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087_『仲間』への罪悪感

「さて、次はお金を下ろさないと。」


『ラビアンローズ』を後にした僕達が次に向かったのは商業ギルドだ。

パフィさんにお金の下ろし方を教えないといけないし。


「いらっしゃいませ。コンヨウさん、パフィさん。」


「こんにちは、アズラさん。お久しぶりです。」


「アズラさん、これお土産です。よかったら皆さんで食べて下さい。」


商業ギルドに着いて僕らを出迎えてくれたのは青い鳥獣人職員のアズラさんだ。

パフィさんと僕は挨拶もそこそこにお土産の干し芋を10個アズラさんに手渡す。


「わぁっ!わざわざありがとうございます。あとで職員のみんなと頂きますね。

本日はどのようなご用件ですか?」


「まずは、預金の引き出しをしたいのですけど。パフィさんにやり方を教えておきたいので。」


「分かりました。では用紙をお持ちしますね。」


「はい、お願いします。」


そう言い残してアズラさんは少しの間席を外す。

その間に僕はパフィさんに預金口座カードの説明をする。


「パフィさん、カードは持ってるね。」


「はい、ここにあります。」


「うん、じゃあパスワードを覚えているかな?」


「はい!『甘納い「おっと、人にバラしちゃダメだよ。」」


危ない、危ない。パフィさんはどうもパスワードの大切さを分かってないみたいだね。

慌てて僕が止めなかったら色々拙かったかも。咎められて少ししょんぼりするパフィさんに若干不安になりながら説明を続ける。


「まずそのパスワードをこんな感じでカードの裏に指で書いてみて。」


そう言いながら僕は自分のカードを使いながら説明する。僕のパスワードは『四食昼寝付き』っと。すると僕のカードが淡く光り出す。

パフィさんは目を瞬かせながら同じように自分のカードにパスワードを指で書く。


「アッ!ぼくのも光りました。この後はどうするんですか?」


「そしたら次は『残高』って書いてみて。」


そう言いながら僕は自分のカードに指で書くとその瞬間数字が浮かび上がる。僕の預金残高は…およそ50万フルールか。この前バックルさんの大盾代を立て替えた時のお金が振り込まれているみたいだ。

この前のグレートボアの素材の他にも積極的にモンスター狩りをしてるみたいだったけど、それにしても返済早すぎない。もしかしたら僕に借りてたら利息とか取られそうとか思われてるのかな?

パフィさんの方は…60万フルール。護衛料とかモンスターの素材報酬とかあったからね。パフィさんもすっかり小金持ちになっちゃって。会った時は無一文で腹ペコさんだったのに随分と遠くまで来たんだね~。

あれ?金額を見てパフィさんが一番驚いてるんだけど。元々大きな瞳が飛び出そうなほど、目を見開いちゃってるよ。


「あの…コンヨウさん。これって…」


「紛れもなく君の所持金だよ。パフィさんはその口座のお金を自由に使えるんだよ。」


「マジですか…ぼく、今までこんな大金持った事ありません。」


「じゃあ慣れておこうか。パフィさんの力があれば1000万だって夢じゃないから。」


「またまた~、冗談を~…ってわけじゃないんですよね。」


「うん、何なら稼ぎ方教えようか?」


「…いえ、結構です。なんか大金持つとそれだけでお腹が痛くなりそうですから。」


うん、分かるよ。その気持ち。

パフィさんが疲れた表情で項垂れるところにアズラさんが用紙を持って戻ってくる。


「お待たせしました。こちらが用紙になります。ところでパフィさん、何かありましたか?」


「気にしないで下さい。ちょっと思ったより預金残高が多かったことに驚いているだけですので。」


「そうですか。ではこちらがお引き出し用紙です。」


そう言って一枚の紙を僕とパフィさんに渡す。

そこには名前を書く欄と金額を書く欄があり、金額は硬貨の枚数を指定する形式になっている。

これを記入して光らせたカードと一緒に渡す事で現金を引き出すことができる。

僕は小銀貨9枚と大銅貨10枚で合計10万フルールっと。

パフィさんは…大銀貨6枚で60万フルール!全額だって!!


