36話 王国③
「なんのことだい? 僕とヘルマン二人の犯行さ」
「いや、もう一人いたはずだ」
「はっはっは、面白いことをいうね。英雄さん」
カリストは皮肉めいた表情でニタっと笑った。
こいつは今の状況を分かっているのか?
「もう一度聞く。協力者は誰だ?」
「知らねーよ、くそがっ」
オーケー。武力行使をご所望か?
俺は無言で抵抗のできないカリストのおなかを蹴り上げた。
ぐはっとカリストのくぐもった声が聞こえた。
「これはお願いではない。拷問だ! たった今から拷問に変わった」
何度かおなかを蹴り上げたが、カリストは黙ったままだった。
後ろではアリアが顔を背けている。
やはり連れてくるべきではなかったか。ここが一番の山場だ。暴力もいたしかたない。
俺は手のひらから小さな種を出した。
「これはリルルの技、ヘルシードだ。この植物の種を頭に植え付けると宿主は幻覚、苦痛が襲う。拷問へは最適だ」
カリストの頭へ植え付けた瞬間、突然カリストが苦痛に顔をゆがめてのたうちまわろうとしたが、壁と手錠がつながっているため、鎖の金属音だけが牢内にこだました。
「暴れるな」
「あああああああああ…………」
30分後、カリストは耐えきれなくなって叫んだ。
「レオポルド隊長の指示だ。今回はレオポルド隊長の指示で動いた」
テレパスを聞いたレオポルドはふふと笑った。
「罪を軽くするカリストのでたらめじゃないのか。リエト、お前にさえ罪をかぶせた男だぞ」
「あの夜に魔石を持って、王宮の外に出た人物がいるはずだと思い、あの夜に外をうろついていたやつを警備に聞いたら、レオポルド、君の名前があがった。今回、君はカリストと協力して魔石を盗み出したね。おおかた、カリストに賞金と副隊長への昇進を提示したのだろう。それで都合の悪い俺は冤罪を吹っ掛けられて、無事追放。そんなストーリーさ」
「はっははっはははっはっはあっははは」
レオポルドの高らかな笑い声が響かせたあと続ける。
「ああ、私だ。私が指示した。カリストは昔から出世や金に執着がある男でね。最初から利用するつもりだったさ。彼をたきつけるために君を副隊長まで任命した。そう、無能な君をね」
口調はいつもの隊長とは異なっていた。
「そんなことだろうと思ったさ」
「案の定、君に対抗心を燃やした彼をうまく動かせたよ。ヘルマンにミランダで始末してもらう予定だったが、まさかあのヘルマンを倒すとは、どんなインチキをしたんだい?」
「インチキ? 普通に雑魚だったが?」
「まあいい、ここで消えてもらえば、すべてゼロに戻る。また魔石を奪えばいいだけさ」
レオポルドはすでに勝ちを確信したかのように高らかに笑った。
「さて、どうやって消そうか? また槍で体を貫こうか? いや、丸焼きがいいか。そんな気分だ」
「へえ、消えてもらうねぇ。俺が無策でここでまっていたと思うかい?」
突然、昼間のような王宮があかりにつつまれた。
すると周りは王様をはじめ、第一番部隊隊長、第二番部隊隊長メルル、アリア、ルナ、ロレッタ、その他大勢の兵士に囲まれていた。
「なにいいいい」
「便利だろ、こういう発光系の能力者もいるらしい」俺のうしろで、緑色の髪をした女の子が手からスキルを出していた。
「全員一斉攻撃」
メルル隊長が声を上げるが、俺が遮ぎった。
「すまない。隊長。俺にけりをつけさせてはくれないでしょうか?」
「倒せるのか?」
「もちろん。負けるつもりで立っていない」
「わかった。とらえ損ねたときは追撃するとしよう」
「全員焼き尽くすまでだ」レオポルドはこの状況でもなおも強気だ。
「よし、レオポルド、ラストバトルといこうか」
俺は黒色の手袋を外した。
俺の今のストックはリルルの植物操作だけだった。リルルの出力を上回るが、なにせレオポルド隊長の能力は炎。相性が悪い。
「行くぞ」
俺がそう叫ぶと地面から植物が生えてきて、先端が口の形になった。
「くらいつくせ」という言葉と同時にレオポルドに向かって人食い花が口を開けて向かっていった。
レオポルドは人食い花のほうへ右手をのばして爆炎と唱えた。
バァァァァァァンッ
一瞬にしてレオポルドの手から出た炎により人食い花は爆発した。
「妙なスキルを使うようになったね。その技はリルル副隊長のににているねえ」レオポルドは余裕の笑みをうかべた。
やはりこの程度わけないってことか。
隊長クラスになると能力の種類、出力は王国内でも別格になってくる。
さすが、王国第三部隊隊長まで上り詰めただけはある。
レオポルドは右手を俺に向けて炎龍と唱えた。
右手から炎をまとった竜がでてきてうなりをあげながら俺のほうへと向かってきた。
俺は地面に両手をつき、「緑壁」と叫ぶと目の前に木覆うように茂っていき壁となった。
モクモク……モクモク
木が燃えている。しだいに火が広がってくる。
バァァァァァァンッ
緑壁が爆発した瞬間、爆風により俺の体も後方へ吹っ飛んだ。
「ぬあっ」
「リエト様!!!」とアリアの叫び声が聞こえた気がした。
さすがに火力が強すぎる。さすがといったところか? だが……。
俺は吹っ飛んだ先でいててと体を起こすと、俺を後ろ側から見下ろすような感じで、第一番部隊隊長がいた。
「相手変わろうか?」冷静な声だが、仮面かぶっているせいで、表情がよみとれない。
親切なのか。頼りないとおもわれているのか。
「俺はいいですよ。今から面白くなるんでみててください」といい体を起こした。
実際に戦ってみて、この勝負はやはり俺に分が相当悪い。勝てるとしたらひとつ。
レオポルドに触れて、能力をコピーするしかない。
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