第2話『まだ見ぬ街へ』
前回までのあらすじ…的な何か。
何やかんやで、男主人公と転生神はこの世界へとやって来た。
(片方は異世界転生という形で、もう片方は異世界移住的な何かな形でwww)
彼ら2人は来てから色々とありつつも、自身の使用する武器をそれぞれが手に入れた。
(うん、ご都合主義展開で落ちていたのを見つけた。)
チュートリアル戦闘で名も無き黒龍と対決をし、とりあえずは相手側の体力を削り切る事に成功したが、その後…名も無き黒龍が再び行動を開始するが、そこに突如現れた謎の人物の攻撃により名も無き黒龍は撃退され、その場を去っていた。
(まあ、チュートリアル戦闘という形のイベント戦闘ですのでーwww)
そして今、彼らはその謎の人物と対面する形となっているのであった…。
(いや、対面はしている形だと思いますがねぇー?)
俺達がチュートリアル戦闘で戦っていたドラゴンは突如現れた謎の人物によって撃退された。こちらとしては、これ以上アレとの戦闘はしたくなかったので、ある意味で助かった。だが、それと同時意識を回す必要がある事態になっている。
そう、今目の前にいる人物が何者なのか分からないので、安心はしきれないのだ。当然、その人物が敵であるかも味方であるかも分かる訳が無い。
とりあえず、俺は何か起こるかもしれないのでその人物から注意を逸らさない様にする。すると、その人物は軽き息を吐き、持っている武器を肩に乗せてこちらに振り返る。
???「おう、お前ら大丈夫か?」
その人物を正面から見て分かるのは男であるという事、そして同じ人間であり俺と転生神よりは背が高いという事ぐらいだ。強いて言うならば、服装のセンスは俺と同じで無い又は興味が無い様な感じが伝わって来る。後は、マントを羽織っているという事ぐらいだろうか。色は白と茶色の中間の様な感じの色で何かエンブレムの様な模様がある。…まあ、何かほぼ俺に似た服装で俺よりはしっかりと着こなせている様に見えるのは事実だろうな。
まあ、それよりもだ。男はこちら側に語り掛けて来る。こちら側にコンタクトを取ろうとしているのだろうか? だが、俺はその男から注意を逸らす気は無かった。
???「おいおい…そんなに警戒しないでくれ。
先に言っておくが、俺はお前達に何かしようって訳じゃないぞ?」
どうやら、俺が警戒している事はバレバレの様である。確かに、助けてもらった事に関しては分かってはいるし感謝はしているが、俺は現実世界での人間関係では色んな理不尽やらがあった為、簡単にその事実を受け入れられないのもまたアレなのである。
???「…参ったな。
これじゃあ、話が進みそうに無いな。」
俺の変わらぬ態度に後ろ髪をかき途方に暮れる男。俺も簡単にそこら辺の切り替えが出来るのであれば苦労はしない。現実世界とこの世界は違う事は既に分かってはいるが、長年自分の中に染みついてしまっているモノはそう簡単に変わらないし、変えられたとしてもそれが安定して使える様になるには多少の時間はかかるだろう。
???「こりゃ、どうしたもんか。
色々と気になる事があるんだがなぁー。」
そうは言われても俺は態度をなかなか変えられない。このままでは本当に埒が明かない空気だ。しかし、こういう時に頼りになるのが転生神の存在である。
転生神「んー?
何か聞きたい事でもあるんですかぁ~?」
彼女のムードが良い意味でこの張り詰めた状態をぶち壊してくれる。
???「ん?
あぁー、色々と…な。
だが、ここは危険だ…話すとしても別の所じゃないとな。」
転生神「なら、まずは安全な所に行きましょうか!!
話やらは、まずはそれからです…よろしいですか?」
転生神は俺にそう語り掛けて来る。まあ、何故か彼女がいると安心は出来るから俺はそれを受け入れる事にする。
???「よし、なら決まりだな。
とりあえず、まずはこのエリアを離れるとしよう。」
俺達はその男の言う通りこの場を離れる事にした。まあ、彼に着いて行く形ではあるが。
そして、数十分程度歩いただろうか。俺達は辺りが見渡せる丘の様な所まで来ていた。
転生神 「あの…まだ歩くんですかー?」
??? 「あー…戦闘後にそのまま移動だから体力がアレか?
そうだな…この丘の頂上辺りで一度休憩するとしますかー。」
男主人公「そこで色々と話すという事か。」
??? 「ま、そういう事になるだろうな。」
俺達はひとまず今歩いている丘の頂上を目指す。そして、少し歩くとその頂上に到着する。ここにはちょうど良い大きな岩があったので、俺達はそれを背もたれにして座り込む。
転生神「ふぅ…やっと休憩ですねぇー。」
どうやら、転生神はクタクタの様である。まあ、チュートリアルと言って良い様な難易度じゃない戦闘をした直後に移動だったから無理は無いだろう。
男主人公「…で、私達に聞きたい事とか何でしょうか?」
その場に腰を下ろしてすぐ、俺は男に語りかける。まあ、時間を無駄にしたくないとかそういう風に考える様なアレでは無いのだが、こうなっているのは未だに警戒心が薄れていないからという事が起因しているのだろう。
???「おいおい…息つく暇ぐらいは与えてくれよ。
こっちも体力は無尽蔵って訳じゃないんだからなぁ。」
まあ、それは誰だってそうではあるが。
???「そうは言っても、話を進めない限り
お前さんの考えは変わりそうも無いかー。」
どうやら、彼は俺の心情を察している様な感じだった。まあ、こちらとしても敵か味方かの材料が早く分かるのはありがたい。…と言っても敵であるならば、ここに来るまでの間に何度でもこちらに仕掛けられるチャンスはあったはずだが、それを彼は行って来てはいないのだがな。
その為、この時点では移動する開始するより前と比べたら多少の警戒心は薄れてはいるが、それでも都合よく人をあしらって最終的に捨てる存在や掌返しを行って来る存在に何度も苦しんできた経験がある為、その可能性が消えてない限りは警戒心はこれ以上薄れないだろう。…まあ、現実世界での俺にはそういう事に対して何か出来るという事は無かったのでアレではあるのだがな。
???「まあ、ずっとこの空気だと色々とアレだな。
そんじゃあ…俺がお前さん達に聞きたい事を聞かせてもらうとするか。」
さて、どんな質問が飛んでくるのだろうか。
???「まず最初にだ、あんなエリアで何をしていたんだ?
俺の見た感じではお前達は新米の冒険者かその類いの何かに見えたが、
とりあえず、あんな場所にいたらああいうのに頻繁に遭遇しちまうぞ?」
どうやら、あのエリアはこの世界の人達からしても安全なエリアでは無いのだろう。現に、そのエリアの敵に出会っているので、ああいう感じの敵に頻繁に遭遇するという言葉を聞いただけで少なくとも冒険を始めたての者達が足を踏み入れる様な場所では無いのだろうという事は理解出来た。
だが、それよりもこの質問は非常に俺達にとっては面倒な内容だった。俺達が新米の冒険者か否かという部分に関しては、そういう類いと答える事が可能ではあるが、その前の何をしていたかという部分に関しては非常に答え方に困る所がある。
俺達はこの世界に転生をしてきた身だ。つまりは、元々はこの世界に存在しない存在であり、この世界で言う所の異世界からやって来たという事になる。そして、その時に転生座標として送られた場所があのエリアだったという訳だ。これを説明するにしても、おそらくだが、この世界の人達からしたら最初の部分から疑問符しか浮かばないであろう。
当然、この問いに俺はどう答えるのが良いのか非常に悩まされた。だが、こういう時に頼れるのは転生神の存在である。
転生神「あー…私達は、遠い別の場所からやって来たんです。
それで、たまたまあのエリアに来てしまってですねー?
