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アンドロギュヌス  作者: 勇者ありたま
みんなのラルフ
3/83

みんなのラルフ

★★


「ワワンワン(ゆうべはおたのしみでしたね)」


「…ごめん。ごめん。まじ楽しかった。聞こえた?」


「ヴヴ~ワンワン!(まじうるせぇ。町中に聞こえる声でよがるな!)」


「仕方ないだろう? お前もマリアと寝てみれば分かるぜ」



「ご飯できたよー!」


昨日、家に泊まってくれたマリアが、朝ごはんを作ってくれた。



「ワン!ワフン!(いつものご飯より、千倍はうめぇ! なんだこの肉の柔らかさと旨味!)」



「オークの肉だけど、パイナップルに一晩漬けて、スパイスで臭みを消したの。美味しい?」



「クゥンクゥゥーン。(結婚してくれ…)」


「マリアは、あげねぇ。シェアはしても。しかし、このじゃがバターうめぇ」



「ジャンは、じゃがいも好きだから、素揚げして、ローズマリーとベーコンとで炒めたの。どう?」



「マリア、帰らないでくれ」



「うーん、でもぉ。今マリアのお父さんが病気なの。仕方ないでしょ。もう帰るから」



粘る俺をひっぺがして、マリアは帰った。次はいつ会えるのか…泣



★★


俺は、ラルフ・ローレン。何か聞いたことあるって? どうやら、固有名詞考えるの面倒って誰かが言ってた。俺、まぁまぁ主要人物のはずなんだが。


まぁ、俺は最近嬉しいことがある。めちゃくちゃ半端なくモテる。しかも、二年前から。



「ピロン♪」



ちょい高めだけど、通信魔道具が売ってる。誰かから、LINEだ。どれどれ…。


「ラルフ、今暇? 私のとこに今すぐ来てぇ」


アマンダ・リシャールからだ。茶色の髪に浅黒い肌。今駆け出しアイドルで、かわいいのはもちろん、スタイルが半端じゃなくいい。特に胸。グラビアアイドル上がりのアマンダは、胸でナニを挟む技術が秀逸。よいこは真似しちゃだめ。


「今すぐいくよ♥️」



俺は、いそいそと、アマンダの家に急いだ。



★★


アマンダの家にて。一通り事が終わった後。



「アマンダ、俺の事好きか?」



アマンダは、茶色のウェーブのかかった豊かな髪を揺らし、先程の情事の名残である上気した顔を俺に向ける。潤んだ赤い瞳が潤んで揺れる。…美しい。



「え?」



「え? じゃなくて、俺の事が好きだからこうやって、時々会ってくれるんだろう? さっきまであんなによがってたじゃねぇか」



「…そうねぇ。通りの肉屋のおじさんよりは」



「? なんか、俺に対する愛が薄くない? さっきのは何?」



アマンダは、面倒そうに、ドアを指差した。



「ねえ、終わったら帰ってくれる約束でしょ。私、アイドルだし、誰かとこういうことになってるのがばれたら面倒なの」



「…」


俺はそそくさと帰り支度をして、アマンダの家を後にした。


「何なんだよ。全く」



…俺はモテる。モテるが、みんな俺に対する愛が薄いような気がしてならない。



ラルフは知らない。ラルフの恋人(というよりセフレ)は四人いるが、その四人から、陰で「ピザ屋」「ウーバーラルフ」「デリヘル坊」と呼ばれていることを。しかも、ラルフのスケジュールは、グループLINEによりがっちり管理され、四人のスケジュールが被ることもない。ある意味かわいそうな男。ラルフ。


★★


アマンダ「ラルフ、今帰ったわ」


ジャン「今日はラルフいいや。一週間後の土曜日」


ジュリヤン「俺も今日はいい。来週の月曜日」


ミミ「ミミは、明日!」



アマンダ「了解。私は、来週の金曜日にするわ」



★★


俺は、また別の日、ジュリヤン・モローのところにいた。ジュリヤンは、道具屋の息子で、男だが、すんげぇ美少年だ。



「ジュリヤン」



「何?」


ジュリヤンは、肩まで伸ばした金髪をかきあげて、めんどくさそうに返事をした。伏し目がちの翠の瞳が美しく、こんな美少年とナニかするのは、背徳的な悦びを感じさせる程だ。肌は、抜けるように白く、上気して、頬を薔薇色に染めた姿は、そのまま絵画にできそうだ。



「俺の事が好きか?」



「微妙」



「…」



俺は何かがおかしいと感じ始めていた。俺に彼女?(男含む)は四人いるが、みんな愛が薄くないだろうか?



★★


そのまた別の日。俺は、ミミ・プティのところにいた。ミミは、ロリってやつで、小さく可愛く、そして胸がでかい。



ミミは、意外とスキモノで、アニメ声でよがる。しかも、割りとしつこく求められる。俺は、みんなにぶつけている疑問をミミにもぶつけてみた。



「ミミ…。俺の事好きか?」



「? ミミは、チョコレートケーキが好き!」



ミミは、自慢の巨乳と緑の美しい髪を揺らしながら、笑顔で答えた。ミミは、ブルーのクリクリした目も愛らしく、町でファンクラブができる程の美少女だ。


「…。次来るとき買って来るよ」



★★

ジャンの家にて。ジャンは、激しめがお好みなので、正直疲れるが、まぁいい。俺はお決まりのセリフを吐いた。


「ジャン、俺の事好きか?」



「? 便利だとは思ってる」



「? 便利? 俺さっき滅茶苦茶頑張ったよね?」



ジャンは、銀髪を揺らして、面倒臭そうに俺を見た。その目はブルーだ…。



「ジャン、事が終わったら、そんな冷めきったブルーになるのかよ。さっきまでのは一体なんだったんだ」


ジャンは、スタイルが彫刻のように美しい。均整の取れたという言葉を具現化したようだ。顔も、半分天使なだけある。見とれてしまうくらいには美しい。


「ま、お前俺の他にも誰かいるだろ?」



「!?」


…俺は青ざめた顔でジャンの家を後にした。


俺を心から愛してくれる人はいるのか?

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