010_本当に怖いのは誰?
「では皆さん、準備はいいですか。」
「うん~。いつでもいいよ~。」
ドクさんに村人達を紹介された次の日の朝。
今回は僕の提案で村を脅かすイノシシ型モンスターの狩りに出かける事となった。
狩りの参加メンバーは僕とパフィさんと象のエレフさんと集落の男の人数名。
僕らはエレフさんの案内の下、前回モンスターが現れた場所の付近までやって来た。
「さて、では早速罠を張るので、みんなは隠れて下さい。」
「えっと~、コンヨウくん~。質問、してもいいかな~?」
「はい、どうぞ。エレフさん。」
「罠って言ったけど~、無造作に焼き芋を~、置いただけだよね~。」
そう言いながらエレフさんが指差したのは僕の前方10mほどの位置。そこにはエレフさんの言った通り焼き芋が置いてあるだけだった。
だがこれはれっきとした罠なのだ。何故なら、
「大丈夫です。なんせここには最強のトラップ能力保持者がいますので。」
「ちょっと!何をわけの分からない事言ってるんですか!ぼくのスキルなんて鳥をちょっと仕留められる程度ですよ!」
僕は言葉と共にパフ ィさんを指し示すが、彼女はわけが分からずに手をパタつかせながら抗議してきた。
謙遜しなくてもいいのに…って違ったみたい。こりゃ本気だ。そういえば彼女ってあんまり物を知らなかったな。多分、自分のスキルの応用も思いついてなかったんだろうな。こりゃ一昨日別れていたら危なかったかも知れない。どうやら協力者関係はまだまだ続きそうだ。
彼女が早く独り立ちできるように少しでもアドバイスするか。まぁその間にちょっとだけ獲物をおすそ分けして貰っても罰は当たらないよね。
などとちょっと下衆い事を考えながら僕はパフィさんに指示を出す事にした。
「パフィさん。モンスターが焼き芋を食べたら、そこにガスを設置して。濃度は最強でお願いね。」
「…分かりました。」
「それから『ガス操作』スキルで僕達の匂いが外に漏れない様にする事は出来るかな?」
「…やってみます…外に出るな~外に出るな~…出来たみたいです。」
「ビンゴ!予想通りだ!多分だけど『ガス操作』は気体全般を操作するスキルなんだ!」
僕はパフィさんの能力の正体が予想通り、凄いものだった事に思わず声を上げる。
でもちょっとはしゃぎ過ぎたかも知れない。パフィさんが『こいつ頭大丈夫か?』みたいな顔で僕を見てくる。うん、ゴメン。一応僕は正常だから。今から理由も説明するからね。
「ゴメン、驚かせたね。君のスキルは気体、つまり空気を操作する力があるみたいなんだ。
操作できる気体の範囲はどの程度かは分からないけど、使いようによっては僕のスキルより遥かに強力なものだよ。」
「えっ!ぼくのスキルが…ですか?」
「うん、でもどれくらいの事が出来るかは検証が必要だね。今回の事で匂いがするものは操作できるって事は分かったけど。
おっと…無駄話はここまでだね。やっこさんが来たみたいだよ。」
ズシッ!!ズシッ!!
そこに現れたのは体長3m超え、重さにして1トンはあるだろうか。文字通り化け物級の大きさのイノシシだ。
えっと…この集落の人達、こんなヤバい生き物が住んでいる場所のすぐ側で過ごしていたわけ。ないわ~、マジでないわ。
何がないかって…それはあのクソイノシシの栄養状態が完璧を通り越してるからだよ!
膨れ上がった筋肉と脂肪、自分が一番デカくて自分が一番強いと信じて疑わない驕ったふるまい。
周りを一切警戒する様子もなく、一直線に焼き芋まで歩み寄り、それを当然の様にかぶりつこうとする圧倒的傲慢。
強者にだけ許される行いと言えばそれまでだが、その態度が僕のハングリーソウルに怒りの火を灯した。
「パフィさん…あのクソイノシシには一片の躊躇もなく最大濃縮の匂いガスを叩き込んで。
呼吸困難になって、のたうち回りながら悶え苦しんで死ぬレベルのやつでね。」
「はい…分かりました…どうしたんですか?すっごくおっかないですけど。」
あっ!いけない。またクロキコンヨウが出ていた。どうしてだろう。太っている奴見ると無性に殺したくなるんだよな。勿論普通のぽっちゃりの人とかは平気だよ。でもなんか弱者から搾取して太っている感じの人って太り方が美しくないんだよね。
あとついでに一回も飢えた事が無さそうな神様にも殺意が沸くけど、これは八つ当たりだね。
だが奴は森の生物から搾取をした結果、肥え太った畜生だ。あれには一片の情けも無用だよ、パフィさん。そう言うわけで奴をコロコロする準備お願いね。
「パフィさん。そろそろ奴が焼き芋に喰らいつくから、僕が合図したら匂いガスを叩き込んで、狙いはあの焼き芋を食べている口ね。」
「分かりました…準備完了です。いつでもいけます。」
「よし…今だ!!!撃て~~~~~~~~~ッ!!!!!!」
「了解です!!!匂いガス!!発射!!!」
………ブォオオオオオォォォオォオォオオォォオオオオオオォッォォォォォォォオォオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!
ガス弾を受けてのたうち回る腐れ畜生イノシシを見て、思わず腹の底から笑いが込み上げそうになる僕と自分の所業に若干ビビっているパフィさん。
でも暴れると肉質が悪くなるんだよな。傷は味の低下に直結するからね。でも焦りは禁物。確実に始末する為にタイミングを見計らってから、パフィさんに介錯をお願いする事にした。
「パフィさん、トドメをお願い。一通り暴れまわって落ち着いたら動きが鈍ると思うから今度は鼻先に最大出力で。」
「…了解です。」
ブォオオオッ!!ブォオオオッ!!ブォオオオッ!!……
「よし、動きが鈍った!今だ!!!」
「はい!最大出力!!!」
ブオォッ………………
完璧だ。泡を吹いて倒れるイノシシ。今まで森から搾取をし続けた非道な独裁者は正義の革命家パフィさんの手によって討ち取られたのだ。
その光景にほくそ笑む僕と唖然とする他の人達。
「oh~、マジであのイノシシを倒しちまったぜ~。」
「凄かね~、あのパフィちゃんって子は。」
「…いや、確かにあの子のスキルも凄いが、それを十全に活用するコンヨウ殿もまた見事だった。」
「うむ…指示は的確で一切情け容赦がなかった…それにあの顔、あれは悪鬼羅刹か何かだったぞ…」
「あの子には逆らわない様にするザンス。」
「ほら!皆さん!あのイノシシ畜生はパフィさんの活躍で無事沈黙しました。
多分息はしてないと思いますが、一応念のためにトドメを刺しておきましょう。誰か、刃物はお持ちですか?」
僕は呆然とする集落の皆さんに指示を出すと、エレフさんが包丁を取り出してイノシシの心臓を一突きにしてくれた。
わぁ、指示したのは確かに僕だけどなんか全く躊躇しないその行動に少し引いた。でも何故だろう。イノシシにトドメを刺す時のエレフさん、何かに怯えているようだった。
まぁこれだけデカいイノシシなら無理もないか。他の人達も怯えていたみたいだし。
そんな事より今日は肉祭りだ!!これだけあれば暫く食べるのに困らないだろう。いい事した後って気持ちがいいなぁ。




