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5話 旅立ち


 俺が目を覚ますと目の前にはアリアの顔があった。


 近い!近い!どうしてこんなことに……あの後俺とアリアは家に帰ると俺をベットに寝かしてくれてアリアは部屋の端っこのほうで布団しいて寝たはずじゃ。


「なんで俺のとなりで寝ているんだ!!!」思わず声がでてしまった。


「ふああああ。おはようございます」


 アリアはベットに横になったまま大きなのびをしながらいった。


「おはようございます。じゃねーよ。なんでベットに入ってきているんだ。」


「まあまあ、おきになさらずに。長い間寝ましたね。もう昼過ぎですよ。ごはんにしましょうか」


 そうアリアは言うと起き上がって台所へ向かっていった。


 おーけー。さっきのはあとで問い詰めるとしよう。


 ドンっと食卓の上に鉄でできた2人用の小さな鍋がおかれた。中にはいろどりどりの野菜がはいっており、あたり一面に湯気が立ち込めた。その瞬間、シチューの甘いにおいが部屋全体に広がった。


 これはうまそうなにおいだ。問い詰めるのはやめておこう。


「じゃーん。タンシチューです。昨日のあまりものですけど。かえってくる予定じゃなかったのでそもそもリエト様用に作ったものです。」とニコッと笑ってみせた。


「様って、様ってなんだよ、リエトでいいって。」


「ダメです。私の命の恩人なんですから、そう呼ばせてください。」とアリアは再び笑ってみせた。


 やけにものが少なかったのは、自分のここでの生活が終わるのを悟ったから処分したのだろう。昨日は部屋もアリア自体も寂しそうな気がした。


 今日はアリアの笑顔が増えたような気がする。この三日間ずっと自分の人生と向き合っていたのだろうか。これからの人生に不安を覚えたのだろうか。絶望から解放された。そんな感じだった。


「さあ、食べながらこれからのことについて話しましょう」


「いただきます。」俺はスプーンでシチューをすくい、口元で運んだ。


「うまい!!!」スープの温かさとコクが一気に口の中へ広がった。


「そうでしょう。母の得意料理だったの。幼いころからこれを食べて育ったの」


 アリアは少し昔を懐かしむような表情をしてみせた。


 そういえば王宮でてからなにも食べていなかったけ。温かなスープが胃にしみこむようだ。さっきのはおせじではなく本当においしい。アリアは将来いい嫁さんになりそうだ。うん、うん。


「ところで昨日のスキルはなんだったの。あんな能力みたことない。」


「ああ、あれね。表向きは触れた相手の動きを一瞬だけ止めるスキルだということになっているが、実はふれた相手のスキルをコピーするなんだ。3つまでしかストックできないけど、使い方次第では相手の何倍もの威力をだすことができる。入隊してから、真のスキルに気づいたんだけど、魔王軍がおとなしくて使う場面がなかったんだ。おかげで王宮ではへぼスキルの無能副隊長扱いだった。」


 俺は笑いながら話した。


 まさか俺を追放した奴らはこんなスキルを持っているなんて思ってもいないはずだ。せっかく使用する機会ができたと思えば、レオポルド隊長の邪魔がはいった。くそ、邪魔さえなければカリストに負けるはずない。


「たしかスキルは限られた人間しか発現しないんだよね?実は私もそのひとりよ。疑問に思わなかった?その肩と足の傷。」


 アリアはスプーンを俺の左肩へ向けた。


「そういえば、頻死レベルの重傷だったのに、3日間でこの回復ぐあいはおかしすぎる。」


 俺は傷口をなでてみる。


 どんなスキルなんだ。攻撃型のスキルならデルピムロにも対抗できたはずだ。とすると、使用が限られる体力補助か回復系か?


「私のスキルは超回復よ。ある程度遠距離でも可能な、ヒーラーみたいなものかな。」


「ありがとう。」再度お礼を言った。


 実際にアリア以外に拾われていたら助からなかったのかもしれない。そう思うとぞっとする。


「私もリエト様には助けられた。ありがとう。リエト様、これからどうするの?行く場所ないんでしょ?私と一緒にここで暮らさない?ご飯は毎日でるし、添い寝もよろこんで、へへへ」


 最後のはアリアの願望でしょ。でも、それもいいのかもしれない。毎日のんびりとすごして一緒に年をとっていく。俺は今まで生きてきた世界に見捨てられた。見捨てられたんだ。


 もう一度あの世界に帰ってもやることはな・・・いや、ある。俺は残りの魔石を集めるために入隊したのだ。あのころの気持ちをなかったことにできない。


 シチューを食べるのをやめて、頭を抱える。顔をあげるとアリアはどうしたの?と言い出しそうな表情をしていた。


「よし。決めた。これから俺はミランダの街へ向かって、魔石をとりかえしに行こうと思う。アリアはどうする?ここへ残るかい?」


 するとアリアはふくれた顔で


「リエト様の意地悪。私の命はあの夜に一度終わったつもりです。私はリエト様についていきます。どこまでも。」


「わかった。わかった。ミランダの街へ行くにあたって、クリアしないといけない課題が2つある。それはお金と北地区への侵入だ。お金はここへ来るときにはぎとられて無一文になってしまった。ミランダの街は北側だ。南の大門をでて迂回するものひとつの手だが、山岳地帯がひろがっていて、魔王軍の手下や魔物がたくさんいるからあまりおすすめできない。それで北地区を通って北の大門から出発しようとおもうのだが、まず北地区へ入るのに通行許可証必要でね」


 わざわざ南地区へ俺を追放したのは、たぶん一生南地区以外へでれないことを想定してだろう。おまけに金もない。当たり前か。ふつうあのケガなら死んでいると考えるはずだ。金なんて役にたたないだろう。


「お金は私がいままで働いた分で当面はしのげますが、許可証は南の地区の住民へはまずおりない。南の住民が北地区へくるのを国民が嫌うのよ。」


 くっっっっっここまで露骨に差をつけてくるとは……副隊長だったころの俺は地位だけでこの国をみていなかったのか。


「あっでも南地区でも許可証をもっている方が一人だけいた。南地区の長のおばあちゃん。昔から私をなにかと気にかけてくれていてとても親切だったわ。私が生きていると知ったら驚くわ」


「よし、じゃあ明日にでも会いに行こう。少し試してみたいことがある。」


 俺はそういうとニコッと笑った。



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