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031_シマウマ獣人ゼブラとナプールの門番ナツメ

031_シマウマ獣人ゼブラとナプールの門番ナツメ


「なぁ~、ナツメっち。さっきの俺っちって最低だったよな。」


「お前がそう思うんならそうなんじゃないか。」


ここはナプールのとある食堂。

そこで食事をしながら落ち込むゼブラにつれない返事をする門番のナツメ。

その言葉に更に落ち込むゼブラを見て流石にマズイと思ったナツメが話を切り出す。


「なぁ、ゼブラ。どうしちまったんだ?お前がそんなに落ち込むところ、初めて見たぞ。」


「あぁ、そりゃ落ち込むさ。だってさっきの俺っちが言ったセリフってつまり『利用価値があるから無茶をするな』って意味だろう。

これって、俺っちを利用していたあの政府のゴミどもと同じ事言ってるじゃねえか。」


「はぁ、やっぱりお前はあの事を恨んでるんだな。あれは確かに恨んで当然だ。俺だって今の生活が無ければ衛兵なんて辞めている。」


「そうだな。お前は嫁さんと子供がいるから今の生活を手放せないもんな。いや、別に責めているわけじゃないぜ。それが普通なんだ。」


ここでゼブラは沈痛な面持ちで少し沈黙を挟み、話を切り替える。


「飢饉の村で食べ物を高値で売って、その代金が払えなくなったら土地を没収する。その村は今ではリゾート地に作り替えられているらしいぜ。

そして元村人はそこで安値で雇われてこき使われている。そんな生活がいやで一部の人間はあの森に逃げ込んだ。」


「お前が今世話になっている集落だな。」


「あぁ、まさかその原因の片棒を担いでいた奴が目の前にいるなんて誰も思わないだろうな。」


「あれはお前も知らなかったことだ。まさか支援物資だと信じて運んでいた食べ物が村の人間を食い物にする為のものだったなんてな。」


「全く皮肉な話だよな。俺っちはその功績が認められ、昇進が決まったって聞いた時になんていうか…全部馬鹿馬鹿しくなっちまったんだ。

村の事で上官に抗議をした時に言われた言葉が『お前のスキルがあればもっと出世できる。だからそんな小さな事でキャリアに傷をつけるな。』だったっけな。」


「…お前が部隊を抜けるには十分な理由だな。その集落の人達の力になりたいと思ったんだろう。」


「あぁ、でも結局ダメだったけどな。俺っち直接戦闘はてんでダメだからモンスターとはまともに戦えねぇし。

それでバックルさんが怪我をして、みんなが飢えているのに俺っちは何も出来なくて。

そんな時にみんなを助けてくれたのがコンヨウっちなんだ。」


「あの少年がか?一体どうやって?」


「それは言えねぇ。でもコンヨウっちはあんなに小さいのに俺っちなんかよりずっと凄くって。

でも本当はすっごく脆くって、誰かがちゃんと支えてやらないといけないのに、俺っちときたら…」


遠くを見る様な表情でコンヨウの事を思うゼブラの姿にナツメは思わず息を止める。

そして、少しの間を置き、息を吐きながらおもむろに呟く。


「…俺はあの少年が羨ましいな。」


「はぁ?」


「だってそうだろう。お前にそれだけ言わせる奴なんてそうはいないぞ。

飢饉や災害のあった村に颯爽と現れ、物資を届ける『奇跡の配達人』ゼロス=ブラームス。」


「お前がそれを言うか。ナプール最強のガーディアン。ナツメ=クロウ。」


お互いの名前を呼び合い、獰猛な笑みを浮かべる2人。そしてナツメが更に言葉を重ねる。


「じゃあ、一つアドバイスだ。お前は少年をエラく買っているみたいだが、お前には少年にはない武器がある。

それはスキルであり、知識であり、情報であり、経験であり、人脈であり、若者には決して手に入れられない年季って奴だな。」


「おい、俺っちまだ30にもなってないんだぞ。」


「まだ成人もしていないような少年から見れば立派なおっさんだ。

お前があの子の『利用価値』の為につるんでるんじゃないって言いたいなら、お前はあの子から貰った分以上にあの子の役に立て。」


ナツメの一言に憑き物が落ちたようなスッキリとした表情でゼブラが切り返す。


「…ありがとうよ。じゃあ、お礼にここは俺っちが奢ってやる。

だからなんか役に立つ情報とか寄越せ。」


「はぁ…ちゃっかりしてんな。まあいいけどよ。」


「お前が言ったんだぜ。人脈を利用しろってな。」


「分かったよ。じゃあ、手土産にあの場所の情報とシマトラ組について教えておいてやる……」


「……ほう、そうか。いい手土産になったぜ。それじゃ、俺っちそろそろ行くわ。あの汚職衛兵の処理は任せてもいいか。」


「あぁ、分かっている。少年が寄越してくれた情報のお陰で漸く御用に出来るんだ。願ってもない。」


こうして、ゼブラとナツメは己の今の居場所へと戻っていくのであった。その胸に秘めた決意を新たに。

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