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044_悩めるパフィとドク先生の人生相談

「パフィさんが僕に相談するなんて初めてだけど、ナプールで何かあったんだね。」


「実は、コンヨウさんの事なんですけど…」


優しく微笑みながらぼくに話を促すドクさん。ぼくは意を決して、ナプールであった事を話します。

ぼく達が焼き芋の販売の時にガラの悪い人達に絡まれて、その後に行われたコンヨウさんとゼブラさんの遣り取り。

そのガラの悪い人達の味方をしていた悪い衛兵さんを相手にした時のコンヨウさんの様子。

危ない場所を自分の小遣い稼ぎの為にぼく達に貸し出して、返り討ちにあった受付のお姉さんの事。

ラビリさんに嫌がらせをしていたウサギのおじさんに対するコンヨウさんの対応。


話している内にぼく自身の声がドンドン沈んでいくのが自分でも分かりました。

でもそれ以上にドクさんの表情がみるみる曇っていく事分かりました。


「パフィさん、教えてくれてありがとう。どうやら、私が思っていた以上にコンヨウ君の抱えている事情は深刻なようだね。」


苦虫を噛み潰したような表情、と言うのでしょうか。こんなに辛そうにしているドクさんを見るのは初めてだと思います。


「彼の信条であるギブアンドテイク、いやこれは因果応報だね。まさかこんな形で働くとは。」


「えっと、どういう事ですか?」


「彼はね、自分の味方には寛大だけど、敵にはとても冷酷なんだよ。

危害を加えてきた相手に対しては、その牙が折れて立ち直れなくなるまで徹底的に叩きのめす。

でもこれは防衛本能の裏返しなんだ。彼はきっと恐れているんだろうね。」


「何をですか?」


「その相手を野放しにして、また自分や周りが傷つけられる事に対してだよ。

こんな反応、よっぽど傷つけられた事がある人間しかやらないと思うんだけど。

それだけ彼の傷は深いという事か?」


「……」


「それから気になるのはゼブラさんとの遣り取りだね。少しは信用してくれていると思ったんだけどね。」


「えっと、やっぱりそう思いますか。コンヨウさんにとってぼく達って何なんでしょうね?」


「それはきっとコンヨウ君自身にも分からない事だと思うよ。

でも少なくとも無条件に信じられる信頼関係、なんて言うようなおめでたい仲ではなさそうだね。」


力の無い言葉にぼくが思わず項垂れると、ドクさんはさらに言葉を重ねます。


「私が一番恐れているのはね、あの子がこの集落に必要無くなった、とあの子が判断した時の事なんだよ。」


「えっ、ぼく達がコンヨウさんを必要としなくなる?」


「そうだよ。今は食料のほとんどをコンヨウ君に頼っているけど、この調子でいけばいずれそれも必要無くなる。

生活にゆとりが生まれれば農作物だって作れるようになるだろうし、パフィさんがモンスター退治に慣れれば安全も格段に増すし食料も確保できるようになる。

そうなればコンヨウ君のスキルに頼る必要が無くなる。あとはもう分かるよね。」


そうだ。ガススキルの使い方が分かったぼくをコンヨウさんはあっさり手放そうとした事があったんだ。

あの人は自分が必要な人間を手元に置くんじゃない。自分を必要としてくれる人の近くにいるんだ。だからあの人は自分が支払った対価に気づこうとしない。

それをすれば、支払いを求める為にずっとその場に居続けなければならなくなるから。その在り方は…とても悲しい。


「あの子はね。絶対に独りにしちゃいけない子なんだ。独りになったあの子は…いずれ壊れる。」


ぼくもそう思いました。だからこの時、ぼくは思わず馬鹿な事を口にしました。


「それじゃ…僕がずっとスキルの扱いに慣れないフリをすれば…」


この言葉にドクさんは思わずため息をつきます。


「それは無理だろうね。あの子は信条であるギブアンドテイクがそれを許さない。

あの子は役に立たない人間、もっと言えば役に立とうとする意志がない人間、自分で立とうとしない人間を傍に置いておくほど甘くはない。

それに既にパフィさんは一人でモンスターと戦えるだけの知識と経験を得ている。その事を知らないコンヨウ君じゃない。

ある意味、今コンヨウ君と一番対等なのはパフィさんなんだよ。」


このドクさんの言葉にぼくは思わず涙が出そうになる。


「でも…ぼく、ちっとも強くないです。悪いおじさん達にエレフさんが囲まれた時も何もできなくって。」


そう、これは悔し涙だ。あの時エレフさんを巻き込まずに悪いおじさんだけを倒す事が出来ればみんなを危ない目にあわせる事もなかった。

ぼくにはこのスキルしかないのにそれが役に立たないんじゃどうしようもない。

震える声で今の想いを呟くと優しい笑みでドクさんが語り掛けてきます。


「パフィさん。本当に相談したかったのはその事なんだね。」


「はい…僕は…コンヨウさんの隣に立つのにふさわしいんでしょうか…」


この言葉にドクさんは少し考えこみ、そして偽りのない真摯な声で答えてくれました。


「私には答えられない質問だね。でも少なくともコンヨウ君はパフィさんに隣にいて欲しいと思っている、そう私は思っているよ。」


「ぼくは…どうしたらいいでしょうか?」


「強くなりなさい。いっぱい食べて、いっぱい寝て、いっぱい勉強して、いっぱい鍛えて、そしてゆっくり大人になりなさい。」


「はい。」


そう、強くなる。ぼくはコンヨウさんの専属の護衛だ。コンヨウさんの隣は誰にも渡さない。コンヨウさんの隣を…絶対に空にしない。

コンヨウさんが置いて行った干し芋をかじりながらぼくはそう誓うのでした。

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