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068_異世界人って結構いるもんね

「よっし、これでお醤油にお味噌、それからお豆腐が作れるぞ。まずはお味噌汁からだな。それから…」


クズミ様が持つスキル『大豆製品加工』のお陰でとうとう和食の再現に取り掛かる目途が立ちウキウキ気分の僕は、この胸の高鳴りを抑えつつ部屋に戻ろうとしていたのだけど、


「コンヨウさん!ちょっとお話があります!」


「………」


パフィさんが突撃してきた。なんか凄い勢いなんだけど、怒ってるのかな?でも怒られるような事をした覚えなんかないしな~。

と沈黙したまま少し思考の坩堝に入っていると、待たせ過ぎたみたいなのか、さらに怒ったような表情で、


「ちょっと!人の話聞いてますか!」


「うん…ごめん。話って何?長くなる様なら部屋に行こうか?」


「…そうですね。お願いします。」


こうして、なんだか怒った様子のパフィさんを連れて部屋へと入る僕。

僕はパフィさんに椅子を勧め、テーブルの上に干し芋を出す。

パフィさんもそれに応じ椅子に座り、干し芋をかじるけど、一向に話を切り出す気配が無い。


「えっと~、パフィさん。お話って何かな?」


当然ビビりの僕はその沈黙に耐えられなくなって口を開くわけだけど、先ほどのちょっと怒ったような表情から一転、パフィさんが不安そうな顔で言葉を紡ぐ。


「あの~、コンヨウさん。クズミさんのスキルを知った時に凄く喜んでましたけど、どうしてですか?」


「ん?何でそんな事気になるの?」


あれ?想像していたのと違う。さっきの雰囲気だと怒られるのかと思ってた。ほら、病み上がりのクズミ様相手にヤクザもビビるメンチを切っちゃったから。

でもそうじゃないみたい。いや、お醤油とかお味噌が手に入るって知ったら喜ぶのが当たり前だよね?


「いいですか。ぼくが知らないだけなのかも知れませんが、少なくともこの辺ではクズミさんが言ったような大豆製品は存在しません。

なのにコンヨウさんは知っていた。どうしてですか?」


「どうしてと言われてもね~。ほら、僕って記憶が欠けてるし。」


「それって本当ですか?コンヨウさんに会ってからずっと思ってましたけど、記憶が欠けているにしては物知り過ぎる気がします。」


あちゃ~、そりゃ疑われるよね。我ながら行動が不自然過ぎるもん。でも記憶喪失の人間の思考パターンとか分からないし、仕方無いよね。

でもパフィさんの声が少し震えてる気がするけど、どうしてかな?


「コンヨウさんは『異世界人』なんですか?」


アッ!そういう事ね。パフィさんは僕の出自を気にしてたわけだ。でもあっさり『異世界人』なんて口にするって事は、こっちで異世界転生は一般的なのかな?

