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029_意外な弱点、意外な戦力

「あんちゃん、こっちに焼き芋五つ、全部甘い奴でね。」


「は~い、ただいま~。」


「えっと…これってどういう事?」


「あッ!スフィーダさん。ちょっと早めで悪いんだけど手伝ってくれるかな。」


ふぅ~、助かった。僕らは焼き芋屋台の準備のために、開始時間よりちょっと早めに市場にやって来てたんだけど。

昨日の宣伝が効き過ぎたのか、既に長蛇の列でさ。準備と販売を同時進行で行わないといけなかったからてんてこ舞いで。

スフィーダさんが予定の少し前に来てくれたのは嬉しい誤算だね。早速仕事をお願いしよう。勿論超過勤務手当は払うから。


「じゃあスフィーダさんは注文を聞いてそこの箱に入っている焼き芋をお客さんに渡して、料金を受け取って来て。料金は分かるよね。」


「ええ、『紅音姫』が200で『甘納芋』が350ですよね。」


「うん、箱に名前が書いているからそれで分かると思うよ。」


「了解、それじゃ行ってきますね。」


よし、スフィーダさんに接客は任せて、僕は焼き芋作りに専念だ。こんな時に使うのが新強化スキル『生成場所指定』だ。

これで箱の中に焼き芋を生成場所を設定すれば怪しまれる事なく、公衆の面前でスキルを使う事が出来る。ちなみにスフィーダさんには別の場所で焼いた焼き芋を持ってきている事にしている。

