056_お勉強の事でマウントを取ってくる人は嫌いです
「あの子は大馬鹿者だ!ゲッスやズンダダをどうにかしたいなら私達に任せればいいんだ!」
勝手に出て行ったドクさんが苛立ちを募らせながら声を荒げています。こんなに怒ったドクさんを見るのは本当に初めてです。
ぼくが呆気に取られて言葉を失っているところに、不意にラビリさんの声が飛んできました。
「あの、あなた達は何者なのですか?」
「……」
「えっと、どういう意味ですか?」
ラビリさんの質問に黙り込むドクさんと、意味が分からず聞き返すぼく。
それに対して、ラビリさんは一呼吸置き、意を決して言葉を紡ぎます。
「『スカンク族』、『ゼロス=ブラームス』、『バルクフェルド=カウズ』、そして『マードック・ザ・ワイズマン』。」
「…ご存じだったんだね。」
「はい。」
「ちなみにエレフさんについても?」
「勿論ですわ。でもここで言うべきではないでしょう。」
「そうだね、感謝するよ。その情報はどこで?」
「私のスキル『ワード検索』ですわ。」
「…そうか。」
「???」
ラビリさんとドクさんがぼくには分からない会話を繰り広げています。
ぼくが置いてけぼりになっている事を悟ったドクさんが説明をしてくれます。
「パフィさん。今出てきた名前だけど、『スカンク族』については大丈夫だよね。」
「はい、ぼくの種族です。」
「他の名前はそれぞれ、ゼブラさんとバックルさんの名前、それから私の二つ名だよ。」
「それから、ゼブラさんは『奇跡の配達人』、バックルさんは『グレプの大盾』と言う二つ名をお持ちですわね。」
「えっ!!」
「ほう、凄いね。『ワード検索』と言うのはそこまで分かるのかい?」
「えぇ、検索ワードさえあればこの世界から知識を検索できる。それが私のスキルですわ。」
「そうかい、ちなみにコンヨウ君は調べてみたのかい?」
自らのスキルの正体を明かしたラビリさんに、ドクさんが質問を投げかけます。
ラビリさんはドクさんへの質問がはぐらかされた事に少し不満を覚えつつ、ドクさんの質問に言い淀みながら、決意を秘めた瞳で返答します。
「…検索不能でしたわ。」
「えっ!」×2
「この世界は彼の事を知りませんでしたわ。これが示すところは一つ。」
「……」×2
「彼は…『異世界人』ですわ。」
「!!!」×2
余りに荒唐無稽な内容にぼくもドクさんも黙り込みます。
だけど、それならコンヨウさんの色々と不可解な部分も納得がいきます。
おそらくドクさんも同じ考えなんだと思います。驚きながらも納得している感じです。
そんなぼく達に今度はラビリさんの方から質問が飛んできます。
「先ほどコンヨウさんが『芋を自分の家の机作っておく。』と仰っていましたが、それはどういう意味なんでしょうか?」
あぁ~~ッ!コンヨウさん!変なところで抜けてるんだから!コンヨウさんのスキルはトップシークレットなのに~!
そんな感じでぼくとドクさんが頭を抱えていると、目の前の空間が歪み、更なる爆弾が投下されます。
いきなり虚空に『文字が刻み込まれた生芋』が出現したからです。
その光景にラビリさんは目を見開き、ぼくとドクさんは机に両手を打ち付けたい衝動に駆られるくらい愕然とします。
そしてぼくとラビリさんが呆気に取られている中、いち早く復活したドクさんが文字入りの生芋を素早く回収して内容を確認します。
「なになに、『これからメッセージを送ります。長文なので順番に並べてください。』、っだそうだ。」
その直後、文字が刻まれた生芋がドンドン送りつけられてきました。それを合わせると、
『こちらコンヨウ。今、マイトさんに会って色々と打ち合わせをしています。僕は少しの間、商業ギルドでお世話になります。
どうやらゲッスは完全に黒みたいですけど、今まで証拠が無くて捕まえられなかったそうなんです。ですので商業ギルドは今回の件に対して非常に協力的です。
ギルドとしては証人としてクズミを抑えたいそうなので、そちらの探索はドクさんとペテロさんにお願いします。
クズミを確保したら取り敢えずマイトさんに連絡をお願いします。
それからパフィさんは『ラビアンローズ』の護衛をよろしくね。後で『ガス強化』が付与された『極上甘納芋』を送るからパフィさん以外は食べない様に注意してね。
パフィさん、きっとズンダダに残された策としては、もう店を直接物理的に潰す事以外残ってないだろうから警戒を密に。それから絶対に無茶はしない事。
あと、ゼブラさんには引き続き集落とナプールとの往復をお願いしますけど、ナプールにいるときは基本的に孤児院のみんなと行動するように伝えておいて下さい。
何かこちらから連絡したい事があったら僕が書類を作った机の上に『芋文(コンヨウ命名)』を送るのでそこで待機という事で。
それから今回ラビリさんにスキルを晒したのはわざとだからね。うっかりしたとかじゃないからその辺勘違いしないでよね。(ツンデレ風)
あとラビリさんに連絡です。ウチの集落のお医者さんに診察してもらう様にお願いしたからお父さんを看て貰って下さい。
最後に方法は任せますのでそのお芋はしっかり食べちゃってくださいね。では、皆さん、張り切って作戦頑張っていきましょう!!
PS.パフィさんへ、どれくらい文字が読めたかな?』
「余計なお世話です!!半分も読めてませんよ!!!」
「・・・ははぁ。」×2
『芋文』の余計な一言にぼくは怒りの咆哮をあげ、ドクさんとラビリさんは乾いた笑いを漏らします。そして、
「コンヨウさん~~!!ちっともお別れする気ないじゃないですか!!」
「全くあの子は、あんな思わせぶりな事をしておいて、こんな落ちですか。」
「えっと、取り敢えず問題が一つ解決しましたけど、今の現象について説明して頂けませんか?」
「あぁ、実は……」
「……えっ!サツマイモをスキルで生成!そんなスキル聞いた事がありませんわ!!」
「あるんだからそれは仕方ありません。それよりこのお芋どうしますか?20個以上あるんですけど。」
「取り敢えず孤児院行きかな。」
こうして息を吹き返したぼく達はこの日は解散し、明日に備えるべく眠りにつくのでした。
そしてぼくの右手には『極上甘納芋(ガス強化付与)』が握られていました。




