ん!!あっ!動いた。もしかしてこれって、


「あの~、エレフさん。竈に火を入れられますか?薪無しで。」


「いやいや~それはさすがに~…出来ちゃったよ~…」


「えっと、これって。」


この瞬間、この場にいる全員が現在のエレフさんのスキルのヤバさについて共有した。

元々、エレフさんのスキルは竈を作る事は出来ても薪は余所から引っ張ってこないといけなかったんだよね。

でも、今回の強化により燃料一切無しで調理が可能になる。ここは森の中だからそうでもないけど、街とかだと燃料代も結構馬鹿にならない。

それだけでもかなり破格なんだけど、僕は二人以上にヤバい事を思いついてしまった。


エレフさんに地球のシステムキッチンを教えたら…お料理革命どころじゃ済まないね。

冷蔵庫、炊飯器、ガスコンロ、IH調理器具、電子レンジ、etc、etc、それにもしかしたら水道の蛇口とかも…うん、かなりヤバいね。

こうしてタダで電気、ガス、水道、家電使い放題の万能料理人、エレフさんが爆誕した…かも。

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