第1話『チュートリアル戦闘勃発』
前回までのあらすじ…的な何か。
何やかんや色々とあって、現実世界で死亡してしまった一人の青年は転生空間にて転生神の語り(軽い物理)によって目を覚ます。そして、そこで自分が死亡した事と異世界に転生出来る的な事を軽く教えてもらう。
話を進めて行くと、自然な流れでその青年にその話をしていた転生神も同じ異世界へと行きたいという事になり、後任の転生神の力によって二人は異世界へとやって来たのであった。
(自然な流れだったかどうかは別として…www)
そして今、彼ら二人はその異世界へとやって来た…という感じである。
ここは『名も無き世界』…名前の通り、ほとんどの固有名称となるであろうモノが存在していないという変わった異世界。現実世界にて亡くなり、正常な感覚を取り戻した者のみが自ら望んで来れる世界のうちの一つである。この世界には、人・動物・植物・機械・生命体・魔族などの様々な者達が存在している。
この世界にやって来た転生者よ、この世界では自分の選択がこの世界での自らの未来を決めて行く事になるでしょう。現実の世界では失われてしまっていた自分本来の輝きをこの異世界で輝かせ自分らしく生きて行って下さい。
あなた達、転生者がこの世界で輝けるという事を、この世界の神である私も切に願っております…。
突如、ある平原の上空に不思議な力による穴が出現した。その中からは二人の人物が姿を現した…というよりは、地面に向かって平行に放出されて来た。そして、その後その不思議な力を帯びた穴は瞬時に姿を消したのであった。
転生神「見て下さい、やっと辿り着いたみたいですよー?」
その穴から出て来たうちの一人である転生神が出て来た直後に辺りを見回しつつ、一緒に転生してきた青年に語り掛けている。
???「ここが転生された異世界か。」
彼女の言葉に答える様に彼はそう呟いていた。そう、この二人はあの転生空間から転生された二人である。なお、この会話は落下中の出来事です。
転生神「どうです? 綺麗な所でしょう?」
???「えぇ…生きていた世界とは比べ物にならないレベルで。」
俺達は転生された時の状態のままこちらに来た為、俺は転生神によって右腕を握られている状態で、彼女は左手で俺の受けを握っている状態で下からの向かい風を受け止める様な体制で落下しつつ語り合っていた。
そして、この世界に転生されて落下し始めて少ししてから俺は重大な事に気づく。
???「そういや…何で落下してるんだ?」
そう…今まさに俺達は地面に向かって急速落下中の身なのである。俺はてっきり転生というモノは、ちゃんと地に足が付いた状態または地面に接した状態で送り込まれて目を覚ますモノだと思っていたのだが…今現実に起こっている事はそんな優しい状況ではない。
明らかに地面から十メートル以上はある空中に転生させられて、その真下の地面へと向かって落下していっているという状況だ。
転生神「それは…空から出てきて、そのまま落ちているからじゃないですか?」
いや、そういう状況説明を求めている訳じゃないんだ。それにそれは既にこの状況を把握している俺の脳内で完了しきっている。重要なのはそこじゃなくて何で空からこの世界に放り込まれているのかという事なのだが…。
転生神「まあ、あの子は私達を転生させたのが初めての経験ですから(笑)」
???「なるほど…そういう事か。」
どうやら、後輩の転生神は世界に関してはしっかりと俺が転生される予定の世界に俺達を送ってくれた様だ。ただ、初めての作業である事が起因していて、この世界内で転生させる予定の位置座標に狂いが生じてしまったのだろう。まあ、後はああいう風に振舞っていたが、内心はガチガチに緊張していたり不安感が残っていたのかもしれないので、現状の事が起こりえても仕方が無いのかもしれないので、彼女の責任にするという事はお門違いだろう。
今はとりあえず、この状況を何とかして無事に地面に着地する方法を考えてその体制に入らなければ命の保証は確実に無いだろう。…いや、そもそもこの高さから落ちているのだから、どういう体制で落ちようが命の保証は無いか運が良くて大怪我をするレベルだろうか。
???「…どうにかして、安全に地面に着地する方法は?」
転生神「無いですよ。
だって、重力や下からの風圧で体制を変えるのは困難ですから。」
???「いや、あっさりと命を諦めろみたいに…。」
転生神「大丈夫ですよ?
そこの所は一切気にする必要はありませんから!!」
焦り切っている俺の言葉に転生神は笑顔で軽く返事をしてくる。何が大丈夫だというのだろうか、彼女は現実世界の事を見てきている事は既に転生空間での会話の中で分かっている。それならば、この高さから落ちればタダでは済まない事ぐらいは理解できるはずなのだが…!?
しかし、もう俺達に何かを考える時間的猶予も何も残されていない状況まで事は迫っていた。俺は無駄だと分かってはいるが空いている方の腕を必死に動かし顔の目に持ってきてガードの構えを行い目を閉じる。これは反射的に行われる防衛本能的なアレだろうか。
なお、転生神はその俺の姿を見てキョトンした表情を浮かべていたが、俺にそんな彼女の表情を確認できるほどの余裕なんて当然ながらありはしない。
そして、俺が体制を整えた数秒後…辺りに大きな落下音が響くと共に俺達は振って来ていた真下の地面に墜落し、そして俺は意識を失ったのであった…。
視界が真っ暗な状態で何やら声が聞こえて来る。その声は俺の身を案じている様に「大丈夫ですか?」と声を掛けている感じの声であった。おそらく、俺は転生後の世界で落下死し、再びあの空間に送られたのかもしれない。…という事は、この声の主はあの転生神の後輩の転生神の声であろうか? 奇跡的に一瞬で死んだからか衝撃が残っている程度で体にさほどの痛みは感じられない。後は俺が頑張って目を開けるだけだろうか。まあ、たとえ目の前のいるのが後輩の転生神であったとしても俺は彼女の事は責めるべきではないなと思いつつ、閉じていた両目を開けた…。
転生神「大丈夫ですかぁー?」
???「…え?」
俺は自分の目を疑った。目の前に立っていたのは後輩の転生神ではなく、さっきまで一緒に転生されて来た転生神だった。そして、何故か上向きにはなっているが、俺はその体制のまま視界だけを動かして周囲を見た。そこに広がっていたのは明らかにさっきまで見ていた異世界の風景そのものだった。
???「…………………………。」
どういう事だ? 一体何がどうなっている!? 俺は今起こっている事が理解できなかった。明らかに無事では済まない高さからダイレクトに地面に激突した。それなのに、体の感覚的にも衝撃が残っているだけで痛みも炎症などの感覚も感じない。だが、衝撃の感覚を感じるという事は神経は正常である事を示している為、考えるとすれば俺は今少なくとも一切の怪我を負っていないのではないかという事は推測は出来るが、そんな事がありえるのだろうか?
転生神「あの、大丈夫ですか?」
???「あ…。」
目を開けた後、呆然としている俺の顔に転生神が顔を近づけて来た。その言葉を聞いて何故か不意に起き上がろうとしてしまったせいで、俺はその転生神と顔をぶつけ合い互いに悶絶する。俺の場合は額がダイレクトにぶつかった感じだが、向こうは鼻がダイレクトにぶつかった様であったので、ダメージとして彼女の方が圧倒的に高いだろう。その為か、両手で鼻を覆いつつ悶絶しながら反射的にバックアップを行っていた。
転生神「お…起きるなら、起きるって言って下さいよぉ~!!」
あまりの衝撃だったのだろうか彼女は片目を閉じて涙を流しながらそう言っていた。
???「それは申し訳ない…。
まさか、本当に体が動くとは思わなくて…。」
転生神「???」
俺の言葉に対して転生神がキョトンとした表情をした。今彼女の顔は半分以上が手によって覆われて隠れているが、開いたままの方の片目が少し開いたとの眉の位置が上に上がったのが見えたので、おそらくその表情になっているのではないだろうか。
とりあえず、俺は自分の体が普通に動く事が分かったので、自力で起き上がろうとするが、半分ぐらい体を起こした辺りでバタンとまた上向きに倒れてしまった。どうやら、体は動くとは言っても一人で起き上がれる様な感じでは無いのかもしれない。
転生神「あぁ…今手を貸しますから。」
転生神は再び俺に近づいて空いていた方の手を俺の方に差し出した。俺がその手を取ると彼女はそのまま俺を引っ張り上げてくれた。
転生神「大丈夫ですか?」
???「どうやら、そうらしいですが…そちらは?」
転生神「大丈夫みたいです(笑)
鼻血とかも出ていないみたいですし(笑)」
???「そうですか…。」
彼女は自身の顔を覆っていた手を退けて彼女らしい軽い感じの口調で返事をしてきた。そうか、それは良かったと思い俺は言葉を返す。ただ、それと同時に、いや…それだけじゃなくて落下したのは俺だけじゃなく彼女自身もだったはずだからそっちはどうなんだろうかとも思った。
まあ、そういう何かを考えているのだろうと悟った転生神がこう語りかけて来た。
転生神「どうしたんです?
そんな色んな事が訳が分からない様な顔をして。」
???「そっちこそ体に異常とかは?」
とりあえず、俺は疑問点に挙がっている内容の一つを彼女に提示する。
転生神「見て通り、何の異常もありませんが?」
左手の人差し指を立てて笑顔でそう反応する転生神。あの高さからあの体制で落ちて何の異常も無いとはこれ如何に? 俺はそう思いつつ次の疑問を投げかける。
???「何で我々は助かった?
そして、見た感じではあるが何で互いに傷一つ無いんだ?」
そう次なる疑問点はそこである。俺はさっき自分の体が動かせるという事は感覚的に分かってはいたが何故自分が無傷の状態であるかは未だに理解できない状態だった。そして、それは一緒に同じ高さから落下した彼女を見ても一切の外傷を見受けられなかった為、余計にその事が気になっていた。
転生神「そりゃあ…こっちの世界では色々と勝手が違いますからね~!!」
同じ表情で彼女はそう即答する。この世界では色々と勝手が違う? …なるほど、分からん。一体それはどういう事なのだろうか。余計に疑問が増えてしまった。
???「勝手が違うとは…?」
転生神「この世界と現実の世界では色々と勝手が異なっているんですよ。
それじゃあ、それについて軽く説明させていただきますねー?」
???「はい、お願いします。」
体制こそは変えていないが今まで両目を閉じて笑みを浮かべていた彼女が両目を開けてそう答えた。そして、彼女の口からその勝手の違いについての内容が語られ始めた。
転生神「まず一つ目に、
この世界には死という概念がありません。
その為、この世界に存在する者達は共通して不死能力を持っています。」
???「なるほど…だから、あの高さから落ちても死ななかった訳だ。」
転生神「あっ…言い忘れてましたが、不老の能力も共通で持っていますね!!」
???「つまり、この世界にいる者達は全員が不老不死であると?」
転生神「そういう事です、当然例外は存在しますが。」
???「例外とは?」
転生神「まあ…元々この世界に存在しなかった存在が該当するかと。」
???「待て…それだとどうして私達は生きているんです?」
転生神「それは、正式に転生空間にて
この世界に順序を経て転生しているからです。
正式な手順を追って来ていない存在は全て例外に該当しますね。」
???「なるほど…。」
つまりは、この世界には不老不死という設定が元からあり、この世界に元から存在するモノと、元から存在していなくても俺の様に正当な転生手続きを行ってこの世界に転生して来た者にはその設定が適応されるという事だ。そして、その方法を経ずにこの世界に入り込んできたものは例外対象となり、その能力は適応されないという感じだろうか。
転生神「二つ目は、どんな状況下であっても残酷な描写などは原則NGです。
例えば、腕や足が捥げたりとか首ちょんぱみたいな事が起こるとか…
はたまた、串刺しとかが原因での流血表現などがありませんかねぇー。」
???「なるほど…道理で傷一つ無い訳だ。」
転生神「それに加えて、痛みも感じませんよー?」
???「あー…存じております。」
転生神「ただ、その代わりと言ってはアレですが、
それ相応の衝撃はそれを受けた部位には流れますし、
痣とかのレベルのモノは表現されてしまいますねぇー。」
???「なるほど…。」
ここまで聞いて俺はふと自分の体を確認するが、見た感じそんなモノは残っていないが…?
