069_閑話_その頃悪党達は
コンヨウ達がカジツ亭でクズミの介抱をしている頃。
ナプールの一等地にある某邸宅にて。
「おの~~れ~~!!!何故吾輩の思い通りにならん!何故吾輩の喫茶店『ゴージャスずんだ』があの小娘の店に勝てん!」
ズンダダ=コービットは誰もいない自室で狼狽していた。あまりに予想外の出来事が起こり過ぎたからだ。
「吾輩の店の方が豪華だし、パティシエだって小娘の店から引き抜いた凄腕、残った小娘側の従業員に対しての妨害も怠っていない。
にも関わらず、小娘の店は潰れるどころか売り上げを伸ばしている。この前の後継者会議で見せた小娘のクソ生意気な顔を思い出すだけで、はらわたが煮えくり返りそうだ。
まったくコービットを継ぐのは本来男子である吾輩なのだ。馬鹿兄が使い物にならなくなれば、吾輩が継ぐのが道理だというのに何故それが理解できん。
吾輩がコービット商会を手に入れた暁には、あの貧乏メイドの血を引く妹共々、吾輩の専属メイドにしてお情けを掛けてやろうと思ったがもうやめだ。
あんな阿婆擦れ姉妹、つまみ食いした後に娼館に売り払ってくれるわ。
…しかし、状況は宜しくない。せっかく幹部どもを金で買収したというのに全く役に立たない。喫茶店勝負など無しで吾輩を後継者にすれば、こんな面倒くさい事にならず、甘い汁を吸わせてやったというのに。
やれ、あの馬鹿兄の意志を覆すには相応の理由が必要だ、やれ、後継者としての器を見せてもらいたい。結局吾輩からより多く搾り取りたいだけであろう。全くこれだから欲の皮が突っ張った老害は嫌になる。
そもそもどこでおかしくなった。部下の報告によると『スイートポテト』と言う見慣れない菓子を売るようになってから売り上げが急上昇したと言っておったな。そしてその菓子を売り出されるようになってから、毎朝シマウマの獣人が店に出入りする様になったと。
それに吾輩がスイーツの材料を買い占めようとした時もそのシマウマが先回りしていたと聞く。
つまりシマウマの獣人が『スイートポテト』を持ち込んだ上で小娘に協力しているという事か。
しかし逆を言えば、そのシマウマ獣人を買収すれば吾輩の勝利は揺るぎないものになるという事だ。
吾輩の財力を持ってすれば貧乏シマウマ如き簡単に懐柔出来よう。だが念には念を入れて、小娘の店もズタボロにしておいた方がいいな。」
この瞬間、ズンダダは起死回生を見出したとばかりに舌なめずりをする。
「そうと決まれば即行動だ。確かゲッスのところに子飼いのならず者がいたな。
少し高い出費になるがやむを得まい。なぁに、コービット商会を手に入れればすぐに回収できる出費だ。あの馬鹿兄とその出来損ないの売女娘どもがこの世からいなくなれば吾輩の天下だ。
吾輩の優雅な人生設計の邪魔は誰にもさせはしないぞ。ガァ~~ハハハハハァアア~~~~!!!」
醜く肥え太った愚者の馬鹿笑いが静かな月夜に騒音となって鳴り響くのであった。
同じくナプールの一等地の別の邸宅にて。
「どういう事だ!黒犬組がクズミを逃がした?出資者を名乗るシマウマ獣人が残りの100万の金策に成功した?クマの小娘を人質に取ろうとしたら返り討ちにあった?
意味が分からない?何故こんな事になっている?」
ゲッスは部下から挙げられた報告書を読みながら困惑していた。
地上げ屋に孤児院を買収する様に命じ、それを利用してお人好しでおめでたい神父に借金を負わせ、そのカタとして見目麗しい旬の果実のようなリス獣人の少女を手中に収める。
その計画は九分九厘成功すると思っていたのに、現状は芳しくない。
「そもそも、どこから計画が狂ったんだ。あのシマウマ獣人の仕業か?思い返せばあのシマウマ獣人が孤児院に出入りする様になってから、全てがおかしくなった様に思える。
孤児院で干し芋を販売する様になったのもシマウマが現れてからだ。そう言えばあのシマウマ、私のスフィーダたんに色目を使っていたな。
奴はきっとマイスウィート女王様に口の端に上るのも汚らわしいあれこれをしようと企む不貞の輩に決まっている。そんな事、お天道様が許してもこのゲッスが許さない!スフィーダたんのお御足は私のムスコを踏みつけて頂く為にあるのだ!
ダメだ、ゲッスよ、冷静になれ。今は股間にテントを張っている時ではないぞ。
まず借金を返済される前にシマウマ獣人を始末するところからだ。いや、いっそ利用した方がいいかも知れんな。あの男も私と同じくスフィーダたん目当てなら、むしろ同志として迎え入れた方が得策かも知れない。私の専属でなくなるのは少し癪だが、スフィーダ女王様が他人を甚振る姿を見るのもそれはそれで興奮しそうだ。
よし、シマウマについてはその路線で行こう。
後はシマウマ獣人の仲間だな。確か黒髪の人族の小僧とクマの小娘とローブを被った男?が二人、それから鳥獣人の女がいたな。
確か奴らはコービットの娘が経営する『ラビアンローズ』とか言う喫茶店に良く出入りをしていたはず。おそらくシマウマの資金の出所はそこからだろう。
あそこは確か叔父のズンダダと勝負中だったな。ならばズンダダを利用して、残りの連中を潰させよう。そうすればどんな結果になろうとコービット商会の後継者争いのいざこざとして片が付く。
その間に私は改めてクズミを始末し、そしてスフィーダたんを手中に収め、縄で縛られた後にあの細く滑らかで力強い御手でスパンキングして頂くのだ。
フハハハハハッハハハッハハアアア~~~~~~ッ!!!もう誰も私は止められないぞ!!!」
穢れた嗜好を満たす為に、薄汚れた狐が涎をまき散らしながら動き出す。
奇しくも、二人の悪党は同じ方向に向かって動き出すのであった。
そして何故かターゲットにされてしまったシマウマ獣人はその事を知らない。