…で身を守る為の武器を見つけてたら、敵に遭遇したって感じです(笑)」
???「なるほどなぁ。」
転生神「まあ、冒険者としては完全に初心者ではあるんですけどねぇ~(笑)」
???「そうだろうなー。」
ある意味、嘘も言ってないし、それであって事実を述べている内容になっているので、この返しは流石としか言い様がないだろう。まあ、その内容的に色々と突かれる部分はあるのだが。
???「…そういや、遠い別の場所って言ってたが?」
転生神「えっ…あー、それはそのー…。」
やはり予想通りに飛んできた言葉に転生神は回答に困っている。そして、助けを求めるかのようにチラッ…と俺の方に視線を送っている。気持ちは分からなくは無いが、互いに同じなのだから俺にもどうしようも無い。
???「あー…すまんな、どうやら野暮な質問だった様だな。
まあ、何だ…アレだ、答えにくかったら答える必要は無いが…。」
正直、驚く様な言葉が返って来た。いや、一切この類いのケースが無いと考えていた訳では無いが、可能性としては少ない方の部類であると俺は考えていたので驚いた感じである。それと同時に、この世界と現実世界ではそういう観点も大きく異なっているのかもしれないと感じた。
男主人公「…答えなくても良いんですか?」
??? 「まあ…誰しも何かしらは抱えているのは同じだからな。
その抱えているモノのレベルが人によっては違ってくる。
それが話しやすいモノか話しにくいモノかとかもそれの一つだ。」
俺はその言葉を聞いて先ほど感じていた感覚がより一層強くなると同時に少し安心出来た。少なくとも現実世界ではこういう理屈を理解している相手はそうそういなかったからである。いたとしても鎮圧され、根絶やしにされたり干されたりする様な世界だったのは確かだ。
??? 「もちろん、それらの数も人によっては違ってくるからな…。」
男主人公「…えぇ、そうですね。」
俺は目を閉じてそう答えるしかなかった。俺は生前でもそれは理解していたからよく分かる事ではある。だが、それが故にそういう事を普通に聞ける場にいるという事が新鮮でしかないのだ。
そんな反応の俺を見て男は頭をかきながら話を先へと進める。
???「…まあ、あれだ。
この話はここまでにした方が良さそうだな。
結果的に色々と聞き出す事になってしまいそうだからな。」
こちらの事情を察したのだろうか、彼はそう言った。そして、言葉通り質問の内容を変えて来た。
???「だから、次の質問だ。
お前さん達は一体何者なんだ?
確かに、冒険初心者なんだろうが…そのアレだ。
単にそれだけじゃない何かを見ていて感じたんだが…?」
転生神の能力を見てそう感じるのは普通に分かるが、俺に対してもそう思っているのであれば、それは本当に言っているのかねと思ってしまう。
男主人公「それだけじゃない何かとは一体?」
??? 「ん、あぁー…その何だ、アレだ。
そこの彼女の使う能力は初心者とは思えん能力だったし、
お前さんは適切なタイミングで能力強化をしていた様だったしなー。」
転生神 「あー…私のは、あのフィールドの事ですかね?
それなら、私は元から持っていた能力なんですけどね?」
??? 「元からあんな使い勝手の良い能力を持っているのか…。」
転生神 「…それが何か?」
??? 「いや、あまり見た事無い様な形状のモノだったんでな。
ああいう能力も持ちつつ魔法攻撃のセンスも高い様だしで…。」
転生神 「そういう方もおられるんじゃないですかね~?」
??? 「あぁ…まあ、いなくは無いがな?
それでも最初からや冒険初心者で…っていうのはあまりな。」
明らかに理解に苦しんでいるのが伝わって来る。そりゃそうだ、俺だって彼女の使える能力を見た時は驚いたし、正直言ってあんな事が出来て火力ソースにもなる威力の攻撃も放てるのを見ると本当に初心者なのかと思うのも無理は無い。そして今、さらっと聞いたが魔法攻撃のセンスとは弓を使った攻撃の事なのかもしれないだろうが、まさかそれ以外にもあるのだろうか。…いやまあ、今そんな事を考えた所でって話になるか。
転生神 「う~ん、そういうもんなんですかねぇ?」
男主人公「まあ、さっきの言葉通りの意味なんだろうけどな。」
転生神 「でも、私達は本当に初心者なんですけどね~(笑)」
男主人公「まあ…そうなんだが。」
この転生神はあまり自分の能力の凄さを自覚していないのだろうか。それにしては的確なタイミングで質量とかを計算して使用していた様にも思えるのだが気にせいだろうか。おっと、俺の事に関しても何かを言われていた様なので誤認されない様に正確な事だけは伝えておこうか。
男主人公「…そういや、俺が的確に
能力強化をしていた様に見えたらしいですが、
あれは全部がたまたま起こった事なだけですので。
現に同じ事をやろうとしても意図的に出来ない訳ですし。」
??? 「そうだったのか…。
だが、一度使えたという事は、
またいつか使えるかもしれんな。」
男主人公「そんなもんですかねぇー。」
??? 「まあ、その時が来たら可能になるだろうさ。」
まあ、その時がいつ来るかは別として…という事だろうな。
俺はその言葉を聞いて無言で空を眺める。男はそれを見て何かを察したのか、例の頭をかくという仕草をした後に少し間を空けてから再び喋り出す。
???「…どうやら、この話もここら辺にしておいた方が良さそうか。
能力の事を聞くって事は、お前さん達の事を深く聞く事にもなるしな。
結果的に、それが踏み込まれたくも無い領域に入る可能性もあるか…。」
俺と転生神は無言でチラっと顔を合わせる。お互いに、何か相手側に異様に気を使わせている感がしてならなかったのだろう。
???「あぁ…すまんな。
どうも、色々と気になってしまう性分でな?
それ故に気になっている事をよく聞いちまうのさ。
ま、それで色んな事が知れたり考えられたりするのは良いんだがな…。」
この言葉を聞いていて、何だか俺と同じ様な感覚がすると感じた。だが、俺と違う所は明らかにあって、それは圧倒的な戦闘の実力と後は経験の数が違うだろう。前者は実際にそれを見たから分かる事ではあるが、後者に関しては何となくだがそんな感じがする。出生も分からない相手と一緒にいて普通にしている辺り、色々と察して必要以上に踏み込んでこない辺りの対応を見ると只者では無いのではないかと感じられる。
??? 「…と、悪いな。
いつの間にか俺の個人的な話になっていたな。
ま、誰にも永遠に慣れないモノはあるって事だよな。
そして、それは無理をしてでも、慣れて行く必要も無いって事だ。」
男主人公「…………………………。」
俺は彼のこの言葉を目を閉じて聞いていた。一見、この言葉を聞いていれば結論が分かっているなら、どうにかしろよと思うかもしれないが、実際問題はそんな簡単に行きはしない事は俺は現実世界でこの身を持って経験をしているのでよく分かる事だった。…大抵、そういう風に言った人間程、相手側をそれが出来ない環境下に置いたり、相手の事を理解しようともしないか理解して無いのに無責任にそういう言葉を放って逆に傷をつけたり、与える必要の無いプレッシャーなどを与えてしまって、状況を悪化させてしまうケースも少なくはない。
???「…話が脱線しすぎたな。
これじゃあ、まるで休憩にはならなかったか…?」
まあ、内容的にはどちらかと言うと暗い方面の話をしていたり、何とも言えない様な空気が漂う様な話しかしてない気がするが、それであっても動かずにいた時間はある程度あったので、ここに来る前よりは俺も転生神も体力は多少回復している感じだった。
転生神 「いえいえ(笑)
多少は体力も回復出来ているみたいですし、大丈夫ですよ~?」
男主人公「こちらも同じくです。」
??? 「そうか?
なら、そろそろ先に進むとするかぁー。」
一同は出発する為にその場に立ち上がる。そして、男が先導する様に先に歩き出した。しかし、数歩歩いた所で立ち止まり思い出したかの様にこう聞いて来た。
???「そういや、お前さん達は冒険初心者だって言っていたよな?」
転生神「それがどうかしましたか?」
???「いや、重要な事を思い出してな?
お前さん達、身分証みたいなモノは持って無いのか?」
転生神はこちらに視線を送って来る。だが、俺が出来るのはその彼女の視線にこちらの視線を返す事ぐらいだ。そもそも、この世界に身分証明書があるという事実を俺は今ここで知ったのだからどうにも出来る訳が無い。
???「その様子だと持っていないのは確定で、
そもそも、身分証の存在自体を知らないとか…か?」
転生神「え…いや、私は知っていますけどもね…(笑)」
???「…ん?
…まあいいか、持っていないなら作っておく事をオススメするぞ?
