9話 クレイフェルト①
クレイフェルト。商業で栄えた街。以前訪れた時も北地区より栄えていた印象だ。
んん?微妙に活気がなくなっているな。
昼間の人通りも少なく、どことなく店を開けている店主もけだるげに見える。
さきほどロブウルフの爪と牙を売ったとき、店主も昼間なのにどこか眠そうな顔をしていた。
「とりあえず、宿屋を探すか」
「この街にもタンシチューあるかな」
アリアがそうつぶやきながら店を探し始めた。
アリアさん、飯屋の前に宿の確保でしょ。それにあなたさっき昼ごはんたくさん食べていたでしょ。
街の中心まで来るとたくさんの宿屋が立ち並んでいた。
商業の街ということだけ商人向けの宿がたくさんあるな。
その中でも少し見た目がよさそうな外観の宿に決めた。
「よし!さっき爪と牙が高く売れたし、今日ここにするか」
そういうとアリアが少し目を輝せた。
「草のかおりがするかたい布団ともおさらばね。」
宿屋にはいるとだるそうな宿主が話しかけてきた。
「お客さん、ひと部屋?ふた部屋?」
「もちろんふたへ、、、、」
「ひと部屋でお願いします!!!」
俺が言い終わらぬと同時に横にいたアリアが言い放った。
「おいおい。」
「リエト様、臨時収入がはいったとはいえ、節約です。ええ、節約ですとも。この先旅は長いですしね。けっしてリエト様と一緒に寝たいというわけではありませんよ。」
「ハハハ。じゃあ、ベットがふたつある部屋をひとつで。」そう俺が言うと、少しアリアがむくれたように見えた。
むくれてもどうにもなりませんよ。少し可愛いのは認めますが…
「ハァァァ、疲れましたね。やっとふかふかのベットで横になれる」
アリアは大きなのびをしたあとに、ベットへ飛び込む。
ひととおりふかふかのベットを堪能したのか。急にアリアはこっちを見た。
「これからどうします?」
「んー数日の疲れもたまっているだろうし、今日は自由でいいと思う」
「リエト様はなにをするおつもりで?」
「ここは商売人の街なんだ。夜の歓楽街には疲れのたまった商人でにぎわう酒場がたくさんある。そこへ行こうと思ってね」
「ずるーい。私も連れていって」
「アリアは酒飲めるの?」
「ええ少しだけ。」
日が沈んだらいくか。
☆
歓楽街は昼間の街とはうってかわってにぎわっていた。
まあ昼間のは俺の気にしすぎかもしれない。
少し雰囲気のよさそうな酒場を見つけたので、アリアと入った。
「いらっしゃい!!!」
店主の威勢の良い掛け声が聞こえた。
俺たちはカウンター席に入った。酒場の入りは上々であちらこちらの席で盛り上がっている。
「うわあ。こんなところ初めて来た」
ずっと南地区にいたアリアにとってみれば新鮮なのだろう。
「おふたりさん飲み物どうするかい?」
お酒の種類がたくさんあって迷う。店主に聞いた方がよいかもしれない。
「マスターここらへんはどういったお酒が名産で?」
「へい。最近はみんなもっぱらこの酒しか飲まないよ」
店主がかかげた瓶のラベルには【ポート・スイング】そう書かれていた。
そういえばさきほどからどの席でもこのラベルの瓶がみえる。
そんなにおいしいものなのだろうか。
「じゃあそのポート・スイングをひとつもらおうか」
「じゃあ私も」
左隣席のアリアが声をあげる。
「じゃあ僕も」
右隣からさらに元気な声が聞こえた。
右隣をみると幼い見た目と背格好をした女の子がちょこんと座っていた。
髪は黒く、肩にはかからないほどのボブで、頭の上には猫耳・・・
「猫耳!?」
思わず声がもれてしまった。猫耳の亜人はいることは知っていたが、つい目の前に現れるとは・・・
「ん?僕になにかようですか?」
「ごめん、ごめん。猫耳が珍しかったもので、つい」
「そうですか。好きなだけ触らせてあげます。一回銅貨1枚でどうです?」
猫耳っ子はニタニタしながら話しかけてくる。
「お嬢ちゃん、お酒はだめだよ。大人になってからね」
横から店主が怪訝な顔つきで猫耳っ子をたしなめた。
「失礼な!僕はつい先日成人になったばかりです。お酒のめますって」
「そりゃ、失礼した。お嬢さんもポート・スイングね」
猫耳っ子はお酒がつがれたグラスを受け取ると、お酒をじっーと見たり、クンクンと臭いを嗅いだりした。
「僕の名前はルナ。そちらは?」
「俺はリエト。向こうがアリアだ」
どうもですとアリアが顔をだした。
「それでは出会いにかんぱぁぁぁぁぁぁぁいっ」
元気なルナの声が店内に響いた。
「うんまああああああい。」
一口飲むとルナは声を上げた。
「僕お酒飲むの初めてでして。」
確かにこのお酒は甘くてフルーティー、それでいてコクもある。今まで飲んだことのない独特な風合いのお酒だった。
左を見るとアリアはすでに一杯目を飲み干していた。
「この酒うまいよ、うへへ」
アリアさん、もう酔ってます???早いよ。
「なぜ初めてでここへ?」
「僕には5つ年上お姉ちゃんがいるのですが、毎晩毎晩飲み歩いてきて、このお酒がうまい、うまいといつも自慢してくるんですよ。僕が飲めないことを知っていてね。それで先日成人になったので、そんなにうまいのかと思ってね」
「でリエトさんたちはどうしてここへ?商売人ですか?」
「いいや、俺たちは旅をしていてミランダへ行く道中だ。」
「へー、で奥さんを連れて物見遊山ですか?いいですね。」
「奥さんではない。そして楽しい物見遊山でもない。しいていうなら冒険者だ。」
「そうなんですか。じゃあ僕にもチャンスありますね。」
ん?
耳をパタパタとさせて笑っている。
「大人になったから何しようか迷っています。お姉ちゃんみたいにお店を開こうか」
「まだ職決めてなかったのか?」
「ええ。早く決めろ。決めろと周りはうるさいのです。僕、昔から喧嘩強いので、いっそ冒険者でもいいですね」
まさかね。いかにもひ弱そうな少女が喧嘩強いだってね。そもそも猫耳は戦わせてはいけない。猫耳が傷ついちゃうだろ。
そんな会話をしながら俺は5杯目にさしかかったとき、横のアリアはすでに10杯を超えていた。
「リエト様、猫耳っ子ばかり相手しないで私にもかまってよ、ねーねー」
すでに酔っ払って面倒なことになっている。この酔っ払いめ。
「このお酒知っています?一度飲むとくせになるらしいです。それと飲んでるときはハイテンションな分、翌朝はすごくテンション下がるらしいですよ」
そうルナが言ったくらいから記憶が定かではない。
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