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040_お人好しは誰?

「ヤバい、このままお店に戻っても僕達ってただのお客さんだよね。」


コービット商会の本店前。

僕はこの時重大な事に気づいてしまった。僕らのここに来た最大の目的は買い出しだという事に。

実のところ、スイートポテトの売り込みはついでで、真の目的はラビリお姉様のコネを利用して、お友達価格で物資を揃える事にあったわけなんだけど、先ほどのあれだからね。

正直、買い物もしづらいというのが本音だ。でも今から市場やら雑貨屋やらを駆けずり回っても時間が足りない。

さて、どうしたものかと悩んでいたわけだけど、何もしないわけにはいかないので取り敢えずゼブラさんに相談してみる。


「ねぇ、ゼブラさんは普段どうやって買い物をしてるんですか?」


「ん?俺っちか。そりゃ足を使って知ってる店を片っ端から当たってくだけだぜ。」


「う~ん、なんとも脳筋ですね。もっといい方法はないんですか?」


「知るかよ!そういう頭脳労働はお前の仕事だろう。」


「取り敢えず手分けするって言うのはどう~?」


「いえ、そうするにしてもぼく達、この街の地理を知らなすぎます。」


「……」×4


などと迷惑にもコービット商会の目の前で騒いでいた僕らなわけだけど、それが目に留まってしまったのか、後ろから男の声が降って来た。


「そこの貧相な4人組、吾輩の店で騒ぐでない。商売の邪魔だ!」


その声に振り返った僕らの目の前に現れたのは、僕よりも少し背が高く、そして僕とは対極的に太った如何にも臭そうなウサギの禿親父である。ウサギの癖に禿とかもう犯罪の匂いしかしないんだけど。

そんな犯罪者(偏見)が取り巻きを引き連れて僕に絡んで来たわけだけど…なんていうか…ダメだ、こいつ生理的に受け付けないわ。だって僕が最も嫌いな汚い金で肥え太ったタイプなんだもん。

何で太ってるだけでそういう判断が出来るのかって?そんなもん僕の独断と偏見に決まってんだろうが!この太り方と臭さは絶対に他人から搾取した金で肥え太ったクソ野郎に違いない。

僕は義憤に燃え上がり、スイカの皮の匂いがしそうなわがままボディのクソ親父共にメンチを切ると、何故だか相手さん達が震え出す。

やはり悪党には正義の怒りが通じるんだな。でもなんで味方であるはずのパフィさん、エレフさん、ゼブラさんまで怯えてるの。解せないんだけど。

そんな感じで皆が黙り込んでるので、仕方なく僕が言いたい事を言わせて貰う事にした。


「いきなり何ですか!僕ら見ての通り、ここのお店の商品を買おうと検討している善良なお客様なんですけどね!

ここってあんたのお店なんですよね?じゃあ、あんたはラビリ=コービットさんですか?ラビリさん、随分とお太りになりましたね。10分前に見た時とはえらい違いですわ。

寝言は寝て言えよ、クソが!テメェみたいなデブ禿加齢臭男が経営者なわけねえだろうが。そんなもん店の状況と店員さんの様子を見れば一発で分かるんだよ!

見てみろよ。店員さんの冷たい視線。これが経営者に向ける視線だったら、教育不行き届きの店員のせいでこの商会潰れてるわ。

でも見た所、この店は正常に機能している。つまりテメェが経営者を騙ってるってのは明白ってことなんだよ。分かった?分かったよね?はい!完・全・論・破!」


よし、一気に言い切ったぞ。ふぅ、言いたい事言えるって素晴らしい!言論の自由万歳!

なんか身内がドン引きしていて、禿が顔を真っ赤にしていて、店員さんと取り巻きがガタガタ震えてるのが気になるけど、正義は僕にあるし些末な事だよね。

そんな感じで僕がいい事をしていると、


「貴様!吾輩がズンダダ=コービットだと知っての無礼か!!良いか、吾輩の手にかかれば貴様なぞ一生この街で働けない様にしてやれるんだぞ!!」


などと禿親父がいきなりキレだす。全く最近のジジイは怒りっぽくて困るな。

それに別に僕、この街の人間じゃないからここで働かなくても影響ないし。僕は集落に引っ込んで物資は全部パシリことゼブラさんに運んでもらえばいいだけだし。

みんななんか青くなってるけど心配しすぎじゃないかな。まぁ相手はモンスターじゃないから身体的にコロコロは出来ないけど、社会的に抹殺なら可能でしょう。

どこから手を付けようかな~。なんて素敵な笑みを浮かべながら考えていると、僕の後ろから先ほどまでお話していた鈴が転がるような綺麗な声が聞こえる。


「これは何の騒ぎでございますか?叔父様。」


えっ!ラビリお姉様、この人あなたの叔父さんなの?遺伝子仕事してないな。この2人に血の繋がりがあるなんてマジないわ~。そんな事を考えながら、素敵な笑みで振り返る。


「やぁ、ラビリさん。殺気ぶり(・・・・)。」


「ひぃ!なんですか?その死神が微笑んだような形相は!それになんかさっきって部分が違う気がしますわ!!」


「すみません。ちょっと買い物をしようとお店を覗いていたら、よく分からないデブジジイに絡まれたもので。どうやって社会的に抹殺してやろうか考えてたところなんですよ。」