転生神「あぁ…あなたの痣なら私が治しておきましたので無いですよ?」
???「え?」
今、何かさらっと凄い事を言われた気がするのだが…?
転生神「衝撃などで出来た痣は本来は時間が経つと衝撃と共に消えて行きます。
ですが、治療などを行って早いうちに消すという事も可能なのですよ。
まあ、その際には痣は消えているけど衝撃がまだ残ってたりしますが。」
あくまでも、痣などの外傷に関しては治療で消えるまでの時間は短縮する事は可能だが、衝撃が消えて行く事に関しては時間経過の方が優先されるという事だろうか。
???「いや待て、今の話を聞く限りだと私を治療したと?」
転生神「はい、そうですが何か問題でも?」
???「いや…何で何も持ってないのにそんな事が可能なんだ?」
転生神「あー…丁度良いタイミングなので、ここで話しておきましょうか。」
え…話しておくって一体何をだろうか? まあ、間髪入れずに転生神はそれを説明してくれる。
転生神「この世界は所謂ファンタジーの世界です。
なので、そういった特別な力とかも使えるのですよ~!!
アナタが生きていた世界で例えるとゲームや創作品の世界ですかね?」
???「…なるほど、それは初耳だったな。」
転生神「まあ、今までの話もあの時に言ったように、
この世界に来てからのお楽しみでもあったので(笑)」
???「あぁ…なるほど。」
そういや、俺はあの転生空間の中でこの世界についての大まかな事を質問はしていたな。まあ、今彼女が言ったように行ってからのお楽しみという感じの返しでその話は軽く流されたという記憶が残ってはいるけども。そこで聞いていた内容の正式な回答が今ここで聞けているという訳か。…いや待て、それでも理解に苦しむ点が一つだけ存在している。
???「ん…いや、ちょっと待て、
君はどうして転生された直後からそういった能力が使えているんだ?」
転生神「そりゃ、私は転生神ですから(笑)」
例の左手の人差し指を立てて笑顔での返しが行われた。なるほど…いや、なるほどじゃないし、それはこの質問の答えになってないだろう。
???「いや、そういうのってレベルが上がったり、
後で誰かに教わったりして取得するモノなのでは?」
転生神「あー、言ってなかったですが…
転生空間がある世界観にいる子達は皆、
回復技能は元から持っているんですよ~?」
え? そうなの? まさに、後出しじゃんけん感が凄いが?
転生神「だって、そうじゃないと現実で死んだ方を
その時の外見のまま蘇生も出来ないじゃないですかぁ。」
???「あー。」
その言葉で俺が理解に苦しむ点の疑問があっさりと解決された。確かに、その通りだ。ふるいをした後に転生させて良い者を死ぬ前の姿と同じ状態で転生空間に呼び出すという事は、その者の体を蘇生する必要がある。つまりはそういった治癒的な能力を元から所有していても何ら不思議では無い訳だ。…何か、今後もこういう後出しじゃんけん感が凄い事が何回も起こりそうな気がするが。
まあ、それはさておいて、俺は改めて自分の体を見てみる。すると、また理解に苦しむことが浮き彫りになって来た。
???「あれ…何だこの格好。」
そう、今の自分の恰好が転生空間にいた時の恰好と全く異なる状態になっていた。転生空間では現実世界で死ぬ前に着用していた普段着の姿であったが、この世界にいる俺の服装はそんな服装とは全然異なる服装だった。
簡単に説明すると、黒色の長袖のインナーの上に白色の長袖のアウターを羽織っており、それのボタンは脱げない為に上から2つ目のみが留まっている状態で、ズボンは黒色の長ズボンである。ちなみに、靴に関しては現実世界と変わらずに黒色のスニーカーだ。…とにかくアウターに関しては絶対こういう着方は現実世界だと変人扱いをされるであろうが、まあこの世界観だと辛うじてマントみたいに見えなくもないが。そもそも、俺自身が服装に関してこだわりがないので、衣服が変化している事以外には特に気にしている所が無いのが事実ではある。
俺が自分の服装に戸惑っているのに気づいた転生神がこちらに語り掛けて来る。
転生神「今度はどうしました?」
???「いや、ここに来るまではこんな服装じゃなかったな…と。」
俺は素直に今自分が疑問に思った事をそのまま伝えた。
転生神「あぁ~!!
それは、この世界でのアナタのメイン服装ですよ?」
???「メイン服装…?」
転生神「アナタ自身がここへ転生されるまでの間に、
無意識的に想像していた様な服装が具現化した訳です。」
つまり、これは俺自身が望んだ形の服装という事か。転生神による答えを聞いて俺は合点がいった。確かに、この服装になっているのに気づいた時は酷く驚きはしたが、事実この服装は俺にとっては何の違和感も無く着れている。実は現実世界で俺は服装は体質上、一定の素材などしか着る事が出来なかった為、そういうのを選んでいたのだが…どうやらこの服装はそれらの条件全てをクリアしているみたいだ。まあ、無意識的にであれ自分が想像していたのが具現化したという事は必然的に自分にとって都合の良い服装になっているのは何ら不思議では無いだろう。
ちなみに、転生神の服装は白色なのか銀色なのかよく分からない色で、至る所にフリルのついた長袖長丈のドレスで白色の靴である。インナーやらに関しては現状の見た目では把握できないので、分からないけども。
転生神「しっかし、かなり変な着こn…いや、個性的な服装ですねぇ~。」
おい、今言おうとした? 確かに自分でも現実ではそうだろうとは認識をしているとは言っても、それを言おうとして途中で全く逆の様な言葉を言われると必要以上に脳裏に焼き付いてしまうではないか。
転生神「ま…まあ、良いんじゃないですかね?
ここはファンタジーの世界ですから案外合ってるかもしれませんよ~?」
???「何故か素直に喜べないのだが…?」
転生神「気のせいですよ、気のせい(笑)」
いや、こればかりは自分の性格や服装への興味問題以外にも、先ほどの転生神の言い回りに随分と気持ちが引きずられている様な気はしているが、それは黙っておくとしよう。
???「…そういや、話が途中で止まっていましたが
この世界の仕様みたいなのの続きをお願いしたいのですが?」
少し間を置いた後に軽く息を吐いて俺は転生神にさっきまでの話の続きを求める。
転生神「え…あぁー、さっきの話の続きですか?
まあ、今の所はアレぐらいで良いじゃないですかぁ(笑)
また、この世界で生活して行けば色々と分かって来るでしょうし?」
えぇ…それで良いのか? そう俺は思いつつ、確かに彼女の言っている事も一理あるので今はそれで良い事にしておくとしようか。
???「あー、とりあえずは…さっきの2つを理解しておけば良いと?」
転生神「そうですね!!
不老不死なのと、そういった残酷な事は起きない…ですね!!」
???「なるほど…。」
分かりやすいようにキーワードだけにまとめてくれてありがとうございます。とりあえず、現状ではこの2つを最低限理解しておけば良さそうだ。
それよりも、衣服の事でもう一つ気になる事があったので聞いてみる事にする。
???「そういえば…この首飾りは何です?
明らかに私自身が想像しそうにない代物ですが?」
そう、気になった事とは知らない間に俺の首に付けている首飾りである。この銀色の首飾りには一緒にクリスタルの様なモノが取り付けられていた。こんなセンスのモノを俺が想像出来る訳が無いので、非常にこれが何なのか気になって仕方無い。
転生神「あー、それは私からの贈り物ですかねぇ?
あの転生空間で転生した方々にはそれが自動的に配布されるんです。」
???「初期配布アイテムみたいな感じですか。」
転生神「まあ、そんなもんです(笑)
お守りだと思って持っておいていただけると嬉しいですが。」
まあ、持っていれば以前に気づいたら既に付けている状態であるのだが、これ如何に?
転生神「…と言いましたが、落ちて来た後にポケットから出ていたので、
アナタが目を覚ますまでに私がこっそりと付けておいたんですがね(笑)」
???「あー。」
何故、その首飾りが勝手に装備されているのかの理由が流れ会話で判明した形となった。もう、この際は人が気を失っている最中に何をしているのかと言う様な事は言う必要もあるまい…というか言う気すら無いが。
まあ、それよりもまた俺の頭の中には一つの疑問が浮かんでいた。
???「そういや、転生者と言えば
転生後の世界で何かをするのがお決まりだが…
私はこの世界でやる様な事が決められているのですかねー?」
転生神「いいえ、ありませんよ?
最初に聞こえた声が言っていた様に単純に第二の人生を歩むだけです。」
???「え…それじゃあ、自由という事ですか?」
転生神「まあ、そういう事になりますかねー。
でもまあ、自由に行動できるのはあなたにとっても非常に良い事では?」
それは確かに彼女の言う通りではある。俺は、何かに縛られたりしていると感じながら行動していると大半の能力が半減未満の状態になり且つ最終的には失敗として終わるという様なデバフ的な本能を現実世界で持っていた。それによって色々と苦労してきたのも事実としてある。
さらに、何かに縛られているという感覚で生き続けていた事もあって、他者からの指示などを行っている時には自分の意思なんてほぼ介在していない様な感じで動いていた。その為、残るモノや活かせるモノなんて何一つ残らず、その時の記憶自体もあまり無い様な感じだった。まあ、自分の意思が通っていないのに人から言われた事を機械的にやっていただけなのだから、そうなっていても何ら不思議では無いのだがな。
だが、この世界では自分の道を自分で決めて自由に進んでいける事が保障されているみたいなので、そういった症状はそうそう出てこないかもしれないと俺は思った。それと同時に、確実にそれが出てこないという事は無いだろうとも思ったので、改めてそういう方面の事は意識をして生きて行こうとも思う事にした。
???「とりあえず、この世界では現実みたいに風潮などの
下らない様な理由とかで縛られたりする様な事が無いのは分かった。」
転生神「それは何よりです。」
とりあえず、俺はこの世界に転生こそはして来た身ではあるが、それによって最初から何か責務を与えられている訳では無いと知り一安心したので、この話題はこれ以上聞く必要は無いだろう。でも、異世界に転生したという事は関連で彼女に聞きたい事が幾つか残っている。
???「そういや…君はさっき私に治療能力を使ったと言っていたが、
私にも何かしらの能力とかは転生した事によって与えられてないのか?」
むしろ、先ほどの話よりも聞きたかった話ではあるレベルである。こういう異世界転生物は転生する事によって何か持っていなかった能力やら望んだ能力や物などを持ち込んで生活が始まる様なイメージがある。たとえ、それがどんな役に立つ様に思えるモノかそうで無いと思える様なモノであっても、何かしらはあるとは思うのだが…俺が感じる限りだと俺にそういった何かが与えられている様な感覚は無い。
俺のこの質問に対して転生神はキョトンとした表情を浮かべて喋りだした。
転生神「ありませんよ?
