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045_思わぬ告白

「よぉ~、クソジジイ。仕事持ってきてやったぞ。感謝しやがれ。」


「…帰れ、クソガキ。」


パフィさんをドクさんに預けて、僕が最初にやって来たのはスミスのジジイの家だ。

全く、このジジイは。せっかく人がニートの穀潰しに仕事を持ってきてやったのになんて態度だ。

こいつはあれか?明日からガンバル、働いたら負けだと思っている、ってタイプか。

よし、そんな考えはまるっと無視して話を進めるか。


「僕が依頼したいのはですね…」


「人の話聞けや!クソガキ!!」


おっと、人の話を遮って来たぞ。全くお行儀が悪いなぁ~。そんな事を言っててもいいのかな?

僕はおもむろにポーチに手を入れ、一つの瓶を取り出すと、それを見た瞬間、ジジイの目の色が変化する。


「クソガキ、いや、コンヨウ君。その仕事の話と言うのは?」


なんて分かりやすいんだ。僕が取り出したのは穀物酒。地球で言うところの焼酎とかそんな感じのやつだ。

ジジイがこれに目が無い事はゼブラさんから確認済み。全く兄貴には感謝感謝だね。

しかしこの態度の変わりよう、流石、一瓶(900mlくらいかな)1万フルールの高級酒。

ちょっと大きな出費ではあるけど、ジジイの華麗な手のひらクルーが見れただけでも十分価値があったと言えよう。

さて、ここからは仕事の話だ。


「実は……」


「……なるほどのぅ。あの箱を取り敢えず100個とな。それから偽造防止の印か…それなら2日で作ってやるぞ。」


「おっ!流石はこの集落一の職人さん。よろしくお願いします。」


「ふん!職人はワシしかおらんじゃろ。まったく絶対からかって言ってるだろうが、こんガキャ。」


あっ!やっぱりバレてら~。怒らないで下さいよ。血圧上がりますよ~。


「まぁまぁ、1個500フルールだから100個で50000フルール。よかったですね、今度は自分のお金でお酒が買えますよ。買いたい時はゼブラさんに頼んで下さいね。」


「ちっ!まんまと乗せられた気がするけど、まあいいじゃろう。追加が欲しいときは早めに言うんじゃぞ。」


「はい、ありがとうございます。それじゃ失礼しますね。」


そう言って、酒の肴に干し芋を置いてその場を後にする。干し芋って、かなり便利だね。



さて、次はネイチャンさんのところだ。


「こんにちは、ネイチャンさん。今、大丈夫ですか?」


「えぇ、大丈夫よ。悪いけど勝手に入ってくれるかしら。」


ネイチャンさんの家の扉をノックするとそんな声が聞こえてきた。

ちなみにネイチャンさんは家で薬の調合もしているので、部屋に入っちゃいけない時もたまにあったりする。

ネイチャンさんの了承も得た事だし、早速僕は部屋の中に入る。


まず、中に入って感じるのはハーブ?の匂い。今回は強い柑橘系の匂いかな?地球で言うところのレモングラスだろうか。

それから何やらガラスの容器で植物の成分を抽出しているネイチャンさんの姿。なんか科捜研とかにいそうなリケジョみたいな感じかな。

これが大釜だったら魔女っぽいんだけどね。お仕事中だったみたいで僕に一瞥もすることなくそのまま話掛けて来る。


「ごめんね。今、夏に向けて虫よけを作り貯めしてるところなの。もう少ししたらひと段落するから待っててくれるかしら。」


「どうぞ、お構いなく。お茶でも入れましょうか?」


「あっ!悪いわね。お願いするわ。」


ネイチャンさんは虫よけの製作中。ほら、病気の原因の大半は蚊とか虫を媒体にするみたいだし。僕はそんな彼女を労う為に竈へと向かう。

まさに勝手知ったる他人の家だね。僕は勉強を教えてもらう傍ら、時々ネイチャンさんのお手伝いをしたりもしている。

その時こっちの植物の事なんかも教えて貰うんだけど、お茶に使えるハーブなんかも教えて貰って、ハーブティーなら自分で入れられるようになった。

ちなみに火起こしもドクさんから習って出来る様なったので竈さえあれば薪で湯を沸かすくらいは何とかなる。ただし料理の火の調整はちょっと厳しいけど。

さて、お茶を淹れた所でネイチャンさんのところへ戻る。どうやらあちらもひと段落着いたみたいだ。

お茶請けの干し芋を2つ出した後にポーチに手を入れながら話を切り出す。


「まずはただいま、という事でお土産です。」


「ありがとう。果実酒ね。これって結構いいお値段するやつじゃない。なんか悪いわね。」


「いえ、ネイチャンさんの野草や香草に果物は集落の貴重なビタミン源ですから。」


「ビタミン?」


あっ、しまった。こっちって栄養学がそんなに発達していなかったんだ。

野菜は食べると体にいいけど、どういう風に体に効くかは分からない、っという具合だ。


ネイチャンさんはスキル『診察』で相手の不足しているものが分かるから、頻繁に野草などを取りに行って集落の人達に食べさせている。

ネイチャンさんはその他にも『調合』『医術知識』『植物知識』『毒物判定』など複数のスキルを有している。おそらくこの集落で最多のスキルの持ち主でしかもほとんどが医療関係。


