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033_因果応報

「皆様、今日は一日お疲れさまでした!」


「お疲れさまでした!!!」×4


本日の焼き芋販売は完売(僕の体力切れ)により終了した。

ウサギ少女のラビリちゃんが去ってから暫くして、パフィさんとエレフさんが休憩から戻って来て、その直後にピーク到来し、一気に700個ほど売れてしまい、予想より早く店じまいとなってしまった。


売り上げ個数は『紅音姫』が531個『甘納芋』が1382個『ノンブランド』生芋が500個、合計2413個、売り上げ総額614900フルールだ。うん、これ絶対ヤバい奴だよね。

さっきのシマトラ組じゃないけど、こんな大金持っているってバレたら悪い人達につけ狙われそうで怖い。なんか通帳みたいなの作れたらいいんだけどね。


さて、手元にお金を置いているのも怖いし、給料の支払いからだ。まずゼブラさんとエレフさんには当初の約束通り20000フルールずつ。パフィさんには護衛分の料金上乗せで30000フルール。

そしてスフィーダさんには約束のお給金4800に超過勤務手当をつけて6000と護衛料としてプラス10000、合わせて16000フルールを支払った。

僕が思うに、この世で一番価値がある資源の一つは安全なんだよね。故に護衛とか身体を張ってくれた人へのお礼はケチっちゃいけないと思うわけで。

今回活躍してくれた二人にはその事をコンコンと説明して何とか報酬を受け取らせる事に成功した。

それでも合計で86000だからまだ528900フルールあるわけで、これの処理について考えないといけない。

ほら、何度も言うけど大金を持ち歩くとか怖いでしょう。


と、言う訳でこの場は一旦解散し、商業ギルドに相談しに行く事にした。

まぁ、あの腐れ受付に天誅を下すという目的もあるしね。

向かうメンバーは僕、パフィさん、ゼブラさんの3人だ。ちなみにエレフさんはこの後食材探しに、スフィーダさんは夕食を買って孤児院に戻るそうだ。

これから起こるであろう悪党退治に思いを馳せ、素敵な笑顔を浮かべながら作戦会議をする僕とゼブラさんに、パフィさんとエレフさんとスフィーダさんが何故か震えまくっていたのが気になるけど。

なんかパフィさんも逃げたがっていたけど、君は護衛だから駄目だよ。

そんな感じでパフィさんを無理やり引き摺りながら商業ギルドに辿り着いた僕ら。


「こんにちは、腐れ金の亡者。早速あなたをシバキ倒したいんですけどいいですか?」


「いきなりご挨拶ですね。何かありましたか?」


ギルドに入って開口一番、笑顔で毒を吐く僕に対して、吐かれたキャシーさんが何食わぬ顔で応じる。

だが僕もこの程度の事は織り込み済みだ。なんせこの女は初めての客に対して不良物件を押し付ける外道だ。

ちょっとやそっとでは動じないだろう。さてと、僕も久しぶりに本気になるかな。ゼブラさん、手筈通りお願いします。


「いや~、実はあなたに紹介された区画で問題が発生しましてねぇ~。後で確認したんですけどあの路地裏の近くで商売をしていると時々ガラの悪いお兄さん方にたかられる事があるらしいですね?」


