表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/40

8話 ドラゴン退治


「リエト様、あんなところに村が見えるよ」


 アリアは前方を指さしながら嬉しそうに話しかけた。


 次の街のクレイフェルトへもうすぐ着くはずだが、道をまちがえたか。


 村に徐々に近づくにつれて俺は異様な様子に気づいた。


 ほとんどの家が半壊状態で、周辺の木もなぎ倒されている。


 どういうことだ?魔物の侵略か?本当に人がすんでいるのだろうか。廃村とかかな?


 村にはいると、さらに悲惨さが伝わってきた。俺が踏みしめている地面はあれており、ところどころ地面に大きな穴もできている。


 しばらくすると、俺の背の半分くらいの一人の女の子がやってきた。年齢は10歳くらいだろうか。身なりは整っている。荒れ果てた光景とは不釣り合いだ。


「お兄ちゃんたちこの村に用事?」


「いや、近くを通りかかっただけなんだ」俺はしゃがみんで答える。


「大人の人いるかい?」


「いるよー。じいちゃんきてー。」女の子が叫ぶと、壊れた家の陰から白いあごひげをはやした一人の老人がでてきた。


「アン、その方たちは?」


「お兄ちゃんたちは通りすがり?旅の人?」アンと呼ばれた女の子は首をかしげた。


「冒険者です」俺はすかさず答えた。


「この村へ通りすがっただけですが、村はどうしてこんなことに?」


「それは昨日カリストとかいう冒険者の一味がドラゴンの卵をこの村にもちこんでな。それを追ってきたドラゴンが怒って、昨晩村を襲撃したのじゃ。あの男は俺は副隊長だから安心しろといっていたのだが、いざドラゴンを目の前にすると歯が立たずに逃げよった。おかげで村はこのありさまじゃ」


 老人は怒りを抑えられないのであろう。少し肩が震えているように見えた。


「申し遅れました。この村の村長です」


 カリストの野郎は英雄気取りですか。英雄どころか村ひとつ壊滅させようとしているじゃねーか。


「よければ少し復興手伝いますよ。」俺は言った。


「おーい、みんな若い冒険者が手伝ってくれるって。」


 村長が後ろのほうを向き呼びかけると次々と村人がでてきた。


 あーみなさん結構いるのですね。もしかして警戒されてた?


 まずはがれきの撤去作業などの力仕事からかな。俺の出番だ。


「分身。」そういうと体が3体に分かれた。村人はあまり能力をみたことないため、俺を奇妙な目で見てきた。


 それからアリアと俺の4人でがれきの撤去や整地などを行った。


 日がくれるころにだいぶましにはなっていたが、各々の家の修復にはまだ時間がかかりそうだ。


 その後、夕食をたべに村長宅に招かれた。村長宅は比較的被害は少なそうだった。


 アリアと夕食を食べている間に部屋の隅にふと大きな木箱があることに気づいた。


「あれはなんです?」俺は村長に尋ねると、


「はて?昨日のあやつらの忘れものかのう」


 村長は長く伸びたあごひげをひとなでした。


 うーん。嫌な予感がする。アリアの時といい俺の嫌な予感は的中しやすい。


「開けてみましょう。」


 俺が木箱のふたをあけた。すると中から大きな奇妙な柄の卵が現れた。


 あーこれ。ドラゴンの卵ですよね。あいつら意図的においていったな。ということはこれを取り返しに今晩またドラゴンがくるのでは……


「アリア、行くぞ。ドラゴンがやってくる。」


「まって、リエト様、待って、、まだご飯食べ終わってないの。」


 アリアは汁物をかけ込みながら答えた。


 俺が外にでると、ちょうど村人がドラゴンがきたぞと叫んでいるところだった。


 真上を見上げると、赤いドラゴンが村の上空を旋回していた。


 分身。俺は3人へ分かれた。以前、遠征でドラゴン退治をしたことはあったが、あの時は部隊をひきつれていたため大勢だった。


 今日は・・・1人、いや3人だ。


 ドラゴンが上空から村めがけて急降下してきた。


 一撃で翼をもいで動きをとめるしかない。上空に逃げられると分が悪い。


 ドラゴンが迫ってきた。周りの村人は逃げろ、逃げろと俺に遠くから合図を送っているのが見える。


 地面すれすれまでドラゴンが迫った時、二人に分かれた俺はそれぞれ左右の翼を切った。


 グワァァァァァ


 ドラゴンはそのまま浮上することができずに地面にたたきつけられた。


 地面でもがくドラゴンに俺たちはいっせいに攻撃をしかけた。一人は頭、もう一人は腹部、三人目を背部とわかれて圧倒的な速さで刃をいれていった。


 最初は暴れていたが、首元に太刀筋をいれたあたりから急におとなしくなり、それ以降は単なる解体作業だった。


「あー終わったのね」アリアは口をもごもごさせてでてきた。


 多分俺が戦っている間食べてたな。俺を信頼してくれるのはありがたいが。


「いやー、さすが冒険者様。昨日のあやつらとはえらいちがいじゃ」


「化け物みたいな強さだった。 きっと国の隊長クラスの人よ」


 村人は口々に賛辞の言葉を送った。


 そこまでのことかなぁ


 アリアはそうでしょう。そうでしょうとうなずいていた。


 アリアさん、あなたはごはん食べてただけでしょう。


「龍はおいていきます。龍はいろいろな部位が高く売れます。近くにクレイフェルトという商業の街があるので、そこで売って、復興の費用にしてください。ちなみにクレイフェルトはどちらだったかなー」


「あっちのほうじゃ」と村長が指さした。


 俺はごまかすようにちゃっかり道を聞いた。ドラゴン退治したし、いいだろう。


「村を助けただけでなく、金銭までいただくとは、本当にありがとう。今晩はうちにとまっていきなさい。」


 俺たちは村で一泊したあと翌朝村人全員に見送られて旅立った。


「リエト様、やさしい人たちでよかったね」


 口をもごもごしながらアリアが話しかける。


「なに食っている?」


「昨日のあまりのパン。村長から出発するときにもらったの」


 はあ、昨日から食べてばかりだぞ。食いしん坊め。


 それからしばらく歩くと、街が見えてきた。


 クレイフェルト。商業で栄えた街である。





ブックマークや評価をしていただけると嬉しいです。

少しでも面白い、続きが読みたいと思いましたら広告したにある☆☆☆☆☆で評価できます。

よろしくお願いいたします。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