あるのと無いのとでは、冒険とかのしやすさも変わって来るからな。」
転生神の言葉に少し疑問符を浮かべながらも、その身分証明書がこの世界では必須であるという様な事を感じさせる様な事を俺は聞いた。本人はそういう言葉では言っていないが、後半に言っている言葉を聞いている限りでは、持っておいた方が良い物には変わりはなさそうだ。
それよりも、俺も彼と同じで転生神がそれの事については知っているという言っていた所に気になる事もあるが、今その話はするべきではないだろうと思ったので、それに関してはこの場では言及しない事とした。
男主人公「なるほど…。
ちなみに、それはどこでどうやって作れるんです?」
??? 「ん…?
あぁ…ギルド協会がある街ならどこでも作れるとは思うが?」
転生神 「街ですかぁ…そういや生活拠点も見つけないとですもんねー。」
転生神は丘の上から見える周囲の景色をキョロキョロと見渡していた。すると、彼女の視界に一つの街の様な場所が入った。
転生神 「あっ!!
噂をしていれば、街の様な場所がありましたよ~?」
男主人公「あ…本当だ。」
俺は、彼女が指を指す方向に視線とやりそれがあるのを確認する。だが、その街らしき所に行くまでには広大な森の様な地帯があるのも見える。
???「あー、あの街ならギルド協会もあるし、身分証を作る事は可能だな。
ただ、そこに行くまでにはあの森のダンジョンを抜ける必要があるな。」
転生神「見た感じだと相当広そうですけども…
あそこ以外を通って行く方法は無いんですかねぇ?」
???「あるにはあるが…この地点からは相当遠回りになるぞ?
それでも構わないとしても、フィールドの方で出て来る敵が
ここよりもさらに強力な相手になってきたりもするからなぁー。」
転生神「あー…。」
転生神は思わず目を逸らす様な仕草を行う。確かに、今の俺達にはそれは避けた方が良さそうだ。…っていうか、今俺達がいる場所がフィールドとして分類されている場所であるという事を何気に初めて知った気がするが。
???「まあ、その道中が俺一人だったり、
お前さん達の護衛になるメンバーがいたりしたら、
今の話は別にはなってくるだろうが、今回はそうじゃないからなぁー。」
まあ、そうだろうな。流石に今の状態よりも過酷になる様な道を初心者冒険者を連れて通ろうなんて思わないだろう。たとえ、死などの概念が無いこの世界だとしても、やる必要の無い苦行の様な事をするべきではないだろう。
男主人公「そうなると…あの街に行く為に
選べる選択肢は一つだけという事ですか。」
??? 「あぁ…あの森のダンジョンを抜ける事だけだろうな。」
転生神 「それはもう、選択肢とは言えませんよねぇ~…?」
男主人公「それもそうか。」
確かに、これはもう選択肢とは言えるモノではないな。現実でこういう事を無責任かつ相手の物差しでやられると苦痛であり、「ふざけるな。」としか思わなかったが、今の様に自分達にあった形の内容のモノがこれになるのであれば特にそこまで思う事は無い。…っていうか、本当にそれ以外に今の俺達に取れるまともな方法が無い為、何らおかしい形では無いのではあるがな。
???「まあ、安心しろ。
こう言い出したのは俺でもある…だから抜けるまでは付き合うさ。
俺が言い出して無かったとしても同じ行動はしてただろうけどな…。」
まあ、流石に安全な方な道とは言え、ダンジョンなのには変わりない為、当然敵とかが出現する可能性がある訳だ。そういう事も考えると、この世界の人間が同行してくれる事はありがたい事である。出会って当初とは違って俺達には彼に対しての警戒心は無くなっているので、同行されるとなっても特に何かを思うという事はもう無いであろう。後、選択出来る様な道がこれしか無かったとはいえ、自分が言い出した事になる為、それについて自分には責任があると感じている様な感じがして、ある意味では非常に信用も置けるぐらいである。
現実世界で生きていた頃だと、どれだけ掌返しをされて全てをこちらに擦り付けられただろうか。…まあ、今はそんな事を気にしても仕方が無いだろうが。
男主人公「…なるほど。」
??? 「ま、それじゃあ先に進むとしますかぁー。」
転生神 「そうですね~、行きましょう!!」
俺達は森のダンジョンに向かって歩き出した。…と、思いきや男は少し歩いた所でまた立ち止まった。どうやら、まだ何かこちら側に話しておきたい事があるようだ。
???「あー、そういや…
変に気を使う必要は無いからな?
言葉遣いやらも自分のやりやすい様にしてくれ?」
どうやら、彼もまた俺が普段の言葉遣いでは無いという事に気づいている様だった。俺は「何だそんな事か。」と思いつつ、慣れない様に頭をかく。事実、初対面の相手にタメ口を使える用になるまでは相当な時間が掛かる可能性がある。
転生神 「そこら辺は、ご心配なく~(笑)
私は今のままの方が何にも違和感がありませんので~(笑)」
??? 「そうか。
お前さんの方はどうだ?」
男主人公「…善処します。」
??? 「…そうか。
だが、無理に今すぐやる必要は無いからな?
自分がそれが可能になった時にそうすれば良いさ。」
そして、彼は少し前を空けてこう言った。
???「っと…立ち止まらせてすまなかったな。
それじゃ、そろそろ先に進むとしますかー。」
転生神「そうですねぇ~(笑)
日が暮れたりしたら敵も強いのに変わったりしそうですしー?」
???「ん…あぁー、そうだな。」
転生神「どうかしました?」
???「いや…夜になると敵が強くなるのを知っているんだな…ってな。」
転生神「えっ…あぁー。」
転生神がぽろっと言い放った言葉に対しての男の言葉を聞くと、彼女は話を逸らしたそうに視線を逸らす。これは、幾ら何でも不審がられるのではないかと俺も思った。だが、男の口から出された言葉はこれまた意外な言葉だった。
???「まあ、冒険に出る前に知識として頭に入れていたとか…か?」
転生神「それです、それー!!」
男の言葉に対して明らかに苦しみまぎれにそう即答する転生神。これは、流石に何かと怪しまれるのが当然な気がするのだが…。
???「そうか、それならそれで良いさ。」
明らかに何か聞こうとしている事を留めた上での返しだった。俺達はそれを感じ取っていたので、互いに顔を合わせて疑問符を浮かべる様な感じになっていた。おそらく、彼はこちらの事情に関して深くは干渉しない事を決めているのだろう。…まあ、そもそも性格がそんな様な感じなのかもしれない。
そんな事も考えつつ、俺達はそのまま彼の後について行った…。
そして、それからフィールドを歩き進め、俺達は森のダンジョンの前までやって来た。改めて近くで見てみるとかなりの広範囲ダンジョンであるという事が分かる。先に見えていた街の様な場所は完全に目の前の森によって隠れていて見えない。
転生神 「遠くで見ていたよりも随分と広そうな感じですねぇー。」
男主人公「これは迂回路はかなり遠回りになる件についても納得が行くか。」
??? 「だろ?
ちなみに、迂回路に行くなら、この森に沿って歩けば見つかるぞ?」
転生神 「これを見てからだと、そんな事は思いませんよ…。」
転生神は思わず森から目を逸らす。まあ、こんな広大な森を迂回していくとか今となっては本当に考えてたくも無いので、迂回方法を教えられた所でそういう反応になるのは分からなくもない。
???「そうか。
なら、ここを通って行く以外には無さそうだな。」
男は森の方に目を向ける。俺達も彼に続くかのように同じ行動を取る。そして、その俺達を見て男は軽く微笑んだ。
???「よし、それじゃあダンジョンに入るとしますかぁー。」
そうして、俺達三人は森のダンジョンの中へと入っていった…。
森のダンジョン内に入ると、俺と転生神は現状で見れる範囲を見渡していた。かなり綺麗な場所である。言ってはアレだが現実世界の森や自然とは比べ物にならないレベルで綺麗である。それは何もこのダンジョンだけではなく、さっきまでいたフィールド上にある自然もそうだったがな。まあ、転生神に至ってはこういう所に来る事は初めてなのだろう、そういう様な反応を見せていた。
??? 「色んな事前知識は知っていそうだったが、
流石にダンジョンの中を見るのは初めてだったかー?」
転生神 「えぇ、それは初めてですよ~?」
??? 「お前さんの方はそこまで反応して無いが、
こういう風景を見るのは初めてじゃない感じか?」
男主人公「…ダンジョンとして見るのは初めてですかね。」
俺はとりあえず、そうお茶を濁すような返答をしておく。まあ理由としては、流石に、現実世界というワードやそちら側での話は、この世界の者達に語っても問題無いのかという事が分かり切っていない状態でもあるので、変にそっち路線の話は避けられるなら避けるべきであると考えているからだ。
???「ん…そうか?
