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19話 ミランダ⑥


「リエトさん、助けて」


 前のほうからロレッタの叫び声が聞こえた。後ろにはヘルマンの姿も見える。


 なんだ?なんかあったのか?


 ヘルマンは俺に気づくと、ロレッタの肩に乗せていた手をおろした。そしてにっこりと笑った。


「どうしましたか?昨日の客人さん」


「いえ、特にどうということもないですけど、ヘルマンさんこそどういう状況ですか?ロレッタおびえてますよ」


 ロレッタの手と足が震えているのがみえる。


 どんな怖いおもいをすればこうなる?


「いやね。お嬢さんがまたいたずらしたので、少しお説教を思いまして」


 嘘だ。俺は直観的にそう思った。説教にしてはおびえすぎだ。


「あー、そうですか。でもロレッタはこれから俺たちと夕食をとる予定なんだ。少しお借りしますね。説教はそのあとからでもいいでしょう」


 俺はとっさに嘘をついた。ロレッタの尋常ではないおびえかたをみて、早く連れてこの場をさりたかったからだ。


「ええ、いいでしょう。お嬢ちゃん、続きは今夜にでも。約束守ってくださいね」


 ヘルマンはロレッタの肩をポンとたたいた。ロレッタはたたかれた瞬間に飛び上がりそうなほどビクッとした。


 威圧しているような?あとから事情を聞くか。


 ロレッタを連れて、俺たちは足早に宿へと向かった。


 その間もロレッタは下を向いて目には涙を浮かべていた。


 宿につくと、ルナがまっさきに口をひらいた。


「いったいなにがあったんです?」


「ち、ち、父と母がヘルマンに殺される…街のみんなもよ」


 ロレッタが嘘を言っているようには思えない。


「ねぇ、もうちょっと詳しく教えてほしいな、ゆっくりでいいわよ」


 アリアがロレッタの手をそっと握る。


「ヘルマンが魔王軍幹部よ。日没とともに魔獣をはなって街を侵略するつもり」


 うかつだった。てっきり幹部は最近街にきたものとばかり思っていた。街に住み着いていたら、急に何日も姿がみえないと不審に思う人がでるから、考えていなかった。ヘルマンは王宮の魔石を奪ってすぐにミランダへ戻れたということか。


「日没まで時間がありませんね。ヘルマンと魔獣から同時に街を守るには……」


 ルナは顎に手をあてなんかいい案がないか考えているように見えた。


「屋敷にいく人と魔獣の街への侵入を防ぐ人の2手にわかれるといいかも」


 アリアはいい案がうかんだとばかりにルナに話しかける。


 俺もそう考えていたところだ。ちょうどぴったりのスキルもあるしね。


「みんな信じてくれるの?私、だれにも信じてもらえないと思っていた。会ったばかりだし。子供っぽくて、すぐいたずらするし、嘘もつく」


 ロレッタの頬を一筋の涙がつたう。

 

「逆に私たちに信じてもらえると思ったから話したんじゃないの?ロレッタの言ったこと信じるわ。会ったばかりだけど、もう私たちは友達・・・いいえ、仲間よ。ひとりでダメなら仲間を頼りなさい」


 アリアがさっきより強くロレッタの手を握っていた。


 俺も前にアリアに助けられたんだ……王宮で無実の罪をかぶせられ、同期にも裏切られ、誰も信用できなくなっていた。


 そんなときアリアは今みたいに話を聞いてくれて、「信じるわ」と俺の目をみつめて言ってくれた。俺はあのとき信じるという一言に救われたか……


 あれ以来仲間は信じると俺はもうそう決めている。今度は俺がロレッタを救う番だ。 


「間違ってたらいいじゃねーか、そんときは一緒に謝ろうぜ」


 俺はそういい、ロレッタの頭をポンとなでた。


「みんな……ぱぱをママを、私の大好きなこの街を助けて」


 絞りだしたような声が聞こえた。ロレッタの目から大粒の涙があふれていた。


「当たり前だ。いくぞ」


 


 俺たちは領主救助と魔獣討伐するため宿をでた。


「日没まで時間がない。2手に分かれるぞ。俺とアリアとロレッタは領主救出とヘルマンと交戦するために、屋敷へ。ルナは魔獣の街への侵入をくいとめるため、門へ向かってくれ」


「えー、僕一人ですか?荷が重いなー。魔獣300体ですよ」


 ルナは無理無理といったように首を横に振った。


「いや、俺の分身を2人連れていってもらう。言っておくが、こいつらは強いぞ」


「はは、ご主人様の強さはもうわかってますって。これほど心強い味方はありますか」


「分身」


 唱えると、俺が3人に分かれた。


「よし、俺2号、3号。ルナについていって魔獣の街への侵略を阻止して。ああ、手加減はいらないよ」


「へー変なスキルね」

 

 ロレッタが驚いて見せる。


 いや、あなたのスキルも十分変だよ?


「これくらいのすごさは見慣れたものよ、本気を出したリエト様はもっとすごいわよ」


 アリアが自分のことのように自慢した。


「でも相手はここ20年も敗れていない魔王軍幹部、勝算はあるの?」


 ロレッタが不安そうに俺を見つめた。


「悪いが、負ける気はしない。」

 

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