だって、生前から装備出来る様な武器とかは持っていましたか?
または、魔法を使える様な能力とか持ってなんていませんでしたよね?」
???「えぇ、いずれも持っておりません。
いや…っていうか、そんなの現実では持てないでしょ!!」
転生神「それが分かってるなら聞かないで下さいよ。」
呆れた様な顔をして腕を組みながら転生神は俺を見ている。確かに、正論を言われているのが分かるのだが、どうしても俺には腑に落ちない点がある。
???「それでも何も無い状態で、
こういう世界に放り込まれるのは怖いんだが!?」
転生神「どうしてです?」
???「いやだって、こういう世界だと
何か敵とか出て来たりするじゃないですか!?」
転生神「まあ、出ては来ますねー。」
やっぱ、出て来るんじゃないか。それならそれで、本当にやはり何も無いというのは怖すぎて仕方が無い。
???「敵が出て来るという事は襲われる可能性がある訳でしょう!?
それなら、身を守れる様な何かぐらいは与えられたりとかは!?」
転生神「だって、あの転生空間ではアナタはそんな事を望んではいませんしー?」
確かにその通りだ。今までの流れからしてもこれも正論過ぎて俺は「ぐぬぬぬっ…。」という様な状態だ。それでも俺は自分の記憶を懸命に辿りある事を思い出す。
???「いや確かに何かを望むみたいな事を言ってはいない。
だが、そもそもそういう会話の流れも何も無かったはずでは?」
転生神「そういや、話の流れのまま転生した感じでしたから、
確かにそういう様なやり取りは無かったですよねぇ~。」
まあ、正確にはそういう話をする様なタイミングはあったのだが、それは彼女のとある言葉によって軽く流されていたのは分かっているが、そこは彼女が無駄に傷つくかもしれないので突かないでおこう。
転生神「そもそも、普段からそういう事を出来ているなら、
転生された状態から、それに応じたモノは与えられるんですがねぇ…。」
困り果てた様な顔で俺の方から視線を逸らす転生神。彼女のその表情を見た時に俺は察した。おそらく彼女は「そんな事を望まれても無いも出来ないですし~?」という感じの状態なんだろう。そして、それを感じると同時に彼女の言葉を聞いて俺は、自分は現実の世界では表立って何か行動を起こしていた訳では無いので、転生した時に与えられるスキル的な事が一切なかったのでは無いだろうかとも感じていた。確かに、そんな様な感じの理屈であれば俺に何のスキルも最初から使えなくてもおかしくは無い。
???「とりあえず、私が現実で死んだ時点では、
現実世界で役立っていたスキルがそうそう無かったから、
異世界転生時に自動的に与えられる様な感じにもならなかった訳か。」
転生神「残念ながらそういう事になると思います。
あぁ…でも、アナタに何も無いって言いたい訳じゃ…。」
???「それは言わなくても分かるから、大丈夫です。」
彼女は申し訳なさそうな顔をしているが、こちらの心情としてもそれは同じ状況だ。とにかく知れる事は知れたのでこの件に関してはここで終わりとしておこう。
俺はさっきの自分の言葉から少し間を入れてから再び彼女に質問をする。
???「とりあえず、この話は合点がいったのでここまでとして…
気になっている事がもう一つ、私はこの世界でどういう立ち位置に?」
転生神「どういう立ち位置とは?」
再び転生神がキョトンとした表情でこちらを見つめて来る。
???「えぇっと、一応転生者という事ではあるのだが、
それ以上の事がよく分からなくて…ただの凡人だと思えば良いのか?」
転生神「えっ…あー、凡人っていうか。
一応、転生者ですからこの世界では特別な存在ではありますがー。」
???「…が?」
転生神「いやまあ、誰もそれは言っても信じないかもですしー?
そもそも、転生者って何だろう…って感じだと思いますしー?
後は、こういうのってあまり自分からほいほいと言わないでしょう?」
まあ、それはそうだろう。自分が転生者だとアピールする者やそうそういないだろうし、そもそもこういう事は自分からは語らずに時が来るまでは誰にも知られない様にするのがパターンとして鉄則だろうと俺は思っている。
そうなると、やはり俺のこの世界での立ち位置は一体、どのラインになるのかますます気になってしまう。そう思っていると転生神が続きを話し出す。
転生神「強いて言うなら、転生者は選ばれた存在になるのかもしれません。」
???「選ばれた存在…。」
転生神「そうです!!
そもそも死んだ後に転生なんて普通はありえませんからね~。」
???「それ…自分達の存在と役割とこの世界観を完全に否定して無いですか?」
転生神「え…?
そういうつもりはありませんよ!?
でも、普通に考えたらそうじゃないですか~。」
まあ、それはそうだが。何か、これ以上この話をすると彼女の口からは語らせてはならないであろう言葉がポンポン出て来そうなので、この話もそろそろ切り上げた方が良いかもしれないと俺は思って来た。まあ、本人の喋り方が笑いながら手を立てに振りながらってのを見ていると素であり楽しんで言っているのは何となく伝わっては来るのではあるが…。
???「それで、結局…君が思うに私の立ち位置はどんな感じだと思って?」
彼女の言葉に少しだけ間を空けて俺は話を核に戻した。彼女はそれを聞いて少し考えた後にこう結論を出した。
転生神「うーん…転生者はある意味で選ばれた存在ですしー?
そして、この世界観では特別な存在である訳ですからぁ。
あっ…これらに当てはまる最適な言葉がありましたよ~!!」
???「それは…?」
転生者「主人公ですね~!!」
お決まりの左手の人差し指を立てて彼女はそう言った。
男主人公「はい?」
俺は至極真っ当な反応をした。…ってか、既にセリフ前の名称が男主人公になってしまっているのだが!?
転生者「いや、ですから主人公ですって。」
彼女の言葉を改めて聞いて俺は少し固まっていた。そして、ふと我に返った時、存分に反応を起こす。
男主人公「いやいやいやいやいや!!
あり得ねぇ…こんな何の取り柄の無い奴が主人公とかあり得ねぇ…!!」
転生者 「え…でも、主人公って皆がそんなもんですよね?」
男主人公「おいこら、何かしら正確に取り柄や能力を持って
異世界転生した主人公に謝れ。いや、俺以外の全ての主人公に謝れ。」
転生神 「えぇ~…そんな無茶なぁ~。」
ほぼゼロ距離でこの様なやり取りをする俺と転生神。いや、俺にそれを言うのは構わないが、本当に他の主人公と呼ばれている存在達全員に謝った方が良いだろという事は心底から俺は思っているのは事実だ。だが、それに対して無茶であるという彼女の言葉もそんな事が物理的に出来る訳では無いのである意味では正論ではある。だって、存在している世界観そのものが違ったりしているので、出来る訳無いのである。
男主人公「…っていうか、割と本気で俺はそういう感じじゃないから。」
転生神 「でも、あなたが私達に選ばれてこの世界では特別な存在なのはー…。」
男主人公「いや確かにそれはそうではあるのだろうが…。」
転生神 「なら、主人公でも大丈夫じゃないですかぁ(笑)」
もう駄目だ。どうやら、この転生神は是が非でも俺を主人公として認定してしまったらしい。この流れになると分かるがここは俺が折れる以外にこの話が収束する見込みは無いだろう。俺は深くため息をついて、その事実を受け入れる事にした。…全く、何でそんな風に言われる様な立ち位置になってしまったのだろうか。まあ、半分は俺自身が自分の立ち位置を知りたいなどと言ったのもあるので俺の責任である部分もあるから彼女だけに対して何か言うのもアレか。
男主人公「分かった…もう、それで良いから
その言葉を使って私を呼ぼうとするのだけは止めてくれ…。」
転生神 「何で分かったんです?」
男主人公「そのオーラが全面的に出ていたからなぁ…。」
転生神 「あらら~。」
その事が見抜かれていた事にこの転生神は少々残念そうな感じであった。それを見ていると、まるでその読み方で俺をからかうつもりだったのではないかと思えるが、まあその気持ちは封印しておくとしよう。
男主人公「そういや、君はどういう位置づけになるんだ?」
転生神 「私は転生者でもあり転生神のままでもありますよ?」
男主人公「あれ? でも、あの役割は後輩に任せたんじゃ…?」
転生神 「それはそれ、これはこれです。」
良いのかそれで…。まあ、問題があったとしたら今この瞬間にでも何かが起きてもおかしくないが、何も起こらないという事は問題無いのだろう。あの空間で人間を転生させる役割などをしているのはあの後輩の転生神だが、今ここにいる転生神は転生しても転生神の称号やらはそのまま持っているという感じみたいなのだろう。…ややこしいが、そういう設定になっている以上、俺がこれ以上この件について踏み込んでも意味は無さそうだ。
まあ、こちらとしても認識の仕方を改めて変える必要が無かったりもするので、その分は楽だからある意味では助かるかもしれないが。
転生神 「んー、どうかされましたか?」
男主人公「いいや、何でも無い。」
俺が少し考え込んでいるのを見た転生神の言葉に俺はそう反応を返しておく。そして、少し間が空いた後、俺はまたふと気になった事が浮かんだのでそれについて聞いてみる事とした。
男主人公「そういや、転生して来てからここで喋っているだけだが、
転生して来た後に何かやるべき事みたいなモノは無いのか?」
転生神 「さっきも話してましたけど、
そういう決められた様な事はありませんよ?」
男主人公「あぁ…そういうやそうだったっけか。」
転生神 「んー…でも、こういう世界に来たらまずは装備を…ですかね?」
同じような事を聞いてしまってもしっかりと改めて教えてくれる転生神。そして、彼女の口から出た言葉を聞いて「なるほど。」と思いつつ、でもそれは早すぎるのではと思う俺がいた。
男主人公「まずは、街とかを探して…とかじゃないんだ。」
転生神 「それもありですが、そこに着くまでに身を守れないと行けませんし。」
男主人公「あー。」
思わぬド正論が返って来て俺はその言葉しか口から出なかった。確かに、拠点になる様な場所に辿り着いたりするまでに何が起こるかは分からないだろうし、ここはファンタジーの世界観だ、もし敵とかに襲われたりした時に自分の身を守れる武器やらは必要になってくるのは事実だ。この転生神の様に転生した時から何かしらの能力が使える状態なら別かもしれないが、そういうモノが現時点では存在していない俺の場合は転生神の言う通りかもしれない。そういう面では、そこら辺まで考えた上で彼女はそう答えてくれたのかもしれないな。
