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047_親子のリベンジマッチ

「よし、これからあのにっくきグレートボアにリベンジやさかい。全員俺に続きぃ~や!!」


オォォォォオオオオオオーーーーー!!!


うわぁ~~…なんか狩人の皆様の気合が凄まじい。

これはバックルさんに大盾を渡した後、すぐの事なんだけど、大慌てでドクさんが僕らの元に駆けつけて来て、


『大変だ!今集落の近くにグレートボアが近づいている!皆さん、避難と迎撃の準備を!』


と教えてくれたんだけど、それを聞いたバックルさんが、


「よっしゃー!俺に任せときぃ!この盾でリベンジしてやるさかい!!」


等と言いだし、それに狩人の皆様も呼応してそのまま森の奥深くまで来た次第だ。

なんで僕がいるのかって?その理由は、


「じゃあ、バックルさん。前衛はお願いしますね。僕とラック君、残りのみんなで援護しますので。」


「ねぇ、コンヨウ兄ちゃん。僕、いきなり出来るかな?」


「大丈夫、僕の言う通りにやってくれれば。」


『狙撃』スキル持ちのラック君がいれば出来る作戦を試してみたくなったからだ。

ちなみにパフィさんは集落でお留守番。理由は非戦闘員の護衛の為だ。

今までモンスター狩りをするときは、バックルさんにこの役割をお願いしていたんだけど、今回はバックルさん出陣なのでパフィさんがお留守番。

僕が狩りに参加すると言った時はかなりごねたけど、理由を説明したら渋々といった態度ではあったけど、一応納得してくれた。

ラック君に経験を積ませる事、つまり新人教育だね。こればかりは常にやっていかないとね。ウチはただでさえ人が少ないし。


作戦は至ってシンプル。バックルさん達がグレートボアをある地点までおびき寄せ、そこをラック君の『狙撃』で弱らせて、抵抗が弱くなった所を袋叩き。

地形は僕とパフィさんで狩りに行った時に前もって調べておいたので、その情報が頭に入っている僕が参戦する事となったわけだ。


僕の指示の元に全員が配置につく。そして待つこと暫し…北の方からつんざくような雄たけびが響き渡る。

斥候に配置した狩人、猿獣人のペテロさんからの合図。どうやらターゲットを発見したみたいだね。

彼はスキル『木登り』『望遠』『猿叫』をもっていて、森の中での偵察は彼の右に出る者はいない。


ターゲットを発見したら、作戦は次の段階だ。

ここでターゲットを挑発して、予定の場所へとおびき寄せる。

担当するのは馬獣人のロックさんと熊獣人のセラさん。ちなみにセラさんはこの作戦唯一の女性だ。

ロックさんは『俊足』『持久力』スキルの持ち主でセラさんは『投擲』スキルの持ち主。

ロックさんがセラさんを背負いながら逃げて、セラさんが石などをターゲットに向かって投げつける。

おぉ!息の合ったコンビプレー。実はこの2人、恋人同士だったりする。ちっ!リア充かよ!

