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024_初めての都会?

「さて、では街まで出発だ!」


この集落に住むようになって45日目。僕の希望により2泊3日で街に行く事になった。

村の食料は大丈夫なの?って。大丈夫だ、問題ない。何故なら僕はお出かけの為にスキルで生芋を少しずつ備蓄し続けていたからだ。

その結果、現在生芋の備蓄は1000を超えている。これなら僕無しでも少しの間ならお芋の問題はないだろう。

ちなみにそのおかげでまた一回スキル強化が行えるようになったから、『生成量増加』を追加した。今、僕が生成できる一日のお芋の量は約1000個だ。


さて、今回のメンバーは僕、パフィさん、ゼブラさん、エレフさんの4人。

行く先はリンガ共和国最北端の都市ナプール。

今回の目的、それは…


「なぁ、コンヨウっち、この屋台ってのは何に使うんだ?」


「それは焼き芋の販売車ですよ。ほら、僕のスキルを人に見せるわけにはいきませんので。」


そう、今回行うのは街での焼き芋販売だ。

このメンバーはお芋要員の僕と護衛のパフィさん、案内兼荷物持ちのゼブラさんと料理人のエレフさんというパーティーだ。

そして今、僕とゼブラさんが販売用の屋台(急ごしらえで作ってもらったので結構オンボロ)を轢きながら目的地へ向かっている。

現代っ子の体力で大丈夫か?って。僕はね、身体に栄養が入っていれば無限に動けるくらい体力はあるんだよ。筋力は無いから力は出ないけど、要するに持久力タイプ。

パフィさんは護衛だからすぐに動ける状態にしておきたいし、エレフさんは料理用の筋力しか持ち合わせていないから歩くの苦手だし。なので消去法で僕とゼブラさんが屋台を運ぶ事になったわけだよ。いやぁ~身体を動かせる糖質と脂肪があるって素晴らしい。

万全の状態で身体を動かせる事に気分が高揚する僕。この事をみんなに話したらなんか凄い憐みの目で見られたんだけどどうしてだろう?

エレフさんなんか、


「うぅ~!分かったから~。君が食べたがっていたハンバーガー、作ってあげるから~!」


ってなんか泣きながら言っていたし。子供がちゃんと食べているのが嬉しいのは分かるけど大袈裟すぎないかな?本当にこの人はお人好しだなぁ。

そんな事を考えながら歩くこと、約3時間。特にファンタジー系の転生モノでおなじみの盗賊イベントとかも無く、途中で焼き芋休憩を挟みながら目的地であるナプールの門の前へとたどり着いた。

まぁ、こんな貧乏そうな一団を襲うほど盗賊も暇じゃないよね。


「よぉ、ゼブラ…それから他は初めてみたいだな。ちょっといいかな?」


街の門をくぐろうとした時の事、門番と思しき黒豹の獣人さんが笑顔で声を掛けられる。それに受け答えるのはゼブラさんだ。


「なんだよ、ナツメっち?珍しく仕事か?」


「うるせぇよ。俺達門番が暇なのはいい事だろ。それよりも仕事だ。上司に睨まれちまう。

そこの新人3人、俺達門番は初めて街に入る人間や怪しい人間を調べるのもお役目の一つでな。

悪いけど荷物検査と2、3質問をしたい。協力してくれるか。」


「はい、勿論です。」


ここで門番のナツメさんは気軽な調子で僕らの名前と出身国と街に入る目的を聞き、荷物検査をした。

荷物については屋台車とゼブラさんのマジックバッグの中身だけだったので特に問題はなかった。

だが問題は質問の内容だ。街に入る目的は集落でとれた芋の販売と買い出しだからこれも問題ない。(一応、ゼブラさんのバッグに生芋をいくつか入れてある。)

