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107/362

107_格闘漫画を見ると強くなった気にならない?

「片付けは俺達でやっておくからコンヨウ兄ちゃん達はゆっくりしてて。」


「みんな、行くわよ。」


夕食が終わった後、ガキどもの自称リーダーその1犬獣人のバーナードとその2猫獣人のミーアが残りのガキどもを連れてお皿を運び出す。

どうやらガキどもは燃料さえ入っていればちゃんと働くみたいだ。うん、感心だね。ルクちゃんも洗い物に行ったみたいだ。今日会ったばかりなのにもう息がピッタリだ。同じ家事でもみんなでワイワイやると楽しいらしい。笑顔のルクちゃんにホッと一息。

さて、こうしてテーブルには僕、パフィさん、スフィーダさん、クズミ様が残ったわけだけど、


「すみません。皆さんにちょっと聞きたい事があるんですけど。」


僕は畏まりながらみんなの注目を集める。全員が僕の方に体を向けたのを確認して、


「実は今日会ったあの腐れビッチの事なんですけど。」


「コンヨウさん、口悪すぎです。」


「子供達に悪影響ですから、そういう言葉を使うのは控えて下さい。」


「……」


僕の一言に早速パフィさんとスフィーダさんが物言い。それとは対称的にクズミ様は重い空気を纏いながら沈黙。


「クズミ様、何かありましたか?」


流石に心配になった僕は事情を聞いてみたんだけど、


「いや、実はコンヨウ殿に謝らないといけない事があるんじゃ。」


「ん?クズミ様が…ですか?」


クズミ様、だいぶ様子が変だけど大丈夫かな?それに謝られる覚えなんてないんだけど。


「実はワシも子供達と公園に行った時にフリージア司教に会ったのじゃが…」


「エッ!本当ですか!」


「その時何かあったんですか?」


「……」


クズミ様の言葉にパフィさんとスフィーダさんが慌てた様子で問いかける中、僕は黙って頷いて先を促す。


「ワシはあの司教に問われるままに、コンヨウ殿の情報を渡してしまったのじゃ。」


「!!!」×2


申し訳なさそうにしながら語るクズミ様。

なるほど。僕の話を前もって聞いていればクズミ様はあの腐れビッチに警戒心を抱くはずだ。にも関わらずあの女に僕の情報を喋った。

おそらく僕が『運命神の加護』で防いだという『敵対的スキル』による攻撃だろう。あの(アマ)!舐めた真似しやがって!イケナイ、怒りが外に漏れ出て素敵な笑顔が浮かんでいるみたいだ。全員僕の方を見ながらビビってるもん。

さて、まずは怒りを抑えて、冷静に、確実に、あのビッチに生まれて来た事を後悔させてやらないとね。


「クズミ様、僕がスキル攻撃を受けた事はお話しましたよね。おそらくクズミ様が僕の情報を話したのはそれが原因です。あのビッチと会った時の事を教えてくれますか?」


「勿論じゃ……」


ここでクズミ様があのビッチ司教との遣り取りについて教えてくれた。


「…なるほど、根拠のない信頼、異常なまでに感じた魅力、拘束力を持った追従。確かに厄介ではありますね。」


「……」×2


「ちなみにパフィさんとスフィーダさんも身に覚えがあったりしない?」


「!!!」×2


ビンゴ!あのクソビッチ!二人にも同じスキルを使ってたみたいだ。


「はい、ぼくの場合クズミさん程じゃないですけど。」


「わたくしもです。無条件に好意的になってしまうような感じです。」


なるほど、複数人に同時使用可か。ますます厄介だな。


「ところで今もあのクソビッチの事が好きですか?」


「嫌いです!」×2


「ああいう手合いは好かんのぅ。」


「それは何よりです。ではクズミ様、あのビッチに好意を抱いたのはどのタイミングか覚えていますか?」


「……多分、話し掛けられた時じゃのぅ。」


「その時身体を触られたりはしましたか?」


「してないのぅ。」


「スキルの効き目に変化などはありましたか。」


「話せば話すほど、相手に対する好意が大きくなる感じじゃった。」


「クズミ様自身が嘘をつこうとしたりはしてみましたか?」


「誤魔化そうとしたんじゃが、好意が強すぎて抗えんかったのじゃ。」


「スキルの効き目が切れたタイミングは分かりますか?」


「フリージア司教の姿が見えなくなった時だと思うのじゃ。」


この質問を聞いた瞬間、僕は思わずほくそ笑む。あの腐れビッチのスキルの概要がおおよそ見えてきたからだ。

いや、みんな、なんで僕が笑いを浮かべるとビビるわけ?僕の笑うところってそんなに怖いかな~?


