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082_シマウマの兄貴は極悪人ヅラ

「なぁ、ゼブラ兄ちゃん。あれってどう思う。」


「まったく、あの馬鹿。なに善良な神父様を洗脳してるんだか。」


俺っちは孤児院のガキどもと一緒に隣の部屋でコンヨウっちから貰った焼き芋をかじりながら、アイツとクズミ神父の話を聞き流していた。

しかしここのガキどもは…ご愁傷さまとしか言いようがないな。

コンヨウっちの勉強って分かりやすいし、役に立つんだけど、密度が半端じゃないから疲れるんだよな。

いっつも勉強を教わっているパフィちゃんが死にそうになってるし、俺っちも干し芋販売するにあたって算術を叩き込まれた時に死にそうになったもんな。


さて、俺っちが遠い目をしているとスフィーダさんがコップに人数分の水を汲んでやって来てくれた。

きっとお水をみんなに渡すついでにもう一度コンヨウっちに焼き芋をたかるつもりだな。

まぁ、俺っちの懐が痛むわけでもないし、食べてるスフィーダさんはとても可愛らしいからいいんだけどな。

きっと食べた養分は全部胸部装甲の武装強化に使われているんだろうな。

なんて考えていると屈託のない笑みで俺っちに水を渡してくれるスフィーダさん。マジ天使だぜ。


「おっ、ありがとうな。ちょうど水が欲しかったところだぜ。」


「ふふっ、どういたしまして。あちらの3人にも運んできますので。」


そう言ってお水を持って行ったスフィーダさんがしばらく経って戻ってきた。

案の定、それぞれの手には焼き芋が1つずつ。あぁ、美味しそうに焼き芋を頬張りながら、ほっぺに食べかすをつけているスフィーダさんも素敵だぜ。

では俺っちもちゃんと仕事するかな。


「スフィーダさん、ちょっといいかな?」


「モグモグ…はい、何でしょうか?」


「今まで休みにしてた干し芋販売だけど、今後も続ける気はあるかい?」


「えっと…何故いきなりそんな質問を?」


まぁ、いきなりこんな事聞かれたら疑問にも思うよな。ちゃんと順を追って説明しないとな。


「ほら、あの干し芋販売って生活費と借金返済の為にやってただろう。

今は借金の返済は無いし、補助金も下りるようになるはずだから無理にやる必要もないと思ったわけだけど。」


「確かにそうですけど…補助金だけでは生活費は足りませんし、仕事を通して子供達に教えられる事もあります。

わたくしとしてはこのまま続けさせて貰えればと思っているのですけど。」


よっし!つまり契約は継続、って事だな。これからも合法的にスフィーダさんのおっぱ…じゃなかった。

スフィーダさんに会いに来れるってことだな。俺っちは満面の笑みで話を続ける。


「じゃあ、今後も宜しくってことだな。販売はいつから?」


「宜しければ明日からでも。」


「OK、コンヨウっちから干し芋預かってるからいつもの所に入れとくぜ。」


「いつもありがとうございます。わたくしも一緒に行きますね。」


そう言ってスフィーダさんは俺っちと一緒に倉庫へと来てくれた。


「スフィーダ姉ちゃん…やっと春が来たかな。」


「どうだろう?お姉ちゃん結構鈍感だから。」


「ゼブラ兄ちゃんはスゲー分かりやすいんだけどな。」


「でも二人っきりで倉庫って…なにかイケナイ事が起こる予感。」


「あぁ~、ヤダヤダ。男の子ってみんなエッチなんだから。」


「いやいや、僕は別にそんなつもりで言ったんじゃ…」


なんか俺っちの背後でガキどもがうるさいけど、よく聞こえないしスルーの方向だな。


倉庫についた俺っちとスフィーダさんは保管用の木箱を取り出し、その中に干し芋を入れて数量を確認する。


「……499、500。よし、これで全部だな。」


「ゼブラさん、いつもありがとうございます。」