まあ、ダンジョン以外でもこういう所は幾らでもあるからなぁー。」
確かに、ここに来る前のフィールド内にも幾らでも現実世界とは比べられないレベルの良い自然環境はあったな。だが、実際に間近に来て見るのと遠くから見ているのとでは、また見え方も違うモノだ。
???「しっかしまあ、この世界は不思議なもんでなー?
俺達の体もそうだが、自然も一切傷つかなかったりするんだ。
だから、戦闘がある場所でも自然が維持され続けているって事だ。」
転生神「そして、自然の生き物達も不老不死ですしねぇ~。」
???「ん、あぁー…そうだな。
それも、自然が維持され続けている理由でもあるだろうな。」
何かと不思議な感じをしながらも普通に男は転生神の言葉に返事をしていた。まあ、さっき言っていた様に彼女が事前知識などで、その仕様を知っていると解釈したのだろうか。いや、そもそもこの世界に存在している時点で、今の仕様は知っている可能性がある為、案外そんな違和感なく普通に解釈が出来る内容だったかもしれない。
転生神「それにしても、やっぱり…
ダンジョンの中は広そうですねぇー。」
外から見ていてもかなりの広さだと感じていたのは事実だ。当然、そういう風に感じていた場所の中に入ると改めてそう感じるだろう。
男主人公「迷わなければ良いがな…。」
??? 「あー…それはそうだな。」
転生神 「えぇ!?
アナタがいるのにですかー!?」
??? 「まあ…可能性的にゼロでは無いからなぁー。」
確かに可能性的にはゼロでは無い。誰であっても何でも起こりえる可能性はあるのだから。それであっても、現状はこの世界に来たての二人とこの世界の人間である男一人の状態の為、彼が迷うという事案が発生すれば不安でしか無いのは分からなくはない。
???「ま、大丈夫だ…そこら辺は何とかなるだろう。」
少し間を空けてから彼はそう言うが、それを聞いた残り二名は無言である。これにより、何か嫌な予感しかしないのだが。その様に俺達が思っている事を彼は悟っていた。
???「あー…あれだ。
いつかは出られる訳だしな。」
転生神「それは…そうなんですけどもね?」
この言葉には転生神も苦笑いで返す。
男主人公「とりあえず、先に進んでみては…?」
俺は、とりあえず話を先に進めようとしてみる。
???「そうだな、そうしよう。
そうなった時はそうなった時で考えるさ。」
まあ、こちとらそんな事が起こらない事を望んではいるが、それに関しては現時点ではどうとも言えないのが事実である。その為、本当にそうなった時はそうなった時に考えるしかないであろう。まあ、何も動きながらそういう事を考えるという様な事じゃないから、まだ何かと頭は回るかもしれないしな。
???「…それじゃあ、とりあえず前に進みますかぁー。」
彼はそう言って前に進みだす。俺達もその後について歩き始める。すると、彼がすぐに立ち止まってこちらに語りかけて来た。
???「あー、そういや言い忘れていたが…
ダンジョンでもフィールドと同じ様に敵が出て来たりする事もある。
だから、探索中は周囲にしっかりと気を付けておく事が大切になるぞ?」
急に立ち止まって何かを話して来たので、重要な話か何かだと思って聞いていたが、ある意味でその予想は当たっていた様だった。確かに、初めてのダンジョンに入ってから敵の遭遇についての話はしていなかったので、俺達にとっては重要な無い様にもなるだろう。
転生神「まあ、そりゃ出て来ますよねぇー。
だって、ダンジョンですからねー(笑)」
???「その様子だと、それは知っていた様だな。」
まあ、転生神は今までに何度もこの世界の仕様などについて話していたりするので、この事を知っていても俺からしたら何の違和感も無い。その俺でも、大体はそういう事が起こる可能性があるのではないかという予測ぐらいはしていたのは事実だ。
転生神「まあ、ダンジョンってそういうモノですから(笑)」
???「どうやら、その様子なら特に説明はいらないかもな。」
転生神のメタメタしい返答を受けて男は何故か不思議な安定感みたいなモノを感じていた。それ故に、先ほどの言葉が出たのだろう。
???「ま…仮に戦闘が発生したとしても無理に戦う必要は無いぞ?」
転生神「あ、逃走可能な相手ならそれも戦術の一つですもんね!!」
???「ん、あー…確かにそれもあるな。
俺が言おうとしていたのは、絶対に戦えとは言わないって事だ。」
転生神「それは逃げるのも手と同じじゃないですか?」
???「いや…だから、そのー…アレだ。」
確かに、それと全く同じに聞き取る事も出来るが、彼女の言葉を聞いた彼の反応を見る限りでは本来言いたかった意図はそっちじゃないのは見て分かる。
男主人公「戦いたくも無いのに無理して戦う必要は無い…って類いですかね?」
??? 「あぁー、それだそれ。」
俺は、大体の事を察していたので会話が途切れかけていたタイミングを狙って割り込み話を先へと進めた。
???「ただでさえ戦闘は体に負荷をかける行為だ。
体に負荷をかけている状況なのに、無理して
自分から精神にまで負荷をかける必要は無い…って訳だ。」
非常に言いたい事の意味は分かる。俺も現実世界で生きていた頃に、自分がその指示に従って何かと行動すると、相手側の理不尽によって無駄に体力や精神力をすり減らされて来たアレと同じ様な現象に陥る可能性があるという話だ。
まあ、複数の事を同時に行う事が困難であった俺からしたら、その自身に対する無理な負荷をかけさせてしまう行動などがどれほど本人の心身を蝕んで行き、最悪な場合は行きつくところまで辿り着かせてしまう要因の一つになる事はこの身で経験している。…全く同じような行為であっても、それはそれを行う者達や環境次第では与える影響も出て来る結果も全然違うという事であって、それを考えた上で行動しないと双方にとって良い結果にはならない訳だ。
指示した方は自分が考えている通りに行動してもらえれば良いだけだろうが、相手がそれが困難であったり適していない場合は、相手からしたら感じる必要の無い精神的な負荷となる。そんな状況で何をした所で大半の事は向こうの予想通りにもならないし本人にとっても何も影響はしない形で終わってしまったりする。要するにあまり双方にとって意味を成さないのである。
また、それによってその行動が失敗に終わった時、指示者は責任逃れや面倒毎に巻き込まれない様に行動する事があるが、それが上手くいってその本人が上手く自身の地位を守れたとしても同じ事が言えるだろう。指示を出されていた方は本質的に守られていないし、そもそも出した方の本人は成長どころかそうなった本質的な理由を理解せずに忘れてしまうからだ。まあ、最悪の場合はそれを込みで逆上して相手側を叱責したりする様になり、それがエスカレートする事もあるのだが。
ちなみに、こういう事案の事を俺がいた世界では昔からハラスメントと言われていた。…とまあ、何か彼の言葉を聞いてこういうクソ真面目な事を数秒の間に俺はふと考えていたが、まあ話を戻すとしよう。
男主人公「…存じておりますよ。
無理や自分の意に反する状態で物事をやっても、
それは本質的に本人の為にも周りの為にもなりませんから。
まあ、例外はあったりするのでケースバイケースなのでしょうが。」
俺はさっきふと考えていた事が起因している様な言葉を返していた。それを聞いていた転生神は思わず俺から目を逸らしていた。まあ、彼女からしたら俺に現実世界での起こっていた苦痛を思い出させたくは無いという気持ちがあるのだろうが、これは何も彼女の言葉によって出て来たモノでは無いから、そこまで気にしなくては良いのだがな。
???「ん…あ、あぁー…そうだな。」
男も髪をかきながら、こちらにあまり目を合わせずに反応していた。…これは、もしかしなくても重い空気になっている気がする。いや、確実になっているじゃないか。
男主人公「ま、まあ…色々あったもんですから気になさらず。
それに、さっきの言葉は戦闘時以外でも大切な事ですから。」
とりあえず、俺は必死にそこまで気にする必要は無いという事だけは伝える。実際、もう自分は現実世界に生きている訳では無いので、そうであるならば別にそこでの事実をこちらの世界でネタとして使う面ではそこまで苦痛では無い。正確に言えば、苦痛では無くなって来ているというのが正しいだろうか。そうなった来ている理由は、転生神が言っていた事が起因しているのだろうけども。…まあ、それであってもネタとして話すタイミングは考えていたつもりではあったが、このザマである。
??? 「まあ…確かにそうだろうな。
お前さんには言わなくも問題無かったかもな。」
男主人公「いや、そんな事は無いかと。」
??? 「そうか?