だからスフィーダさんは基本的に屋台から離れた場所で仕事をしてもらっている。

おっと、パフィさんもエレフさんもゼブラさんも忙しそうだ。僕も加勢しないとね。接客しながら焼き芋作りって、僕って結構器用だったりするのかな。


「コンヨウさん!紅5甘5お願いします!」


「コンヨウっち!こっちは甘10だ!」


「コンヨウ君~、先に作り貯めしておいた方がいいかもね~。接客はこっちでやるから〜。」


「コンヨウ君、箱が空になっちゃいました。新しい奴貰っていきますね。」


うん、まさに修羅場だね。僕はひたすら焼き芋を作るマシーンになってるし。

ヤバい、僅か1時間でもう500個に達している。嘘だろう!スキル強化のアナウンスが鳴ったぞ。

こりゃ色んな人に食べてもらうと強化ポイントが貯まりやすくなるって言う事でOKみたいだね。

よし、あと1時間経ったら、一旦休憩にしてその時に強化で生成量を増加させよう。


「甘い奴5個頂戴。」


「俺はしっとりの奴5個くれ!」


「私、甘いの2つ下さい。」


「僕はしっとりと甘い奴1つずつ下さい。」


うわ~、あれから更に1時間経過、今が11時か。よし、限界も近いしここで一旦休憩を入れよう。


「すみませ~ん。焼き芋がきれましたので一旦休憩を入れます。

12時から再開しますのでお並びの方でご購入を希望されるかたは整理札をお受け取りください。」


これは僕があらかじめ作っておいた整理券の木の板バージョン。これである程度不満を軽減できるだろう。

僕が休んでる間はゼブラさんに『ノンブランド』生芋販売をやってもらおう。ついでにスフィーダさんにも焼き芋を渡して休憩を取ってもらっておこう。

12時になったらゼブラさん、1時になったら残り二人が休憩だね。よし、じゃあ、ちょっとお昼寝タイムっと。


「ゴメン、パフィさん。僕とスフィーダさんでちょっと休憩に入るからその間はゼブラさんと一緒に生芋売りやっててくれるかな。

それから少し寝るから、1時間経ったら起こしてくれるとありがたい。」


「はい…分かりました。少しくらい寝坊しても大丈夫ですから、ちゃんと休んでくださいね。」


「うん、ありがとう。それからこれ、スフィーダさんの焼き芋だから渡しておいてね。」


「了解です。お休みなさい。コンヨウさん。」


パフィさんが心配そうに僕の顔を覗き込む。多分スキルの使い過ぎで疲れた顔をしてるんだろうな。寝れば治るからそんなに心配する事無いのに。


………


その後すぐ、僕は近くの木にもたれかかりそのまま夢の世界へと旅立つ。こういう時前世の野宿の経験が活きるな。ふあ~~…


…………


多分、少し寝ただろう。スキル強化は無事完了。勿論生成量増加を選択。

チョッパヤでやったから思ったより時間経過していないみたいだ。整理札を渡したお客さんはまだ戻っていないようだ。


「おはようございます。顔色はだいぶいいみたいですけど、もう大丈夫ですか?」


目を覚ました途端、パフィさんがお出迎えだ。やっぱり心配かけたみたいだな。ここは大丈夫アピールしておくか。


「うん、寝たおかげでだいぶ良くなったよ。でも午後は3時くらいまでにしておこう。

その時間が過ぎれば人もそんなに来ないだろうし。」


そうパフィさんに声を掛けると今度はゼブラさんとエレフさんとスフィーダさんが僕に駆け寄ってくる。


「よぅ、コンヨウっち。体調はだいぶ良くなったみたいだな。もしダメそうならこのまま切り上げるがどうする?」


「大丈夫です。それより、ゼブラさん。生芋の方はどうですか?」


「いや、もう全部はけちまったよ。あれだけいい芋がお値打ち価格なんだから当然っちゃ当然だけどな。」


「うん~、今日売っている奴より甘くないですよって言ったんだけど~、十分質のいい芋だからこっちも欲しいっていう感じでさ~。」


「だからみんな今、暇なのでこうしてお話をしていたところなんですよ。」


なるほど、みんなスフィーダさんとも仲良くやっているみたいで何よりだ。ただ純粋な笑顔のスフィーダさんとは対照的に、ゼブラさんの目がエロい気がするのが気になるけど。


そんな感じでみんなが和気あいあいとしている所に、突然暗雲が立ち込める。


「よぉ、テメェらかァッ!ワシらシマトラ組のシマで許可もなく派手な商売してんのはァーーーッ!!!」


虎の獣人だろうか?なんか柄が悪そうなおっさんとその子分らしい猫の獣人がエレフさんに絡んできたよ。

ありゃヤの付く自由業の方だよね。それよりシマトラ組ってダッサ。


「ちょっと~、待ってくださいよ~。僕達はちゃんとギルドから許可を取って~ここで商売をしているんですよ~。」


「じゃかあしいわ!!ギルドがなんぼのもんじゃ!ここじゃあワシらが掟なんじゃ!!四の五の言わずに詫びの一つでも入れんかい!」


取り敢えず、あちらさんがエレフさんに気を取られている隙に僕はゼブラさんに耳打ちする。


「あの~、ゼブラさん。なんかヤバそうですけど。助けを呼んできてくれませんか。あなたの足が頼りです。」


「あぁ、分かった。ちょっとナツメっちを呼んでくるから…くれぐれも無茶だけはするなよ。」


そう言って、ゼブラさんはシマトラ組の組員さん達に見つからない様にその場を離れる。

さて、無茶をするなとは言われたけど、誰か助けてくれないかな~。あっ!あそこに衛兵さんが…って逃げんなよ。クソ!使えねぇな。テメェの顔覚えたからな!後で覚悟しとけよ、ダボが!

でもどうしよう、こっちには最強の護衛パフィさんがいるし、エレフさんに危害が及ぶ前に何とか片づけたい。

ちょっとコロコロできるか、相談してみるか。


「ねえ、パフィさん。あの人達、ガスでコロッと出来るかな?」


「う~ん、このままだとエレフさんも巻き添えを喰らう可能性がありますけど。」


あっ、そうか。ガスだから範囲攻撃なんだ。今までモンスターが相手だったから気付かなかったけど、思わぬところに落とし穴があるもんだな。

さてどうしたものか。取り敢えず取り巻きはエレフさんから離れているみたいだし、そっちをコロコロしてもらおう。

親分については最悪エレフさんも道連れでいいか。死ぬわけでも無いし。


「パフィさん。取り敢えず周りの取り巻きをコロコロしちゃってくれるかな。それに相手が動揺したらエレフさんに逃げてもらうから。」


「…了解です。でも今のコンヨウさん。顔が腐れ外道でしたよ。」


えっと…パフィさん、どうして僕の脳みその中がそんなに的確に分かるのかな?

僕ってもしかして凄く顔に出るタイプだったりするのかな。まあいいか。じゃあミッションスタート!


「よし、パフィさん、準備はいい?」


「いつでもどうぞ。」


「カウントダウン、3、2、1…0。」


「匂いガス、発射!!」


……ウゥッ!!!!!!!

おっ!流石パフィさん、5人まとめてコロッとやっちゃいましたよ。


「何じゃ!テメェら!いきなり倒れてからに!!」


「エレフさん!逃げて!!」


「えっ???」


ちょっと!エレフさん!せっかくのチャンスなのにキョトンとしないでよ!

ほら、虎の親分さんに感づかれたじゃないかぁ!


「おどれら!なにしくさった!!ブチくらすぞ!コラッ!!」


ヤバい!親分さんがエレフさんに掴みかかってくる!パフィさんも間に合わない。

もうダメかと思ったその瞬間……


僕の横を一陣の栗色の風が走る。


「させません!!スキル『カロリーブースト』パ~~~ンチ!!!」


ドッゴ~~~~~~~~ンンンッ!!!!!!!


「ぐぎゃ~~~~~~~ぁあああああ!!!!」


うわ~~~あぁあああぁぁあああああぁあああああ!!!!!なんかスフィーダさんが凄いパンチで虎の親分さんをぶっ飛ばしたぁあああ!!!!!

バカ虎が多分5mくらい空を飛んだんじゃないかな。ヤベェよ、超ヤベェよ~~~!!


「ふぅ~~、間に合ってよかったです。」


「えっと、スフィーダさん…今一体何をしたの?」


「これはわたくしのスキルです。体内のカロリーを放出して力を強化する『カロリーブースト』、それから体内にカロリーを貯めこんでおける『カロリーチャージ』。」


「…なるほど。それで肉体強化をして反社のおじさんをぶっ飛ばしたわけですね。」


「はい、そうです。そこで…一つお願いがあるんですけど…」


「お願い?」


ぎゅるるるる~~~~~~!!!


「お芋…下さい。このスキル使うとすッッッごくお腹が空くんです。」


「…はい、取り敢えず『甘納芋』10個でいいですか?」


「はい!ありがとうございます!」


こうして僕らの窮地を救ってくれた救世主スフィーダさんは、一心不乱に焼き芋に喰らいつくのであった。しかしいい喰いっぷりだな。それに美味そうに食ってんなぁ、おい。

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