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008_心配してくれる人達とスキルの成長

「全く、あなたという人は。どうしてあんな無茶をしたのですか?」


「えっと、必要な事をしただけですけど。」


僕は確か、ドクさんの家で意識を失って…でもなんでここに女神さんがいるんだろう。

僕は目の前にいる銀髪、銀目の背中から羽が生えた少女の存在に疑問を抱きながら彼女の質問に受け答えする。

少し呆けた顔をした僕の心情を察したのか、女神ノーラさんは現状について説明してくれる。


「今、私はあなたの夢の中にいます。現実のあなたは眠っているだけですから心配しないでください。

しかし転生初日にアフターケアに駆り出されるとは夢にも思いませんでしたよ。」


「えっ!それは何というか。すみませんでした。」


「いえ、構いませんよ。それよりもあなたの事です。

初日から無茶をしましたね。転生前の様子から平気だろうと高を括っていた私にも責任はありますが。

今回の事で学んだと思いますが、あなたのスキルは決して無限に使えるものではありません。

目の前の人達全ての飢えをスキルで満たそうなんて考えるのは今後は控えて下さい。

そうしないとまた死ぬ事になりますからね。」


ため息をつきながら語る女神さんに僕は頷くしかなかった。

その様子を見た女神さんは自分の言葉が通じた事に満足したのか、話を切り替える。


「では、あなたも反省した所で、今回は業務連絡です。

本当はもう少し先にお話しする予定だったのですけど、あなたが初日から条件を満たしてしまったので早速の出番と言うわけです。

あなたのスキルの経験値が必要量に達しましたので、新たにスキル強化が行えるようになりました。」


「へっ?スキル強化…ですか?」


「はい、元日本人のあなたなら大体予想はつくと思いますが、簡単に言えばスキルを使用をすればスキルを便利にできますよ、と言うものです。」


「はい、おおむね予想通りです。では具体的には?」


「あなたのスキル『食物生成(焼き芋)』を強化する為の項目はこちらのカタログになります。

ちなみにこれは強化ポイントです。新しいスキルの習得には使えませんので悪しからず。」


そう言って女神さんは僕に一冊の本を渡してきた。

なになに、結構たくさんの項目があるな。調理法追加に特殊効果付与、それからこれ便利そうだな。でも一応内容を確認してみるか。


「女神さん、質問いいでしょうか?」


「どうぞ。」


「この『調理法追加』って言うのは、ふかし芋と茹で芋と干し芋だけですが揚芋は無いんですか?」


「それは材料に油を使っているので不可です。使えるのは水までですので。」


「なるほど茹で芋のゆで汁も一緒に出してお湯も使い放題とかは可能ですか?」


「出来なくはありませんが何に使うんですか?」


「水が必要な時に便利かなって。」


「あぁ~、そういう使い道もありますね。今回は調理法追加にするんですか?」


「いえ、これは次回にする予定です。今回気になっているのはこの『調理工程の指定』って言うやつです。」


「え?これですか。これは今まで完成品しか出せなかったものを途中の段階で出せる様になるというだけですよ。

まぁ焼き芋のアレンジレシピで半生にしたい時とかには使えますが。」


「じゃあ、こういう使い方は出来ますか…」


「ふむふむ…確かに可能ですが、よくそんな事思いつきますね。」


「まぁ、この程度思いつかないと生きていけない環境でしたからね。どうやって食べ物を確保するか、如何に多くフードロスを出して懐に収めるか、そしてそれを如何に咎められない範囲で行うか。毎日が頭脳戦でしたから。」


「うっ!ごめんなさい。その話はもういいですから。あなたはスキルでお腹いっぱい食べる事だけ考えて下さい。」


アッ!女神さんが泣き出した。言われなくてもお腹いっぱいになるために頑張りますよ。しかし相変わらず栄養状態完璧な見た目だな。なんかまた殺意が沸いてきた。

おっといけない。今回は女神さん何も悪い事してないのに。それじゃ決定しますかね。


「じゃあ、女神さん。今回は調理工程の指定でお願いします。」


「はい、分かりました。ではスキル強化を実行します。目覚めた時にはスキルがバージョンアップされていますので。」


「はい、ありがとうございます。」


「それから今回はチュートリアルでしたので私が来ましたけど、次回からは強化できるようになったら自動通知になります。

今回みたいに夢の中で設定という事になりますのでよろしくお願いします。」


「はい、分かりました。質問があった場合はどうしたらいいですか?」


「マニュアルも一緒に置いておきますのでそれで問題ないかと。ではそろそろ起きましょうか。お連れの方も心配しているようですし。」


こうして僕の夢が終わり、再び目を覚ます事となった。


「あっ!コンヨウさん…よかった!よがっだ~~~~!!」


目の前には涙でぐちゃぐちゃになったパフィさんの顔がドアップで映し出されていた。

そして僕が目を開くとそのまま泣きながら抱きついてくる。本当に心配かけて申し訳なかったな。

でもパフィさんは女の子なんだから慎みとかそういうものを持った方がいいよ。幸い僕はケモナーじゃないからそういう感情は湧かないけど。まあそれはパフィさん側からも同じか。

僕は泣きじゃくる彼女の背中を優しく撫でながら落ち着かせる。するとその様子に気づいたドクさんもこちらへとやって来る。


「おっ!よかった。目が覚めましたか。」


「はい、ご心配をおかけしました。あのここはどこで、僕はどのくらい寝ていましたか?」


「ここは私の家であなたが寝ているのは私の布団です。そしてあれから1時間ほど経過したところです。」


「そうですか。ありがとうございます。ドクさんには随分とお世話になりました。」


「いえいえ、あなたは命の恩人ですから。それよりもパフィさんを褒めてあげて下さい。

あなたが倒れてからずっとあなたの事を看ていてくれたんですから。」


ドクさんが控えめな笑顔を浮かべながら、パフィさんに視線を向け、そう教えてくれた。

本当にパフィさんといい、ドクさんといい、お人好しだな。僕は今も僕にしがみつくパフィさんに視線を落とす。


「パフィさん。僕の事看ててくれてありがとう。もう大丈夫だからね。」


「うぐ~~ッ!はいっ!!はいっ!!」


その後、パフィさんを落ち着かせた後、暫く休ませてもらい、暗くなる前に2人で家路に着いた。

帰る前にドクさんには無茶をしない様にと散々説教をされたし、パフィさんは暫く僕にしがみついて離れないし、お陰で別の意味でヘトヘトになった。

でもなんだろう。人に心配されたり怒られたり抱き着かれたりしたのは本当に久しぶりで…何故か胸が暖かくなった。

これが本当の人の温もりなんだなっとパフィさんのフカフカの毛並みを堪能しながら思う僕なのであった。

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