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070_暗い本性

「ラビリさん。例の件、どんな感じですか?」


「3日もあれば用意できますわ。値段については厳密には言えませんが1キロ300フルールくらいでしょうか。それはさておき、お願いですからいきなり『芋文』を飛ばすのは止めて頂けるかしら。」


「……」


これは、クズミ様を無事奪還した次の日の話。

僕はパフィさんと一緒にラビリさんの下へとやって来ていた。

ちなみにクズミ様はペテロさんと一緒に商業ギルドに行ってもらっている。


さて、目の前のラビリさんの右手にはサツマイモががっちりとホールドされているわけだけど、これは先ほど言及された通り、僕の作った『芋文』だね。

内容は『大豆を取り敢えず1トン欲しいんですけど、どのくらいお値段と時間がかかるか教えて下さい。』である。

なんか、ラビリさんは疲れた顔をしてるし、パフィさんは僕の事をジト目で見て来るし。

変だな~、これって大豆製品が手に入れる為の最重要事項なのになんで二人の反応は冷ややかなんだろう?

僕が頭に疑問符を浮かべていると、呆れた様子でパフィさんが答えてくれた。


「コンヨウさん。前にも説明しましたが、『芋文』はコンヨウさんのスキルの中で一番バレちゃいけない事の一つなんですよ。誰がいるか分からない場所に使って見つかった時のリスクを考えて下さい。」


なるほど、そういう心配をしていたのか?では考えてみようか……


「考えた結果、危険は特にないって結論に至りました。」


「はぁ!!」×2


二人が僕の結論にもの言いたげな態度で抗議の声を上げる。

えっと、別に僕変な事言ってないんだけどね。仕方ない、思考の開示をするとしますか。


「よく考えて下さい。何も知らない人が『芋文』と僕を結びつけるのは実質不可能ですよ。

だってスキルって基本的に自分の目の届く範囲でしか使用出来ないですから。

だから僕のスキルの特性を知らない人が見ても怪奇現象以外の何者でも無いはずなんですよ。」


「………」×2


まぁ、ここまで言えば分かるよね。僕だって何も考え無しでスキルを使ってるわけじゃないんだよ。

でも文章で送り主が僕だとばれる可能性もあるので、今は自分の名前や身元が分かる内容は書かない様にしている。

もっとも僕しか『芋文』を使える人間はいないんだから、そんなモノ必要ないんだけどね。

さて、二人が黙り込んでしまったけど、話を進めないとね。


「まぁ、僕の事はそんなに神経質になる必要もないって事で。それより喫茶店勝負の方はどうなっていますか?」


「えっと、そうでしたわね。まだ途中経過ですが昨日とうとうこちらが逆転致しましたわ。

勝負は来月の第一週までの売り上げの結果ですので、後一週間ほど残っておりますが、このままいけば間違いなく勝てるでしょう。」


「それは一安心ですね。ではぼくは引き続きこちらの護衛をすればいいでしょうか?」


「うん、お願いね。今日もウェイトレスさんとしてしっかりね。」


「うぅ~、ウェイトレスさんをするのはいいですけど、お姉様達が着せ替え人形にしようとするから疲れます。やっぱりお客さんとして護衛任務にあたりたいです。」


「いいけど、その間の飲食代はパフィさんが支払うんだよ。」


「うぅッ!結構買い食いしてたから今貯金が厳しいです。」


「えっと、僕の護衛のお給金も昨日受け取ったよね。それでも厳しいの?」


「………」


あっ、これは内緒にしておきたいタイプの話みたいだ。パフィさんって都合が悪い事があると目が泳ぐんだよな。

まぁ、今回についてはお金の使い方を聞いた僕が野暮だったかな。これに関してはスルーして話を進めよう。


「まぁ、どうしたいかはパフィさんに任せるよ。

ちなみにラビリさん。この店での護衛料はパフィさんに支払ってますよね。」


「勿論ですわ。あのデブ叔父の行動を見れば何かちょっかいを掛けてくる可能性があるのは火を見るより明らかですもの。」


「なるほど、分かりました。じゃあパフィさん。やり方は任せるからお店の護衛お願いね。僕はちょっと出掛けて来るから。」


ここでパフィさんが少し沈んだ表情になって僕に問いかける。


「あの…コンヨウさんの護衛はいいんですか?」


「今回はパフィさんは出向扱いだから気にしないで。僕は敵情視察も兼ねて、ちょっとスイーツでも食べに行くから。」


「このタイミングでですか!!」


この一言に何を言いたいのか察したラビリさんが目を見開く。そりゃそうだよね。だってわざわざあの禿デブウサジジイのところに単身で赴くって言ってるんだから。


「このタイミングだからこそですよ。数少ないスイーツショップが潰れる瞬間を拝んでおきたいと思いまして。」


「悪趣味ですわね。」


「相変わらず発想がクズです。」


「ハハハァァ~~~。じゃあそういうわけだから下々の者がせこせこと働いている間に、優雅にティータイムでも楽しむとしますかね。」


「久しぶりに叔父以外の人間を引っ叩いてやりたいと思いましたわ。」


「同感です。」


あれ~、おかしいな~。僕はラビリさんに代わってあの禿ウサジジイを煽りに行ってあげようとしてるだけなのに。


それにようやく単独行動が出来るようになったし、あのジジイは今日中に再起不能にしておかないと。きっと明日にはラビリさんや『ラビアンローズ』にちょっかいを掛けて来るから。


なんでこんな事を思ったかって?だって今の状況ってあの禿にとって本当にギリギリの状況なんだもん。

まず、スイーツ対決で負けている。現当主のコービットさんが快復傾向にある。そして何よりコービットさんに手を掛けようとした事がバレかけている。コービットさん毒殺未遂の件についてはまだ状況証拠だけだけど、疑われるってだけでも後継者争いにとっては致命的だ。疑惑が出る前にケリをつけたいと思って然るべきだろう。


この状況で僕が禿の立場なら、最初に狙うのはコービットさんだけどそっちはヒヨリさんを始め沢山の使用人に守られているので今は無理。

次に『ラビアンローズ』だけど、ここはパフィさんに守られているから問題ない。

最後にラビリさんだけど、現状狙えるのはここしかない。だって本来の目的はコービット商会を手に入れる事であって、スイーツ対決に勝つ事じゃないんだから。

そうなるとまずは後継者のラビリさんを消して、改めてコービットさんを狙うのが一番確実だ。

でもラビリさん自身にも当然護衛がいるからそれ相応の戦力が必要になる。

最低でも今日中は戦力を整える必要があるから襲撃は明日以降。いや、この切迫した状況なら間違いなく明日、襲撃を決行するだろう。

あの禿を叩くなら今日しかない。


さて、ちょっと本気(・・)になりますかね。僕の不労所得に手を出そうとした愚か者をこの世から消さないと。だってこの世界の法律は身体的、財産的(・・・)に被害を被った場合には正当防衛が認められるんだから。

こんな暗い笑みを浮かべている姿はパフィさんには見せられないな。

僕はパフィさん達に背を向けながら、自分の本性(サガ)にウンザリするのであった。

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