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アンドロギュヌス  作者: 勇者ありたま
みんなのラルフ
9/83

それぞれのバレンタイン

「ブォォー! ビービー!!」


ものすごい数のクラクションと、エンジン音。この季節の風物詩。「ジュリヤンへのバレンタインチョコを運ぶトラックの列」


「マジうっせぇ。今日は、バレンタインかぁ」


非モテ男子にはつらいこの日。この町からは、この日だけ避難するやつもいるとか…。


「クゥン(去年は、56台だったらしい)」


「まじ、何者なんだアイツ…」


「ジャンさん…」


そこに、ヒース・ランゲルハンス子爵が。今日も、お美しい。困った顔で立っていた。


「どうされました?」


「…ジャンさん宛にチョコがトラック1台分ほど…」


「今年は、1台かぁ。ありがとうございます」


子爵が、物言いたげに黙った。眉を下げて、口を開く。


「ちょっと、多すぎませんか?」


「シェリルちゃんに、欲しいだけ分けますが」


子爵は、目を輝かせて、うなずいた。


「そうですか、それなら仕方ないですね」


(チョロいが、複雑な気持ち…)


★★


ジュリヤンの家。


「今年は、60台か。来年のジュリヤンシリーズも安泰だな」


父親が腕組みをしてうなずく。今年は、某外国の女王も、国一番のシェフに腕を振るわせたとか。


「この後が大変なんだよ…」


ジュリヤンの家では、「チョコを粗末にした」という噂が立って、人気が減るのを防ぐ為、チョコは、通いの侍従やメイド達に死ぬほどあげる(箝口令を敷いてる)か、ジュリヤン家で消費する。


「パパ、うちは何でもチョコソースなんだけど…」


「仕方ないだろ。ゲーム買ってほしくないのか?」


「…パパ」


「ピンポーン」


家の呼び鈴が鳴った。呼び鈴を押せる人も限られている。バレンタインに欠かさず訪ねてくる人は…。


「ジュリヤン。愛してるだ」


「クレオパトラ!」


クレオパトラは、顔認証も登録されている。ジュリヤンが駆け寄ると、ひょいと子ども抱きにした。


「ジュリヤンは、軽いだ。もっとご飯食べるだよ」


「僕、モデルだよぉ」


「ジュリヤン。これ」


クレオパトラが紙袋を差し出した。


「あ、ブラウニー♥️僕、これ大好き」


「ジュリヤン、浮気してないか?」


「やだ。してないよぉ」


クレオパトラが、ジュリヤンを子ども抱きにしたまま聞いてくる。ここで、ジュリヤンは一つ失念している。クレオパトラの浮気とは「クレオパトラ以外に心を移したり、体だけの関係もアウト」であることを…。ジュリヤンの倫理観は緩かった…。パトラッシュを好きなことや、ラルフとセフレということがバレたら、ジュリヤンは死ぬかもしれない。頑張れジュリヤン。力では、クレオパトラに勝てるやつはこの世にいない。笑



★★


「うわっ。これ、縮れ毛が入っている」


「ワン(これ、毒入り)」


ジャンは、子爵家で「食べられるチョコを仕分け」していた。今年は、打率9割だが、食べ物を粗末にしてはいけない。よいこのみんな、わかったかい?


「パトラッシュ、これ」


ジャンが、チョコを差し出した。パトラッシュの顔が象られている。



「クゥン(いやに黒いよ?)」


「まぁ、今流行りの高カカオチョコ」


それにしても真っ黒だ。パトラッシュは、「甘いのはあんまり」といいつつ、チョコはバクバク食べる。脳と口が連結してないのか。まるで、「あたしぃ、ダイエット中だからぁ」といいつつ、手はお菓子を掴み、しっかり口に入れる女のようだ。


「ワン(マリアには渡したの?)」


「もちろん」


マリアには、チョコに「マリアの家まで飛んでいけ」と命令して飛ばしてある。魔法便利。


「クゥン(まぁ、いただきまーす)」


「ガブ!」


「!キャンキャン!(なにこれ、苦!ってか酸っぱ!)」


「それ、カカオ100%だから」


「ワン(100%!?)」


「チョコにカカオ100%にして、パトラッシュの顔の形に固まれと命令した」


「クゥン(魔法便利…)」


バレンタインの少し前、パトラッシュがジャンの誕生日を忘れたことを、ジャンはしっかり根に持っていた…。


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