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088_妹分のお悩み相談室

「コンヨウさん。このお洋服可愛いと思いませんか?」


「…うん、そうだね。」


今はぼくの希望でお洋服のお店に来ているんですけど…どうしたんでしょう?なんかさっきからコンヨウさんが上の空です。

さっき商業ギルドでマイトさんと話した時あたりからでしょうか。ずっと考え事をしているようです。

よし、こうなったら…


「あの…コンヨウさん。ちょっと相談があります。」


「ん?何かな…」


やっぱり上の空です。ちょっと恥ずかしいですけど…


「ぼく、ブラジャーデビューしようと思いますけど、どんなブラジャーが好きですか?」


「ぶふっ~~~~~~!!」


おっと、反応アリです。やっぱりコンヨウさんはおっぱいが好きみたいですね。

時々スフィーダさんの胸元に視線がいっているような気がしてましたから。(あくまでもぼくの主観ですが。)


「ごほッ!ごほッ!パフィさん。もしかしてあの馬鹿リスの影響かな?いくらパフィさんが子供でもそういう事を男の前で言うもんじゃないよ。」


「冗談ですよ。それよりどうしたんですか?さっきから上の空ですけど。」


「………」


さっきまで咳き込んでいたコンヨウさんが今度はだんまりです。言いたくないというよりどうやって言ったらいいか困ってる感じです。

こんなに考えこむコンヨウさんって実は初めてかもしれません。何か重大な事なんでしょうか?


「ゴメン、ちょっと長くなるからご飯の時でいいかな。」


「えぇ、構いませんけど。」


「それからブラなんだけどカップ数とかきちんと図って体に合うモノを買わないとダメだよ。

サイズが分かれば僕も選んであげられるけど。」


「はわぁッ!!余計なお世話です!コンヨウさんのスケベ!!!」


まったく!コンヨウさんはデリカシーってモノが無いです!そりゃぼくが振った話ですからそれに答えただけかもしれませんけど、気を引く為の言葉だったって事くらい分かってほしいです。どうせぼくなんかAAAでブラなんて必要ありませんよ!このおっぱい星人が!

でもぼくが怒鳴ったおかげか、コンヨウさんが少し調子を取り戻したみたいで一安心です。

その後はきちんとぼくのお洋服選びに付き合ってくれました。選んでくれたのは白の可愛らしいインナーに、膝上くらいの長さの水色のフレアスカートと、淡いベージュのトレンチコート、そのお値段23万フルール。

すっごく可愛くて欲しいですけど、予算は20万と決めていたので少し悩んでいると、


「そう言えばまだ不払い分のお給金があったよね。」


とか言って残りの3万を出してくれました。なんか最近はダメダメなところばっかり見てたから忘れそうになってましたけど、こういう所は相変わらずだと思ってしまいます。

それでその場で着替えてみたんですけど、新品のお洋服に袖を通しただけなのに、なんかとってもウキウキした気持ちになってしまいます。可愛い服って凄いです。

だからでしょうか、


「どうです。似合いますか?」


なんてちょっと調子に乗って、コンヨウさんに感想を聞ってみたりしたんですけど、


「そうだね。店員さん、どう思いますか?」


「とってもお似合いですよ。お嬢様。」


「だってさ。良かったね、パフィさん。」


なんてすっごいいい笑顔で言うものですから、


「コンヨウさんのバカ~~~~!!!!」


と思わず怒鳴ってその場を立ち去ってしまいました。なんでこの人は乙女心と言うものが分からないんでしょうかね。

その後コンヨウさんがいつも通りの情けない様子でぼくを追いかけて来て、


「パフィお嬢様。とってもお似合いですよ。」


等と揉み手でのたまいながら、全力で媚びを売ってくるものだからご飯を奢る事で手打ちにしてあげました。

ぼく達が行ったのは大衆食堂より1ランク上でこの前の高級レストランよりかは1ランク下がるくらいの、ちょっと贅沢する時にちょうどいい感じのお店です。

ぼくがちょっと綺麗な恰好をしているからそれに合わせてだってコンヨウさんは言っていました。お店に入ると、


「いらっしゃいませ。お嬢様と…御付きの方でしょうか?」


なんて店員さんは言っていたんですけど、


「はい、そうです。さぁ、パフィお嬢様の案内をお願いします。」


なんて楽しそうに使用人プレイをしていたのが少し腹立たしかったです。

この人は自分のプライドよりぼくをからかう事を優先する節がありますから。

でも店員さんはぼく達の様子からちゃんと察してくれたのか、2人共同じ席に案内してくれたから一安心です。


席に案内されたぼく達はメニュー表を見ながら注文をします。

そう言えば、この間まで全然文字が読めなかったのに、今ではメニュー表にあるくらいの簡単な文字と数字くらいなら読むことができます。これもコンヨウさんやネイチャンさんに文字を教えて貰ったからなんですよね。

