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016_さぁ、借金の取り立てだ!

「ドクさん。家具とか食器とかはどうやって手に入れているんですか?」


ミルさんに教育的指導をした次の日の事。僕とパフィさんはドクさんの家にお邪魔していた。

そしてその時に目についたのがドクさんの家の家具である。


木製のちゃぶ台とその上には木のコップ。少し離れた所には衣装タンスに水汲み用の桶と柄杓と食器棚。食器棚の中にはおそらく皿やコップ、フォークやスプーンが入っているのだろう。

全て木製だが取り敢えず生活に必要な物はある程度揃っているようだ。

つまり、ドクさんは生活に必要な家具や雑貨を手に入れる手段を知っている。故に聞いてみたわけだけど。


「う~ん…その事なんだけどね。一応この集落の住人ではあるんだけど…これを作った人がどうにも気難しい人でね。

コンヨウ君達への紹介はもう少しここに慣れてからにしようと思っていたんだよ。」


「気難しい方ですか。具体的には?」


「職人気質なんだよね。自分の作りたいものを自分が納得いくまで作る。

そしてそれを自分の気に入った相手にしか渡さない。腕は確かだけど。

私の家の家具だって『オメェは普通な感じだからこんなもんでいいだろう。』とか言って割と雑な感じで作られたしね。」


うん、言われてみると確かに仕事は雑じゃないけど、普通を極めたといわんばかりの特に考えずに作った感じがするね。

きっとそんな性格だからこの集落に流れてきたんだろうな。そんな風に僕がちょっと失礼な事を考えていると隣からパフィさんがドクさんに質問をする。


「あの~、その人ってぼく達は見た事ありますか?村で倒れていた人の中とか、あとイノシシを狩った時とかに?」


「彼は大体家に引き籠っているからね。どっちの時も姿を現していないと思うよ。

その時は私がお芋や肉を持っていてやったからね。」


なるほど、完全に初対面というわけか。聞く限りなかなか手ごわそうだな。

でも家具一式が無いと不便で仕方がないし、ここは腹を括って会いに行くとしよう。


「ドクさん。その人に会いに行きたいと思いますので場所を教えて貰ってもいいですか。

それからその人の名前も。」


「あぁ、分かったよ。」


こうして僕達はドクさんに気難しい家具職人さんの情報を貰った。

その家具職人さんの名前はスミスさん、ビーバーの獣人さんだ。

家は森の奥寄りの場所にあるとの事。どうやら木材を確保しやすい様に森の近くの家を選んだようだ。

腕は確かだけど、先ほど言っていた様に偏屈な性格で気に入らない相手には絶対に作らない。


確かに難物だけど、ぶっちゃけこの人に対して僕とパフィさんは家具の作成を要求するだけの報酬を既に前払いしてるんだよね。芋と肉という形で。

もし拒否った時は…いや、ナンデモナイヨ、ブッソウナコトナンテカンガエテイマセンヨ。だからパフィさん、そんな怯えたハムスターみたいな目で僕を見るのはやめてね。

等と考えている間に僕達はその家まで辿り着いた。

でも何か様子がおかしい。具体的には音だ。なんかこう…


ドン!!ドン!!ドン!!ガシャ!!ガシャ!!ガシャ!!ギコ!!ギコ!!ギコ!!ドカン!!ドカン!!ドカン!!


うん、民家から出ちゃいけない、例えるなら工事現場みたいな音がするんだよね。

なんか早速入りたくないんだけど、そう言う訳にもいかない。僕は意を決して、


「ねぇ、パフィさん…中の様子見て来てくれない?」


「えっ!嫌ですよ!絶対に良からぬ事が行われているに決まってます!」


ちっ!恥を忍んでパフィさんに振ってみたけどやっぱり駄目だったか。

そりゃそうだよね。だって僕が既に嫌なんだもん。おい!パフィさん、逃げるんじゃない。君も家具を作ってもらうんだろう。

僕は後ずさるパフィさんの腕を捕まえ、そして…コンコン!!と盛大な音を立て扉をノックする。


「ゴメンくださ~い!スミスさんいますか!!借金の取り立てに来ました!!」


「わぁ~~~!!コンヨウさん!!いきなり何口走っているんですか!!!」


パフィさんってば、慌て過ぎだよ。よく考えてみてごらん。

相手は僕達に借りがある。難しい言葉で言えば、こちらには債権があり、相手には債務がある。

つまりここで家具の1つや2つや10個持って行ったところでそれは債権の回収を行った事に他ならない。

もしも相手が不服を申し立てるならこちらとしても法的措置も辞さない構えだ。

よし、僕って一回死んでるから嫌なところで肝が据わってるね。ちなみに僕って弱い立場の相手の時にはとことん強気に出る小悪党ですので。

じゃあ、困惑するパフィさんを無視して続き行ってみようか。


「スミスさ~~ん!!いるのは分かっているんですよ!!そういう態度とってると出るとこ出ますけどいいんですか~~~!!」


「じゃか~~しいわ!!このだらずが!!」


おっ!出てきた。鋭い前歯を剥き出しにしたビーバーのじいさん。この人がスミスさんか。

なんかすっごい怒ってますけど、機嫌でも悪いんですかね。

でもそんなに怒るとパフィさんが驚いちゃうじゃないですか。いけないなぁ~。このパフィさんは村で最強の狩人なのに。そんな態度とってるとガスでコロコロしてもらう様に仕向けちゃうぞ。