転生神「それじゃあ、まずは武器を手に入れましょうか~!!」
転生神は楽しげにその場から動き始めた。
男主人公「そんな簡単に見つかるとは思わないがな…。」
俺はそう呟きつつ彼女の後について行く。話の流れからして武器を探すという事になるのだが、俺達が転生場所としてやって来た場所はかなり広大な平原の様だった。その為か現状で見渡す限りだと人影も見当たらなければ街とかも見えない。
つまり、この状況下で武器を探すという事は、フィールド上に落ちているアイテムを収集するという感じの事をする必要があるという事になるだろう。それは現実世界での趣味で経験した事はあるが、それであっても確率などの運要素が絡んでくる事になる。
自分で言うのもあれだが、俺は運が良い方とは言えない部類だ。まあ、転生神曰くこの世界は現実世界とは色々と勝手が違っているらしいから、その時とは何かが少し違っているかもしれないが、転生後に元から使える能力が自分には無かったというのを知っているので、あまり期待はしていない。
俺がこういう事を考えながら後をついて行っていると、思い出したかの様な反応をした後、転生神がこちらに語り掛けて来た。
転生神 「あ~、そういやですけども…
無理に敬語を使う必要はありませんからね?」
男主人公「え?」
転生神 「だって、私達はもう一緒にこの世界で行動する仲間ですからね~!!」
男主人公「まあ、それはそうだが…。」
転生神 「それに今だって、普通に話されている方が違和感がありませんし?」
そうなのだろうか…だが、俺はどうしてもどこか腑に落ちない様な感じがしていた。
男主人公「そうかもしれないが…君は敬語じゃないか。」
転生神 「私はこの喋り方に自分としても違和感はありませんし、
アナタからしても私のこの喋り方には違和感はなさそうですから(笑)」
男主人公「そりゃそうですが…。」
転生神 「でも、アナタは普通に話せる関係の相手には、
タメ口の方が違和感が無い様な気がするんですよねぇー。
実際に、私も今まで色々と話した結果、そう感じていますしー?」
男主人公「そうなのだろうか。」
転生神 「それに、もうほぼタメ口じゃないですかぁ~(笑)」
男主人公「あっ。」
確かに言われてみればそうだ。それもこの話題が出てからそうなっている訳でも無く、転生空間にいた辺りから俺の口調は転生神に対しては、ほぼタメ口レベルだったなと俺は思い出す。そして、それはこちらの世界に転生してきてからも変わってはいない感じだったなとも俺は思った。
そして、転生神は俺の心情を悟ったかのようなタイミング喋り出す。
転生神 「はい、それじゃあそれに決定ですね~。
今後ともは是非とも話しやすい方法で話して下さいねー?」
男主人公「は…はぁ。」
転生神 「まあ、何も誰にでもどこでも何て言ってませんから(笑)
そんな難しそうに考えなくても全然大丈夫だと思いますよ?」
男主人公「じゃあ、君に対してはそうするとしよう。
他の人に関しては、その相手との関係性次第にはなりそうだがな。」
転生神 「それで良いじゃないですか?
全然おかしい様な事ではありませんし(笑)」
このやり取りがあったお陰だろうか、俺は自分に無駄に入っていた力が少々抜けた気がしていた。まあ、確かに俺が言った事については特にこれと言っておかしい内容では無いとは分かってはいるが、それを容認してもらえたという事が一番大きかったのかもしれない。
男主人公「そういや、何の迷いもなく歩いているけど、
何か武器が落ちてるとかのアテがあって歩いているのか?」
さっきの話が終わってから少し間を空けて俺はそう聞いてみる。
転生神「ありますよ~?
そろそろ見えて来る頃合いだと思いますが…。」
何の迷いもなく彼女は即答して来た。どうやら、それほど自信満々な様である。とりあえず、ここは彼女について行った方が良さそうだな。
そして、それからもう少し歩くと転生神は急に走り出し、ある地点で足を止めた。
転生神「ほらほら、ありましたよ~!!」
彼女は自身が立ち止まっている辺りの地面を指さしていた。彼女に遅れて俺もその地点までやって来る。そして、彼女が指を指している辺りを見ている。すると、そこには二種類の武器が落ちていた。
男主人公「まさか…本当に見つかるとは。」
正直、俺はかなり驚いていた。だが、見つけた転生神に関しては今まで通りと全く変わりは無い。それが気になった俺は本人に理由を聞いてみる事にする。
男主人公「…そういや、自信満々にここに向かっていたけど、
まさか武器がここに落ちているのを前々から知っていたのか?」
転生神 「えぇ、知っていましたよ~?」
マジかよ…流石が転生神、そこら辺の事は自らが持っている能力か何かでお見通しなのだろうか。
男主人公「転生神特有の力とかで割り出したとか?」
転生神 「まさかぁ~(笑)
そんな大層な事はしてませんよ?」
男主人公「じゃあ、何で?」
転生神 「ほら、さっき私達は空から降って来たじゃないですかー?」
男主人公「まさか…その時に?」
転生神 「はい、ご名答です!!」
あの落下時は色々な会話をしていてと思うが、実際の滞空時間はあっても数十秒程度だったはずだ。そんな最中に会話をしながら、武器があるポイントを探していたというのだろうか。
男主人公「…あの時に話しながら武器を?」
転生神 「そんな事はしてませんよ?」
男主人公「はい?」
転生神 「あの会話の時に、たまたまアナタの方を見たら、ここが視界に(笑)」
男主人公「あー、なるほど。」
どうやら、偶然の産物であった様だ。それであったとしても、この位置に武器が落ちているのを見つけられていたという事は相当のアドバンテージではある。それもそうだが、よく落下地点から武器が落ちている地点の距離感が分かったものだ。空から見るのと実際に地上を移動して向かうのとでは距離自体は同じでも距離感は全然違うというのにな。
まあ、話を戻すとしよう。
男主人公「…で、落ちている武器だが、
見た感じだと大剣と長弓…かな?」
転生神 「いえ、これは大剣に見えますが分類は片手剣の類いの武器ですね。
もう片方のロングボウは他のそれらとあまり大差は無さそうですが。」
このサイズで片手剣に分類されるのか…そう思うぐらいサイズ感は大剣にほど近いのだが片手剣らしい。ロングボウの方に関してもサイズこそは確かに他のそれらとは大差は無いが、色が白銀に近い感じの色であり、これは最初に手に入る様な代物では無いと思えるのは気のせいだろうか。まあ、双方の武器に共通して言える事は非常にボロボロな状態であるという事ぐらいである。
男主人公「しっかし、どっちもボロボロだけど?」
転生神 「まあ、最初の武器ですし拾ったモノですから(笑)」
男主人公「高望みは…ってやつか。」
俺は片手剣を転生神はロングボウの方を気づいたら握っていた。ふとそれに気づいた俺は彼女に一応確認をしてみる。
男主人公「あぁ、無意識に俺がこっちを選んだけど良かったのか?」
転生神 「全然問題ありませんよ~?
むしろ、私からしたらこの組み合わせの方が助かりますから(笑)」
男主人公「そうなのか?」
転生神 「えぇ、だって私は物理系統はそこまで強くないみたいですから(笑)」
男主人公「なるほど。」
どうやら、無意識にとはいえ俺が片手剣の方を選んで拾ったという現象は色んな意味で良い選択だったみたいだ。まあ、少なくとも彼女がそうなのは聞いての通り分かったが、俺にそこまで物理的なアレがあるのかは分からないのだかな。
そして、改めて大剣に近いサイズではあるが片手で持てている事を視認して、これが片手剣の分類に入る武器なのだという事を俺は実感していた。その流れで武器を色んな角度から見ていると何か欠けている部分を発見した。まあ、正確には何かがはまりそうな部分があって、そこに何も無いという様な感じのを見つけた訳だが。
男主人公「ここ、元々は何かが入っていたのだろうか?」
転生神 「どうでしょう?
私の方の武器にもそういう感じの箇所はありますが…。」
どうやら、転生神のロングボウの方にも似た様な感じの部分があるらしい。
男主人公「これが何かは分からないと?」
転生神 「この世界の全部を知っている訳じゃありませんから…(笑)」
彼女は苦笑いしつつそう答える。まあ、それもそうだろう。むしろ、どんな存在であっても、その世界や物事の全てを認知している訳では無いだろう。もし、それが可能なのであれば確実にそういう路線の行動を出来ていたりするだろうし、後にそれが誰にでも出来る様なモノになっているだろう。しかし、それでは何だが個人が個人じゃない様な感じがしてならなくなるからアレである。
まあ、今はコレの事は考えない様にしよう。
男主人公「まあ、とりあえず武器は無事に獲得出来た訳だ。
さて、この後はどうするか…って話になってくるか。」
転生神 「大抵、装備が手に入ったら、
使い方のチュートリアルとかですかねぇ~?」
男主人公「え…今なんて言った?」
転生神 「使い方のチュートリアルとか…って。
あれ? 私、何か変な事言ってますか…?」
男主人公「あ、いや…変な事どころか普通の事ではあるんだが…。」
転生神 「???」
転生神はキョトンとした表情でこちらを見つめている。これは、言ってはみたが深くは考えていなかったのではないだろうか。俺はそのまま話を先へと進めていく。
男主人公「そのチュートリアル相手って誰になるんだ?」
転生神 「あー、そういえば…そうですね。」
どうやら、俺の予想は的中していたみたいだった。いやまあ、このタイミングで俺の予想が的中していたかどうかは、この際重要な事では無い。武器を見つけて形式的には戦闘が可能となった状態でチュートリアル戦闘の話題を出すという事がこういった世界観の中だと何を意味しているのかという事の方が重要だ。だが、転生神はその事を把握するに至っていない感じだった。
男主人公「一応、今の状態だと…
俺達は敵が出てきても戦う事は出来る事になるよな…?」
転生神 「そうですね、そうなった時の為に武器を探していた訳ですし?」
男主人公「…それが終わって、チュートリアル戦闘の話題をするって事は。」
転生神 「普通な事なんですよね?」
男主人公「いや…そうなんだが、これって所謂フラグになりかねないのでは?」
転生神 「あー…。」
彼女が徐々に俺から視線を逸らしていく。
男主人公「おい、止めてくれ。そんな、
そういやそうですね、出て来そうですね…みたいな反応は。」
転生神 「ま、まあ…大丈夫じゃないですか(笑)
それに出て来たとしてもチュートリアルですからー…(笑)」
あれ? それってもう出て来ますよ…って確定情報をさらっと俺に伝えてないか?