問題なのは、


「えっと…僕記憶喪失なので、出身国が分からないんです。」


そう、僕に出身国なんてないのだ。だって異世界の日本国なんて言えないもん。名前だって偽名だし。完全に身元不明の怪しい奴だよね。

その答えにナツメさんは少し怪訝な表情をしながら、門番の詰め所から紙束を取り出し、僕と見比べる。

多分、犯罪者の名簿とかそういう奴だろう。それから暫くしてから険しい表情から一転、元の笑顔に戻る。


「う~ん、どうやら問題なさそうだな。時間を取らせてすまねぇな。もう大丈夫だぞ。」


問題無しみたいだね。そりゃそうだよね。だって僕はこの世界に元々存在していないんだから、こちらの書類に存在するわけがない。

そんな事を考えている僕を余所に、ナツメさんはパフィさんとエレフさんにも同じ質問をする。

パフィさんはリンガの出身でエレフさんはグレプの出身なのか。質問も滞りなく済んだみたいだ。


「よし、全員問題なし。もう行っても大丈夫だぞ。」


「はい、お勤めご苦労様でした。」


そう笑顔で応じ、僕らは街に入る。

ナプールの街はここリンガ共和国北部最大の都市だけの事があり、それなりにたくさんの人がいたけど、日本で言えば地方の繁華街くらいかな。

建物の様式は木造が多く、大きさは高くて3階建てで、平屋や2階建ての建物がほとんどだ。

とは言ってもウチの集落に比べたら大都会なのは間違いなく、その光景にパフィさんは目を丸くしていた。

もっとも僕は日本の都会を見慣れているから、むしろ長閑だなぁと思うくらいだけどね。

僕はおのぼりさんになっているパフィさんの手を引きながら、ゼブラさんの後をエレフさんと一緒についていく。


「よし、まずは宿の確保、それから商業ギルドだな。」


今回の予定だけど、まず今日中に商業ギルドに商売の申請をして、その後は自由時間。

次の日は一日お芋の販売をする。そして最終日は買い出しをして集落に戻るという流れだ。


ちなみに商業ギルドと言うのは、街の商人の組合で、街で商売をするときにはここで許可を取り、場所を借りる必要がある。

もっとも一区画当たりの使用料はせいぜい数百~数千フルール程度で、借りる区画にもよるけど僕らのような小さな屋台なら500フルール程度で許可が下りるらしい。


僕らはゼブラさんの案内の下、宿屋のチェックインを済ませ、商業ギルドに向かう。

ギルドは木造3階建てでこの街でもかなり大きい建物で装飾も結構凝った感じだ。やっぱり商売人だから自分の財力を分かりやすい形で宣伝する必要があるんだろうな。

僕らが建物の扉をくぐる早速受付の女性、それもこの世界初の人族の若い女性がお出迎えしてくれた。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件ですか?」


「あぁ、ちょっと商売をしたいんだけど、市場の使用許可をお願い出来るかな?」


「はい、畏まりました。ではこちらに記入をお願いします。」


受付のお姉さんには取り敢えずゼブラさんが対応。

ゼブラさんは市場使用許可用の用紙を渡されると、それを受け取りすぐさま僕に寄越してくる。そういえばゼブラさん、字が下手だったね。

実はこの中で一番字が上手いのは僕だったりする。まぁ日本にいた頃に文字を書きまくっていたからペンの扱いには慣れているっていうのが大きいね。

えっと…記入内容は?


「あの~、受付のお姉さん。ちょっと聞いてもいいですか?」


「はい。それから私の事はキャシーとお呼び下さい。」


「はい、キャシーさん。ここの項目なんですけど…」


僕は記入項目のある一点が気になったので確認をする事にした。

まず記入用紙の内容についてお見せしておこう。


市場使用許可申請書


・使用申請者名:

・使用用途:

・希望使用場所(地図に書かれた番号を記入):

・使用期間:

・ギルド登録者名:


とある。最後のギルド登録者名と言うのが何を指すのかが分からないので質問をすると、キャシーさんは笑顔でこう答えてくれた。


「市場を借りる際には必ず一人は商業ギルドに登録していただく必要があります。

市場は商業ギルドが管理しておりますので、そこでトラブル等が発生した場合、当方の責任問題になります。ですので下手な人に貸さない為の規則となっております。

登録自体はごく簡単な書類と手数料のみで可能ですので、宜しければご一緒にどうですか?」


なるほど、あのキャシーさんの笑顔は商売人のものだな。まぁ言い分はごもっともだし、必要経費だと割り切ってもいいけど、一応確認をしておこう。


「え~っと、この中で商業ギルドに登録している人~…」


シ~~~ン………

うん、予想通り。そうだよね。あんな無主地の森の中に落ちのびているような人達が商業ギルドに登録なんてしているわけないよね。

仕方がない。ここは僕が登録をしておくか。


「じゃあ、キャシーさん。僕が登録しますので、その書類もお願いします。」


「はい、ありがとうございます。ギルド登録料が3000フルールと市場使用料が500フルールになります。」


「……」


僕は満面の笑みを浮かべるキャシーさんに無言で小銀貨を一枚渡す。

そして暫く待つと必要書類とお釣り大銅貨6枚と小銅貨5枚を持ってきたキャシーさんが戻ってくる。

勿論、今回のお芋の販売で回収するけど。なんだか切ない気分で書類をいそいそと記入する僕であった。

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