041_スイートポテト大作戦始動
「いや~、なんかすみません。色々良くして貰っちゃって。」
「いいですわよ、その程度。私達はビジネスパートナーでしょう。」
これはラビリさんが僕らに事情を話してくれた後の会話だね。
ラビリさんとあのジジイの関係を聞いた後、僕が調子に乗って提案したんだけど、それを気に入ってくれたらしく、その後の買い物でかなり勉強して貰ったのだ。
どうやらラビリさんはあの禿ウサジジイとコービット商会の後継者争いをしているらしく、対決方法は喫茶店での売り上げ勝負だそうだ。
あの禿、ラビリさんがちゃんと先代から後継者の指名を受けているのに、欲の皮が突っ張った幹部連中を買収して難癖をつけたらしい。
ちなみにその先代であるラビリさんの父親は病気療養中。もしネイチャンさんが暇なら看てもらうのもいいかもしれない。まぁ、相手はお金持ちだし余計なお世話かもしれないけど。
事情を聞いた僕らはそのまま作戦会議を始めたんだけど、その時に色々契約をしていない事を思い出したので、その取り決めも行う事にした。
さて、作戦会議で決まった方針と契約内容は以下の通りだ。
・スイートポテトは1つ1500フルールで販売し、取り分は半々の750フルールずつ。
・スイートポテトは店舗用として一日100個作る。
・それとは別にお土産用として今日持ってきた木箱を使い、4つ入りを箱代含めて1ケース当たり8000フルールで、25ケース売り出す。(実はあの木箱が一番原価が高い。)
・ただし、後日木箱を返却したお客さんには2000フルール返す。
この提案をした時のラビリさんの反応はというと、
「この店舗用100個というのは分かりますけど、お土産用とは?」
「えっと、持ち帰って自分で食べたり、おウチや職場で仲のいい人達と食べたり出来るようにするんです。」
どうやらこの世界には屋台なんかのお持ち帰り専門店以外でのテイクアウトの習慣が無いみたいだ。
お店で出されるものは基本その場で食べるのがこの世界の常識らしい。まぁ保存系のスキルが無いと出来ないからね。
「箱についてですけど、そちらにお支払いする金額はどうされますの?」
「そうですね、1ケース当たり500フルールでまずは100個作りたいと思います。
ゼブラさん、スミスさんはこの箱をどのくらいの期間で作れると思いますか?」
「そうだな。100個だと2~3日くらいじゃねえかな。」
「ではお土産用は1週間後からの開始にしましょう。他にご質問は?」
「何故、お客様にわざわざ箱の返却を勧める様なシステムにしたんですか?」
「お客様にお店に足を運んでもらう機会を増やす為です。
それに元が木箱ですので、何回か再利用可能ですのでお店側の負担も幾分か減らせます。
そして何より返却額が2000フルールというのがポイントです。」
「…あっ!スイートポテトと紅茶セットと同じ額ですわね。」
「そうです。お土産を自分用に買ったお客様は返却金でまたスイートポテトと美味しい紅茶を食べられる。
贈り物としてスイートポテトを貰った方が箱を持ってきて、また食べる事だって出来る。
仮にリピーターにならなかったとしても箱は返ってくるから損はない。箱が返ってこなかったら差額の1500フルールは利益になる。」
「店側にはどう転んでも得しかありませんね。」
「そしてこちら側としても箱代で1つ当たり500フルールの利益が出る。
箱には偽物対策として印をつけておこうと思います。」
「数を増やすことは?」
「申し訳ありませんがそれはご勘弁下さい。作れる者がエレフさんしかいないので数に限界があります。」
「そうだね~。1日200個以上作ると他の事が出来なくなるから~。」
この一言を聞いた時、ラビリさんの表情が若干堅くなった気がしたけど、すぐに元の出来る女の表情に戻って話を進める。
「そうですか…でも1日当たり15万の売り上げは大きいですわね。しかも紅茶セットならその分の売り上げも上乗せされますわ。」
「それに数量限定販売って事にすれば、それだけで特別感が出ます。」
「なるほど、そういう売り込み方もあると…目から鱗ですわね。」
よし、ラビリさんも満足してくれたみたいだ。では締めに入りますかね。
「ご納得頂けたようでなによりです。
それでは交渉成立という事で今の話の内容を書面に纏めましょう。
紙と書くものを貸して頂けますか?」
僕の要望通り、ラビリさんは従業員の人に紙とペンを持ってこさせ、僕に手渡す。
僕は書類を手早く作成し、それをラビリさんに手渡し、彼女はそれにサイン。
「はい、これで交渉成立ですね。今後ともよろしくお願いしますね。コンヨウさん。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。お互い良きビジネスパートナーであらん事を。」
こうしてデブ禿ウサジジイをけちょんけちょんにする為のスイートポテト大作戦が始動するのであった。
それから1週間後に広場の一角で行われていた会話
「ねぇ、大通りにある喫茶店の話知ってる?」
「それってもしかして『スイーツショップ_ラビアンローズ』の話?」
「そう、それ!甘くておいしいサツマイモのスイーツがたったの1500フルールなのよ。」
「やっす!それって大丈夫なの?」
「私、この間食べたんだけど、それがそんじょそこらのスイーツよりずっと美味しくって、紅茶をセットにしても2000フルールなの。
しかもその紅茶も絶品で、あのセットを食べたら他のスイーツなんて喉を通らないわ。」
「それってあんたのお財布事情でしょう。でもそんなに言うんだったらちょっと寄ってみようかしら。」
「そう言えば、あそこのスイートポテト、数量限定でお昼前には大体無くなるから急いだほうがいいよ。」
「それを早く言いなさいよ!ちょっと行ってくるわ。」
「じゃあ、ついでにお土産用のスイートポテトも買ってきてよ。今日から発売でひと箱8000フルールだったから、みんなでカンパしよう。私2000出すから。」
「あっ!それ私も。」
「あんた達!体よく人をパシリに使ってんじゃないわよ!!」
………そして『スイーツショップ_ラビアンローズ』店内
「お待たせしました。こちら、スイートポテトのティーセットになります。」
「どれどれ…はぁ~~、ナニコレ…美味しすぎる。すみませ~ん、お土産用もひと箱おねがいしま~す。」
こうして、ラビリの喫茶店『スイーツショップ_ラビアンローズ』は着々とファンを増やしていくのであった。