「パフィさん!ストップ!!そんなに大金持ってどうするの!」


「エッ!だってお金を引き出さないと使えないじゃないですか?」


「それって今すぐ使う予定あるの?」


「…ありませんけど。」


「だったら必要な分以外は入れて置かないと。落としたり取られたりしたらどうするの!!」


「でもすぐに使えないと不便じゃないですか?」


ヤバい。パフィさん、預金口座の有用性を全く理解してない。

ゼブラさんに教えた時はすぐに理解したけど…これは意外と強敵かも。

ここで僕は紛失や盗難被害の危険性についてコンコンと説明する。


10分後…アズラさんも待たせちゃったけど、何とか理解してくれたみたいだ。


結局パフィさんは大銀貨2枚と小銀貨9枚と大銅貨10枚の合計30万フルールを下ろし、パフィさん用の小切手も10枚買う事にした。

どうやら新品の洋服が欲しくなったらしい。まあ女の子だしお金があればおしゃれしたいよね。いくら自分がそういう事に興味がなくても、一般常識でそのくらいは分かるよ。


じゃあこの後は洋服屋さんにも行ってみないとね。

さて、用事を終えた所でお暇しますかね、っと思っていたら僕の後ろから声が掛かる。


「やぁ、コンヨウ君にパフィさん。少しぶりですね。」


「こんにちは、マイトさん。」


「マイトさん。その節はお世話になりました。良かったらこれどうぞ。」


後ろからの声、マイトさんに僕とパフィさんは振り返りながら笑顔で挨拶をする。その時さりげなくポーチの中で干し芋を作りマイトさんに手渡す。

いやぁ、この人には本当にお世話になったからなぁ。ちゃんとお礼しないといけないと思ってたから会えたのは僥倖だね。

そんな事を考えているとマイトさんが苦笑いを浮かべながら応じる。


「君が無事なのを直接見れて少し安心したよ。」


「???」


「先ほどまでドクさんと話してたんだよ。」


なるほど、ドクさんに色々とある事ない事吹き込まれたわけだな。

僕ってそんなに無茶してないんだけどな。飲まず食わず眠らずで3日くらいなら問題なく動けるし。

それよりも大事な事を言っておかないと。


「マイトさん。本当にありがとうございました。あなたの協力が無かったらこんなに早く片付かなかったでしょう。」


「どういたしまして。君も無茶はほどほどにするんだよ。」


「はい、気を付けます。ところで僕とこんな風に話してて大丈夫なんですか?」


「あぁ、今は裁判所の動きを待っている段階だからね。手続きはドクさんが手伝ってくれたし。」


「そうでしたか。今度正式にお礼に伺いますので。何かやってほしい事とかありませんか?」


そう、今回ある意味一番お世話になったのはこの人だ。このままじゃこの人に大きな借りを作ったままになってしまう。そう考えているとマイトさんは意外な事を口にした。


「じゃあ、今度君の所で作っているスイートポテトを融通してもらえるかな。妻が甘いモノが好きでね。」


「いいですけど、僕の所でスイートポテトを作ってるってお話ししましたっけ?」


「ドクさんに教えて貰ったよ。他にも何か面白い事を始めようとしてるんだってね。」


「えぇ、まぁ。」


「じゃあ、それでナプールを発展させてくれる事が何よりのお礼という事で。」


「……」


それだけ言い残したマイトさんは忙しそうにその場を後にする。

その様子をポカンとした表情で眺めていた僕にアズラさんが事情を説明をしてくれた。


「ギルドマスターは愛妻家なんです。本当は奥さんと一緒に話題のスイートポテトを食べに行きたいと思っているみたいですけど、お忙しいのでなかなか機会が無いみたいです。」


「えっと、スイートポテトってそんなに話題になってるんですか?」


「はい、甘いモノ好きの界隈では特に。今では午前中で売り切れるほどですよ。」


「……」


まさかそれほどとは…でもそれだとこれからやる予定のスイーツ開発計画が結果的にマイトさんへの借りを返す事に繋がりそうだね。

今後はマイトさんにスイーツの試供品を持っていくようにしよう。


「マイトさんってご家族は何人くらいいるんですか?」


「マスターと奥さんだけですけど?」


「ありがとうございます。ではそろそろお暇します。」


「はい?またの起こしをお待ちしております。」


「あっ!コンヨウさん、待ってください!アズラさん、失礼します。」


僕は質問に答えてくれたアズラさんにお礼を言ってその場を後にする。

そんな僕に慌ててついて来るパフィさん。

実は僕はこの時少し考え事をしていた。


それは僕の強化スキル『仲間との食卓』についてだ。


『仲間との食卓』…仲間に対するスキル使用を負担無しで行えるようになる。


なんだけど『仲間』の定義がよく分からないので色々検証してみた。

ここで今日使った『食物生成』スキルの生成量残を時系列ごとの推移で確認してみよう。


まず朝一

生成量残4950/5000

この段階で生成したお芋は集落への食料分と牛さん分の300個とスイートポテト用50個で消費は50だ。

つまり集落の人達は牛さんも含めて『仲間』だとカウントされているから無消費だけど、商売用はしっかり消費されているみたい。


次に孤児院に行った時

生成量残4450/5000

ここではスフィーダさんやガキども、クズミ様のお土産と販売用の干し芋500個を生成。

その結果消費されたのは販売用の500個のみ。つまり孤児院のみんなは『仲間』という事だ。


その次の『ラビアンローズ』では

生成量残4449/5000

ここではラビリさんとヒヨリさんとパフィさんの分、それからラビリさんへの連絡用の『芋文』の生成。3人は『仲間』としてカウントされている為消費0だけど、『芋文』分1個は消費。


最後に商業ギルドでは

生成量残4439/5000

ここでは職員さんのお土産に10個とマイトさんに1個生成。

結果としては職員さん分は消費されたけどマイトさんの分は消費されず。

つまりマイトさんは『仲間』で職員さんはアズラさんも含めて仲間じゃないって事になるわけだ。


つまりこれは…


「コンヨウさん、勝手に一人で行かないで下さい!」


「アッ!ゴメン、パフィさん。」


「まったく、どうしたんですか?ボーッとして。」


「ゴメンゴメン、ちょっと考え事してた。これは心配かけたお詫びという事で。」


そう言って僕はパフィさんに『極上甘納芋』を差し出す。

その僕の行動にパフィさんは頬を膨らせて。


「もう!コンヨウさん!ぼくの事焼き芋さえ食べさせていればいいと思ってませんか!モグモグ…」


と焼き芋を食べながら抗議する。


「本当に悪いって思ってるって。この後だけどどうする?パフィさんのお洋服を見た後はどこかで美味しいモノでも食べようか。」


怒りながら美味しそうに焼き芋を食べるという器用な事をするパフィさんに謝りながら、街へと歩き出す僕。


生成量残4439/5000


はぁ~、全く『仲間との食卓』…か。皮肉もいいところだね。

これを見れば現時点の味方が一発で分かるってわけか。まさに僕の人間不信が生んだ能力だと言っても過言じゃないな。

もし仮に今の仲間が裏切ればこの能力の対象外になる。

パフィさんがこの能力の対象外になった時…僕はその事実に耐えられるだろうか。

人の心の覗き見ているような罪悪感に僕の僅かに残った良心が苛まれるのであった。

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