042_労働には労いを
「さて、そろそろ集落に帰るか。」
「その前にスフィーダさんの様子を確認しに行きましょう。」
これは、僕らがラビリさんとの交渉と村の備品の買い出しを済ませた後の事。
集落に戻る前に一旦スフィーダさんの様子を確認しようという事になり、そのまま市場の裏路地前へと行く事になったのだが、
「コンヨウ君…大変でした…」
「あぁ、兄ちゃん…ちょっと洒落にならないよ。」
そこには、屋台の前でぐったりと項垂れるスフィーダさんとクソガキどもがいた。
「えっと、どうしたんですか?」
「この屋台って、昨日焼き芋販売をしたのと同じじゃないですか。だからまた焼き芋を売っていると思ってお客さんが来たんですよ。
焼き芋欲しさに来たのに売っていたのが干し芋だったのにちょっとがっかりしてましたけど、試しに試食して貰ったら、気にいったみたいでして。
そこから口コミで広がってあれよあれよとお客さんが来て、気が付けば2時間で500個完売しちゃったんです。」
「疲れた~。」
「スフィーダ姉ちゃ~ん。ご飯にしよう~。」
あぁ、確かに接客に慣れてない子供だと辛いよね。スフィーダさんも子供を見ながらの接客だから大変だったろう。
そんな彼女達を労いながら、僕は一つ質問する。
「お疲れ様、ところでお客さんに試食して貰ったと言ってましたが、何本使いましたか?」
「えっと~、売り上げが99000フルールだから…」
「5本ですね。では僕らの取り分は48900フルールで結構です。」
「えっ!でも500本無くなってますけど。」
あぁ、そうか。彼女には無くなった分を請求するって言っちゃってたもんね。そりゃ、こういう反応になるよね。これは僕の配慮が足りなかったね。
「すみません、説明してませんでしたね。お客さんへの試食については宣伝広告費なので請求には含めません。
そうですね…これからは試食用として5本、それから一人1本ずつまで、合計11本までは請求に含めない様にしましょう。
勿論商売をしない日はダメですから、そこだけは注意して下さいね。それから必ず週に一日以上は休むようにしてください。
これを破った場合は契約違反としますので、そのつもりでお願いします。」
そうだった。いろいろ取り決めしておかないといけない事があったのをすっかり忘れていた。
スフィーダさんだって芋だけ売っていればいいわけじゃないし、子供達も自由に遊びたい時だってある。
ただ、生活が困窮しているから働かないと食べていけないだけだ。あのまま放置していたら、危うくずっと休みなしで干し芋の販売をさせるところだった。
この国の人達の一人当たり月収が大体15万で、共働きとしても30万で家族が十分に養えるんだから1日5万の稼ぎなら6~7日働けば食うに困らない生活が出来るはずだ。
それ以上稼ぎたいかどうかは本人達次第だけど、休みやリフレッシュ無しで働いている人間の末路はなかなか悲惨だ。
なんせ、休みなく働いて餓死した人間がここにいるからね…なんか無性に世界の全てを呪いたい心境になって来た。取り敢えずクソ親父はぶっコロだね。
さて、僕の暗黒波動がにじみ出たせいでみんながビビってるけど話を続けよう。
「みなさんがしている仕事は客商売です。お客さんの前で疲れた顔を見せるわけにはいきません。
だから適度に休んで、しっかり栄養を取って、万全の体調で仕事にあたってもらう必要があるのです。
もし休み無しで働いた場合は厳しい処罰、具体的には契約打ち切りとさせて頂きますので重々ご理解下さい。」
ちょっとキツイ言い方になっちゃったけど、さっきも言った通り休みはそれだけ重要なんだよ。
ちなみに隠れて商売をしようとしても無駄だよ。だって僕が干し芋作らないと商売出来ないんだから。
この事はスフィーダさんも分かっている様で、黙って頷いてくれた。
少し重い空気になったので、それを切り替える為に僕は、
「それじゃ、ちょうどお昼時ですし、これからみんなでお昼にどこかお店に食べに行きましょう。
僕らの取り分から奢りますので。」
「マジで!!やった~~!!」
「お兄ちゃん、ありがとう。」
「兄ちゃん、性格はあれだけど金払いが良いから最高!!」
「おい、ガキども、それ絶対に褒めてねぇよな。」
「そんなの当たり前だろう。」
「よし、テメェらやっぱり割り勘だ!」
「えぇ!!兄ちゃん小っちぇ~な~。」
「こら、よしなさい。コンヨウ君、子供の言う事だから許してくださいね。わたくしが謝りますから。」
「スフィーダさん…あんた一番食うから割り勘が嫌なんでしょう。」
「ソンナコトナイデスヨ~。」
「……」
まぁ、彼女達の働きのお陰で僕も不労収入が入る様になったわけだし、ここで労うのは当然だろう。
騒がしいガキどもを引き連れ、大衆食堂でお腹いっぱい食事をした後、僕らは懐かしの集落に帰還するのであった。




