051_まさかこのスキルを獲得するとは…
「ゴメン、パフィさん。少し考えを纏めるから時間を欲しいんだ。5分後になったら一回声を掛けてくれるかな。」
「分かりました。あんまり根詰めないで下さいね。」
そう、心配そうな声で僕に語り掛けるパフィさん。多分今の僕は凄く険しい表情をしてるんだろうな。
無理もないか。考える事が山積みなんだもん。さて、早速スキル強化だ。あのスキルを取っておかないと安心してパフィさんを送り出せない。
そう考えながら僕は目を瞑り、眠りの世界に入る。
………
「コンヨウさん。5分経ちましたよ~!」
「ありがとう、パフィさん。じゃあ、書類を作るから30分くらい待ってくれる。」
「はい…分かりました。」
よし、チョッパヤでやったから5分でスキル強化が完了した。取ったスキルはこれだ。
ガス強化…食べると24時間おならの生成が3倍になる特殊な焼き芋を生成可能になる。
まさか、この強化を自分から求める日が来るとは夢にも思わなかったよ。
実はパフィさんの『ガス操作』の弱点として、前にもあった範囲攻撃である事以外に、連続使用が難しいというのがある。
これは体内のガスを使用する故に当然起こるガス切れが原因なんだけど、このガス強化はそれをカバーする為のものだ。
この効果はどの品種の焼き芋にでもつけられるみたいだから、パフィさんに渡す時は『甘納芋』にしよう。
さて、早速書類を仕上げるかね。この書類が上手く機能すればゲッスもズンダダもまとめてご退場願えるからね。
では、サクッと書いて早く干し芋売りの屋台に合流しないと。僕はポーチから紙とペンを取り出し、書類を高速で書く。
それから20分、思ったより早く書類が出来上がった。
「よし、出来た。パフィさん、これをマイトさんのところにお願いね。それから、これを食べて行って。」
そう言って、僕はガス強化を付与した『甘納芋』をパフィさんに手渡す。
何故かいきなり焼き芋を渡された事に怪訝な表情をするパフィさん。でもしっかり焼き芋は食べるのね。僕はすかさず理由を説明する。
「その焼き芋はガスを生成しやすくなるスキルが付与されたものなんだ。」
「えっ?それってつまり。」
「簡単に言えば、それ食べるとすっごいおならが出やすくなる。」
「えっ!!わぁあああああ!本当です!凄い勢いでガスが作られてます。『ガス操作』発動、出るな~出るな~。」
効果覿面みたいだね。まさかこんなに即効性があるとは。これって地味な嫌がらせをするときにも使えそう。
機会があればあの禿ウサデブジジイに食わせてみたいな。さて、話を続けよう。
「どう?それならガス切れは起きなさそう?」
「大丈夫そうですけど、いきなりおかしなもの寄越さないで下さい!凄い量のガスが生成されてますよ。」
そんなに凄いのか。こりゃきっと普通の人が食べたら屁こき虫扱いされるレベルだろうね。よし、気に食わない奴にはこれで復讐しよう。
なんかパフィさんがジト目になっているけど、また心の中を読んだな。
「ろくでもない事を考えている事くらい顔を見れば分かります。」
「……」
「さぁ、くだらない事やってないで行動に移りましょう。」
「…はい。」
こうしてパフィさんの冷たい合図と共に作戦開始。パフィさんを商業ギルドへと送り出した後、僕も途中で今日泊まる宿屋の手続きやら、買い物やらの用事を済ませながら市場へと向かった。
「やぁ、スフィーダさん、それからガキども。売れ行きはどうかな?」
「コンヨウ君。昨日に引き続き好評です。それから午後から焼き芋販売もする、って宣伝したんですけど、また来るって言ってくれるお客さんがたくさんいましたよ。」
「兄ちゃん、もう干し芋売り切れそうだよ。お客さん多くてちょっと疲れてきちゃったよ。」
「そっか、じゃあ午後もあるしガキどもはここで一旦休憩だ。焼き芋と串焼き持ってきたからそれでお昼済ませてくれ。」
「おっ!マジで!お兄ちゃん太っ腹!!」
「みんな~、向こうで食べましょう。」
「…コンヨウ君。」
「はい、スフィーダさんにもありますから。でもまだ休憩時間じゃありませんし、今は焼き芋一つで我慢して下さいね。」
みんな頑張ってるみたいで何より。僕は彼等を労いながらお昼ご飯を支給する。スフィーダさんにもあるから涎を垂らすの止めて下さい。
えっ!串焼きはアツアツで食べたい。仕方ないな~、じゃあスフィーダさんも休憩行っちゃって下さい。忙しくなったらヘルプお願いしますので。
などという遣り取りをした後、特になんの問題もなく干し芋の方は売り切れ。まぁ、昨日今日に販売員を始めたスフィーダさん達と前世で死ぬほどバイトしていた僕では客の捌き方が違うのだよ。