以前パフィさんが歴代最多のスキル持ちは10個と言っていたけど、この人なんじゃないかと正直疑ってしまうレベルなんだよね。

取り敢えず、僕が話を振った事だし、ちょっとだけ聞きかじりの栄養学について話してみると、


「うむ、興味深いわね。確かに私が持っている『診察』や『医療知識』に符合する部分が多く見られるわ。でもブツブツ…」


みたいな感じで思考の坩堝に入っていった。こうなるとネイチャンさんは長いので、強引に話を切り出す事にした。


「えっと、ちょっとご相談があるんですけどいいですか?」


「あっ!ごめんなさい。何かしら?」


おっ!すぐにこっちに復帰してくれた。今回は早かったな。やっぱり果実酒(1本2万フルール)が効いてるね。では横道に逸れる前にお願い事をするかな。


「実は…」


「……なるほどね。そのラビリさん?のお父さんの容体を診て欲しいのね。」


「はい。相手はコービット商会のトップですし、かかりつけ医はいるでしょうけど、その…やっぱり大きな商会のトップですから…」


「…う~ん、ちょっと考えすぎだとは思うけど了承したわ。ただし、そのラビリさんに許可を取ってからね。」


「はい、ありがとうございます。」


流石ネイチャンさん。僕の歯切れの悪い言葉で何を言いたいのか察してくれたみたいだ。

まぁ自分でも漫画の見過ぎじゃないかって思っちゃうけど、それでも怖いじゃん。陰謀論とか。

もしもこれでラビリさんのお父さんに毒とか仕込まれていて、ラビリさん側の僕の知り合いのネイチャンさんが治療したとなれば後継者争いはラビリさん側に大きく傾く。

だってラビリさんは元々お父さんから後継者として名指しされていたんだから、毒殺とかする理由は無いし。

それ無しにしてもネイチャンさんの治療でお父さんが元気になれば、それだけでこちらに味方してくれる可能性が高くなる。


さて、用も済んだ事だし、この後少し雑談して僕はこの場を失礼する事にした。

この時に孤児院に文字の教材の貸し出しをお願いしたら、快く承諾してくれた。


「では僕はこれで失礼します。教材の件ありがとうございました。

それからラビリさんの許可が取れましたらよろしくお願いします。」


「勿論よ。何かあったらいつでも頼りなさい。」


あの頼もしさと余裕、やっぱりできる女は違うな~。僕はネイチャンさんにお礼を言いながらその場を後にした。



そして、再びドクさんの家。パフィさんのお迎えだね。


「パフィさん、遅くなってごめん。今戻ったよ。」


「アッ!コンヨウさん。お帰りなさい。」


よかった、パフィさん。さっきよりだいぶ元気になったみたいだ。

きっとドクさんのお陰だ。今度なんかお礼しないとね。全くこの集落はホントいい人ばっかりだ。(ただしジジイは除く。)


「ありがとうございます、ドクさん。パフィさんがお世話になりました。」


「あぁ、構わないよ。君もいつでも私達に頼るといいよ。」


「ははぁ、ありがとうございます。また何かあったらその時にお願いします。」


全くドクさんといい、ネイチャンさんといい、お人好しばっかりだ。

僕がドクさんにお礼を言ってその場を後にしようとした時、右腕にモフモフの感触を感じる。

振り返るとそこには、


「さぁ、コンヨウさん。おウチに帰りましょう。」


僕に抱き着くパフィさんの姿があった。


「…そうだね。帰ろうか。」


「はい!」


僕が笑顔で答えると、パフィさんもはちきれんばかりの笑顔で僕に返事をする。そして、


「コンヨウさん。ぼくはず~っとあなたの隣にいますからね。」


「…そうだね。取り敢えずパフィさんが結婚する時くらいまでなら付き合うよ。」


「じゃあ!ぼくとコンヨウさんが結婚すればず~っと一緒ですか?」


「君が大人になってその気があるならね。」


「約束ですからね!!」


なるほどね。パフィさんはしっかりしているようでまだ子供だから、きっと寂しかったんだろうな。

それでドクさんは取り敢えず身近な僕に甘えるように言ったんだろうな。

ここは兄貴分として大人の余裕を見せておかないとね。


…なんかパフィさんの顔が赤い気がするけど、これってよく考えたらプロポーズだよね。

まぁ、パフィさんが大人になるのって7年後だし、それまでに僕がケモナーになっている可能性だって無くはないか…

って僕は一体何を考えているんだ!きっとこれは…そうだ!パフィさんの抱き着いた右腕がモフモフで温かいからそう思ってしまっただけなんだ、きっとそうだ。

僕みたいなひねくれ者と一緒になったってきっとろくな事が無いに決まってるんだから。

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