男主人公「待て…それ以上はもう駄目だ!!
これ以上フラグを立てて変に強いのが出て来たりでもしたら…!!」
転生神 「え、でも…それもフラグになるのでは!?」
男主人公「あっ…。」
だが、それに気づいた時には既に遅かった。突如辺りに壮大な咆哮が響く。それに反応して俺達が咆哮が聞こえて来た方を見ると、丁度そこに黒色のドラゴンが降り立って来た。
名も無き黒龍「私は、魔王直属の魔王軍指揮系統の1人。」
あ、そこら辺の名乗り的なのはやってくれるんですね。いやぁ…降り立った時の衝撃で出来た土埃の中から眼を光らせてこちらに威圧感を与えて来る感じ、何かしらの特別仕様な様な気がするのは気のせいだろうか?
転生神「ほらぁー!!
明らかに強そうなのが出て来たじゃないですかぁー!!
いくら私がフラグを立てるきっかけを作ったからと言ってもですね!?」
珍しく転生神が非常に焦っているのが分かるが、それは俺も同じだ。何故なら、この敵は見るからにして、チュートリアル戦闘に出てきてはいけないレベルの代物だ…それは初めて見ただけでも何となく分かる。まあ、先ほどの登場演出がさらにそれを引き出しているのもあるだろうが。
仮に、こういう様な強キャラがチュートリアルとして出て来るとしても、それは長年続いたシリーズとかそういう部類の作品ぐらいだろう。いや待て、この世界観がそういう部類なのだとしたら、それはそれで違和感の無い事が起きている事になるのか。
だが、とりあえず今はフラグ云々で嘆いている場合ではない。
男主人公「確かにそれはそうだが、今はそれどころでは…!!」
俺はとりあえず、彼女を静止させて冷静にさせようとするが、まあそんな簡単な事では無いのは分かる。案の定、彼女はすぐに冷静にはなれそうに無い。立場が逆なら俺もそれはあり得そうなので人の事は言えないか。
名も無き黒龍「その様子、見るからに戦闘は未経験の様だな。
その様な状態でフィールドの真ん中にいるとはな。」
男主人公 (何だ、この…何かよく分からない違和感の様な物は…?)
俺は今のドラゴンの言葉を聞いて何かが疑問に思えたが、それの答えは分からないまま話は進んで行く。
名も無き黒龍「いや…戦闘経験が無いというだけでは無さそうだな?
お前達は、それ以前に何かが、あの人間と似ているな。」
男主人公 (あの人間…何かが似ている?
俺達と似た様な境遇の相手と戦った事があるのか?)
この会話の中で俺はそう思う。それと同時に複数の可能性の考えが脳裏に過るが、それも先ほどの違和感と同じで答えが分からなかった。
名も無き黒龍「…ここは、敢えて多く語らずが穏便か。」
男主人公 (そうか、まさかこのドラゴンには。)
俺はここで、このドラゴンの言葉を聞いて最初に感じていた違和感の正体に気が付いた。それは、このドラゴンからは敵意を感じていないという事である。あれだけ登場時の演出では威圧感溢れる様な感じだったのに、その相手がこちらに対して、敵意を向けていないというのを直感的に感じていたのだろう。だから、違和感を感じたという事だ。
名も無き黒龍「どうやら、お前は私が敵意を出していない事に気づいた様だな。」
男主人公 「…!!」
名も無き黒龍「そして、その彼女は元よりその事は知っているらしいな。」
男主人公 「え…?」
ドラゴンがこちらの意思を読んだ…という事よりも、転生神は元から相手側に敵意が無いという事を知っていたという事に対しての方に驚いている。それじゃあ、今もなお続いているこの反応は一体…?
そんな疑問を抱いて彼女の方をチラッと見ていると、その答えはドラゴンの方から出された。
名も無き黒龍「何かを知っていようが準備をしていようが、
反射的に出る行動というモノは大半のモノに存在する。
彼女にあるその反応の内の1つがそれだという事だろう。」
男主人公 「あー…。」
俺はその言葉に納得を出来てしまう。確かに、どれだけ予想や準備をしていても実際にその場になったり、リアルタイムで物事が起こったりすると、それらはどこかに飛んでいき反射的に全然別の行動が勝手に出てしまうという事は分からくは無い。まあ、時にはそれがノリだったりとか、本当にどうしようも無かったりする内容だったりするので、どっちだか分からないのもあるが。いずれにせよ、まあ反射的に何かが起こるという様な事は普通にある事はあり得るだろう。
しかし、何だろうかこのドラゴンは。やたら、そこら辺の事情を把握というか考えている様な事を言って来るじゃないか。
とりあえず、俺は引き続き彼女を制止させて冷静にさせようとする。時間経過していたのもあったのだろうか、元通りになった感じである。今回の事案はフラグ云々の所はノリ的なあれだったかもしれないが、その後は反射的に本人が言動をしてしまっていた感じのアレなのだろうか。まあ、そこは本人しか分からないだろうし、問い詰める必要性も無いので黙っておく事にしよう。…あの時点での会話の起点を作ったのは俺自身でもあるだろうからな。
転生神 「もう、大丈夫だと思いますよ…?」
男主人公「…そう、ですか。」
俺はすんなりと返事を出来なかったが、本人が笑ってそう言っているのなら、それはもうそうなんだろうとしておこう。どことなく、申し訳無さが出ているのは分かるので、ここもこれ以上は詰める必要は無いだろう。
名も無き黒龍「どうやら、混乱状態は解除された様だな。
これで、特に状態に有利不利は無しで始められそうだ。」
男主人公 「混乱状態…?」
名も無き黒龍「やはり…少なくともお前は知らない事の様だな。」
転生神 「あー…。」
男主人公 「知らないって何を…?
いや、それよりもその後の言葉は…。」
名も無き黒龍「その通りだ、お前達の能力を見極めさせてもらおう!!」
やっぱり、戦う事になるんじゃないか。しかしまあ、よくここまで戦闘開始を待ってくれたものだよ。それでも、先ほどまでみたいに敵意は無いままである。これは一体どういう事だろうかと考えている最中にも、相手は攻撃態勢に入っていた。そして、今まさにその腕を振りかざしてこちら側に攻撃を仕掛けて来る。…あ、これは先行1ターン目よりも前に相手側から攻撃が入って来る先制攻撃のパターンじゃないか。
転生神 「あっ…!!」
男主人公「まずい…!!」
次の瞬間、その攻撃を受けて俺は壮大に吹き飛ばされた。なお、転生神はひらりとその攻撃をジャンプして回避していた様だったが、そんな事は俺が分かっているはずは無い。
男主人公 「ぐっ…!!」
名も無き黒龍(両者の能力に差がある…いや、それ以前の何かの問題か?
例の彼女の方はすぐに戦闘には順応してたが、この者は…。
いや、まだ答えを出す時では無い…さらに見極めるとしよう。)
壮大に吹き飛ばれた後、俺は地面に激突してそのまま回転して数メートル程度は地面を転がっていた。一瞬、死んだかもしれないと思っていたが、そういやこの世界観では不老不死であり、残酷な描写は発生しない事を思い出しそこは問題ないのだと思い出した。だが、それでも俺の体には受けたダメージによる衝撃が残っている。そして、そこにドラゴンが火炎弾の様な攻撃を放り込んできた。
男主人公「…!!」
まずいこちらは体が動かせない。これは完全に直撃コースになると、それを覚悟をしていた。だが、俺に着弾する寸前でその攻撃は何かによって搔き消された…というよりも、何かにぶつかった様な感じで消えて行ったという感じだろうか。
名も無き黒龍「むっ…!?」
俺が周りを見るとフィールドの様な何かが俺を守っていていた。その光景に「何だこれは。」と思っていると転生神が駆け寄って来る。
転生神「大丈夫ですかー?」
彼女はそう言いながら駆け寄って来て、俺の体を起こしてくれた。…あれ、このパターンは少し前に経験した事がある様な気のせいだろうか。いや、それよりも色々と気になる事がある。
男主人公「助かった…。
それより、あのフィールドみたいなのは?」
転生神 「みたいなのはじゃくて、フィールドですよー?
その効果は既にご覧になられた通りの代物となっています。」
男主人公「なるほど。」
確かにそのフィールドの凄さはこの身を持って知ったが、この強敵の攻撃をこの世界に転生したばかりの存在が軽々しく防いでいる様に俺には見えていた。武器を手に入れいているとは言え、元々のスペックが凄くないとそういった事は出来ないのではなかろうか。あれ…もしかして、この転生神は想像以上に凄いスペックを誇った子なのかもしれない。
転生神 「どうしたんです?
そんな変なモノを見た様な顔をして。
私の顔に何かついていたりでもしてますかー?」
男主人公 「いや、そういう訳では無いんだが…
あのフィールドも君の元から持っている力か何かなのか?」
転生神 「あー、その事ですか。
それなら、そうですよ?」
男主人公 「そ…そうか。」
名も無き黒龍(元から所有している能力だと…?
だが、あの様な効力の能力は私であれ初見であるが。)
何だろう、この改めて感じさせられる転生時の時点での圧倒的な格差は。いやまあ、元々そういう能力としてすぐに発現するモノを持っていなかった私に要因があるのは分かっているが、それでも治療能力もあって味方防御能力もあるのを見せられると俺はいらないんじゃないか説が濃厚になってくる気がしている。
まあ、そこについて何を言ってもどうにもならないので、そこは良いとして。気になっている事はもう一つある。
男主人公「そういや…見た感じ君はダメージを受けていないみたいだが?」
転生神 「そりゃあ回避しましたからねぇ~。」
見えてこそいなかったが何となくそんな気はしていた。敵の攻撃を回避できるという事は実際にそれを行った彼女に聞きたい事がある。
男主人公「あのタイミングの取られ方でどうやって回避を?」
転生神 「え…普通にジャンプして避けましたが?」
男主人公「いや、相手の図体は相当デカくてジャンプでは避け切れない気が…。」
転生神 「お忘れですか?
この世界では現実にいた時と体の勝手が違うんですよ?」
男主人公「なるほど…そういう事か。」
つまり、これは普通のジャンプなら飛び越えられない様な高さの攻撃や障害物であっても、飛び越えられる高さまで飛ぶ事が可能であるという事を示しているのだと俺は分かった。そういう意味では戦闘に関してはだが、確実にその仕様が影響してくるという事になるのか。…とは言っても、なかなかその実感は湧かない。
男主人公「…で、そのジャンプとかの行動の加減ってどうすれば?」
転生神 「うーん、それは個人によって違って来ますからねぇー。
でも、直感的に行えるとは思いますよ、さっきの私もそうですし(笑)」
なるほど、そんなモノなのか。まあ、それであったとしても異様に無茶な動き方とかは出来ないかもしれない。それも今、彼女が行っていた様に個人によって変わって来る所なのだろうけども。
名も無き黒龍(回避の方法を教えているのか?
