34話 王国①
森を抜けると、一気に王国が見えてきた。
「二人とも王国にくるのは初めてか?」
「はじめて。楽しみ」ロレッタはわくわくしている。
ロレッタさん、わくわくしているところすまんが、俺は反逆者として王国をでたんだよ。まだ冤罪が解決してなかったら石を投げられるよ。
ロレッタとルナには俺が生まれた国を好きになってほしい。虐げられることだけは回避しないといけないが、実際はどうなっているのか皆目見当がつかない。
「タンシチュー。タンシチュー。わたしの大好きなタンシチュー」
隣で歌が聞こえる。歌詞の内容は……お察しだった。
「で、どうするの?」ひとしきり歌い終わるとアリアが尋ねてきた。
「どうするとは?」
「国にはいることよ。警備が厳しいし、抜け穴もないんでしょ。いっそみんなルナに一斉に持ち上げてもらえばいいんじゃない?」
上空から王国の壁を超える選択肢もありか。
「僕はこの人数は浮かせることだけなら可能ですが、移動も伴うと少し時間かかります。最悪移動中に弓を向けられたら、恰好の的になってしまいます」
重力は操作できるが、空中での移動はまた別問題か……空中で無抵抗な状態でなぶりごろされることだけは避けたい。それにまだ反逆者のままと決まったわけでもあるまい。
「北の大門の一点突破で行く。英雄なら解放されるし、反逆者なら最悪追いかけまわされるかも」
「ひいい」ロレッタが震える。
門の前にくると門兵が5人くらいいた。
どうなる?追いかけまわされるか?
「王様がお待ちです。お入りください」門兵のひとりが俺の顔をみるなりすんなり通してくれた。
関門はクリアしたか。
久しぶりの北地区は新鮮だった。なにより、俺をちらちらとみる街の人も多かった。
本当に疑いははれているのか。そんな疑問だけが残った。
ロレッタが洋服屋を見つけたのか入っていこうとする。
「おいおい。国王様を待たせていると言ったでしょ」ロレッタの腕をつかんだ。
「残念」少し不満気だ。
他の二人もいちいち店の前で立ち止まっては看板をしげしげとみている。
みなさん。おのぼりさんですね。本当うちのパーティーは子供っぽい。
「ほら、日が暮れるから行くぞ」
王宮の門の前にくると、ここでもすんなりと通してくれた。
王宮内にはいると、見知った顔が少しばかりいた。自分が昔いた3番部隊の連中だろう。
その中のひとりが声をかけてきた。
「リエト元副隊長、国王様がお呼びです。すぐに玉座の間へ行ってもらえませんか?」
元副隊長か……。
「ああ」俺は旅が始まった最初の場所、玉座の間へと向かった。
歩みなれたこの場所も数日たち、立場もかわるだけで初めて来た場所のように感じた。
昔は独りで歩くことが多かったが、今はまわりをみれば、アリア、ルナ、ロレッタがいる。
玉座の間の扉を開けると、そこには国王をはじめ、ミランダの領主、隊長3人が待っていた。
みなさん勢ぞろいで。ご苦労なことだ。
一番部隊隊長は相変わらず仮面のせいで顔がわからない。二番部隊隊長はリルルの姉でよくやってくれたと言わんばかりの笑顔で迎え入れた。
三番部隊隊長レオポルドはまだ納得がいってなさそうだ。ミランダの領主は……久しぶりにわが娘ロレッタに見れたことで俺は眼中にないらしい。
「おおむね、領主から話は聞いた。今回の件は大変君には申し訳なかったと思っているよ。本当に済まなかった」
国王はまず最初に頭を下げた。
領主とカリストから事情を聞いて納得したのであろう。余計なトラブルにならなくて済みそうだ。
「魔石を取り返してきました」腰に下がっている袋から紫色の魔石をとりだした。ミランダの街でヘルマンから取り戻したものだ。
「君が取り返した紫色の魔石をこちらにもってきてくれ」
「その前に国王様、約束は覚えていますか?魔石を取り返したら、金貨100万枚に何でも願いをかなえてくれるということです」
この条件をはぐらかされたら、俺はダリヤから取り返した緑の魔石は隠すことに決めていた。俺は責任を取らされて追放されたのだ。
責任をとらされるのなら、成功時の報酬もそれなりに必要だ。約束反故にされるようならこれから先は国の手を借りず勝手に残りの魔石を探すつもりだった。
「ああ、わかっている。君には本当にすまないことをしたと思っている。君の今後の活躍に期待も込めてすぐにでも報酬をだそう。願い事は王宮でしばらく休息をとる間にでも決めるといい」
「魔石ひとつ取り戻すごとにつきひとつの報酬で間違いないでしょうか?国王様」
「ああ。これからも魔石探しに期待しておるぞ」
「わかりました。では国王様、今回の報酬は金貨200万枚ですね」俺はにっこりと笑い、腰に下がっている袋からもうひとつ、緑色の魔石をとりだして見せた。
「なにいいいいい」国王は驚いて玉座からすべり落ちそうになっている。他の隊長も信じられないといった顔で俺をみている。
「それをどこで?」
「オドロの谷です。証人の二番部隊副隊長リルルと一番部隊副隊長ディックがもうじきに王国へやってくる予定です」
「勇者が魔石に封じ込めて以来、誰も取り返すことができなかった魔石をふたつも取り返してくるとは君はいったい?」
「ええ、ただの元副隊長です」俺はにっこり笑うと話を続けた。
「それと国王様少し個人的にお話があります。領主様も同席していただけると幸いです」
「よかろう。このあと個室にきなさい」国王様は答えた。
今回の一件の黒幕でもあぶりだしますか。
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