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18話 ミランダ⑤-ロレッタ視点


「今日は楽しかったわ。またね。ばいばい」


 リエトさんたち良い人だったな。また遊べるかな。


 今日のことパパに早く話してあげよう。


 私は家までいつもより早く歩いた。いつものように庭園を通り、家の扉を開けた。

 

「ただいま」


 いつもより家が静かだ。いつも私を出迎えてくれる執事もいない。


 調理場を行くと、作りかけの夕飯がみえた。具材は途中で切られたまま放置されている。


 いいにおい。今日の夕飯はなにかな?いつもなら出来上がっている時間なのにママはどこにいったのかなー


「パパに聞いてみよう」


 パパの部屋の前まで行くとの部屋のドアが少しあいていた。


 なにか話し声が聞こえる。一人はヘルマンさんかな?もうひとりは聞いたことない声だー。きっとパパもいるのね。ちょっと脅かしてみようかしら。


「透明」


 わたしは聞こえないようにつぶやいた。


 よし、これで誰からも見えないわ。


 ばれないように部屋のドアの隙間から様子をみた。ドアの隙間からパパとママ、執事までもが金髪の男に縄で縛られているのが見えた。しばられたあとパパは横に倒されてヘルマンさんの目の前へひきづられた。


 え?なんでパパとママがしばられているの?ヘルマンさんも一緒にいるのにどうして助けてくれないの?


「ヘルマン一体どういうことだ。説明しろ」


 最初にパパの怒った声が聞こえた。


「まったく……鈍感ですね」


 ヘルマンさんはそういうと胸から紫色の石を取り出した。


「魔石っ!!!」


「ヘルマン。貴様魔王軍幹部だったのか。ずっと私をだましていたのか。許せん」


「いつまで上からものを話すんだ。もう立場が違うんだよ」


 ヘルマンさんが転がっているパパの顔を踏みつける。


 パパ……助けないと。でも今出て行ってもやられるだけ。


「あなたへなにから伝えばよいか」


 わたしのいつも知っているヘルマンさんの顔ではない。


「今から日没と同時にこの街を300体の魔獣に襲わせる」


「なっっっっ」


 パパがヘルマンさんをにらんだ。


「門番がいるから街へは入ってこれんはずだ」


「カリスト!!!計画どおりだろうな」


 ヘルマンさんはカリストと呼ばれた金髪の男のほうをみた。


「ええ。門番は僕がすべて始末し、指示どおり門を開けています」


「この男は王国の副隊長のはずでは?なぜ魔王軍の加勢をする?」


「領主様はさっしが悪いな。魔石強奪から街の襲撃まで俺とカリストはグルだったってわけよ。3年間。3年間だ。このときを待っていた。すべて計画どおりだ。魔石を奪い、街を半壊させて、英雄である俺が、襲撃をくいとめる。それから新たなる領主の誕生だ。お前は無念の戦死ということにする。魔石を持ち、地位まで手にすれば、きっと魔王様も認めてくれるはずなんだ。全部俺の街をつくるための壁だったというわけよ」


 ヘルマンさんは高らかに笑った。


「街の人々が許すはずがない」


「許す?俺はこの街の英雄だよ。疑う余地もないさ。英雄ごっこをつづけて信用を勝ち取った意味があるもんだね」


 金髪の男もあとに続くようにパパへ向かって言い放った。


「僕にも地位とミランダの街からの莫大な金銭報酬が将来にわたって約束されている。ミランダの人たちには悪いと思っているよ。でもね、僕の名誉とお金のために黙って死んでくれ」


 金髪の男はヘルマンさんのほうを向きなおした。

 

「あーやぱり、リエトを裏切ってまであんたについてきたかいがある」


 金髪の男はしばられて座り込むパパを見下ろしながら笑った。



「カリスト。ご苦労だったな」



 ヘルマンさんは消えたかと思うと、金髪の目の前に現れ、腹にナイフを突き立てた。


 金髪の男は腹から血を流して前のめりに倒れた。


「どうして……」


「もとからお前とは組む気はなかった。捨て駒にすぎん。あのかたにも始末するよう言われているしな」


「ヘルマンてめぇ。畜生。ヘルマン。ヘルマン。ヘルマン」


 金髪の男は倒れながらもヘルマンさんの名前を繰り返した。


 

 私はあまりの光景にあとずさりしてしまった。


 ヘルマンさんがギロッとこちらをにらみつける。

 

 私は今は透明人間状態。気づかれていないないはずだ…知らせないと、街のみんなに、リエトさんに…


 信じてもらえるだろうか。まだまだみんな私を子供扱いして軽くあしらわれるのだろうか。


 私はいつもみなれたお屋敷の中を全力で駆け抜けた。


 お屋敷の外にでて門をくぐるころには透明の効果もきれていた。


 私のスキルずっと透明でいられるわけではなく、一定時間後にもとに戻る。よかった。屋敷をでるまで効果が持ってくれて。


 急がなきゃ。街が襲われる。


 門をでるとすぐに、あちらのほうからリエトさんたち三人が歩いてくるのがみえた。


「助けて」


 叫んだ直後に私は背後から肩をたたかれた。


「どこにいかれるのです?おじょうさん」


 見上げると、醜悪にみちたヘルマンさんの顔があった。


「どうされました?ヘルマンさん。わたしはこれから行くところがあるのよ」


 さっきの会話を聞いているのがばれた?平常心よ。なにをきかれても知らないで押し通すしかない。


「そうですか?でも領主様がお待ちですよ。縄でしばられてね」


「はっ」


 ヘルマンさんの目が私の目をギロッとみつめたまま離さない。

 

「やはりさきほどのやりとり見ていたな。助けを求めても、子供のたわごとだと誰も信じてはくれないよ。信じたところで日没まで残りわずか……魔獣の襲撃をとめることは不可能だろう。いいか?動いても殺す。誰かに話しても殺す。叫んでも殺す」


 殺される…でも今私がここで叫ばないと街の人たちが危ない。


「リエトさん。助けて」


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