よし、その(てい)で話を進めてみよう。


「うん、そうだよ。結構いるもんね。『異世界人』って。」


「いませんよ!コンヨウさんが史上初ですよ!なんでそんなにあっけらかんと告白するんですか!!」


あれ~~ッ。おかしいな~。パフィさんが知ってるくらいだからたくさんいるのかと思ったのに~。

さて、今から否定するか。いや、こんなにあっさり言っちゃったんだし、「やっぱ今の無し。」とか言っても信じて貰えないよね。

パフィさんの方も確信があって言ったみたいだし。まぁ別に隠すような事でも無いしいいか。それに大事な事で嘘をつきたくないしね。


「えっと、別に隠すような事じゃないと思ったから言ったんだけど。もしかして拙かったかな?」


「拙いに決まってます。どうしてあなたはそんなに自分の事に無頓着なんですか!!」


「さっきから怒られてばっかりだけど、どうしちゃったの?」


僕にとっては『異世界人』云々よりパフィさんに怒られている理由の方が気になる。

僕がそう口にすると今度はパフィさん、なんかすっごく落ち込んだ様子で話し始めた。


「別に怒ってないんです…ただ、不安なだけなんです。

コンヨウさんがこの世界の人間じゃないって確信を得るたびに、ある日突然ふらっといなくなってしまうじゃないかって。」


なるほど、『異世界人』だから元の世界に戻るのではないかって不安になったわけだね。


「ちょっと!コンヨウさん!ナニ笑ってるんですか!」


いや、笑わずにはいられないよ。


「ごめん。でもそれってつまり。」


「なんですか?」


「僕と別れるのが嫌って事なのかな?」


「……はわァッ!!!」


ヤバい、真っ赤になって手をワタワタさせながら狼狽えるパフィさんを可愛いと思えてしまう。

どうやら僕は確実にケモナーへの道を歩んでいるようだ。

そんな事を考えて笑みを深めながら、今しがた疑問に思った事を口にする。


「ところでパフィさん。どうして僕の事を『異世界人』だと思ったのかな?」


「えっと…それは…」


パフィさんが今度は困り果てた様子で視線を泳がせる。

この反応に僕は思わずため息が出てしまう。


「はぁ~…パフィさん、別に言いたくないなら言わなくていいんだよ。

前にも言ったけど僕達は対等なビジネスパートナーなんだ。

お互いが果たすべき義務を果たす、それ以外でも可能な限り協力する、嫌な事は絶対にしない、そう約束したよね。

だから嫌な事はちゃんと嫌だと言えばいいだけなんだよ。」


一応フォローしたつもりなんだけど、当のパフィさんはさっきより困った顔をする。


「実は…この情報を得た経緯を話すと他人の秘密にも触れてしまう事になりまして…」


「あぁ、そういう事ね。じゃあ聞かないでおくよ。」


「でも、それってすっごくフェアじゃないですよね。だって一方的にコンヨウさんの秘密を暴くような真似をしたんですから。」


なるほど、真面目なパフィさんらしいね。確かに今の状況だとどっちにも義理立てするって出来ないもんね。じゃあこうしよう。


「じゃあ、パフィさん。僕も一方的に秘密を暴く真似をするよ。僕の質問に一つだけ答えてくれるかな。」


「はい、分かりました。」


「僕が『異世界人』だって知っているのは誰かな?パフィさんが知る限りでは教えてくれるかい?」


「えっと…ぼくとドクさんとラビリさんです。」


「なるほど、つまり情報元はラビリさんのスキルか。」


「エッ!!なんで分かったんですか!!」


「コラ!パフィさん。ここはバレたとしても素知らぬ顔をしないと。もしかしたらただのカマかけだったかも知れないでしょう。」


「アッ!もしかしてぼく、嵌められましたか?」


「いや、今回についてはカマかけじゃないよ。

一応理由を説明すると、僕は今まで一度も自分が『異世界人』だって言ってないんだけど、そうなると一番疑わないといけないのはスキルだよね。

ドクさんのスキルは『嗅覚強化』だし、仮に他のスキルを持っていたとしても部外者であるラビリさんにそれを教える理由が無い。

つまり残された可能性はラビリさんのスキルだけ、っと言うわけだよ。ちなみにラビリさんのスキルは情報収集系だね。」


「うわぁ~、そこまで分かるんですか…ぼく一生コンヨウさんに勝てない気がします。」


「はっはっは~、経験の差だよ。パフィさんもその内出来るようになるよ。」


「いえ、ぼくはいいです。そっちはコンヨウさんに任せますから。」


「ほう?いいのかな?僕が嘘をつくかもよ。」


「大丈夫です。そういう事を言う人は嘘をつきませんから。」


「ぷっ!」×2


懐かしい遣り取りに僕もパフィさんも思わず吹き出す。

この遣り取りって会った初日にやったんだよな。


「はぁ~、ほんとに最初にこの世界で会ったのが君でよかったよ。」


「それは何よりです。それだけでも家出した甲斐があるってものです。」


こうして僕とパフィさんは眠くなるまで他愛もない話をし、その後同じベッドで朝まで眠った。

言っとくけど本当に一緒に添い寝しただけだからね。僕はケモナーになりつつあるけど、ロリコンになるつもりはないから。

隣に眠るパフィさんのモフモフがとっても暖かくて、その日は久しぶりにグッスリと眠れたと思う。

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