それなら良かったが。」
はてさて、この空気をどうしたものかー。
転生神「そ、それよりもですね!?
何で戦闘時の負荷の話をしたんですか?」
転生神が必死に話題を変えてくれた。どうやら、これにより話が先へと進められそうである。
??? 「ん…あー、それはアレだ。
一応、お前さん達が初心者冒険者であるのもあるが…
まあ、俺の職業柄みたいな感じのアレでもあるのかもしれないな。」
転生神 「職業柄…ですか?」
??? 「あぁー…そこまで深く気にしないでくれ。
言うて、まあ…そこまで大層な存在でもないさ。」
男主人公「なるほど、そうですか。」
転生神はこの話に興味はありそうだが、俺はある程度の察しを付けて反応する。まあ、先ほどの件の事についての向こう側の対応もあったので、俺もそれへの借りを返した感じになるのかもしれない。
男主人公「まあ、そこら辺は気になされる必要は無いかと。
一応、一度ではありますが戦闘の経験はしているので。」
転生神 「そうですね!!
無理の無い範囲で戦いますよー?」
??? 「そうか、お前さん達がそう言うのなら大丈夫そうだな。」
男はどこか安心している様な表情をしていた。そして、転生神はそれを見てキョトンとしている。
転生神 「案外、すんなりと受け入れるんですねぇー?」
??? 「まあ、本人の意は伝わって来たからな。」
男主人公「なるほど。」
??? 「ま、そういう訳だ。
今度こそ先へ進むとするかー。」
俺達は彼の言葉に頷いて反応する。それを確認した男は再度進行方向を振り向く。
???「よぉし…それじゃあ行くかぁ。」
そして、俺達はダンジョンの奥へと侵入していくのであった…。
それから、幾つかのエリアを通り抜け、俺達はかなり先の方まで進んできた様だ。道中では、予想通り何回か敵に遭遇していたりしたが、そこまで苦戦する事が無かった感じだ。というもの、チュートリアル戦闘での相手が相手であったという事もあって、通常のエンカウントの敵ならそこそこは対応出来る感じになっていたのである。それでも初めて見た相手やパターンなどには翻弄こそはされていたが、チュートリアル戦闘の時とはこちらの戦力は遥に異なってもいる。そう、同行している謎の男の存在がそれを示している。
彼の戦闘の能力は、やはり相当なモノである。あのドラゴンを一撃で撃退したのを見ているので相当の実力の持ち主であるだろうとの予想はしていたが、まさか攻守共にバランスが取れていて、それでいて打点も出るわ機動性も高いわで化け物染みているかもしれない。そして、彼は部隊の指揮なども上手いだろう。こちらは二人だけは言え、その二人のスタイルを活かした上で無理なく戦闘を進められる様に立ち振る舞っていたのが感覚でも分かるレベルだ。…何よりも、戦術がよく戦況に当てはまっていて非常に安定して動きやすいのもあっただろうか。
まあ、ざっと軽く解説すると、そんな感じだった。本来ならこれぐらいでは済まないレベルなのかもしれないが、これぐらいに留めておくとしよう。そして、話を戻すとしよう。
転生神 「結構、進んできましたかねぇー?」
男主人公「そういや、結構歩いた感じはするな。」
俺達は開けたエリアにまでやって来ていた。今までに色んなエリアを通って来ていたが、ここまで開けたエリアは通って来ていなかった。…あれ、これは何かのフラグだろうか。
???「まあ、何はともあれ迷いはしなくて良かった感じだな。」
そういや、そんな心配もしていたな。だが、気のせいだろうか。ここまで来るまでには、ほぼ一本道であった為、迷う要素はそこまで無かった様な気がするが…。
???「…それにしても、やけに一本道過ぎる様な感じがしたが?」
どうやら、彼もそれは感じていた様だった。そして、彼がそう感じるという事は、普段はこのダンジョンはここまま一本道の様な感じでは無かったのかもしれない。
転生神「まあ、そうじゃない時もあるんじゃないですかねぇ~(笑)」
転生神は自信満々にそう言っている。当然、それを聞いている他の二名は疑問符を浮かべている様な表情になっている。この転生神、この状況がどういう状況なのか知っているのだろうな。だが、俺と二人だけの時以外ではそういう事は喋らない様にしているのだろう。…いや、今までに何回か漏らすに近い状態になっていた時はあった様な気もするが黙っておこうか。
転生神「それよりも、そろそろ出口とかは見えて来たりしませんかねぇー?」
明らかに、さっきの自分の反応に言及が来るまでに強引に話を先に進める転生神。誰が見てもそれはバレバレなのだが、本人はそれには気づいているのだろうか。だが、これについては黙っておくと俺は決めているので今は聞くつもりは無い。男の方もそれについて聞くつもりもなさそうだった。それどころか自然な流れの様に彼女の言葉に答えていた。
???「ん、あー…それならすぐそこだ。」
男はとある方向に視線を送った。その方向にはダンジョンの外へと続くのであろう通路があった。
転生神 「本当ですね!!
まさに、外からの光が入り込んできているって感じですねぇ~!!」
男主人公「ベタなセリフだ事。」
転生神 「それじゃあ、早速外に出ましょうか~。」
俺の言葉はフルスルーして転生神は出口へと向かおうとする。
???「いいや、待て。
まあ、そんな先を急ぐんじゃない。」
男は彼女の前に手を出して彼女の進行を止める。
転生神「どうしてです?」
何故、止められたのか訳が分からない転生神。
??? 「このダンジョンには番人がいるはずなんだ。
だが、奴はまだその姿をこちらに見せてはいない。」
男主人公「つまり、それは?」
転生神 「それが今から出て来るって事ですかね?」
??? 「可能性はある…だから、最後まで慎重に行くんだ。」
確かに、ここまで来るのにそこまで苦労はしなかった感じはあるが、そのまま終わるとも思えない。
転生神 「でも、さっきの戦闘でボス級と戦った訳ですし、
連続でボス級と戦う様な事なんてないんじゃないですか~(笑)」
男主人公「あっ…。」
俺は瞬時に察した。彼女のこの言葉はフラグになりかねないだろう…と。そして、俺の「おい、止めるんだ。」的な反応を見て彼女はキョトンとしている。
転生神 「どうしたんです?」
男主人公「いや…さっきのセリフがだなー。」
転生神 「???」
彼女が疑問符を浮かべた様な表情をした次の瞬間である。前方の上の方にある木々が音を立てて激しく揺れた。
???「…!!
気を付けろ、来るぞ!!」
転生神「え?」
彼のその言葉を聞いて俺達はそっちの方向を見る。すると、木々の中から何かが凄い勢いで落ちて来た。
転生神「何ですか、あれはぁー!?」
それが落ちて来た衝撃で辺りに砂埃が舞っていたが、それが晴れてきて徐々にその存在が姿を現していた。そして、完全に姿が確認出来る状態にまで来た所で俺達はその存在の姿を知る。
見た目は明らかに森の番人みたいな木をモチーフにした感じの敵だろう。当然だが、今まで通って来たルートでは一度もエンカウントをしていない敵だ。
??? 「奴がこのダンジョンの番人だ。」
転生神 「えぇー!?