ならば、この手で試してみるとしようか。)
話がここまで進んだ所でドラゴンが尻尾を振り回して次の攻撃を繰り出して来る。だが、先ほど俺も回避についての事を知ったので、とりあえず直感的にジャンプをして回避する。…だが、これは明らかに飛び過ぎた!!
その為、まともに着地をする事が出来ず、全身に強い衝撃が走る。
転生神 「あぁ…ちゃんと着地までしないと逆にダメージになりますよ!?」
男主人公 「ぞ…存じております。」
名も無き黒龍(事をあまり知らぬ者と事をよく知っている者か。
彼女の方があの者の方に知識を与えているのだろうが、
あの者の方は知っていない事が多すぎる…だが、その逆に
彼女の方が知っている事が多いと来ているか…しかし度合いは。)
正確には存じているというよりは、今まさに身を持って経験した訳だが、この際はどちらでも同じ様な事なので問題は無いだろう。とはいえ、今度は普通に立ち上がれるみたいなので颯爽と俺は体制を立て直す。すると、そこに目掛けて先ほどの火炎弾攻撃が放たれる。
男主人公「ちっ…!!」
今度は回避している余裕は無いので反射的に持っている武器を前で構えて防御の体制に入る。そして、衝撃こそは走るモノの攻撃の防御に成功する。それと同時に、防御のやり方を俺は理解する事が出来た。
転生神 「大丈夫ですかー?」
男主人公「あぁ…。
いや、それよりも前を見るんだ!!」
転生神 「ふぇ?」
転生神がこちらに気を取られている隙にドラゴンは自身の腕を振りかざして彼女に攻撃を仕掛けていた。完全に不意を突かれた訳なのだが、何と彼女はさっき俺を守ったフィールドを自身に使い、その攻撃を反射的に防いだ。…マジか、このフィールド物理魔法関係なく普通に作用するのか。
名も無き黒龍「ぬぅっ…!?」
名も無き黒龍(何だ…こちらの者の能力は!?
突出しているというレベルでは無い別の次元級の何かか!?)
これには、このドラゴンも驚愕しているのが分かる。思わず1歩後ずさりしているのが見えたので、それは確かだろう。
転生神「うぅっ…。」
敵からの不意を打たれた攻撃を見事に防いだ転生神ではあったが、不意を突かれた攻撃を反射的に止めた為か、その衝撃で後方へと吹き飛ばされて体制を崩してしまう。
名も無き黒龍(体勢を崩しているとなれば流石に塞げまい。
だが、その状況だけで判断する訳にはいかん…!!)
名も無き黒龍「こちらも防ぎ切れるか!?」
そこに俺に向けて飛んできたのと同じ火炎弾が発射される。流石に、今の状況で彼女にその攻撃を防ぐ手立ては存在していない。
男主人公「ちぃ…!!」
俺は間に合うか否かなどは一切考えずにそちらに向かう。それと同時に何か自身の行動速度を上げられる要素でもあれば間に合いそうだがと考えていた。すると、その直後に俺の体の動きが早くなった。正確には体の感覚が非常に軽くなったという感じだろうか、気が付いたら彼女の前に敵の攻撃よりも先に到着で来ていた。そして、流れで持っている剣で敵の攻撃を打ち消す。
名も無き黒龍「何っ…!?」
男主人公 「大丈夫か!?」
転生神 「はい…大丈夫です。」
俺はそう言って彼女が立ち上がる所までを見ると、視界を正面へと戻しドラゴンの動きを注視する。そして、その俺の後ろ側に転生神が近寄って来て不思議そうな顔をして語り掛けて来る。
転生神 「そういや、今のは?
攻撃モーションがかなり早かった様な…?」
そうか、彼女はその部分しか見えていないからそう感じたのかもしれないが、俺からしたらそれよりも前から自身の身体能力に何か変化が出ていたのは気づいていた。
男主人公「分からない…だが、攻撃モーションだけじゃなく、
こっちに向かう途中辺りから移動速度も上がった様な感じで…だな。」
転生神 「攻撃速度と移動速度の上昇ですかー。
もしかしたら、これはバフか何らかの能力かもしれませんね~。」
それを聞いて俺は疑問に思う事がある。
男主人公「だが、俺には転生した時点では使える能力は何も無かったはずじゃ?」
転生神 「それは、あくまでもその時点での話ですよ。
それから時間は立っていますし、一応戦闘も経験してますし。」
なるほど…その中で何かスキルなのか何らかの特殊な能力などが自動的に発動したという事なのだろうか?
男主人公「そうは言われても、あまり実感が無い様な…?」
転生神 「とりあえず、その能力をもう一回使えたりはしませんか?
戦闘での動きが早くなる感じだとすれば相当のアドバンテージに~。」
男主人公「だから、実感が無いと言ったじゃないか。」
転生神 「あぁー…それは残念ですねぇー。」
うん、君がどれだけ残念がっているかはその反応を見ると痛いほど理解できる。だから、そんな顔をしないでおくれ…どうにもならない事はどうにもならんのだ。
だが、この事に対して色々と考えているのは彼だけは無かった。
名も無き黒龍(…紛れも無く、先ほどのは彼女の言った通りのバフ効果。
だが、当の本人は自身にそれを掛けたという自覚が無いか。
最初の混乱状態を解除した能力も紛れも無くその系統の
スキルだろうが、おそらくは自身の能力による解除だと
本人は自覚をしていない状態だと見られる…という事か。)
ここで、ドラゴンの咆哮が辺りに響く。
名も無き黒龍(いずれにせよ、彼女の件もそうだが
目前にいる彼らの事も時間が経過する度に、
様々な疑問点などが浮かび上がって来る…か。
これは時間を掛けて理解する必要がありそうな事案だな。)
名も無き黒龍「見事、私の攻撃を凌ぎ互いを守り合った。
だが、この戦闘はここで終わりでは無い…!!
お前達の力、今一度見せてもらうとしよう…!!」
ここでドラゴンが再度、攻撃態勢に入った。いや、むしろ今まで待っていてくれた感が半端ないのだが、とりあえず迎撃の準備が必要だ。
俺達が迎撃準備の状態に入ったタイミングでドラゴンがブレス攻撃を放ってきた。タイミングとしては申し分は無い。俺は防御態勢に入り攻撃を防ぐつもりでいたが、後ろにいた転生神のフィールドによって相手の攻撃は完全にシャットアウトされていた。そういや、彼女にこれを使える能力があったのを忘れてた。
転生神 「この攻撃が消えたら、相手に一発叩き込んじゃって下さい!!」
男主人公「え…いきなり何言ってんの!?
…ってか、そもそも攻撃が通るかの保証なんて無いですけど!?」
転生神 「大丈夫ですよ~(笑)
何も素手で殴りに行けなんて言ってませんから~(笑)」
男主人公「まあ、そりゃそうだが…。」
とは言っても、確かにこの攻撃は方法的にも次の攻撃までの好きは出来るはずだ。反撃を考えるとこれほどの好機はそうそう無いかもしれない。そう考えるとここはやってみるしか方法は無いだろう。
男主人公「分かった…やってみるか。」
転生神 「よーし…それじゃあ!!」
次の瞬間、転生神はかけていたフィールドの力を解放した。すると、それと同時に敵のブレス攻撃が完全に掻き消されたではないか。こんな事まで出来るとは、本当に凄いよな…。
それはそれとして、今がこちらが攻勢に入れるチャンスでもある。俺は敵の攻撃が搔き消されると同時に、相手に向かって突っ込んで行く。そして、そのままドラゴンの足に攻撃を叩き込む。
一応、攻撃が当たったという手ごたえはあるが音的にも、そんなにもダメージには期待出来ない気がするが…。それでも相手が少し後ろ側にのけ反ったのでダメージは入っている事は理解出来た。
名も無き黒龍「その意気や良し!!
だが、その程度での物理攻撃力で私は押し止められん!!」
男主人公 「くっ…!!」
その言葉通り、俺が攻撃を叩き込んだ後、ドラゴンはすぐに自身の腕を振りかざして、こちらに攻撃を仕掛けて来た。こちらとしてはタイミング的にも回避も防御も間に合わない為、迎え撃つ形で迫って来る手に向かって攻撃を叩き込んで相殺するぐらいしか出来ない。
男主人公「ぐぅ…!?」
攻撃の相殺は出来たモノの俺は相当な距離後方に引きずられた。相手のドラゴンは軽く一歩後ろに下がった程度でしかなかった。その為、ドラゴンはすぐさま次の攻撃に移る事が可能になっている。そして、今まさに火炎弾を発射しようとしていた。だが、その行動は後方から転生神が放った矢のヒットによって防がれた。
名も無き黒龍「ぬぅっ…!?」
これは、明らかに反応からして分かるが、俺の攻撃よりは彼女の放った攻撃の方が通っているらしい。
転生神「大丈夫です~?」
転生神がこちらへと駆け寄って来た。
男主人公「あぁ…正直助かったよ。」
転生神 「間に合って良かったですよ~。」
俺の共に来た瞬間、転生神は俺の手を握り締めた。一瞬、俺は彼女が何をしているのか理解できなかったが、その直後から受けたダメージが回復している感覚が感じられた。どうやら、回復系統のスキルで回復をしてくれている様であった。そして、少しした後に彼女は俺の手から自身の手を離した。
男主人公「しっかし、本当に何でも出来るのな。」
転生神 「何でもは出来ませんよ?