「ひぃ!!!」×5


いや、そんなに驚かなくても。確かにちょっと刺激的な言葉を選んじゃったけど、名前と容姿が分かっちゃってるんだから、別にそんなに難しい事じゃないよね。

ちょっとつけ回して弱みを握ってやって、それを拡散してやれば信用なんて一発でボーンだよ。僕って働かなくても生きていけるからやろうと思えばやりようはいくらでもあるし。

ヤバいな。僕の思考って完全にサイコパスだ。きっと今の僕の頭って『はははぁ~、豚は死ね!!』みたいになってるんだろうな。

一生懸命の人とはいいお付き合いをしたいけど、クズ野郎はボコボコにぶちのめしたいんだよね。きっと前世のクソ親父の客共を連想させるからかな。まぁ、今は関係ない事だね。

そんなどうでもいい事は取り敢えず置いておこう。このズンダダさんに軽く口撃でもしてあげるかな。


「いやぁ、ラビリさん。実はこのズンダダさんにこう言われちゃったんですよ。『吾輩の手にかかれば貴様なぞ一生この街で働けない様にしてやれるんだぞ!!』ってね。

これって脅迫罪に当たりませんか?証人ならこのお店の店員さんがやってくれると思うんですよね。

しかもその前になんて言いましたっけ。『そこの貧相な4人組、吾輩の店で騒ぐでない。商売の邪魔だ!』だったかな。

これって客に言うセリフじゃないですよね。こんな事を店の前で言って騒ぐのって威力業務妨害ですよね。

ほら、野次馬がたくさん集まっている。皆さん!聞いて下さい!!このズンダダって人は他人のお店の前で騒いで迷惑をかける害虫野郎で~~す!!」


「コラ!!静かにせんか!クソッ!今回はこれにて失礼する。そこの黒髪の小僧、このズンダダを敵に回した事、後悔させてくれるぞ!!」


おっと、悪党らしい捨て台詞を吐いてその場を後にする。それを見送った僕が爽やかな笑みを浮かべながら一息ついていると、


「コンヨウさん!!いきなりあんな無茶をして!いったい何を考えているんですか!!」


パフィさんに怒られてしまった。でもね、これには色々と理由があるんだよ。


「えっと…ごめんね。確かにみんながいる前でする様な事じゃなかったよね。でもこれは必要な事なんだ。」


「必要な事?」


僕の返答に対して、今度はラビリさんが疑問を投げかけてきた。


「はい、あのジジイ、多分ラビリさんの商売敵でしょう。あの様子だときっとラビリさんの喫茶店にもちょっかいを掛けていましたよね。

これを放置すると僕らの作ったスイートポテトが売れなくなるかもしれない。正直それは看過できない。だからあのジジイがラビリさんにちょっかいを出せない様になる程度にダメージを与えようと思うんです。

そして何よりああいう人に迷惑を掛けて肥え太った畜生は僕が最も嫌いな人種だから。」


「……」×4


あれ?僕の言葉にみんな呆けた表情をしているけど。もしかして呆れられたかな。仕方ないよね、嫌いな人間をボコる理由があったらボコりたいのが人間だもん。

大義名分を手にしながら、個人的に気に食わない人間を絞めようと画策する僕にラビリさんが口を開く。


「はぁ、あなたは随分とお人好しの様ですのね。分かりました、私とあの叔父の事情についてお話しますのでついて来て頂けますか?」


そう言うとラビリさんがちょっと嬉しそうな表情で店の奥に向かって歩き出す。

彼女の不当な評価に僕はなんだかよく分からないと言う気持ちで彼女の背中をぼんやりと眺めていると、パフィさん達が僕にため息をつきながら声を掛けて来る。


「コンヨウさん。お人好しなのは結構ですけど、ちゃんとぼく達に事前に相談して下さいね。」


「そうだぜ。俺っち達は同じ集落の仲間だろう。一人で無茶するんじゃねぇっての。」


「そうだよ~。ウチで作ったスイートポテトをみんなに食べて欲しいって気持ちは僕も一緒だから~。」


「…‥うん、そうするよ。」


勝手な行動を取った僕に呆れながらも協力してくれるお人好しのみんなに感謝しながら、ラビリさんを追いかける僕なのであった。

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