「いや、だって完全に邪悪の化身の様な笑いなんですもん。」


「えぇ。あれは国家転覆とか世界征服を企んでる顔です。」


「これこれ、コンヨウ殿はそんな面倒くさい事はせん御仁じゃから。」


みんな僕に対してちょっと酷過ぎない。クズミ様も怖い事に関しては否定してくれないし。それに面倒だからやらないだけで、理由があったらやりかねないみたいな言い方しないで下さい。


「なるほど、ありがとうございます。皆さんが僕の事をどう思っているのかよく分かりました。」


「もう~、拗ねないで下さい。」


「ワシらが悪かったから機嫌を直してくれんかのぅ。」


「………」


うるさいよ、今更謝っても遅いんだよ。クズミ様以外は許してやらないんだからね…あれ?パフィさんの様子がおかしい。何か悩み事かな?


「どうしたの?パフィさん。」


「…はっ!いえ、何でもないです。コンヨウさんは確かにクズですけど、人に迷惑を掛けないクズですもんね。」


「パフィさ~~~ん!!!」


「わぁ~~~~!ごめんなさ~~~~~い!!」


僕がジト目で詰め寄ると慌ててスフィーダさんに隠れながら謝るパフィさん。

まったく、遠慮がないにもほどがあるでしょう。いかん、そろそろ話しを戻さないと。


「えっと、あの腐れビッチのスキルについてでしたね。

おそらく奴のスキルは『魅了』『好感度上昇』もしくはそれに類するモノだと思います。

発動条件は姿を見せるもしくは声を掛けるあたりでしょう。姿が見えなくなった瞬間スキルが切れた事からの推測ですけど。

対処法としては、奴が現れたら姿が見えず、声が届かない所まで逃げる事です。

おそらく逃げる事を拒絶するほどの拘束力はないはずです。もし強い拘束力を持つスキルならクズミ様を人質にすれば済むだけの話です。

もっともこれは相手がこちらに完全に敵意を持っていればの話ですけど。」


「コンヨウ殿はスキルで攻撃した来た人間を敵じゃないと思うのかね?」


この瞬間、クズミ様の目つきが今までになく鋭くなり、多分初めて聞く様な険のある言葉を口にする。


「他人に対して断りもなくスキルを使うというのは、それだけで敵対行為と判断されて当然の極めて無礼な行いなのじゃ。

あの司教は子供や同じ聖者教の聖職者であるワシにそれをやった。もうお分かりじゃろう。」


なるほど、そりゃ確かに敵対行動だね。僕がパフィさんとスフィーダさんに目配せすると無言の頷きが返ってくる。だが僕の考えはちょっと違う。


「僕はこっちの常識に疎いからいまいちピンと来ませんでしたが、確かに常識的に考えればそうなのかも知れませんね。

でもそう判断するのは早計だと思います。」


「何故かのぅ?」


「あのビッチのスキルの特性を考えると、おそらくあれは常時展開しているのだと思います。

人に好かれていれば、それだけで日常生活において多大な恩恵を受ける事ができますからね。

そしてある日、みんなに好かれるはずのクソビッチを嫌うクソガキを偶然見つけた。気になって調べたくなったからいつもの調子でクズミ様に話を聞きに行った。

あの腐れ司教にとって今回の行動なんてその程度の事だったのかも知れません。」


「……」×3


「言っておきますけど、これはかなり希望的な見解ですからね。何か目的があって僕に近づいて来た可能性だってあります。

もし何か目論見があるなら近い内に接触があるでしょう。その時に真意を確かめてみます。」


「どうやってかのぅ?」


「取り敢えず顔面にワンパンくれてやりますよ。

おそらく暴力を振るわれた事はないでしょうから簡単に口を割るでしょう。」


……僕が素敵な笑みを浮かべながらおどけてみると、侮蔑交じりの視線が僕に降り注ぐ。


「コンヨウ君。パフィちゃんがクズクズって言う理由がよく分かりました。」


「いや、スフィーダさん。これが一番効率がいいんですよ。」


「コンヨウ殿…暴力はいかんぞぃ。」


「クズミ様、あっちが先に攻撃してきたんですよ。つまりこれは正当防衛です。」


「コンヨウさん、最低です。」


「パフィさん。何気に君にそれ言われるのが一番堪えるんだけど。」


何故だ!僕は真剣にあの腐れビッチ司教の対策を話しただけなのに完全にアウェイだよ。

もしかしてまだ奴のスキルが掛かってるのか!これも全てあのビッチが悪いんだ。

今度奴に会ったら正中線上に正拳突きをお見舞いしてやる。漫画『拳闘士キバ』で格闘技を学んだ僕に死角はないのだ。

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