028_こうやって冤罪は生まれる
「はい、お疲れ様。これが給料です。それからこっちは宣伝がうまくいった事に対する追加報酬です。」
そう言って僕はスフィーダさんとクソガキどもにそれぞれに2000フルールと生芋を一人当たり10個渡した。
それを受け取ったクソガキどもは『お腹いっぱいになる上にお金も貰えるなんて最高』などとのたまわっていたっけ。
まぁ仕事での食レポとただのおやつの違いが分からない子供相手じゃ仕方ないね。
さて、ここでスフィーダさんにもう一つお願いしようかな。
「すみません。スフィーダさん。実は明日も別のお仕事をお願いしたいんですけど。」
「なんでしょうか?性欲発散ですか?」
「………」×6
「いい加減ぶっ飛ばしますよ。それからなんでみんな僕をゴミを見る様な目で見るわけ。今のはスフィーダさんが悪いよね。」
今のは僕、何も悪くないよね。スフィーダさんが勝手に言ったんだもん。
なのになんで僕が変態扱いなわけ。これって痴漢の冤罪と同じじゃないかな。クソ!なんて世の中だ!
さて、これ以上傷が大きくなる前に話を進めるか。
「実は今日の宣伝が予想以上に好調だったので、もしかしたら人手が足りなくなる可能性があるんですよ。
もしよければ手伝ってくれませんか?時給800フルールで6時間、4800フルールでお昼に焼き芋付きでどうですか?」
「えっ!本当ですか?わたくしで良ければ是非ともよろしくお願いします。」
「よし、交渉成立ですね。では明日朝、9時に市場の路地裏前にお願いします。」
こうしてスフィーダさんと再び契約した後、僕とパフィさんは孤児院を後にし、宿屋に戻る事にした。
そう言えばさっき頭の中でアナウンスがあったんだけど、またスキル強化が出来るようになったみたい。もしかするとだけど、たくさんの人に焼き芋を食べてもらうと経験値が貯まりやすいのかな。
これって商売を続けるとあっという間にスキル強化が完了するんじゃないかな。
なんか別の意味でもモチベーションが上がって来たな。強化は今日寝るときにやるから今度はあれにしよう。あれを手に入れれば色々と使い道はあるし、もしかしたら自衛手段になるかもしれない。
さて、そんな事を考えながら宿屋に戻って、エレフさんとゼブラさんに合流したんだけど少し気が重い。何故なら、
「すみません。エレフさん、ゼブラさん。どちらでも構いませんのでお金を貸してください。」
「……」×3
開口一番、土下座で金の無心をする僕に3人が押し黙る。
そして僕のお手本の様な美しい土下座に心を奪われている3人に僕は理由を説明する。
「実は、今日色々と出費がありまして今手元に1500フルールしかありません。そして明日更に4800フルール必要なんですけどお金が足りません。
明日の焼き芋の売り上げですぐにお返ししますので、どうかお願いします。」
ここで、少し呆れたような口調でエレフさんが口を開く。
「ねぇ~コンヨウ君~。そのお金、何に使ったの~?」
ここで僕は元々20000フルールあった中から、ギルドの登録料3000フルール、市場の使用料500フルール、宣伝費用12000フルール、プラス買い食い1000フルール、宿代で2000フルール、計18500フルールを使った事を説明。
そして4800フルールはスフィーダさんへのバイト代である事を話した瞬間、3人はため息をつきながら返事をしてきた。
「あのな~。コンヨウっち。買い食いは置いといて残りは全部経費で落とすやつだろうが。3人とも宿代は経費で落としてるぜ。」
「そうだよ~、僕も料理道具とか集落で食べる食材は経費で落としているよ~。」
「えっと、まさかコンヨウさんが知らないなんて思いませんでした。」
「………」
えっ?そうなの。僕、そんなの一言も聞いていないんだけど。そもそも集落の経費とかあったんだ。
皆、個人事業主みたいに自分で立て替えているのかと思ってた。領収書とか切ってないけど大丈夫かな?