若干ガラの悪いあんちゃん風にゼブラさんが腐れ受付に詰め寄る。だがあの女の反応はというと、


「えっ?そうなんですか?そんな話聞いた事ありませんけど。」


ほう、白を切るか?でもこれははっきり言って悪手だぞ。

ここで僕が人の良さそうな笑みで問いを重ねる。コラ!パフィさん、こんな素敵な笑顔の僕相手に震えるなんて失礼だろ。


「なるほど…つまり知らなかっただけで悪意はなかったと。」


「そうなんですよ~。大変な目にあわせたみたいで申し訳ありません。」


「ちなみにキャシーさんはここに勤めて何年になりますか?」


「??…5年ですけど?」


よし、かかった。僕とゼブラさんの口元が思わず三日月形に変化する。


「うむ、5年と言えば少なくとも中堅、もしくはベテランですよね。そこのあなた?」


僕はここであえて近くにいる適当な職員に話を振る。僕に話を振られた青い毛並みの鳥の獣人さんが丁寧に質問に答えてくれる。


「えぇ、キャシーさんはもうベテランと言ってもいいんじゃないでしょうか。」


「ありがとうございます。鳥の獣人さん、えっとお名前は?」


「アズラと言います。」


「アズラさん、これから僕が言う事の証人になって頂けますか?」


「ちょっと、仕事中の職員を巻き込むのは…」


「ほう、僕はギルドの登録商人ですよ。その相手は仕事ではないと?」


「いえ…」


「宜しい。実はですね、アズラさん。僕は今日、市場のこの区画をキャシーさん(・・・・・・)に奨められて500フルールで借りたのですけど。」


そう言って僕はアズラさんの前で地図に指差す。その瞬間アズラさんの驚きの表情を浮かべ、腐れ守銭奴は顔を青くする。

おおむね予想通りの反応だ。さてここから畳みかけますか。


「どうも、キャシーさんはこの区画でトラブルが発生しやすい事を知らなかったらしいんですよね。

僕が借りる時も『お値打ちの良い場所がありますよ。』って言ってましたし。」


「あぁ、俺っちも確かにそういうのを聞いたぜ。」


僕とゼブラさんの言葉に、アズラさんは責める様な視線でキャシーさんを睨みつける。さぁ、トドメだ。


「ちょっとこのギルドの責任者の方を呼んできていただけないでしょうか?

5年も勤務しているベテランが重要な情報を知らないなんてどういう教育をしているのか、是非とも伺いたいので。」


市場を管理している商業ギルドなんだから、その周辺の治安については知っていて然るべきだよね。

この瞬間、腐れ守銭奴は脂汗を滝の様に流し、この世の終わりのような表情をしていた。ざまぁ。

そして僕の言葉に凍り付くアズラさん。ちっ!こいつ新人かよ。クレーム対応はスピードが命なんだよ。早く呼びにいかないと火種がドンドン大きくなるよ~。

ゼブラさん、ちょっとこの新人のケツに火をつけてあげて下さ~い。


「急いでくれるかな。そうしないと俺っち達、ちょっと表に出て叫びたくなっちゃうかも知れないぜ。『ここのギルドの職員は初めての相手に悪意を持って不良物件を押し付けようとする輩ばかりだ!』ってな。」


ちょっと大きめの声で言ったからだろうか、周りの職員と一部の利用客に聞こえたようだ。

利用客の中から決して小さくないざわめきが起こり、先輩職員と思われるサルの獣人さんが慌てて責任者さんを呼びに行く。

そして何故か僕らの連れであるパフィさんまで青い顔をしている。いや、別にパフィさんに何かするわけじゃないんだからそんなにビビらなくても。

それから数秒後、慌てた様子で責任者と思われるゴリラの獣人さんがやって来た。


「すみません、私はこのギルドのマスター、マイトと申します。

ウチの職員がご迷惑をおかけしたと聞き参りました。詳しい事情を別室で伺っても宜しいでしょうか?」


うん、悪くない対応だ。取り敢えず公衆の面前を避けて、それでいてしっかり対応しようとしている。

ここで僕達が輩ならこの場でまくし立てるんだけど、僕が潰したいのはあくまでもこの腐れ守銭奴のキャシーさんだ。

ギルドに迷惑をかける気はサラサラない。それに大金の管理方法も教えて欲しいし。

と言うわけで勿論その申し出に笑顔で応じる。


「はい、是非ともよろしくお願いします。マイトさん。」


そしてマイトさんの案内に従って僕とパフィさんとゼブラさん、証人のアズラさん、それから死刑囚のキャシーさんがギルドの建物の奥の部屋へ移動する。

どうやら応接間のような個室で対応するらしい。部屋に入るとマイトさんは僕とパフィさんとゼブラさんに椅子を勧める。

そして全員が座った所で僕が事情を説明する。


「……と言うわけです。」


「誠に申し訳ございませんでした!!!」


速い!そして鮮やか!背筋がピンと伸び、腰の角度は90°まさに百戦錬磨の謝罪がマイトさんから飛び出す。

この見事な礼、この人相当苦労している。僕はそれだけで涙が出そうになる。勿論同情で。

でもこれはこれ、それはそれでしっかり賠償はしてもらうけどね。キャシーさんは頭を下げないのかって。別にいらねぇよ。この腐れ守銭奴にしてもらいたいのは謝罪じゃなくて破滅だから。


「マイトさん。頭を上げて下さい。僕としても別にギルドにご迷惑をおかけしたいわけではありませんので。」


「では!」


この瞬間、マイトさんの張り詰めた空気が少しだけ緩むのを感じる。でも謝罪の姿勢を崩さないあたり、この人プロだ。

それに引き換え、新人と守銭奴はなってねぇ。テメェら!もっとマイトさんを見習えよ!この人は頭を下げながらギルドを守るために戦ってんだよ!