物理攻撃に関しては才はあまりありませんし。」
そういや、さっきの矢による援護もよくよく思い返してみれば、実際に放たれていた矢は実の矢では無く、何かエネルギー系統のモノがその形状に近い形をしていた感じだった。おそらく、こういう世界観の中だと魔法…的な能力になるのだろうか。
転生神 「それにしても、なかなか勝たせてはくれませんねぇー。」
男主人公「そりゃ、攻撃の隙を突いたとはいえ、
適当に攻撃を叩き込んだのと、相殺する為に叩き込んだのと、
さっき君が放った援護攻撃が相手に当たったぐらいだからなー。」
そう、こちらからの攻撃は数えただけでも三回しかヒットはしていないはずだ。いくらチュートリアル戦闘みたいに出てきている相手だとはいえ、それだけで勝たせてくれるとは到底思えないし、そもそもこの敵は何度も言っている様にこの段階で出てきてはいけないレベルの強敵臭がしている為、簡単に勝てるとも思えない。
しかし、ここで俺はある事に気づいた。そういえば、攻撃の相殺が起こった後に俺が後方に引きずられ、それを止めた際に不意に相手の方を見た時、たまたま視界に入った光景があった。それは、あのドラゴンの胴体に誰かに攻撃された後が残っていたのである。こちらはパワーでは相手に劣る可能性もあるが狙い次第では、その差は一時的ではあれどうにか出来るかもしれない。
転生神 「とりあえず…どうにかして突破出来る方法とかありませんかね?」
男主人公「方法なら可能性の範疇を出ないが一つだけある…!!」
転生神 「…何です?」
彼女がある程度、興味を示しているのが分かる。だが、それを話す前に俺としては、彼女にどうにかしてもらいたい事がある。…それはこれだ。
男主人公「とりあえず、まずは…起き上がるの助けてもらえますかね?」
転生神 「あっ…はいはい。」
俺は転生神に手伝ってもらって、起き上がり彼女に一言例を言う。それよりも、彼女はさっきの話の内容の方が気になっている様だった。
転生神「―で、可能性の範疇を出ない一つの方法って何です?」
俺は転生神にさっき考えていた事を伝えてみる事にする。
男主人公「ドラゴンのあの部分だが…
他の誰かに攻撃された時に残った様な跡がある。
あそこに一撃を入れれば、相手を怯ませる事が出来るかもしれない。」
転生神 「なるほどぉ~!!」
だが、この俺の作戦には解消をしなければならない点が一つだけ存在している。それは、俺の攻撃は通るに通っていた気はしたが感覚的に相手は物理攻撃には強い可能性がある。つまりは、今話したポイントに目掛けて魔法系攻撃を当てる方が通りが良いかもしれないという事である。当然、現状の俺には魔法系攻撃なんてモノは無いので、そこのダメージソースとして頼れる存在となって来るのはこの転生神だ。
男主人公「…で、俺が攻撃をしてみた結果だが、
どうもダメージの通りが悪そうな気がしたんだ。
感覚的な話だが、もしかしたら魔法系の方が通るかもしれない。」
転生神 「それって…つまり、私が狙うって事ですかね?」
男主人公「それが望ましいかもしれないと俺は思っている。」
転生神はポカーンとした表情をしている。いやまあ、確かにそうなる気持ちは分かる。今まで彼女が使っていた能力や彼女の攻撃方法や選んだ武器などから察するに、彼女は前衛で戦闘を行うというよりは後衛で支援しながら戦う方がメインスタイルだろう。だから、自分が火力ソースになるとは思っていなかったのかもしれない。まあ、状況次第では普段は後衛にいる者達がメインの火力ソースになるという事は何ら不思議では無かったりするが。つまり、今回はそういうパターンである可能性があるという事である。
転生神 「所謂、私が今回は火力ソースになるという事ですか?
構いませんけども、上手く当てられるかどうかの保証は…。」
男主人公「それなら、敵の足止めはこっちが引き受ければどうにかなるだろう?」
正直、彼女の有能さをこの戦闘で何度も見ている俺からすると、状況さえ作れれば彼女の方には心配は無い様にも思えるが、それ以外にも彼女には気がかりがあるらしい。
転生神 「それはそうでしょうけどもね…?」
男主人公「どうかしたのか?」
転生神 「いや…足止めって何をされるつもりなのかと。」
なるほど、そこが気になっているのか。だが、俺の中にある案はそんなに大それたことでなくて、本当に文字通りに俺が足止めをして出来た隙に彼女に攻撃を撃ち込んでもらうという算段だ。まあ、気になっているみたいなのでそれを伝えるとしようか。
男主人公「まずは俺が相手の懐に向かって行く。
おそらく、相手の攻撃スタイルを見る限り懐に潜り込めば、
相手が取れる攻撃パターンは腕か尻尾のどちらかに限られるはずだ。」
転生神 「ブレスも火炎弾も見た感じはゼロ距離は狙いにくそうですしね。」
男主人公「…で、相手が腕で攻撃をして来たらさっきと同じ様に俺が相殺する。」
転生神 「でも、さっきは派手に飛ばされてましたが?」
男主人公「そこは何とかしてみるしか無いがな。」
転生神 「えぇ…?」
俺の言葉に転生神は思わず苦笑いをする。その気持ちは分からないでも無い。作戦を立てている割には一番重要な部分がガバガバだからである。だが、今はそれが上手くいく事に掛ける他、現状を打開する方法は無い気がする。俺も時間に猶予があるなら、そういう部分は解消し切った上じゃないと容認出来ない性格ではあるが、このままだとそこら辺は永遠に終わらないと思ったのでね。
名も無き黒龍「どうやら、作戦会議は終わった様だな。」
攻撃モーション中に転生神の攻撃を受けて体制を崩していたドラゴンが体制を立て直しこちらに攻撃を再開しようとしている。
男主人公「…これはもう、やるしか無いかもしれないな。」
転生神 「なら、少しでも安全に攻撃を受け止められる様にコレを…!!」
転生神が俺の身に支援魔法か何かを掛けた。
男主人公「これは…?」
転生神 「持続回復です。
これなら多少のダメージを受けても体力が継続的に回復されます…!!」
男主人公「なるほど、踏ん張りがきくかもしれないし、
それによってパワーの差を少しでも緩和出来るかもしれない。」
俺は一瞬、何故このタイミングで持続回復なのかと思ったが、この世界の勝手を俺より確実に知っている転生神だ。ここは彼女のこの選択を信じるとしよう。まあ、何も身を守る能力も付与してせずに特攻するよりは断然マシであろう。
男主人公「…よし、向こうに仕掛けられるより前にこちらから行くぞ。」
転生神 「はい…!!」
彼女がそう答えた直後、俺はドラゴンに向かって突撃していく。
名も無き黒龍「ほう、臆さずに来るか。
ならば、こちらも相応の迎撃をさせてもらおう。」
ドラゴンはブレス攻撃を行ってくる。ヤバい、そういや迎撃される方向性の事はあまり考えてはいなかった。そう俺が思いつつどう回避しながら突撃をするかと思っていると、後方にいる転生神が例のフィールドを使ってブレス攻撃をドラゴンの口元辺りで止めて消滅させた。…おいおい、それはそれでアリなのかよ。
だが、それもあって突撃を止められる攻撃は見た感じは無い。まだ距離がある状態なので、ドラゴンは火炎弾を放ってくるが、何故かそこは俺も予測はしていた様で、反射的に回避を行いつつ足を止めない。時に正面に来るのもあったが、さっきこの攻撃は剣で掻き消せていたので同じことをしつつ突き進む。ちなみに、転生神の方にも流れ弾は飛んで行っているが例のフィールドによって簡単に防がれている。
そして、もうすぐで目的の懐へと入り込めるというタイミングで尻尾を回して攻撃を行ってきた。冗談は止めてくれ、フルコースじゃねぇーか…俺はそう思いつつ、その攻撃がこっちに飛んでくるまでにどうするかを考えながら進む。その末に出た結論はこれだ。
俺はスライディングで尻尾と地面との間に空間が出来る箇所に滑り込んでそれをかわしつつ零距離にまで到達する事に成功した。なお、転生神はこの攻撃は普通にジャンプして回避したみたいだった。
男主人公「よし…!!」
何はともあれ、後は動きを止めて彼女に攻撃のチャンスを与えて攻撃してもらうだけだ。
名も無き黒龍「ほう、零距離まで詰めたか。
やるではないか…だが、しかし!!」
俺が立ち上がろうとすると、既にドラゴンの腕がこちら目掛けて振りかざれている状態だった。これは、タイミング的に立ち上がっている暇などない。
男主人公「ぐっ…!!」
俺は片膝を地面につけた状態で両手で剣を振るいドラゴンの手と鍔迫り合いの状態に持ち込んだ。だが、元々圧倒的のパワー負けしている上にこちらの体制も悪い。さっきかけてもらっていた持続回復が無かったら、どうなっていた事か。とはいえ、これは何やかんやで作戦通りの状況ではある。後は彼女に攻撃を入れてもらうだけだが、さっきまでこちらの支援をしてくれていた事もあって、もう少し時間を稼ぐ必要がありそうだ。
しかし、このままでは確実に押し切られるのは分かり切っている。どうにか、一時的にでも自身の攻撃力でも挙げられたらパワーの差を埋めきる事は不可能でも、この状態を少しでも引き延ばせるかもしれない。
すると、そう思った次の瞬間である。相手から伝わって来る攻撃の重みが消えた!?…いや、正確には和らいだと言った方が正しいだろうか。そして、俺は特に力を加えた訳でも無いのに、鍔迫り合いの状態が安定しだした。つまりこれは、俺と相手のドラゴンの圧倒的なパワーの差が完全にでは無いがある程度は解消されている状態であるという事になるのだろうか?
名も無き黒龍(むっ…おそらく、この能力は…!!)
男主人公 「何にせよ…安定して相手を止められているならば!!」
そう、この状態なら彼女が援護攻撃をするまでなら持ちこたえられそうだ。そして、その状態になって少ししてから、彼女が弓から作戦通りの部位を目掛けて攻撃を放った。見事その攻撃は命中しドラゴンが大きく体制を崩した。
名も無き黒龍「ぬぅっ…!!」
転生神 「今ですよ…!!
やっちゃって下さいー!!」
ん? そんな所まで作戦に入ってたっけか?
男主人公「…!!」
俺は彼女の言葉に応えるかの様に上空に向かってジャンプする。何故、相手の方に向けてじゃなくて真上かと言うと、俺のパワーでは決定打と言えるモノを叩き込めるかは不確かだ。それでも、落下しながらの攻撃なら体重も加わってその分は威力が上がるだろうと考えたからだ。それが多少であれ結構効果があるモノであれゼロよりはマシだろう。
俺は剣を構え直してドラゴンに目掛けて滑降を始める。もう見え方は完全に自由落下のアレでしか無いが、これが一番体重が乗って威力が少しでも上がるはずだ。そして、もうこの時の俺はこの攻撃を相手に当てる事以外はあまり考えていない状態だった。…だが、そんなすんなりは行きそうに無い。
名も無き黒龍「甘いぞ、これを避けきれるか!?」
体制を崩しつつでもドラゴンはこちらに目掛けて大量の火炎弾を放って迎撃を行ってくる。
男主人公「くそ…!!」
俺はその攻撃を回避しつつ、時には切り払いつつ徐々に距離を詰めて行く。転生神も例のフィールドを応用して支援はしてくれているが、どうも敵の手数に追いついて無さそうだった。だが、それがあるのと無いのとでは突破の可能性は大きく違っていたのは身に染みて分かる。
そして、残りの距離が僅かになった時である。明らかに直撃コースの火炎弾がこちらに飛んできていた。それを察知した転生神が正面にフィールドを張ってくれるが、この位置関係だとフィールドに火炎弾がぶつかった時の衝撃で俺が飛ばされる可能性もある。そうなるとここまで特攻した意味が無くなってしまう。
俺は何とかその衝撃を緩和し、吹き飛ばされない方法は無いかを考える。だが、この止まる事の無い時間の中、そんな事を悠長にしていられる時間は無かった。俺は反射的に空いている方の左腕でその正面から来る衝撃を少しでも防ぎつつ突入するという手法を取った。
ドラゴンの放った火炎弾が転生神の張ったフィールドにぶつかり激しい音と衝撃を放ったて防がれる。予想通りかなりの衝撃が顔の前に掲げた俺の左腕に走る。そして、それはそこだけでは緩和し切れず、左目にも少しの衝撃が走った。俺は思わず左目を閉じ顔が右側に仰け反るが、逆に言うとそれだけで済み体制は一切狂う事無く、ドラゴンに向かって突撃出来ている状態だ。
俺は閉じた左目を開眼し、仰け反っていた顔をドラゴンの方向に向き直し、爆風の中から姿を現す。そして、そのまま持っている剣で思い切り攻撃を叩き込む。
男主人公「ちぇあああああっ!!」
ドゴォ…!!