「いいって事よ。これも仕事だしな。」


在庫確認が終わった後、俺っちとスフィーダさんはいつもの遣り取りをしたんだけど、今日はスフィーダさんの様子がちょっとおかしい。

なんかもじもじして何か言いたげだけど、言い出せない感じだ。これはもしかして…いや、それは夢の見過ぎだぜ。

俺っちみたいな極悪人ヅラの非モテ人間にそんなイベントは一生訪れないだろう。俺っちは遠くからスフィーダさんのおっぱいを眺められればそれだけで幸せなんだ。

……でも確認は必要だな。


「どうかしたのか?悩みなら聞くけど。」


「いえ、わたくし達ってこの前まで飢え死に寸前の生活を送っていたのに、今は神父様も子供達もお腹いっぱい食べられて、仕事もあって、お勉強も出来る。

これってとっても幸せな事なんだなぁって思って。」


「そうだな。空腹は人を獣に変えるからな。」


「ふふっ、そうですね…この幸せも皆さんに出会えたからだと思うと感謝に絶えません。」


「そっか、確かにみんながこうして笑ってられるのもコンヨウっちのお陰だな。」


「ふふっ、そうですね。コンヨウ君とゼブラさんのお陰です。」


「あぁ、気にしなくていいよ。仕事だし好きでやってるから。」


まったく、スフィーダさんの綺麗な笑顔に心が洗われる気分だぜ。

最近見た笑顔って言うとコンヨウっちの欲望にまみれた汚い笑顔と、ドクさんの怒りを押し隠した般若のような笑顔ばっかりだったから、こういう癒しはマジで貴重だぜ。

しかも気を使って俺っちにまで礼を言ってくれる優しさ。ついそっけなく答えちまったけど、心臓の鼓動とかがヤバい事になってるぜ。


「本・に…感・・て・んで・・・ね。」


「えっと、何か言った?」


俺っちが気恥ずかしくなってそっぽを向いている間にスフィーダさんが口ごもりながら俺っちに何か語り掛けてきた。

思わず聞き返すとスフィーダさんの顔が少し赤くなった気がする。

俺っち達の間に静寂が包み込む。気まずいような心地いいような人生初の経験に戸惑う俺っち。

だって俺っち女の子と二人っきりになる事すらほぼ初めてなんだからしょうがねぇよな。


………ガタガタッ!!


「おい!押すなよ!気づかれるだろう!」


「そっちこそ詰めなさいよ!」


「ちょっと静かに、気づかれるよ…」


「何やってんだよ!そこはチューだろ!もうゼブラ兄ちゃんのヘタレ!」


「うるさいって言ってるでしょう!!」


「………ガキども、そこでなにしてるんだ。」


俺っちが物音に振り返るとそこには楽しそうにこちらを出歯亀してやがるガキども。

俺っちが凄んでやるとワタワタした様子で後ずさりしながら、


「いや、あんまり遅いから気になって。」


「そうだよ。もうすぐ時間だから。」


「今日の分のお菓子、取りに行かないと間に合わないんでしょう。」


「アッ!」


言い訳はともかく、そろそろ時間がヤバい。このままじゃ『ラビアンローズ』の開店時間に『スイートポテト』が間に合わなくなる。

色々言いたい事もあるけど、ここは勘弁しておこう。


「ワリィ。じゃあスフィーダさん。俺っち、もう行くわ。明日また寄るから。」


「はい、行ってらっしゃい。ゼブラさん。」


さて、今日の予定はまず集落に一回戻って『スイートポテト』を回収・配達。それから買い出しをして、ズンダダの件の証言に、プラム村の人達への報告だな。

やる事は山積みだけど、先行きは明るい。プラム村の人達も俺っち達の集落に来るか聞いてみないとな。はぁ、確かに良い事だけど忙しすぎるのはどうにかならないもんかねぇ~。

スフィーダさんの行ってらっしゃいの声を背に『高速移動』スキルで加速する俺っち。まあ俺っちの足なら往復30分もかからないんだけどな。

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