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7話 副隊長


 ここ北地区では王宮の台所として、さまざまな商店が立ち並ぶ。


 ところどころに大きな家も建っており、南地区と対照的だ。


 昼間からも人の往来もおおく、あちらこちらから威勢のよい掛け声が聞こえる。


 こっちの地域では亜人もちらほらみえる。ここの地域では亜人に対しては寛容だ。


 王様亜人好きだしなーと昔よく王様が猫耳の亜人たちを連れていたことを思い出す。


「みてみて、リエト様。タンシチューよ、タンシチューが食べられるお店だそうよ」


 やや興奮ぎみのアリア。


「まだご飯の時間ではないだろ、あとここへ寄ったのは剣と防具を買うためだ」


 この恰好ではさすがに旅にでるのはこころもとない。せめて最低限度の装備をアリアにもつけさせたい。


「副隊長様が通るぞー」


 突然、前方の人だかりから高らかな声があがった。


「リンリンリンリンリンリンリンリン」


 街のあちらこちらからハンドベルの音が聞こえた。これは大遠征をおこなう勇者様に祝福するといった昔からの習わしだった。街の人々は昔から一家にひとつはハンドベルを常備している。


「いってみよう」


 タンシチューのお店に未練を残し気味のアリアの手を引っ張り、人だかりの最後尾につけた。


 人の開けた向こうのほうから歩いてきたのは、おのおのパーティーを結成した副隊長3人だった。


「きゃー!カリスト副隊長かっこいい」


 黄色い歓声にこたえ、カリストがさわやかに手を振り返している。


 見るとカリストの肩に2つの金色の星が輝いていた。隊長は星3つ、副隊長は星2つ、第三席は星1つというようになっている。


 くっ……カリスト。俺を犯人に仕立て上げたあげく、俺の席を奪ったのか。ここでぶっ飛ばしてやろうか。


 隣でこれまたパーティーメンバーを引き連れているのは一番部隊副隊長ディック。女のメンバーしかいない。銀髪で赤い目をしたディックはニヤッと笑ったかのうに見えたと思うと、観衆へ向けて一枚の紙をみせた。


「これが魔石を奪ったリエト副隊長だ。ああ、元副隊長だったな。俺様が始末したぁ!!!だが安心してくれ。俺様がすぐに魔石を奪い返してきてやる」


 そういうと俺の似顔絵が描かれた紙に火をつけた。


「きゃぁぁぁ。ディック様、かっこいい。」


 ディックの後方のパーティーメンバーの女どもが歓声をあげた。


 すると観衆も盛り上がっていき、リエトを死刑にしろだの、監禁しろだの、ディック様素敵だの好き放題言い始めた。


 俺の隣のアリアは今にも飛び出していきそうな勢いだった。


「みんなリエト様のことよく知らないくせに」


 好きに言わせておけ。いつかこの歓声は俺のほうへむくだろうよ。


「あの紙はなんだ?」


 となりの品のよさそうなおじさまに話しかける。


「あれは、副隊長リエトの罪と追放のお知らせだよ。似顔絵つきのね。それと今回の1件で王様がいろんな街にむけて莫大な報酬をだしてね。魔石を1つ取り戻すにつき金貨100万枚となんでも1つ願いをかなえてくれるそうだ。それに触発されて副隊長たちがパーティーを結成して魔石を探しに行くそうだ。王国も本格的に魔石探しに取り組んだということさ。わたしら一般人にとったら魔石を取り返すなど無理な話さ。この国は隊長が残るので安心だそうだ。あれ?兄ちゃんどこかでみたきがする。あれ?いない。」


「金貨100万枚よ!!!」


 アリアが目を輝かせた。


「タンシチュー何食分???なんにち暮らせるかな。」


 アリアさん。一旦、タンシチューから離れようか。


 まずは俺たちも装備を整えて、すぐに旅にでるか。先を越されたのでは意味がない。


装備屋に向かった。


               ☆


 装備屋にはいろいろな防具、剣がそろえられていた。


 王宮にいたころは支給されていたものを使っていたからあまり無縁だった。


 アリアも新鮮そうな目で店の品物を眺めている。


「おう。兄ちゃん、副隊長だろ。ここじゃもう有名だぜ。魔石をとっただの、国王の命を狙っているだの」


 突然筋肉隆々の店主が話しかけてきた。


 俺の悪名とどろきすぎだろ。あることないこと。南地区に広まってないということはまだほかの街には広まってないはず。


「で、俺をとらえるか、通報でもするのかい」


「いやいや、うちのだいじなお客さんですのでしませんよ、その代わりたくさん買っていってくださいね」


 現金な奴め、でもそのほうが信用できるか。


「アリアはこの軽くて短い剣がいいだろう。基本回復役の後方だ。護身用だと思えばいい。なあに剣をぬかせることはないさ」


 アリアは剣を買ってもらい、嬉しそうに眺めている。


「店主。俺にはそこの壁にかかっている剣と防具をくれ、あと少し小さめの盾をくれ」


「こんなのでいいのか。もっといいのたくさんあるぜ」


「いまはこれでいい。今度来たときは国の英雄になってこの店で一番高いの買ってやるよ」


「ほー期待、期待。」そう店主の言葉をあとに装備屋を去った。


                  ☆


「へー嬉しそうだね」どことなくアリアの横顔が嬉しそうに見える。


「生まれてから一度もこの国をでたことないの、あの家で一生生きていくと思っていたもの」


「アリア、国をでるのは簡単だが、一度出ると入るのは厳しいぞ。次に門をくぐるときは英雄だ」


 アリアとこぶしを合わせて北の大門をくぐった。


                 ☆


 それから3日。特に魔物や魔王軍と遭遇することなく、歩き続けた。


 ここらへんは魔王の国からは遠く、商売人が行き来するため舗装されている。危険ではないが警戒しないとな。


「まだですか。ミランダの街は、遠いです」


 横でアリアがぶつくさ文句を言いながら歩いている。


「ミランダの街へは2つほど街を経由しないといけない。馬車でもあれば早いが徒歩だとどうしても数日かかる」


「ええー。遠いなー。リエト様はミランダの街へは行かれたことがおありで?」


「たまに遠征などで行ったことある。国王も領主さまと懇意にしている。」


 なんだ?少し後方のシゲミに生き物の気配が。そんなに大きくない。数は1体もしくは2体か。


「アリア、剣を抜いて警戒しろ、なにかいるぞ。」


 すると背後のシゲミのほうから、一体の狼のような四本足の魔獣がでてきた。


「ロブウルフか、スキルはいらないな、せっかくだからこの買った剣の切れ味でも試してみるか」


 ロブウルフが俺のほうへ襲い掛かってきた。


 襲い掛かってくるロブウルフを盾でいなすと同時に剣で胴体を切った。


 スパァァァァァァンッ


 ううううううう、しばらくうめき声が続いたあと動かなくなった。


「装備屋のおっさんなかなかいい武器うっているじゃねーか」


 刃こぼれはない。長く使えそうだ。


「ロブウルフの爪と牙は高く売れる。次の街では少しいい宿に泊まれるぞ。」


 うえ、、、俺が刃物ではぎとっているとアリアは横を向いていた。


 しばらくは慣れも必要か。


 次の街までもう着くはずだが、一向に見えない。道間違えたかな?


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