043_懐かしの集落で強化スキルの検証
「よし!実験成功!!」
「コンヨウさん。いったいこれは何ですか?」
僕らはナプールの街での用事を済ませた後、速やかに自分達の家に戻ってきたのだけど、
「コンヨウさん、どうしておウチにサツマイモが10個も転がっているんですか?」
そう、パフィさんが言った通りウチには生のサツマイモが10個ほど転がっている。
しかもその内5個は彫り物がしてある。書いている内容はそれぞれ『ノンブランド』『鳴子銀時』『紅音姫』『甘納芋』『絹甘スイート』だ。
ちなみにこのサツマイモは後で細かく刻んで牛さんのところ行きね。
さて、これについてだけど当然の事ながら僕らが出発する前にはなかった物で、その事でパフィさんは困惑しているみたいだ。
もちろんこれは僕の仕業なんだけどね。なんかパフィさんの視線が冷たくなってきたし、そろそろ質問に答えるか。
「これは僕のスキルの検証をやってたんだよ。ほら、お芋をたくさん作るとスキルが強化されるって教えたでしょう。」
「はい、確かに言ってましたけど。」
「それでこの間、新しく使えるようになった『生成場所指定』ってやつで、どのくらいの距離まで大丈夫か確かめてみたんだ。」
「えっと、つまりこれって…」
「うん、ナプールの街で生成したものだよ。」
「………えぇぇえええええええええええッ!!!!!!!」
いや、そんなに絶叫しなくても。あんまり大きな声を出すからちょっと耳がキーンってしたよ。
「ちょっと、パフィさん。そんなに驚かなくても。」
「驚きますよ!だってスキルって基本的に自分の目が届く範囲でしか使えないんですよ。例外はレアスキルの『千里眼』くらいです。」
そっか、確かに今まで見たスキルって最低でも使用者が目視できる範囲のスキルばっかりだったよね。ドクさんの『嗅覚強化』だって遠くの事が分かるけど、あくまでも自分の鼻を強化しているわけだし。
でもこれで僕が遠出しても焼き芋の供給は行えるようになったわけだし。そんな事を考えているとパフィさんが更に追加で僕に詰め寄る。
「それになんですか!お芋に品種の名前が書いていますけど!」
「それはスキル強化で出来るようになった事の検証だね。どうやら今の僕は焼き芋以外の調理に加えて包丁作業もスキルで出来るようになったみたいなんだ。」
そう、実は『調理法追加』と『調理工程の指定』の複合効果で包丁作業も追加されていたのだ。ほら、試食用に焼き芋を一口サイズに作った時のやつ。あれで色々試してみたんだけど、どうやら僕が手で出来る事はスキルでも出来るようになったみたいなんだ。
その事をパフィさんに話すとすこし考えこむような表情で返事をしてくる。
「そもそも前々から思っていましたけど、スキルが強化されるって聞いた事がありません。」
「えっ!そうなの?」
「はい。ぼくが知る限りですけど、スキルを新しく覚えたり、上位スキルに置き換わる事はあっても、スキルそのものに新しい効果が追加されるという前例は聞いた事がありません。
コンヨウさんのスキルってかなり特殊みたいですね。」
「えっと…パフィさん。これって隠さないといけない案件だよね?」
「はい。質の悪い研究機関にバレたら実験モルモットにされるレベルです。」
「うわぁ~。じゃあこれも集落以外では秘密の方向で。」
「そうですね…」
どうやら僕のスキルって相当ヤバいみたい。その事を思い僕とパフィさんから思わずため息が漏れ出る。
さて、考えても仕方がない。早速今後の相談を集落のみんなとしないと。いろいろやる事が増えちゃったし。
まず向かうのはドクさんの家からだね。
「コンヨウ君にパフィさん。どうぞ入っていいよ。」
早速ドクさんがいつも通りノックをする前に返事をする。
もうすっかり慣れてしまったこの遣り取りだが、3日ぶりという事もあり少し微笑ましい気分で家の扉をくぐる。
「ドクさん、ただいま。早々で申し訳ないんですけど。少し相談が…」
「うん。聞こうか…」
ここで僕はドクさんにナプールでの出来事とそれに伴って、スフィーダさんの孤児院と干し芋の取引をする様になった事、ラビリさんの後継者争いの味方をする為にスイートポテトを作ろうとしている事、それに伴い集落の人達にも協力をお願いしたい事を説明した。
それを聞いたドクさんは…
「ありがとう。ちゃんと相談してくれて。」
何故か嬉しそうに笑いながらそう言ってくれた。理由は分からないけどこれに関してツッコむのは野暮だという事くらい僕にだって分かる。
僕はきっと呆けた顔をしているだろう。嬉しそうな笑みを少し呆れたような表情に変え、ドクさんが話を続ける。
「じゃあ、コンヨウ君は暫くはナプールを中心に活動をするんだね。それから優先的に乳製品を回して欲しいと。」
「はい、それから集落とナプールの往復にゼブラさんを、エレフさんのスイートポテト作りを補助する人を何人かお願いできますか。」
「分かったよ。それからスミスさんにも木箱の依頼をするんだろう。それはどうするんだい?」
「それは僕が直接言いに行きます。あのクソジジイも仕事が出来た喜びでむせび泣くことでしょう。」
「ははぁ…また喧嘩しないでね。あの爺さん、へそ曲げると面倒くさいんだから。」
「善処します。」
僕の頑張らない返事にドクさんも思わず苦笑い。さて、じゃあそろそろお暇しますかね。
おっといけない、忘れるところだった。
「じゃあ、僕はこれで失礼しますけど、これお土産です。」
僕がポーチから取り出したのはコービット商会で買ったお土産用のワインだ。
どうやらこの集落でドクさん、ネイチャンさん、スミスのクソジジイはお酒を飲むらしいけど、ここに来てからは御無沙汰だったらしい。
この瞬間、ドクさんは今までに見た事がない満面の笑顔を見せる。
「これは…とても嬉しいけどいいのかい?」
「えぇ、これはいつもお世話になっているご近所さんへのお礼みたいなものです。あとついでにこれから掛けるであろう迷惑料の先払いという事で。」
「ハハァ、それじゃ、頂かないわけにはいかないね。」
「はい、では今度こそ失礼します。」
そう言って、僕がこの場を去ろうとした時、今まで背景と化していたパフィさんが初めて口を開く。
「あの~。ぼく、ちょっとドクさんに相談したい事があるんですけど、ここに残ってもいいですか?」
「うん?構わないけど。」
なんだろう。ちょっとただならない雰囲気だけど…生理かな?それならネイチャンさんの方が、ってごめんなさい。冗談です。
だから人の思考を読んで生ゴミを見る様な目を向けるのはやめて下さい。ここは突っ込まないのが身の為だね。
「じゃあ、僕はネイチャンさんとスミスのジジイに挨拶しに行ったら、戻ってくるから。
それじゃドクさん、パフィさんをよろしくお願いします。それからこれ、お茶請けにどうぞ。」
そう言って僕は干し芋を2つおいてその場を後にする。
何やら思いつめた様子のパフィさんをその場に置いて。




