32話 オドロの谷
凍ってしまったダリヤの息が止まったとき、周りの様子が変化した。
村人は口々に植物が多い茂っていたり、氷塊があること驚いていた。
どうやらダリヤの毒により洗脳されていたらしい。
こんな効果も隠し持っていたのか。ゲスいスキルだな。
俺はアリアの前に瞬間移動した。アリアは呼吸はみだれており、危険な状態だった。
俺が守ってあげるべきだった…
俺はそっとアリアの体にふれる。そのあと胸の前で両手の親指、人差し指、中指の先端を合わせた。
「超回復イン、氷結、風、瞬間移動アウト」
再度アリアにふれると一気に回復を施した。
3つのスキルまでストックすることできるが、2つスキルを捨てて、1つだけに絞り込むことで絶大な力を発揮する。
持ち主の何倍も強力なる。俺はアリアを助けたい一心でなりふり構ってられなかった。
光に包まれたアリアは一瞬にして元通りになった。
「やっぱり、リエト様は最強ね。信じていたわ」横になりながらにっこりと笑った。
「しばらく横になってゆっくりしているといい。俺はみんなの麻痺をといてくる」
「瞬間移動」
さきほどの広場。ロレッタの目の前に現れた。
「うわ。びっくりした。急に現れないでくださいよ」
「ロレッタ。タイミングばっちりだったな」
「どこかのタイミングで活躍できると踏んで透明になって隠れてました」
――そう、俺の縄をほどいたのもロレッタだった。
俺はロレッタの頭をなでた。嬉しそうだ。
「あのー、いちゃつく前に、僕の麻痺もといてくれませんか?」
ルナはムスっとしたようにいった。
「あー悪い、悪い」ルナの麻痺を超回復でとき、縄をほどいてやった。
「さすが、ご主人様です。麻痺がとけてからは幹部を一切寄せ付けませんでしたね」
ルナは思いっきり俺に抱き着いてきた。
「はい、はい、離れる。まだ麻痺を解除しないといけないやつらがいる」無理やりルナをひっぺがした。
文句を垂れているルナを横目にディックの近くのパーティーメンバーを回復させた。
残るはリルルか。
「超回復」
リルルは麻痺と精神毒両方とれたようで、すぐに目を覚ました。
「わたしはなにを…」
リルルはハッとするとすぐに起き上がった。「リエちゃん、ありがとう。そしてごめんね。あのとき助けてあげられなくて…ずっと後悔していた。あのときから一度だってリエちゃんのこと忘れたことはないわ」
「いいさ。あの時はそうするしかなかったのだろ。リルルでしょ?あのあと俺を助けてくれたのは…」
リルルは、無言でほほ笑んだ。
後方でなにやら騒がしい。
「リ・エ・ちゃ・ん。なんですか! なんですか! 僕というものがありながら、いいムードになっちゃって!ロリの次は、幼馴染ですか!ロレッタどう思います? あれ? いない」
後方で背中をおされた。その瞬間俺はバランスをくずし倒れた。背後からロレッタの笑い声が聞こえる。またいたずらか。
「いたたたた」
俺は起き上がろうと地面に手をのばした。
うーん、柔らかい。それでいて吸い付いてくるようだ…目をあけると、目の前には赤面したリルルが…
自分の手をみるとリルルのおっぱいをがっつりとつかんでいた。
「リエちゃん、そういうのはね。人がいないときにお願い」
ハッとして起き上がる。リルルは家族、妹みたいなものだ。さすがにね。
ごめん、と謝り、手をのばす。ううんとリルルは俺の手をつかみ、起き上がる。
「かぁぁ、無自覚なご主人様は今度は女の子の胸をもんだ。僕だってまだなのに!」
君はもむほどのものをお持ちで?
「そうだ、ダリヤから魔石をとりあげたあとどうするかな。ストックが超回復だけになってしまった。この谷からどうやって地表にでようか」
実際、攻撃スキルでない超回復だけになってしまったのは悪手だった。
「よかったら私の能力を使って。この谷からでるにも役に立つはずよ」
「わかった」リルルに触れようとすると、こほんと軽く咳払いをされた。
「あのーさっき私の体に触ったからストックされているはずよ…」
ああ、あのとき…つい右手で動かし、さきほどのおっぱいの感触を思い出す。
リルルは赤面してさっと下を向いた。
「ご主人様最低ですね」
「リエトさん最低」ロレッタも同調する。
「ディックはどうする?」リルルが問いかける。
あー完全に忘れていた。
ディックのほうを見ると周りをパーティーメンバーが取り囲んでいた。意識はあるようだが、なおも精神毒の影響でもがいているのが遠目でわかる。
「ディックはしばらく、あのままでいいでしょう」
窮地になっても見過ごすと言ったしな。
【ブックマーク】や【評価】をしていただけると嬉しいです。
少しでも面白い、続きが読みたいと思いましたら広告のしたにある☆☆☆☆☆で評価できます。つまらなかったら☆1つでも構いません。
とても作者の励みになります。ぜひよろしくお願いいたします。




