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085_美味しいものを求める理由

「ふぅ~……取り敢えず今すぐ思いつくのはこんなものですね…」


「ご苦労様です、コンヨウさん。これだけ『ワード』が揃えば余裕で探せますわね。期待して下さいませ。」


覚醒ラビリさんの圧に屈して、全力全開で思いつく限りのスイーツの情報を搾り出した僕。

満足そうなラビリさんを余所に、ヒヨリさんは遠くを見つめながら合掌してるし、パフィさんはミニマムアニマルムーブでガクブルしてるし。

僕がヘロヘロ状態で机に突っ伏していると、


「皆さん。一息入れましょう。少し(コンヨウさんが)根を詰め過ぎているようですので。」


ヒヨリさんがみんなの分の紅茶とお茶請けのクッキーを持ってきてくれた。

流石ヒヨリさん、癒し系出来るラビットは違いますね。ナイフのようなお嬢ちゃん(笑)も見習ってほしいものですわ。

そんな事を考えてるとラビリさんがジト目でこちらを睨んできたけどスルーだね。あぁ、このサクサククッキー美味しい。

なんか味がこの間『ゴージャスずんだ』で食べたナッツのクッキーにそっくりなんだけど。そう漏らしたら、


「…おそらくそのクッキーを作ったのはタカハシさんでしょうね。」


「タカハシさん?」


「はい、ウチの腕利きのパティシエが引き抜かれた話はしましたわよね。彼がそうです。」


「タカハシさんは母親がご病気で纏まったお金が必要でしたから。その事でズンダダにお金を融通してもらう代わりに引き抜かれたという経緯があります。」


「なるほどですね。」


つまり、彼を引き抜かれたのはラビリさんのミスだ。

後継者争いなんて事をしているんだから、相手が妨害工作をするなんて火を見るよりも明らかだし、優秀なスタッフを引き抜ける機会があるなら迷わず引き抜く。

多分ラビリさんは正攻法の商売は得意なんだろうけど、そういう薄汚い方法に対する防衛手段はまだまだ未熟なんだろうね。

そういう意味ではズンダダとのスイーツ対決はいい経験になったと思う。多分僕がズンダダと同じ立場だったらもっとえげつない方法でラビリさんを封殺出来たと思うし。まぁやらないけど。

でもそのタカハシさんが手元に戻ってくるチャンスがあるならふいにする手はないね。


「では、そのタカハシさんとウェイターのチュウジさんについては僕が推薦という事で。

まぁ、僕は経営者じゃありませんから最終決定権はラビリさんにありますけど。」


「そうですわね。チュウジさんはともかく、タカハシさんについてはこちらから出向く必要がありそうですわね。一度抜けた店に戻るのはなかなか難しいでしょうし。」


流石ラビリさん。そういう気遣いはきちんとできるんだよね。

僕がそんな感じで感心していると今度はヒヨリさんが話題を振ってくる。


「先ほどコンヨウさんが気になる事を言ってましたが伺っても?」


「えっと、何の事ですか?」


「先ほどレシピ開発の話をしていた時に『完成品は『ラビアンローズ』()で』と仰ってましたが、これってつまり…」


流石、ヒヨリさんは鋭い。さりげなく言ったからスルーされるだろうと思ったんだけどな。


「はい、おそらくご想像通りです。」


「コンヨウさん。また何か悪だくみをしてるんですか?」


コラ!パフィさん、失礼だろ。僕が悪だくみなんて…結構してるね。それも割とパフィさんの前で堂々と。

きっとウェイトレスさんにされた事を根に持ってるんだろうな。さて、いつも通りにパフィさんの視線が冷たくなってきた所で話を進めますかな。


「お察しの通り、スイーツだけじゃなくて料理のレシピも開発していくつもりです。まぁこれについてはかなり先の話になりますが、それでもし商売をする気があるのでしたら。」


「箱を作れ、と言うわけですわね。」


と、ラビリさんが締める。答えは勿論Yesだ。僕は黙って頷き肯定の意を示す。

それを受けたラビリさんが呆れながら話を続ける。


「しかし、あなたはどうしてそんなに食に対して貪欲なのですか?」


この質問に僕は思わず言葉を失った。よくよく考えてみれば僕って別に一生懸命働かなくても食べていく事は出来るんだよね。

確かに美味しいモノは食べたいけど、今回みたいな苦労をしてまで食べたいとは思わない。なのに今回、かなり無理をしたのは何故か?

そう考えると自然と頭に浮かぶ人達(もの)があった。


「多分ですけど、僕は集落のみんなと美味しいご飯を食べたいんだと思います。」


そして思い浮かぶ女の子(ひと)がいた。


「それに約束したんです。僕が知っている美味しいモノを全部食べさせるって。」


「……」


「僕の知ってる美味しいモノって下手したら1000超えるんですけど、それを作ろうと思うと一人の力ではどうにもなりません。

だからこれからは出来るだけ多くの人に協力して貰おうと思うんです。

勿論利益還元もしっかりしていくつもりです。そこはきっちりギブアンドテイクで。」


僕が控えめに笑いながら語ると何故かみんな表情を緩める。


部屋の中は優しい沈黙に包まれる。


そしてパフィさんの頬が少し赤くなっている気がする。まぁ、いくら名前を出さなかったとはいえ、本人の前で約束を暴露すれば気恥ずかしくもなるかな。


このまま黙ったままというわけにはいかないので、僕は敢えて悪そうな笑みを浮かべながらこう締めくくる。


「それに先程は言いそびれましたが、この計画はウチの集落にとっても経済的にプラスになるんですよ。

例えば『スイートポテト』で使われている材料なんですけど、ウチの住人しか使えないユニークスキルで作ったものが含まれているんですよ。

つまり、レシピを渡す代わりに食材を売る、っていう商売も出来ちゃうわけですよね。」


この一言に今度はみんな呆れた表情を浮かべる。


「コンヨウさん、あなたはきっと私より商売人ですわ。」


(こくこく)×2


ラビリさんの一言に無言で頷くヒヨリさんとパフィさん。みんなきっと僕の事を守銭奴かなんかだと思ってるんだろうな。

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