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081_全て社会が悪い

「おはようございます。クズミ様…と残りのおまけども。」


「いきなりご挨拶ですね。それに異常にテンションが高いですが悪いモノでも食べましたか?」


「なんだ、兄ちゃんか~。」


「ゼブラお兄さん、おはよう。なんで昨日来てくれなかったの。」


「パフィお姉さん、おはようございます。今日も素敵です。」


「ははぁ、いらっしゃい。コンヨウ殿。」


僕はこれから集落に帰るので、ナプールでの挨拶巡りをする事にしたんだけど、僕の朗らかな挨拶にスフィーダさんとガキどもは塩対応。

まったく、この大喰らいリスは礼儀と言うものを知らないね。それからクマのガキ、テメー、パフィさんに色目使ってんじゃねぇよ。

たくっ、クズミ様を見習ってほしいものだ。今だって笑顔で僕に応じてくれてるじゃないか。ちょっと顔が引きつっている様に見えるのは気のせいだよね。

さて、まずは、


「スフィーダさん。そんな事言ってもいいのかな~、お土産持ってきたんだけどな~。」


そう言いながら焼き芋をちらつかせる。


「ようこそお越しくださいました。さぁ、コンヨウ君。何もない所ですけどゆっくりしていって下さいね。」


うわぁ~、見事な手のひらクルーだよ。この人は本当に食欲に従順だよな。そういうとこ嫌いじゃないよ。

さて、スフィーダさんとガキどもと、ついでにスフィーダさん目当てのゼブラさんに焼き芋を渡して追い払った後、クズミ様と今後についての話を始める。

でもその前に…


「クズミ様も宜しければ焼き芋は如何ですか?」


「うむ、すまないね。それとワシとは普通に話して貰って構わないんじゃよ。」


「いえ、トンデモありません。これからお世話になる御方に対してそんな。」


「コンヨウさん。顔がクズになってますよ。」


コラ!パフィさん!余計な事を言うんじゃない。せっかくクズミ様にゴマを擦っていたのに。

ほら、クズミ様の顔がさっき以上に引きつってるじゃないか。これは注意しないとね。


「パフィさん、クズミ様のスキルがあれば美味しいモノが食べれるんだよ。後は…分かるよね。」


「はい!クズミさん。コンヨウさんはクズですけど、美味しい思いをしたいなら協力するのが吉ですよ。」


「ハハァ…その言い方だと色々問題がありじゃが、そんな事しなくてちゃんとお礼はするぞぃ。」


クズミ様、あなたは神ですか!それに引き換えパフィさん、言葉選びが最悪だよ。その言い方だと僕って最低の腐れ外道じゃないか。

イケナイ、これ以上パフィさんに喋らせると僕の評判は底辺に落ちそうだ。えっ?それは元々だって?やかましいわ!