さて、冗談はこの辺にして話を進めますか。


「漸く出てきましたね。債務者さん。」


「なんじゃい!その債務者ってのはぁ!ワシャ~、オメェに借金などしとらんぞ!」


なんか凄い剣幕でこちらに詰め寄ってくる債務者ことスミスさんに対して、僕は悪党の笑みを浮かべながら応じる。


「おっと、そういえばまだ説明してませんでしたね。先日、スミスさんはドクさんから焼き芋とイノシシのお肉を受け取ったと思いますが、間違いありませんか?」


「おぉ、確かに受け取ったわい。それがどうしたって言うんじゃ。」


「あれね。焼き芋は僕、お肉はパフィさんから出てるんですよ。」


「だからなんじゃと言うんじゃ。」


ほう、このジジイ。ここまで言っても分からないっと。こいつあれだな。自分が食べ物を貰うのは当然だと思っているクチだな。こういう奴を見ると殺意が湧くんだよね。どうしてくれようものか。

あっ!またクロキコンヨウが出てた。流石のスミスさんも僕の殺気にビビったみたいで黙り込み、パフィさんは慌てて仲裁に入る。


「スミスさん!いきなりウチのコンヨウさんが失礼な事を言ってすみませんでした。

これから事情を説明しますので……」


ここでパフィさんが今回の趣旨、家具の作成の依頼について説明をしてくれた。

別に債務者相手なんだから強奪すればいいのに…いえ、何でもありません。だからパフィさん、こっちを睨むの止めて下さい。

その目は余計な事を言うとガスぶち込みますよ、って目ですよね。あっ!説明が終わったみたいだ。


「なるほどのう、それなら素直に家具が欲しいと言えばいいんじゃ。まったく紛らわしい。」


「あっ!作ってくれる気はあるんですね。」


「嬢ちゃんの分はのう。オメェは気に入らんから作ってやらん。」


ちっ!借金持ちのくせに!この発言には温厚な僕もブチ切れましたよ!


「あん!債務者の分際でやんのか!クソジジイ!」


「ふん!大体オメェが芋を用意したってのは本当なのか疑わしいもんじゃわい。

あの芋は間違いなく極上品だった。それをこんな痩せっぽっちのチンピラまがいのクソガキが用意できるなんてとてもじゃないけど信じられんわい!」


「あぁ!言ってくれたな!このクソジジイ!じゃあその目ん玉かっぽじってよく見てやがれ!!『食物生成(焼き芋)』!!」


僕は勢いに任せてジジイの目の前でスキルを発動させた。出したのは定番の『鳴子銀時』『紅音姫』『甘納芋』の3種だ。

この光景には流石のジジイもビビったようだ。目をぱちくりさせるジジイにそれぞれ半分ずつ渡してから、残りの半分の『甘納芋』をパフィさんに渡し、『鳴子銀時』と『紅音姫』を僕が食べる。

朝ごはんを食べて少し時間が経ったから間食だ。僕もパフィさんも体重が減っているからこうしてちょくちょくカロリーを取る必要がある。

僕とパフィさんが焼き芋に手を付けたのを確認してジジイも焼き芋をかじる。しかしパフィさん、本当に美味しそうに食べるね。

おっと、ジジイの反応は、


「…確かにこの前の物と同じじゃ。それにこっちはこの前の物よりもずっと甘い。こっちは少しあっさり目だが甘さに上品さがある。どれも極上品じゃな。オメェはこれをスキルで作ったってぇのか?」


「えぇ。ようやく信じて貰えましたか?」


「……こりゃ確かに支払いをせんといかんようじゃな。家具一式は時間が掛かるから取り敢えず超特急で食器だけ作ってやる。

こう見ててワシは『木工』スキルの持ち主でな。制作速度と品質には絶対の自信を持っとる。食器については今日の夕方までに仕上げておいてやるからまた取りに来い。」


「では!」


「あぁ、オメェらの依頼、確かに承った。分かったら一回帰れ!邪魔じゃ!」


こうしてジジイことスミスさんに追い出される様にその場を後にした。


そしてその日の夕方、本当にお皿、コップ、フォーク、スプーン等食器一式2組をスミスさんに渡された。

どれも使い勝手が良さそうで仕上がりも素晴らしい、まさに一流の職人の作品だった。

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