本当に出て来たんですかぁー!?」
男主人公「そりゃあ…あんなフラグ染みた事を言っていたし。」
転生神 「あうぅ…。」
転生神は分かりやすく落ち込む。いや、そこまで落ち込まなくても良いのだが。それよりも、今は眼前の敵の事の方が重要である。
???「とりあえず…だ、奴が出て来た事という事は、
奴を撃退しなけりゃダンジョンからは出られないという事になる。」
確かに、その通りである。何もタイムアタックやらの部類の事をやっている訳では無いので、基本的にエリアのボスをスルーするという事は、ほぼ不可能であろう。
転生神 「つまり、あの敵は…
このダンジョンのボス的な立ち位置の敵なんですかね?」
??? 「まあ、奴はそんな感じだな。」
男主人公「番人がいると聞いていたから、出て来た時にそんな感じはしたが…。」
??? 「ま、番人だからと言って、
確実にボスであるとも言い切れない事もあるけどな?
幹部やらでもエリアの番人を任せられたら、番人だからなぁー。」
男主人公「あぁー、確かにそれは言えてるかもしれないか。」
転生神 「でもまさか、本当に出て来るなんて思いもしませんでしたよ…。」
まあ、相手が出て来た事に関しては、さっきのやり取り通りである。そして、「番人=ボスである」が確実にそうだと言い切れる訳では無いという事の理屈は分からなくも無い気がする。
???「まあ、こういうパターンはよくある…
というか、お決まりのケースみたいな感じになっているけどな。」
そして、どうやら、この世界の人達もこの世界で起こるある程度の出来事は、この世界の仕様の様なモノである事は認識している感じではある様だ。まあ、仕様として認識しているのではなくて、日常やらそういう路線の感覚で認識しているのかもしれない。
男主人公「…これって、まだ聞いて無かったこの世界の仕様的な?」
転生神 「基本的にエリアボスと遭遇したら、
そのエリアボスを倒してからじゃないと、
そのエリアの出口からは出られないですね。」
男主人公「出口以外からなら…?」
転生神 「それ用の何かとか例外があれば可能だと思いますが?」
俺達は不意に小声でそんな話をしていた。すると、前方からエリアボスの咆哮が聞こえた。どうやら、落下してきてから周囲をキョロキョロと視線を動かして確認していた感じだったが、その視線がこちら側に向いて俺達の存在を認識したみたいな感じだった。…いや、多分それ以外の方法でも相手を察知する事が可能な方法があると思う様な見た目だが、今回はこういう形になったモノだと思う事にしておこうか。
???「どうやら、こちらを認識した様だな。
こりゃあ…どうも待ってくれそうには無いなー。」
男はそう言って武器を構える。エリアボスもこちら側から一切、気を逸らす様な感じはしない。これはもう、この後の展開は戦闘以外にはあり得ないという様な状況である事は俺達もすぐに分かった。
転生神 「それって、戦うって事ですかねー?」
男主人公「まあ、そういう事になるだろうな。」
俺達も互いに武器を構える。
??? 「だが、気を付けろ?
奴はエリアボスだ、ここまでに遭遇した敵よりは強いぞ?」
転生神 「まあ、それはそうでしょうね…(笑)」
??? 「後は、俺も今までに何回も遭遇や戦闘をした事もあるが、
エリアボスというだけの事はあってか相当の実力の持ち主だ。」
男主人公「それって…俺達は大丈夫なのだろうか?」
??? 「…どうだろうな。
どうも、毎回固定のステータスじゃない様な感じもするが。」
ん、それってどういう事だろうか。俺は脳裏に疑問符が浮かんだ。
転生神「まあ、戦ってみれば今回のも分かるんじゃないですか?」
???「ん…まあ、そうかもしれんな。」
この転生神の反応からして、彼女は男の先ほどの発現を聞いても何の疑問も浮かんでいない様であるのが分かる。それどころか、あまり相手に対しての不安感も無い様に思える。俺は相手との戦力差がすごくあるのでは無いかという感覚があるのだが。…これは、まさかな。
だが、今はそんな事を考えている暇も本人に聞いてみる暇も既に無い状況である。
???「…そんじゃまあ、そろそろ始めるとしますか。
向こうも、これ以上は待ってくれそうに無いかもしれんからな。」
男は改めて敵の方を向く。すると、それを待っていたかのようにその直後に敵は方向をあげて戦闘をする体勢に入った。…よく、今まで待ってくれていたな。
だが、そんな事を考えている暇は無かった。その直後に敵が攻撃をする体勢に入ったからである。
???「来るぞ…!!」
彼のその言葉の後に敵から無数の球体上の魔法攻撃がこちらに目掛けて発射される。俺達はその攻撃を散って回避する。その後、各個を狙って発射されてくる同じ攻撃も俺と転生神は回避する。男の方に関しては簡単に持っている武器を使って攻撃を切り消して回避していた。どうやら、先ほどの攻撃の威力を見て、それが可能なレベルの攻撃であると分かった為、そうしたのだろう。
???「…なるほどな。」
そして、このタイミングで彼は何かを悟っていた感じであったが、回避に集中している俺達に彼のその呟きは一切聞こえていない。そもそも、今の相手が放っている攻撃の量が、そういう事に意識を回せる様な手数じゃない。
すると、敵の攻撃が続く中、男は相手に向けて走り出した。敵の攻撃を避けたり切り払ったりしながら回避しつつ、徐々に相手との距離を詰めて行く。そして、敵の正面辺りに彼が到達した辺りで敵がその腕を使って攻撃を行うが、それは男の持っている武器によって鍔迫り合い状態にされ防がれる。
???「おらよっ…!!」
その直後に、男は武器を振り回して敵の腕を跳ね返して相手の体勢を崩させつつ数メートル後方に吹っ飛ばした。そして、これによって敵からの攻撃が一時的に停止される。
???「お前ら、大丈夫か!?」
敵の状況を確認した上で男は俺達の方に視線を向けて状態の確認をする。
男主人公「えぇ、何とか。」
転生神 「凄い量の攻撃でしたけどねぇー(笑)」
俺は避けるので手一杯の様な感じはしていたが、転生神に関してはどことなく余裕そうな感じであったのは事実だろうな。
???「そうか、無事なら何よりだ。」
だが、これで一喜一憂している暇は無さそうだった。彼の言葉の直後、敵が吹き飛ばされた方向から何か物音が聞こえて来た。
転生神「それよりも、アナタの後ろから何か音が聞こえてますよ!?」
その音と彼女の言葉を聞いて、男はすかさず俺達の方に飛んで一時後退する。そして、その音のする方向を見つめる。すると、先ほどの切り払いによって吹き飛ばされていた敵が咆哮と共に起き上がったのである。
???「ちっ…やっぱり体力を削り切れては無かったか!!」
俺と転生神は再び武器を構えて応戦の姿勢に入る。
???「待て、奴が何かチャージを始めてる!!」
俺達が攻撃をしようとすると、男はそれを制止した。彼の言ったように敵の方を見ると、確かに何かをチャージしている様な感じだった。
???「まずは、アレをどうにかしないと反撃は危険だ。」
転生神「何か考えがあるんですか?」
???「ん、あぁ…あるにはあるんだがな?」
転生神「???」
彼の何か難し気な言葉に転生神は軽く首を傾げていた。俺が考えるに本人の一存だけでは決められない何かが影響する事なのかもしれない。
男主人公「何か問題でも?」
この状況ではダンジョンの中に入る前みたいに悠長に話をしている暇は無いかもしれないと感じているので、俺は率直に理由を聞いてみる。
???「あぁ…一応この状況をどうにか出来る策はある。
だが、今からそれをやるとなると、お前さん達には
俺が出す全ての指示に従ってもらう必要があってな…?