さて、せっかくクズミ様もああ言ってくれてるし、本題に入ろうかね。僕はクズミ様に『鳴子銀時』を差し出しながら話を切り出す。


「まずクズミ様にお願いしたいのは、味噌と醤油の生成ですね。この二つは調味料なんですけどあるだけで料理のバリエーションが格段に広がります。

集落で使うから取り敢えず両方100キロずつくらい欲しいですね。材料はこちらで既に発注を掛けてますので2日くらい後には準備が完了するかと。

手間賃として1キロ辺り300フルールくらいでお願いしていいですか?」


「えっ!」


やべ!クズミ様が困惑の表情を浮かべてるよ。やっぱりレアスキルを使ってもらおうって言うのに少なすぎたかな。


「アッ!すみません。今のは無しで。それじゃ400で。」


「いや、待ってくだされ。」


「分かりました、500ですね。すみませんがこれ以上はちょっと。」


僕の申し出にクズミ様は更に困惑の表情を深める。う~ん、確かにクズミ様以外作れる人がいないから希少価値は高いけど、これ以上出すとちょっとお財布的に厳しいんだよな。

原材料の大豆が1キロ300フルールくらいで、もしかしたらもっと高くなるかもしれないよね。それに1キロ100フルールでゼブラ運輸にお願いする予定だし。

そうすると500フルール以上だと1キロで1000フルール超える可能性が出て来るんだよね。正直普段使いするならそれより高いとちょっと苦しくなる。

味噌はともかく、醤油って一度に200ccとか平気で使っちゃうし。でも僕が稼げば…でもあんまり労働とかしたくないしな~。

と、僕が考えていると。


「いえ、200で結構ですじゃ。っというよりそもそも手間賃など取るつもりはなかったのじゃがな。」


ぴくッ!これは聞き捨てならないな。


「クズミ様……ちょっとよろしいでしょうか…」


「ひぃ!!」×2


あれ?僕って今、笑顔で優しく話し掛けてるよね?なんでパフィさんとクズミ様が悲鳴を上げてるわけ。

まぁいいや。クズミ様にはちょっとお説教が必要そうだし。


「いいですか?クズミ様のスキルは至高にして替えの利かない貴重なものなんです。

特殊技能に対する手当と言うのは受け取って然りの権利。いや受け取る義務があると言っても差し支えが無いものなんです。

何故なら人に出来ない事をして、社会に貢献するというのはそれだけで尊い事だからです。

こういう優れた事が出来る人間はその分の見返りを受け取って当然、いや受け取るべきなのです。そうしなければと有能な人間は真っ先に使い潰されてしまうことになるでしょう。

そんな世界で誰が頑張ろうとしますか?僕だったら絶対に怠け者になりますね。そんな怠け者だらけの世界で誰が幸せになれますか?いずれみんなが不幸になるでしょう。

世の為人の為と自分を安売りする人間というのは、実のところ、正当な報酬を受け取るという世界に対する義務を怠けているとも言えるのです。

成果には報酬を!それこそがギブアンドテイク、等価交換、この世界の真理なのです!!」


「……」×2


よし、僕の素晴らしい演説に2人は感動で声を失ったぞ。ちょっと震えてたり、顔色を青くしている気がするけど気のせいだろう。

大体そんな人のいい性格だから今回の借金騒動が発生したのでないだろうか?

ちょっとクズミ様には自衛の為のお勉強をしてもらわないと。まったく善人は簡単に食い物にされるって事を覚えて貰わないとね。


「僕はこれから集落に戻りますけど、定期的にこちらに伺おうと思います。

その時ガキどもと一緒にクズミ様の教育もしますのでそのつもりでお願いします。」


「ちょっと!コンヨウさん!」


「言っとくけど、パフィさんも一緒に勉強するからね。ついでにスフィーダさんも。」


「ひぃ!!」×2


僕の本気の眼光にパフィさんとクズミ様が悲鳴を上げる。

前々から思っていたけど、この孤児院のみんなって防犯意識が低すぎるんだよね。多分クズミ様や近所の人達がお人好しなのが原因なんだと思うんだけど。

でもそのままじゃいつまで経っても独り立ち出来ないし、社会に出ても騙されて割を食う事になってしまう。

そんな人間が溢れているから、貧乏人の一般労働者は何時まで経っても企業に食い物にされるんだ。


話は変わるけど東京のグルメ番組とかでランチ1500円で「やっす~い」とか言ってる芸能人を見ると殺意が湧くんだよね。普通の貧乏人はワンコインどころか一食200円の世界なんだよ!

それにこちとらクソ親父時代に原価2500円の商品を500円で販売して貧乏一般人が殺到したせいで飢え死にしてんだよ!

ちなみに父さんが元々出していた料理なんだけど、かなり美味しいけど素材にそれなりのこだわりがあったから採算を考えると最低でも800円は取らないといけない代物だったんだよね。

そのせいで近所の格安ファストフード店に客を取られてしまったのもクソ親父化した要因の一つだね。

つまり僕が飢え死にしたのは社会が悪いからなんだよ!クソが!!


おっと、話がだいぶ横道に逸れたけど、ここのガキどもがそうならない為に心を悪鬼羅刹にしないとね。

僕は社会に対する憎しみ9割とガキどもへの心配1割で話を進める。


「それじゃ来月からは週2回焼き芋販売の為にナプールに寄らせてもらう事にしましょう。

その時にお勉強もしますのでそのつもりで。」


「はい…」×2


僕の仏のような提案に、パフィさんとクズミ様はその身を震わせて感動でむせび泣くのを必死で堪えている。

本当にいい事をするって気持ちがいいな、と喜びを噛みしめていたので、


「…パフィちゃん、あれは一体何なのじゃ。ワシ今までに感じた事のない恐怖を感じたんじゃが。」


「クズミさん。その感覚は正しいです。コンヨウさんってなんか社会全体に憎しみを抱きながら生きている節がありますので。

ああなった時は素直に言う事を聞くのが吉です。」


などと2人がコソコソ話していた事については知る由もなかった。

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