エッ!パフィさんが証人だから問題ないって。そりゃそうだよね。僕より純朴パフィさんの方が信用できますからね。
それじゃさっきの土下座は一体何だったんだろう。まぁ、お金の問題が解決したから問題ないか。
少し気まずい空気になった所で、ゼブラさんが話を切り出す。
「取り敢えず、全員経費の精算だな。それから明日の相談をしよう。」
その言葉をきっかけに明日に向けた作戦会議が始まった。
経費精算が終わった後、まず僕が今日やった事を報告する。
「えっと、今日は僕とパフィさんで…」
「…なるほどな。それだと確かに人手が足りなくなるかもしれねぇな。いい判断だと思うぜ。ちなみにそのスフィーダさんってどんな人だ。パフィちゃん。」
「可愛らしい、リスの獣人さんです。」
「エッ!マジか!俺っち、テンション上がって来たぜ!」
「あの人、やたら下ネタぶっこんできましたし、もしかしたらワンチャンあるかも知れませんよ。」
「それマジか!最高じゃねぇか、おい!」
「…うわぁ~、2人とも最低ですね。正直ドン引きです。」
「ホント~、男の僕から見てもガッカリだよ~。」
「いや、僕は事実を言っただけですよ。クズなのはゼブラさんだけです。」
「テメェ!コンヨウっち!裏切りやがったな!!」
まったく裏切ったとか人聞きが悪いな。さてゼブラさんがクズだと判明した所で次はエレフさんの報告だ。
「僕は~ナプールの料理屋やお菓子屋を見て回って~、街の流行の調査をしたよ~。
どうやらこの街の甘味で『甘納芋』の甘さに勝てるスイーツは無いみたいだよ~。
しかも値段は軒並み2000フルール超え~。間違いなく売れると思うよ~。」
「なるほどですね。エレフさんのお墨付きを頂いたのなら自信をもって商売が出来そうですね。」
「そうですね。『甘納芋』の甘さは最高ですからね。」
エレフさんがそういうなら間違いないだろう。しかしパフィさん、本当に『甘納芋』好きだよね。
後はゼブラさんの報告だ。
「俺っちからは一つ提案だ。明日は焼き芋を目一杯売るとして、今日の内に限界まで生芋を作っておいてくれないか。」
「えッ!どうしてですか?」
「実はな、この街の芋の価格が少し上がり始めているんだ。原因は芋の不作だな。
このままじゃ一般家庭の家計への打撃が懸念される。『ノンブランド』の芋を50フルールで販売したい。
持ち運びは俺っちの『マジックバッグ』でやるから。」
「構いませんがどうして?」
「理由は聞くな。嫌なら引き受けてくれなくてもいい。」
何だろう?いつもの気のいい兄ちゃんの雰囲気が吹っ飛んでるんだけど。こんなに真剣なゼブラさんを見た事がない。
多分ゼブラさんの過去に関わる事なんだろうな。この人のスキルってはっきり言ってとんでもないレアスキルだし。きっと色々あるんだろう。
まぁ僕としては商売のチャンスだから構わないか。
「分かりました。取り敢えず500個でいいですか?」
「あぁ、恩に着る。」
僕が了承すると、ゼブラさんはホッとした様なそれでいて複雑な僅かに苦いモノが含まれた様な表情だったと思う。彼はきっと色々複雑な事情で今の集落にいるんだろうな。
さて全員の報告が終わったようだ。では最後に僕から大事な話をしようかな。
「では最後に…今回の利益の配分はどうしましょうか?皆さんを3日間拘束しているわけですし、やっぱり経費を差し引いた上がりを均等分配でしょうか?」
「……」×3
あれ?なんかみんな黙り込んだぞ。でも正直これ以上は出せないしな。どうしたものか。
と悩んでいるとまたしてもゼブラさんが若干疲れた顔で疑問に答えてくれる。
「あのな~、コンヨウっち。まず経費なんだけど、あれはお前のいつも払ってくれている家賃の過剰分から出てるから考えなくていい。
次に今回の焼き芋販売は間違いなく大盛況で終わるだろうけど、均等分配なんてやったら俺っち達がもらい過ぎちまう。そうだな、一人当たり5000×3日の15000フルールでいいと思うぜ。」
「ちょっと待ってください。今回、ゼブラさんには生芋販売のアイデア料を支払わないといけません。エレフさんにだって販売にあたってのアドバイザー料を支払わないといけませんし、パフィさんには護衛の危険手当が必要です。」
まったく、みんなこういうところの計算が甘いから困る。そう説明するとまたみんな呆れた表情になった。
「…はぁ~、いつもの病気が出ちまったな。分かった。じゃあ、俺っちの生芋販売のアドバイス料としてプラス5000フルール。他のみんなもそれに合わせるという事で。」
「そうだね~、20000くらいなら妥当だろうね~。」
「はい、ぼくもそれで構いません。」
「…分かりました。皆さんがそれでいいと言うのでしたら。」
まぁ、みんなが納得しているならいいか。
本当にみんな謙虚というかなんというか。むしり取れる時にはしっかりむしり取ればいいのに。
僕はお人好しのみんなに若干呆れた所でその日の会議は終了となった。