いわゆる、命令的な何かを聞かなくちゃならなくなる訳だ。」
なるほど、そういう事か。確かに、今までの戦闘では互いにほぼ自由に戦って来ていたという感じだったな。だが、今回の相手はエリアボスである為かそう簡単には行かないという訳なのかもしれない。だから、彼はそういった方法を取る必要があると考えているのかもしれない。
まあ、確かに今までの経緯を考えると自由にやって来ていたのに、いきなり指示に従えと言われると混乱する可能性があるのは分からなくは無い。
男主人公「特に、そこら辺は気にはしませんが…?」
転生神 「だそうですよー?」
俺の言葉を聞いて転生神がそう言う。まあ、実質的にここで意見を出すべき立ち位置にいたのは俺なのだろう。彼女に関しては、俺の出した答えを尊重するつもりでいた様である。
まあ、それはそうとしておいて。彼の言う指示に従う事になる的なアレについてだが、現状でそれを拒否する理由はこちら側には無い。実際にこの世界の人間である訳だし、こちらよりも戦闘の経験は圧倒的にある訳だ。むしろ、こっちは彼の能力に現状は頼って行くしか無い訳である。さらに言えば、こういう提案をされて素直に受け入れがたいケースというのは、現実世界での様に相手に指示や命令をした本人がその責任を本気で背負う気が無かったり、その相手を捨て駒にする様な非人道的や人権も無い様な行動を行われる様な環境ぐらいだろう。…まあ、後は単純に自分がそれを容認したくないタイミングとかだろうか。
彼に関しては、そういう所は無いというか…むしろ、それとは対極的な理想の上司像の様な存在である事が実際に同行していて分かっている為、そんな事を感じるという事は無い。そして、ちゃんとこちらの自由や権利などは保障される様な形の行動を取る人物であるのもある程度分かっているので、正直に言って心配する事は無いと珍しく言い切る事が出来る存在だ。ちなみに、俺は大半の事で言い切るという事はなかなかしない性格なので、これは珍しいケースでもある。…全てが言い切れるのなら、万人がそうして確実に成功しているだろうが、実際にはそんな事は無い事を知っているからそういう感じなのかもしれない。
とりあえず、話を戻すとして…とにかく、今の俺は彼の言っている事に対して後ろ向きな感じでは無いという事は先ほど伝えた。
??? 「…そうか。
それはそれで助かる…!!」
男主人公「まあ…出来ない事は出来ないかもしれませんがね。」
??? 「気にするな。
今までの戦闘やらを見ていて、
安定して取れそうな行動をしてもらうだけだからな。」
転生神 「それなら、何ら問題は無さそうですねぇ~(笑)」
何故だか、男が返して来た言葉には安心感が存在している。もう、この時点でこちら側の行動方針はほぼ確定したと言っても良いだろう。まだ、その詳細は明かされてこそはいないが、それはこれからすぐに分かる事となるだろう。
転生神「…それで、一体どうするつもりです?」
転生神が作戦内容の説明をする様に促すと、彼はそれを開始する。
??? 「まずは、あのチャージ攻撃をどうにかする。
そして、それの隙を突いて突入してカタを付ける…!!」
転生神 「案外シンプルな内容なんですね~。」
??? 「それで…だ。
あの攻撃をどうにかする為に、
お前さんには例のフィールドを展開して防いでもらいたい。」
転生神 「それぐらいなら、お安い御用ですよ~!!」
??? 「…で、それで攻撃を防いだ直後から、
俺が奴の懐に向かって突入して、攻撃のチャンスを作る。
それが来たら、最後はお前さんが奴に一撃をかましてやれ。」
男主人公「なるほど…。」
まあ、簡単に言うと、あのチュートリアル戦闘のドラゴン戦の時にやった方法と同じ様な事を今度は今の三人でやるという事だ。
???「そういう訳だ…大丈夫そうか?」
彼の言葉に俺達は無言で頷く。
???「良い面構えだ、それじゃあ始めるとしますかぁー!!」
俺達の表情を確認した男は再び敵の方に視線を向ける。そして、その少し後に敵がチャージを終えて攻撃体勢に入る。
???「さぁて、くるぞ…!!」
彼の言葉の後に敵からチャージ攻撃がこちらに向けて放たれる。それを転生神は例のフィールドを使って軽く無力化する。
転生神「そんな攻撃、効きませんよ…!!」
そして、その攻撃が全て無力化されると、彼女がそのフィールドを解除する。それと同時に、男が敵に向かって進んで行く。彼が敵の正面辺りまで行くと、敵が再び右腕で攻撃を仕掛けて来た。
???「悪いな、今度は鍔迫り合いをしてやる気じゃないんでな!!」
彼は敵の攻撃を武器を振るって軽々と跳ね返し、敵を大きく仰け反らせたのである。そして、振り返り俺に合図を送る。
???「今だ、ぶちかませぇー!!」
俺はその言葉を合図にして飛び上がり敵に向けて滑空する。そして、そのまま例のチュートリアル戦闘と同じ形の攻撃を叩き込む状態に入る。なお、この時…俺には男によって攻撃力面の能力が上がる補助スキルを掛けられているのではあるが、そんな事は気づける程のアレは今の俺には無かったので、それを知らないまま突撃している感じである。
男主人公「ちぇあああああー!!」
見事に快音を立てて俺の攻撃が敵にヒットした。すると、その直後に敵は颯爽と撤退して行った。
???「どうやら、無事に撃退出来た様だな。」
男は敵の逃げて行った先に視線を向けつつ、持っている武器を肩に担ぐ。ちなみに、俺達二人はその事実を受けて安心するという感じだった。
転生神 「ふぅー…何とかなってみたいですねぇー。」
??? 「あぁ、お前さん達の協力もあっての結果だろうな。」
男主人公「素直にそう受け取っておく事にしますか。」
??? 「ふっ…そうか。」
現実世界に生きていた頃の環境だと、確実にこういう文言に対しては、いわゆる社交辞令として解釈する事しか出来ない感じだった為、素直にプラスの感情で受け止められなかったが、この世界はどうもそういう様な環境じゃないのが俺も分かって来たらしい。その為か案外すんなりと素直に受け止められたのかもしれない。
まあ、こういうのは社交辞令のラインに入る様な事じゃなくて、本当にそう言ってくれているという事が理解できていて、正直にそれを認めて表に出しても大丈夫な環境下であるという事も素直に反応が出来た要因であったのかもしれない。…現実世界での環境下であれば、そういう事があったとしても確実に社交辞令へと結びつけてしまう状況であったので、そういう感じにならないという事は案外この世界は俺の生きやすい世界なのかもしれないな。
俺がそういう様な真面目な事を考えていると、男がこちらに話聞けてきた。
??? 「…にしても、お前さん最後に何か使ったか?」
男主人公「いや、特に何も…。」
??? 「そうか…。
さっきの火力を見る限りだと、
俺が掛けていたスキルの効果のみの効力とは思えんのだが?」
男主人公「そうは言われましてもねぇ…。」
??? 「まあ、戦闘面に関しては、
自分でも分からない事がまだ多くありそうか。」
男主人公「そうでしょうね。」
俺はここで、さっきの攻撃の時の状態を知る事になったが、やはりチュートリアル戦闘の時と同じでピンとは来なかった。実際に何かしら効力のあるスキルを自分に掛けていたのだとしても、それの自覚が無いのは変わらないままである。
そして、少しの沈黙が続いた後に、ふと敵のいた方向を見て何かに気づいた転生神がそっちの方を指指して何か喋り出していた。
転生神「そういや、敵が何かを落として行ったみたいですねぇー。」
???「ん…あぁー、これの事か。」
男はそのドロップ品を手に取った。俺達は彼の元に近寄ってそれを見る。
男主人公「何だこれ…?」
転生神 「今までにドロップしていたアイテムとは違った何かですかね?」
俺達が目にしているのは光を失っている小さな珠の様な物だった。確かにそれは転生神が言う様に今までに敵からドロップしていたアイテムとは何か違う様な気がする代物ではある。
男主人公「そういや、敵のドロップの仕様については聞いて無かった気が…?」
俺はふと、そんな事を思い出した。
転生神 「あぁー、そういや話してませんでしたね!!
敵との戦闘に勝利するとアイテムや資金などを
固定または確率でドロップしたりするんですよ~?」
男主人公「…すっげぇ、今更感があるけどな。」
転生神 「すっかり忘れてましたよ…。」
男主人公「いやまあ、俺が聞いたのもこのタイミングが初めてだからなぁ…。」
俺達の今更感のあるやり取りを見て、男は頭をかいて困惑している。
???「ドロップに関して特に何にも言ってなかったから、
てっきり知っているのかと思ってたが、そういう感じだったか。
ある意味で全知全能じゃないのが分かって逆に安心は出来たが…。」
転生神「あうー…。」
まあ、冒険者初心者の割に色んな事を知っていたのを見てきているので彼が多少困惑する気持ちは分からなくは無い。主にそういう知識を持っていたのは転生神の方ではあるが。
男主人公「…それで、このアイテムは何なのだろうか?」
俺は半ば強引にではあるが話を先へと進める。そして、その疑問については男が答えてくれた。
??? 「これは…マテリアルストーンかー?」
男主人公「何だそれ…。」
転生神 「直訳すると原料石って所でしょうかね?」
??? 「あぁ…そうなるんだっけか?」
男主人公「さあ…?
