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054_最強の焼き芋と争いの火種

「やっと目を覚ましましたね。心配したんですよ。」


「……」


僕は『ラビアンローズ』で気絶した後、宿屋の寝室に運ばれたようだ。

泣き出しそうな勢いで僕にしがみつくパフィさん。心配そうに僕の顔色を確認するドクさん。僕が起きた事にホッとするゼブラさん。そんなみんなの様子を少し引いたところから優しい目で見守るペテロさん。

さて、女神様にはあんなことを言われたけど、僕がやる事は変わらない。まずはみんなを安心させないとね。


「ごめんなさい。どうやら少し根を詰め過ぎたみたいですね。もう大丈夫です。」


「うん、確かにさっきより顔色はいいけど、それでも万全ではないよね。」


「まぁ、何もないなら一安心だ。明日一応ネイチャンさんに見てもらうから今日は安静にしてろよ。この後俺っちは一旦村に戻るからよ。」


「…無事で何より。」


「……」


僕の言葉にドクさん、ゼブラさん、ペテロさんは一応安心したみたいだけど、パフィさんだけはふくれっ面だ。

怒っているのは分かるけど、一体何に怒ってるのかな?


「コンヨウさんが朝に言った事、そっくりそのままコンヨウさんにお返しします。」


「えっ!」


「いいですか!仕事は独りでやってるんじゃないんです!!コンヨウさん一人が頑張って倒れたんじゃ世話ないです!!」


全くごもっともだ。取り敢えずここは一つ、


「まことにご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした!!」


恥も外聞もかなぐり捨てたパーフェクト土下座を決行。だってパフィさん、怖いんだもん。ガクブルと震える僕に対してパフィさんの目が冷たい。


「コンヨウさん…もしかしてふざけてます?」


「滅相もございません。心の底から反省しております。これはその印です。どうぞお受け取り下さい。」


「アッ!コンヨウさんのおバカ!!」


そう言って僕が『甘納芋』を差し出すとパフィさんは顔を真っ青にする。

しまった。つい、いつもの癖でスキルで焼き芋作っちゃった。今の僕って確か一日の生成量の限界近くまで作ってるから、一つ作るだけでも結構疲れるはずなんだ。

でもおかしい、今回は本当に全然疲労感が無い。これはちょっと確認が必要だね。

僕は頭の中で自分のスキルの状況を確認する。今まで言う機会が無かったから言ってなかったけど、頭の中で念じるとスキルの強化具合とか生成量の残量とかが分かるようになってるんだよね。


スキル強化状況…『調理工程の指定』『調理法追加』『生成場所指定』『ガス強化』

New『生成量増加5000』…芋の生成量が一日5000まで増加

New『調理工程の詳細設定』…『調理工程の指定』の内容をより詳細に設定できる。

New『仲間との食卓』…仲間に対するスキル使用を負担無しで行えるようになる。

New『食物生成(極上焼き芋)』…今まで以上に美味しい極上の焼き芋を作れるようになる。ただし焼き芋のみ。(オンオフ可、栄養満点)

New『冷めない魂』…調理した芋料理が冷めなくなる。(こちらもオンオフ可)


New特殊スキル『運命神の加護』…なんかいい事あるかも。


生成量残 3091/5000


うわぁ~~!凄いスキルが強化されてる。どれも超優秀。でも最後の特殊スキル、ざっくりし過ぎじゃない。

取り敢えず状況は理解できた。でもまずはパフィさんを宥めるところからだね。


「パフィさん、どうやら大丈夫みたいだよ。どうもさっき倒れた時にスキルが強化されたみたいなんだ。」


「…確かに、顔色は良いですけど、でもあんまり心配かけないで下さいね。」


「分かってるよ。それより食べてみて。きっと驚くから。」


「分かりました??」


僕がいたずらっ子の表情で『甘納芋』を勧めるとパフィさんは頭に?マークを浮かべながらそれに応じる。


「では…凄い!割った瞬間にいつも以上に蜜が溢れています!味は…」


驚きの表情を浮かべながら、パフィさんは一気に『甘納芋』を食べきる。


……暫しの沈黙。そしてその表情は驚きから恍惚へと変化していた。


「はぁ〜、美味し過ぎます。この美味しさ、スイートポテト以上です。強い甘味なのに優しくて、ねっとり食感なのに口に纏わりつかず、存在感はしっかりあるのにしつこくない。まさに最強の焼き芋です。」


この感想に当然みんなは興味を持ったわけで、視線が僕の方に集まる。


「えっと、皆さんも食べますか?」


「勿論!!」×3


その言葉に応じる様に僕は『甘納芋』『紅音姫』『鳴子銀時』を生成する。

さて、みんなの反応はと言うと、


「この『鳴子銀時』。いつも以上のホクホク感に満足感。しかも優しさを損なわないままより強く繊細な甘さに進化している。」


「スゲー、『紅音姫』のしっとり食感に力強さと優しさを兼ね備えた甘味のパーフェクトバランスが更にワンランク上へと昇華されているぜ。」


「…『甘納芋』…パフィ殿の言う通り、まさに最強にして無敵。拙者、感服仕った。」


ドクさん、ゼブラさん、ペテロさんがそれぞれに感想を述べていく。

皆なんか凄い反応だね。そして普段無口なペテロさんって、喋ると武士なんだね。そして意外と甘いモノ好きみたい。

きっと本当は甘いモノたくさん食べたいけど恥ずかしくてカミングアウト出来ないスイーツ男子なんだね。

さて、では一通り感想も聞いてみんなが落ち着いたところで話を進めますかな。


「ところで、この焼き芋って販売しても大丈夫だと思いますか?」


………


タップリの沈黙。あれ、みんなの表情が険しい。そして発せられた言葉は、


「ダメに決まって(ます)(るでしょうが)(るだろうが)(いる)!!!」


である。えっ?美味しいのになんで?


「こんなもの売りに出したら、暴動が起きます。」


「うん、焼き芋をめぐって骨肉の争いが勃発するよ。」


「もしかしたら、闇取引とか転売行為も発生するかも知れないぜ。」


「…これはもはや、一種の兵器だ。これは仲間内だけの秘密にするべきだな。」


「いや!物騒過ぎるでしょう!!!」


みんなの滅茶苦茶な意見に僕のツッコミが唸りを上げる。

でも民主主義に負けて結局この焼き芋は仲間内だけで、しかも特別な時にだけ使用する事となったのである。解せない。

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