アッ、言ってなかったけど、僕ってコンビニ以外でもいろいろ接客関係でバイトしてましたので。こういう販売員はお手の物なんですわ。
販売員関係は良いんですよ。結構廃棄前の食べ物とか手に入るし、たまに試供品とかもくれたりする。飲食業はどうかって?クソ親父を思い出して正気を保てなくなるから駄目だね。
さて、どうでもいい事は横に置いておいて、都合よくスフィーダさん達を追い払えた事だし、焼き芋の仕込みをしますかね。
あらかじめゼブラさんが用意してくれていた木箱を10個セット、そして、
『食物生成(焼き芋)『紅音姫』200『甘納芋』300』
それぞれの木箱に焼き芋を50個ずつ生成。
今日生成したお芋の数、村で食べる分300、干し芋500、スイートポテト分50、そして今回の焼き芋500、パフィさんとスフィーダさん達に支給した分などその他が約20の計約1370個。
今日、生成出来るのが残り630個くらいだけど、何かあると困るので販売はあとプラス500個までに留めておこう。
では、お昼になった事だし、始めますかね。
「これより、焼き芋の販売を開始しま~す!宜しければお立ち寄り下さ~い!!」
僕のこの言葉をきっかけに周囲の空気が変化するのを感じる。
「おい、もしかしてあのスゲー甘い焼き芋売ってるっていう…」
「マジか!俺、気になってたけどあの時食べ損ねたんだよなぁ。」
「やった!またあの焼き芋が食べられるなんて、私ってついてるわ。」
「すみませ~ん!!焼き芋2つ下さい!甘い奴で!!」
これはヤバい。絶対に1人じゃ無理な奴だ。バイト戦士だった僕の嗅覚が危機を知らせる。この間の販売ですっかり噂になってる。
え~っと、あれから1時間経ったな。そろそろみんなを呼ぶか。
「みんな~、焼き芋販売始めるからヘルプお願い!!」
「アッ!は~い!みんな行くわよ。」
「は~い。」×5
よし、面子も揃った事だし、気合入れて売りまくりますかね。
………
…………
うん、まさに修羅場だった。なんで1000個が1時間ちょっとで売り切れちゃうの!
売れた数は『紅音姫』が302個で『甘納芋』が698個、売り上げ金額304700フルール。
相変わらず焼き芋販売ヤバいな。ガキどもも疲労困憊だ。こりゃ連日は無理だな。
取り敢えず焼き芋販売は隔日営業にしよう。僕もずっと焼き芋だけ売っていればいいわけじゃないし。
さて、みんなを労わないとね。
「スフィーダさん、それからガキども。今日はお疲れ様でした。
今日はみんな頑張ってくれたからお給金に色を付けておきますね。」
「ありがとう、コンヨウ君。それよりあなたは大丈夫なんですか?」
「そうだぜ。兄ちゃん、ここに来てちっとも休んでないよな。」
「ちょっと、顔色も悪いよ。」
う~ん、どうやら余計な心配をかけてしまったようだ。よく考えたら僕、全然休んでないしスキルの使い過ぎで結構体力も使っているな。
しかし、ガキンチョに心配されるとは…不覚だ。でもこの後ラビリさんの様子を見に行ったり、パフィさんに状況を確認したり、やる事は山積みなんだよね。
そんな事を考えていると屋台に2人のフード付きのマントを被った男が近づいて来た。背は2人共僕より少し高いくらいでマントを着ている為人相は分からない。男の内の一人が少し遠慮がちに僕に声を掛ける。
「あの、すみません。焼き芋はまだ売っていますか?」
どうもこの声、聞き覚えがあるけど、まさか。取り敢えず普通に接客かな。
「すみません。もう売り切れなんです。」
「そうですか。残念です。『鳴子銀時』が食べたかったのですけど。」
へっ!この人達ってもしかして、でも早すぎるだろう。でも『鳴子銀時』を知っている人って言ったら。
「あの~、ドクさんですか?随分早いですね。もう1人は?」
そう言って僕は『鳴子銀時』を2人に渡しながら小声で質問する。
「正解だよ、コンヨウ君。ちなみにもう1人はペテロさんね。人探しって言っていたから勝手に連れてきちゃったよ。」
確かにドクさんの『嗅覚強化』に加えて、ペテロさんの『望遠』があれば今回の仕事はより確実性が増す。マントで変装しているのは、やっぱり正体を隠す為かな?ほら、僕らって無主地を不法占拠しているわけだし。疑問は色々あるけど、取り敢えず話を進めよう。
「ありがとうございます。では話の続きは喫茶店でお茶でもしながら。」
そう言って僕は、スフィーダさんにお給金9万+1万フルール(ボーナス分)を渡した後、ラビリさんの喫茶店『スイーツショップ_ラビアンローズ』へと向かうのであった。