彼女は知っているかもしれませんが。」
転生神 「いや…適当に言っただけなんですがね?」
彼女の言葉に少し間を空けつつ話は先へと進む。
男主人公「…どういう効果のあるアイテムなんだろうか。」
??? 「おそらくだが、このままでは使えないだろうな。
本来は光があるんだが、その光を失っている感じだしなー。」
転生神 「そうなんですかー。」
すると、彼は自身の武器の一部分をこちらに見せて来た。
??? 「ちなみに、本来はこういう風に自身の武器にはめ込める…
というか装着するというか、装備する事が出来る特殊な珠なんだ。」
男主人公「なるほど。」
これはもしかしたら、そこそこの物がドロップしたのかもしれない。
???「しっかし、妙だな…。
本来、あの敵からはコレが落ちる事は無いんだがなぁー。」
どうやら、本来はドロップしないアイテムがドロップしてしまった様である。つまり、これはバグかとも疑いたくなる様な出来事が起こってしまった様だが、彼はそこまで混乱している感じはしない。
???「まあ、何かあるのかもしれんが、
今はそんな事を気にしてもアレって感じか。
とりあえず、ちょうど二つ落ちてるみたいだし、
これはお前さん達が持って行くと良い、俺は既に持っているからな。」
混乱どころか、そのドロップ品をこちらにくれる様である。まあ、本来ドロップしないアイテムという事もあって気になる面も色々とあるが、貰えるのであれば貰っておこうの精神でいるとしよう。俺達はその珠アイテムを各々受け取った。
??? 「とりあえず、使える様になるまでは無くさない様にな。
効力が無い状態で武器に装着していても勝手に外れるから、
それまでは、しっかりと自分達で管理するしか無いんでなー。」
男主人公「あー、なるほど。」
??? 「それ以前に、お前さん達の武器に
それを装着する箇所があるのかって問題もあるか…。」
彼の言葉を聞いて俺と転生神は反射的に自分達の武器を改めて見る。そして、互いにその珠が装着する事が出来そうな部分がある事を確認する。
転生神「どうやら、装着に関しては大丈夫そうですが…。」
???「なら、なおの事それはお前さん達が持っておいた方が良さそうだな。」
とりあえず、俺達はこのアイテムを今はしまっておく事にした。それを確認してから男は話を先へと進めた。
???「さて…と、番人も撃退した事だし、
俺達もそろそろ外に出るとしますかぁー。」
そういえば、ダンジョンから抜けられそうな地点までは既に来ていて、そこでボス戦を行っていた状況だったな。つまり、そのボス戦を終えたという事は、現時点で残っているやる事は、彼の言う通りこのダンジョンから出るという事ぐらいだろう。その為、俺達は彼の言葉に対して頷いて反応を返した。
??? 「そんじゃ、外に出ますか。」
転生神 「やっと、外に出られるみたいですね~。」
男主人公「そうだな。」
そして、俺達はこの森のダンジョンから外へと出て行くのであった…。
森のダンジョンから外に出ると、俺達は再びフィールドと呼ばれている場所に出て来た。前方にはダンジョンに入る前に遠くに見えていた街の様な場所が見えていた。森のダンジョンもそうだったが、近くに来ると遠くで見ていたよりも非常の大きく感じる。
??? 「さぁて、あの街までもう少しって所だなー。」
転生神 「それじゃあ、早い所進みましょうか~。」
男主人公「敵との遭遇に気を付けて…な?」
??? 「だな。
それじゃあ行くかー。」
俺達は目の前に見えている街の方へと向かって行く。そして、少し歩くとその街に正面にまってやって来た。ちなみに、この間に敵との遭遇はしなかった。…運が良かったのだろうか。
??? 「よーし、ようやくここまで戻って来る事が出来たか。」
男主人公「戻って来れたとは?」
??? 「ん、あー…それはだなぁー。
…おっと、すまんな少し待っててくれ。」
彼が話の続きをしようとしたタイミングで何か入電が入ったのだろうか。通信機の様な物を取り出して、その通信先の相手と会話を始めた。
転生神 「誰かとの通信ですかねー?」
男主人公「相手が誰であったとしても俺達が関与する事では無いけどな。」
俺達は小声でそんな話をしつつ、彼の通信が終わるのを待っていた。そして、それから少しして通信が終わったらしく、彼はこちらに語りかけて来た。
??? 「待たせてすまんな。
だが、どうやらこっちが今度は忙しくなるみたいでな?
どうも、ゆっくりと話をしてやれる様な時間が無さそうだ。」
男主人公「つまり、それは。」
??? 「俺が同行出来るのは、ここまでって事だな。」
転生神 「あらー、それは残念ですねー。」
一時的であったとしても、同じパーティを組んだ仲である。その為、そういう様な感じになるのは分からなくも無いだろう。
???「そういう訳だ。
すまないが俺は行かせてもらうわ。」
男は颯爽と次に向かう所へと向かって行った。…と思いきや、足を止めて何やら話し出した。
???「おっと…この街に入ったら、
まず、街の中にあるギルド協会の受付係に話しかけると良い。
色んな冒険者への対応に慣れてるから何か力になってくれるかもな。」
どうやら、この先の道順を教えてくれた様である。
男主人公「それはまあ、ご親切にどうも。」
転生神 「これで先の事は心配しなくて済むかもしれませんね~!!」
彼は俺達の反応を確認すると、こう言うのであった。
???「ま、とりあえず、元気でな。
次に会うのはいつになるのかは分からないけどな。」
そして、手を軽く振りながら彼はその場を後にしたのであった…。
男主人公「どうやら、行ったみたいだな。」
転生神 「その様ですねー。
じゃあ私達も、この街の中に入りましょうか~。」
男主人公「そうだな。」
彼の姿が見えなくなるまで俺達は見送った。その後、俺達は目の前にある街の様な所の中へと入っていくのであった…。
さて、この世界に来てからの初めての街な訳だが、ここで彼らはどういう事を経験して行くのだろうか。そして、これから先はどういう生活を送っていく事になるのだろうか…。
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何とか、同行をさせてもらった2人を無事にダンジョン経由という形にはなったが、フィールドから街の方へと送り届けられた様な感じだったな。
あの2人の話やらを聞いている限りでは、まだ戦闘やらそこら辺の事に関しては知らない事が多そうだな…いや、他の事もそうだが、今回送り届けた街の事も知らなさそうだったか?
まあ、ここから先は、あの2人のやりたい様にやれば良いだけの話だな。
おっと、俺からの今回の話はこれぐらいにしておくとしよう…それじゃあな、次回も楽しみにしておいてやってくれよ?
しっかし…まさか、伏字の状態のままでここで喋る事になるとは思ってもいなかったなぁ…色々と大変なもんだぁー。
<by ???>
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ご閲覧、ありがとうございました!!
今回もタイトル通りの感じの終わり方になっていたかなぁ…と思います。
(まあ、街の中まで入って行くという所までしか書かれていませんがね…。)
いずれにしても、彼らのこの世界での冒険というか行動はまた1つ先に進んだ感じの話になっていたかと思います、はい。
そして、今回も普通にやってのけた最後の最後まで伏字のままで、どういう存在なのかを明かされないままの人物が終始登場していましたねー。
さらに、まさかの登場人物の方の後書きはその人物にさせているという…(笑)
いや、本当にあそこで語らている通り…本当にあの部分を書くだけでも色々と大変でしたよ…とだけ制作者の方でも書いておきます。
さて、最後になりましたが、1話程ではありませんでしたが続きの投稿まで長い期間が空いてしまいまして、誠に申し訳ございませんでした。
その間に何時かは不明なのですが、評価を付けて下さった方もおられたようでして、誠にありがとうございます!!
…ですが、恐らく投稿スパンは早くは出来ないし、不定期になる可能性の方が圧倒的に高い感じの制作者ですが、気長にそこまで期待し過ぎずに待っていていただけると幸いです。
(話の書き方に関しても、自分なりの方法を貫く形とさせていただきますので、ご了承下さいませ。)
再度、重ねてとなりますが、ご閲覧いただき誠にありがとうございました…!!
<by 制作者>
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次回へ続く→