そして腐れ守銭奴、テメェがホッとするんじゃねぇ!僕の中じゃテメェは破滅決定なんだよ。よし、笑顔で死刑宣告だ。


「はい、責任は全てキャシーさんにありますので。賠償は全て彼女に支払われる予定だった報酬からお願いします。」


「!!!」


なに驚いた顔してんだよ。たりめぇだろうが。クソビッチが!

ここでゼブラさんと僕が大仰に身振り手振りを交えながら畳みかける。


「今回はたまたま誰も怪我をせずに済んだけど、6人の怖い人達に囲まれてみんなスゲー怯えてたんだぜ。連れの象獣人は虎獣人のヤクザに掴みかかられて精神的にまいっちまってたし、ウチには女の子が2人いたしな。」


「えぇ、もし一歩間違えば女の子達は乱暴された上にいかがわしい店に売り飛ばされたかも知れません。その辺も考慮して賠償をお願いします。」


この言葉にマイトさんが青い顔をし、再び頭を下げながら応じる。


「…分かりました。キャシーは今日付けで解雇とし、支払われるはずだった報酬は全て賠償に当てさせて頂きます。」


おっ!流石マイトさん。僕らの脅しの意味を正確に理解してくれたみたいだ。

『僕らの望み通りこの女に厳罰を与えろ、さもないとギルドごと潰すぞ』って意味をね。

いや~、マイトさんが賢明な人で助かったわ。だって一つの組織を潰すのってめんどくさいんだもん。えっ!一個人が組織潰すとかできるのかって?流言って結構怖いんだよ。SNSとかで破滅する芸能人とか結構いるでしょう。あれを組織に対してやるだけだよ。ねぇ、簡単でしょ。

黒い笑みを浮かべながらそんな事を考えていると腐れ守銭奴のキャシーさんが声を荒げながら抗議してくる。


「ちょっと!ギルドマスター!私は5年間、ギルドの為にやっすい給料で尽くしてきたんですよ!

それなのに、こんな何も知らなそうなガキからちょっとお小遣いを稼ごうとしただけでそんなヒドイ目にあわないといけないんですか!」


この瞬間、僕とゼブラさんの顔に素敵な笑顔が浮かぶが、それよりも強烈な全てを焼き尽くすような怒りのオーラがマイトさんから沸き上がる。


「黙らんか!この恥知らずがッ!ギルドの信用を利用して大切な商人様に損失を与えようとしたばかりか、その事を全く反省していないその腐った性根!

本来であれば裁判所に突き出して、私財没収の上に牢屋にぶち込むところ、解雇と報酬の没収だけで許してやろうと言っているのが分からんのかァアア!!」


「ひぃ!!」


うわぁ、まさに大気が震える様な怒号。温厚な人って怒らせると怖いんだよね。怒られている腐れ守銭奴だけじゃなくて、僕らまで思わずビクッってなっちゃったもんね。


「ウチのバカ者が申し訳ありませんでした。この者への罰とあなた方への賠償は速やかに行わせて頂きます。重ね重ね申し訳ありませんでした。」


そう言ってマイトさんが頭を下げた事でこの場の話は終了となった。

そんなこんなでアズラさんに手を引かれて、全てが終わったと言った風情で項垂れながら退出するバカ女。

ちなみにこの後マイトさんに聞いたのだけど、あの区画の貸し出し金500フルールはあの女の懐に入っていたらしい。

しかも、登録者申請の手数料は1000フルールだったらしく、差額の2000フルールと合わせて2500フルールも返却して貰った。

賠償金はバカ女の今月分の給料20万フルールとボーナス30万フルール、合計50万フルールが支払われるとの事。

ホントに馬鹿な事せずに真面目に働いておけばこんな目にあわなかったのにね。尚、賠償金はみんなに10万フルールずつで分配する予定。

この事をパフィさんに笑顔で話したんだけど、


「怖いです…2人とも、超怖いです…」


と何故か猫の前で怯えるセキセイインコの様なリアクションを取られてしまった。なんでだろうね?全く不思議な事もあるものだね。

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