おっといけない。もてない男の怨念が漏れ出てた。今は作戦中だから後日爆発して下さ~い。


よし、目標地点まで到達。

そこは少し開けた場所で、見通しもいい。そのど真ん中には巨大な盾を携えた我らが大将、角牛(バッファロー)獣人のバックルさんが待ち構えていた。

ここでリア充ロックさん、セラさんコンビからバトンタッチ。


猛スピードで突撃するグレートボアとバックルさんの大盾『フォートレスシールド(バックルさん命名)』がぶつかり合い、牙と鋼鉄の鈍い衝突音がゴンッ!!轟き響く。


「クッ!やっぱ強いわ~。」


『ブルンッ!ブルンッ!』


体重1トンを誇るグレートボアの体当たりにバックルさんはよろめく。


「オトン!!!「静かに。」」


隣にで動揺し、声を上げるラック君を僕が慌てて制止する。

しかしバックルさんの動き…


見事の一言だね。


よく考えて欲しいんだけど、時速60キロ超えの自動車と同等の化け物を盾だけで捌いてるんだよ。しかもよろめくだけで無傷。

あの盾が赤い布なら間違いなくマタドールだね。一見危なっかしく見えるけど、実際は全然余裕だ。

むしろ牙を鋼鉄の壁に叩きつけたグレートボアの方がダメージが大きいとさえ思える。


それより問題はラック君の方だな。初陣でデカいイノシシに父親が襲われている。

まだパフィさんより小さい子供にこれは堪える。目を見開き、呼吸を荒くして焦燥する弟分を落ち着かせるのが、兄貴分である僕の役目だね。


「いいかい、よく聞いて。あのイノシシは今バックルさんに釘付けだ。

つまり隙だらけって事だ。今が君の『狙撃』スキルを使う絶好のチャンスなんだ。手筈通りに行くよ。

な~に、君のお父さんは強い。今だって押されてる様に見えて、実はイノシシを手玉に取ってるんだ。

お父さんの顔をよく見て。」


「オトンの…顔…」


そこには真剣な眼差しでグレートボアを見据えながら、その口元には笑みが見える。

強敵と油断なく対峙し、それでも確かな余裕と自信を無くさない、本物の戦士の面構えだ。

その頼もしい父の姿にラック君は落ち着きを取り戻し、その瞳に火が宿る。


「うん、分かった。やってみるわ。」


その言葉と共にラック君は矢を手に取る。それを見た僕はすかさずポーチから一つの瓶を取り出す。

これはネイチャンさんに用意して貰ったしびれ薬だ。実はラック君が『狙撃』スキルを持っていると知った時からネイチャンさんにお願いしていた。

なんで僕が持っているのかと言えば、子供に危険物を持たせるのは流石にどうかと思ったからだね。

ラック君は僕が差し出した瓶の中の液体に鏃を浸し、矢を弓につがえる。

子供から狩人の目に変わったラック君に僕が最後にアドバイス。


「いいかい。あのイノシシはただの大きな的だ。そしてその矢のしびれ薬は強力なものだ。

一発当てればこっちの勝ちだから気負わず、ただ当てる事だけ考えればいいよ。」


この言葉にラック君は首を横に振る。


「いいや、狙うのは…足や!!」


その言葉と共にラック君の手から矢が放たれ、風を切る。

彼我の距離はおよそ50m。実際のところ、この距離を飛ばすだけでも難しく、その上的に当てるとなると至難の業だ。

だがそれは普通の人間であればの話、ラック君は『狙撃』スキルを手に入れてからの毎日訓練を積み重ね、射程距離は実に100m。

矢は瞬く間にグレートボアの左後足へと吸い込まれていく。


ブオォォオオオオオオオ!!!


苦痛に悶えるグレートボア。だがしびれ薬が効いたのか、足を引き摺り、動きも格段に鈍くなる。これでは突進攻撃も不可能だろう。

このままグレートボアが動けなくなるのを待って一気にみんなで畳みかければ勝利、といった段階で、


「よくやったで!流石俺の息子や!!父ちゃんもええところ見せたるわ!!」


何を血迷ったのか、バックルさんがいきり出す。

いや、ほんとに無茶だけは辞めて欲しいんだけどな。怪我人が出てネイチャンさんに怒られるのって何故だか僕なんだよね。

だが、今回は杞憂だったみたいだ。


「歯ァ食いしばりぃやぁ!!『シールドチャージ(バックルさん命名)』!!!」


ブオォォ!!!………ォ…


うわぁ~~…なんか今ぐちゃって音がしたよ。

そりゃそうだよな。だって重さ50キロの鋼鉄の塊を鼻っ面に高速で叩き込まれたんだもん。

きっと頭蓋骨とか粉々だし脳みそもぐちゃぐちゃなんだろうな~。ちょっと想像したくないや。


「グレートボア!!カウズ親子が討ち取ったでぇ!!!!」


ウォオオオオオオオオオオオォォォオォオオオオオオォオォオオ!!!!!!


バックルさんの勝ち鬨に狩人の皆様が全員呼応する。

その凄まじい雄たけびに怯えた周囲の生き物はモンスターも含めて全てその場から逃げ出す。

そして勝利の余韻に浸る間も無く、狩人の皆様がグレートボアの死体を担ぎ始める。


後から聞いた話なんだけど、ここにいる人達は全員『剛腕』『剛力』『怪力』などの筋力強化系のスキルを有しているらしい。

前にパフィさんが言っていたリンガの騎士団長と同じ系統のスキルだね。しかもバックルさんが持っている『怪力』はその上位互換らしい。

この間のグレートボアにやられたのも不意打ちの上に装備が無かったのが原因。


僕、もしかしてバックルさんにヤバいモノ渡してしまったかも。そして全員が得意武器を装備した時、ここの狩人は一体どうなってしまうのか。戦々恐々とする僕。今日はイノシシ鍋が食べたいな。(現実逃避)

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