名も無き黒龍「ぬおおおおおっ!?」
明らかに今までの攻撃が命中した時は全然違う音が辺りに響いた。そして、俺もこの攻撃による手ごたえは感じられていた。攻撃を受けたドラゴンは数メートル後方に引きずられた後に膝をついた。そして、俺はその攻撃の勢いのあまり、空中で縦に一回転をしたのだが、その後、何とか上手く地面に着地出来た。ちなみに、俺はその後その現状を確認する事になる。
そして、俺は立ち上がろうとするが片膝を地面についてしまう。流石に、あの攻撃は無茶が過ぎたかもしれない。そもそも、俺はそういう感じのキャラじゃなかったのに何故やったのだろうか。…まあ、そんな事を今考えてもアレか。
転生神「大丈夫ですかー!?」
後ろから転生神が駆け寄って来る。このパターン、本当にこの戦闘で何回目なのだろうか。この初の戦闘内でお決まりの点が出来上がてしまったかもしれないと思うレベルでのアレである。
男主人公「大丈夫は大丈夫ではあるが…。」
転生神 「まあ、それ以上は言わなくても分かりますから~(笑)」
彼女は肩を貸して俺を立ち上がらせてくれた。それと同時に受けたダメージの感覚が和らいだので、回復も行ってくれたらしい。
男主人公「あぁ…助かったよ。」
転生神 「お気になさらず~。」
一切、気にするなという方が無理なレベルで彼女がいないとどうにもならなかったとは思うが気のせいだろうか。まあ、彼女の立場からしたらその対象が俺になる訳だから、彼女が同じ事を考えていたとしたら、お互い様というやつになるであろう。
転生神 「でも凄いですよねぇ~。
相手との鍔迫り合いは安定してましたし、
最後のだって、あれだけの爆風を受けても吹き飛ばなかったなんて。」
男主人公「前者は途中からパワーの差が少しだけ埋まった気がしたんだ。
後者に関しては君のフィールドのお陰で吹き飛ばなかったのかもな。」
俺の言葉を聞いて転生神は軽く首を傾げて不思議そうな反応を見せる。
転生神「でも、あのフィールドで防げてたのは
相手の攻撃その物だけで、衝撃の緩和までは出来てなかった様な…?
後は、あの頃には持続回復も消えてましたし私の力だけでは無いかと。」
それなら、あの時吹き飛ばされなかったのは何が影響しているのだろうか。俺がそんな事を考えていると転生神がその答え合わせをしてくれた。
転生神 「…もしかしたら、私を助けた時と同じで、
パラメータ値を一時的に強化するスキルを自分に掛けていたとか…?」
男主人公「そういや、あの時も無意識にそういうのを掛けていた感じだったか。」
そう言われて見れば、似た様なパターンで発生している現象だったから、非常に納得は行く。鍔迫り合いの時には敵のパワーが下がったというよりは、こちらがパワーが上がってその差を小さくしていた感じだったので、物理系の攻撃力に影響する値を強化するモノが、最後の突撃の時は吹き飛ばされる衝撃を緩和したという事は防御系の値を強化するモノがバフ効果として無意識に発動し、俺に掛かっていたという事になる。
男主人公「それにしても、自由に自分で掛けられないのは何でだ?」
転生神 「うーん…それについては人によるとは思いますが、
まだ本人がスキルの種類を知っていないからかもしれませんね~。」
確かに、発動したのだろうと思っているスキルのいずれもどういう系統に分類される内容なのかは分かりきってはいない。明らかに攻撃用ではないのは分かるが、それでも分かるのはそこまでである。
転生神 「まあ、バフを掛けるスキルにも、
支援系や条件を満たしたら使える又は発動する系や、
常時発動している感じのモノとか色々とありますからねぇ~。」
男主人公「なるほどな。
そういや、君はやたらこの世界の仕様に詳しくないか?」
彼女はこの世界に俺を転生するきっかけとなった転生神だ。だから、この世界の事をある程度知っているのは今までのやり取りの中から理解は出来るが、その領域は果たしてある程度のレベルなのだろうかと思えて来る。…まあ、正確に俺達をこの世界に転生させたのは彼女の後輩の転生神になるのだけどな。
転生神 「そりゃあ、転生神ですから(笑)
転生後の世界の事もある程度は知っていますよ~。」
男主人公「まあ、それがある程度で済むレベルなのかはアレだがな。」
転生神 「いや、ホントにある程度ですよ?」
男主人公「ある程度ねぇー。」
まあ、この流れだと聞いても前の様に後のお楽しみになってしまう気しかしないので、俺は深くは問わない事にした。
転生神 「あっ…それよりも、やったんですかね?
派手に後退させた挙句にダウンまで取りましたし~?」
男主人公「あっ…それって。」
転生神 「???」
転生神は俺の言葉に疑問符を浮かべて不思議そうにこちらを見ている。そんな彼女の言葉から何かを感じた俺は不意にダウンさせたドラゴンの方を振り向く。すると、その眼が再び光り、咆哮を上げながらドラゴンが起き上がったのであった。
転生神 「うえええええっ!?
さっきまでダウンしてたのに起き上がったぁー!?」
男主人公「やっぱり…。」
予想通りの事が起こり俺は頭を抱える。そう、何でドラゴンが起き上がるのが予想出来たかというと、彼女の言った言葉がフラグに聞こえたからだ。そして、その予想通り見事にフラグ回収されて敵が起き上がったのが今という訳である。
転生神 「やっぱりって、どういう事ですかぁ!?」
男主人公「いや…君がフラグを放っていた気がしたからさ?」
転生神 「何かそんな事、言いましたっけ…あっ。」
どうやら本人も何がフラグに成り得た言葉であったかが分かったらしい。とは言っても、そういうセリフっていうのは誰だって言ってみたいかもしれない部類のモノでもあるので特に咎めているつもりはないが。
転生神 「どうするんですか!?
また、あんなのとまともに戦うんですかぁ!?」
男主人公「そうは言われてもなー。」
何だろう? さっきまであれだけ頼りになっていた転生神がポンコツ的な反応を見せて来る。いや、素の中の一つがコレなのかもしれないが。…っていうか、「あんなの」って言われているドラゴンの心境が非常に気になるが…いや、まんざらでも無さそうだ。
まあ、それはさておき彼女の言っている事は何らおかしくは無い。流石に、あの敵ともう一度戦闘を行う余裕はこちらには無い。所謂、絶体絶命のピンチかもしれない。…ってか、これ本当にチュートリアルか!?
名も無き黒龍「先ほどの狙い目は見事だと言っておこう。
だが、何事も最後まで気を抜かぬ事だ…!!」
何という至極真っ当な言葉だろうか。これには、こちら側は何も言い返せないのは事実ではある。まあ、言葉の前半は称賛ではあるのだが、それ以上に後半の方の言葉の方が今の俺達にはクリティカルヒットだ。
そして、その後にドラゴンがブレス攻撃を行う行動に入って来た。
??? 「まあまあ、もうそこら辺にしておいてやれ…。」
名も無き黒龍「…!!」
すると、後方から何者かの声が聞こえて来た。その直後、その何者かが目にも止まらぬ様な速さでドラゴンの方へと突撃をして行った。
??? 「うおおおおおっ!!」
名も無き黒龍「ぬっ…お前は!?」
その後、相手に強烈な一撃を叩き込んだ。すると、ドラゴンは大きく体制を崩し数歩後方に後ずさりした。
名も無き黒龍「ふっ…良かろう。
今回は、ここで下がらさせてもらうとしよう。」
ドラゴンはそう言うと、その場から飛び去って行った。どうやら、これは助かったみたいである。
???「全く…難儀な奴だなぁー。
まあ、俺も人の事は言えないだろうけどな。」
飛び去るドラゴンを見つつ、頭を書きながら謎の人物はそう呟いていた。まあ、俺達はその光景を後方で見ながら、こんな様な話をしている訳だが。
男主人公「逃げて行ったか?」
転生神 「ですが、この世界ではアレで敵の撃退成功になりますから。」
男主人公「つまり、戦闘には勝利した扱いになると?」
転生神 「そういう事です。」
そういや、この世界には死という概念と老化という概念は無い。それは必然的に敵にも適応されているのは当然だ。そうなると従来通りの形だと永遠に勝負が決まらない事になる。だから、戦闘に勝利する条件は敵を倒すでは無くて、敵を撃退するという事になる様である。今更ながら初めて知った仕様でもあるな。
転生神 「それより、私達助かったみたいですねぇ~!!」
男主人公「そうだな…だが、今はそれよりもだ。」
そう、助かったという事は何に変えられないぐらいに大きい。だが、それが確認できた今、次に考えるべき事が出来ている。それは、今目の前にいる人物についての事だ。あのドラゴンを一撃で撃退させる程の実力の持ち主だ。一体、何者なのだろうか…。
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まさか、本当に異世界に転生する事になるとは思いもしていなかったな。
そして、チュートリアル戦闘として戦う相手が明らかに一番最初に遭遇してはいけないだろうというレベルの相手になるとは…撃退の決め手となった攻撃に関しては自分達では無いが、それまではよく持ったな…と俺自身が一番驚いてはいる。
だが、まだ直近で色々とどうなる事やらという事案は存在しているので、それらがどうなって行く事やら…。
余談だが、俺の名前は前回の話だと終始???で伏字になっていたが、ようやく今回で伏字が解除された様で。まあ、それと同時に伏字のままの相手が新しく出て来た訳だが…まあ、そこら辺もいつかは開示されていくのだろう。
それまで、そこら辺の事はお楽しみに…という事だろう。
<by 男主人公>
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ご閲覧、ありがとうございました!!
今回からタイトル通り、第1話という事でようやく本編の話に入って行ったという感じです。
(ようやく…そう前回の更新は1年前ですから、そらようやくですよ…すみません。)
制作者の方の体調や精神状況次第で、今後も更新間隔はまちまちになると思いますので、
その点はどうかご理解とご了承の程をよろしくお願い致します。
(出来る限り年1更新とかにはならなかったら良いなぁ…のレベルで制作して行っております。)
まあ、後は単純にストックが幾つか手元に残る形まで進んでいないと出そうとなれないのもあるので、色んな事が作用しての投稿間隔になるとは思います。
さて、ここまで見ていただき、誠にありがとうございました。
本文中に「誤字や脱字とかじゃないの?」的なモノがあったりしたら教えていただけると幸いです。
制作者のスキルの範囲内で修正が可能そうなら修正をさせていただろうかとは思っております。
(内容によっては作品の設定上、それにしているモノもあるので、そこら辺は直せませんが。)
また、本作品への感想などもあったら書いていただけると幸いです。
再度重ねてとなりますが、ご閲覧いただき誠にありがとうございました…!!
<by 制作者>
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次回へ続く→