少し前までは孤児院でイジメられていて、学も無くて、お腹を空かせて、いつ死んでもおかしくない状態だったのに、今ではお仕事を教えて貰って、勉強させて貰えて、素敵な服を着れる様になって、そして何よりお腹いっぱい食べる事が出来ます。

そんな幸せを与えてくれた目の前の恩人はその事にまったく気づいていないみたいですけど。

ぼくはお肉と野菜の炒め物ランチをコンヨウさんはミックス野菜サンドイッチセットを注文しました。

そしてぼくは注文が来るまでの少しの時間、さっきの事について聞いてみる事にしました。


「コンヨウさん。さっきの事ですけど、何を悩んでいるんですか?」


「…う~ん、どこから話そうかな。これは僕のスキルに関わる話なんだけど。」


ここでコンヨウさんは一旦言葉を切って、こちらの聞く覚悟を確認する様に視線を送ってきました。

それに対してぼくが黙って頷くとコンヨウさんは再び言葉を紡ぎます。


「僕のスキルが強化されるって言うのは知ってるよね。その強化されたスキルの中にもしかしたら他人を不快にするかもしれないスキルがあるんだ。」


「……」


コンヨウさんのスキルで不快になる?よく分かりませんがよっぽどの事なのでしょう。いつものふざけた感じやクズな感じが見受けられません。無言で先を促すぼくに応えてコンヨウさんは続きを語ります。


「そのスキルは簡単に言っちゃうと、相手を勝手に敵味方識別しちゃうものなんだ。」


「???」


えっと、一見して便利なスキルですけど、どこに不快になる要素があるんでしょうか?ぼくは疑問符を頭に浮かべながらコンヨウさんに話を促します。


「分からないって感じだね。もし僕が勝手にスキルで君の事を敵だと決めつけて邪険に扱ったりしたらどう思う?」


その言葉は真剣そのものでした。穏やかな口調の中に、有無を言わせない雰囲気で質問するコンヨウさん。僕はますますわけが分からなくなります。


「そうなったらそれはぼくが悪いんです。」


「えっ?」


ぼくの言葉にコンヨウさんが意表を突かれた、みたいな呆けた表情になります。


「きっとそれはぼくがコンヨウさんに嫌われても仕方がない様な事をしたから、スキルに敵だって判断されたんだと思います。」


だって、


「コンヨウさんは言ってくれました。絶対にみんなを見捨てないって。」


コンヨウさんは誓ってくれましたから。

自分を酷使して倒れたあの夜に。何か大事な事を思い出して、それでも悩みながらみんなを守るために必死で動いてくれたあの夜に。


「だからはっきりと宣言します。ぼくはどんな事が起きてもコンヨウさんの味方です。」


ぼくは絶対にコンヨウさんを裏切らない。でも、


「それでももし未来のぼくがコンヨウさんを裏切ったなら、その時は…容赦なくぼくを処断してください。ぼくはコンヨウさんを裏切ったぼくなんて…大嫌いです。」


ぼくの顔から笑みが浮かぶのを感じます。多分今のが本当に初めてだったからです。コンヨウさんが自分の悩みを打ち明けてくれたのは。そしてそれに全力で応えた自分をとても誇らしく思います。

真っ直ぐなぼくの目に、手をヒラヒラさせながら降参のジェスチャーをするコンヨウさん。


「はぁ~、まさか妹分に励ませれるなんてね。僕も焼きが回ったもんだ。聞いてくれたありがとう。おかげでスッキリしたよ。」


「ふふっ、どういたしまして。」


この後僕達は、注文したランチを食べてナプールの街を見回ってお買い物をした後、家路に着きました。都会での暮らしも色々と新鮮でしたけど、やっぱり大好きな人と一緒に過ごすおウチが一番だと思うぼくなのでした。

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