17話 ミランダ④
ここまで閲覧してくださり、ありがとうございます。
今回はつなぎの回ということで短めです。ご了承ください。
翌朝、朝食を食べ終わったころにロレッタがやってきた。
あまり違う地区の同じ年の女の子と遊ぶ機会がないのだろう。
昨日のお屋敷のときとは違い、赤色のフリフリのスカートにピンクの鞄を肩からかけて目一杯おしゃれをしている。
「で今日はどこを案内してくれるんだ?」
ロレッタに尋ねた。
「まずはトリプの鐘かなーあの鐘は旅の無事を…」
「あーはいはい。それは昨日街に入るとき見たんで大丈夫ですよ」
あれ。名前あるのか。ただの鐘のくせに。
「じゃあ、街一番の商店街でも見てまわろう。旅のお土産なんかも売ってるよ」
ロレッタは楽しそうだ。自分の街を紹介するのでいろいろ昨晩プランを考えてきたのだろう。
まさかあの鐘がメインなわけないよな…
ロレッタに連れられて商店街を歩いた。たくさんの種類のお店が立ち並び、ここで半日ほど時間がつぶせそうなくらいだ。
前にきたときは任務だったから、お店をじっくりみることもなかったな。
「ロレッタちゃん、これ食べていきなさい」
「おはよう。今日はこの野菜が安いよ、お嬢ちゃん」
「ロレッタちゃんの連れかい?うちのお土産は有名なんだ、ひとつ食べていくかい」
「ロレッタちゃん、今日も可愛いよー」
ロレッタは店の前を通るたびに声をかけられ、いろんなものをもらっていた。
ロレッタ人気なんだな。この街の人々に愛されているんだなー。若干、子供扱いされている気もするが…そして最後のはただのナンパでは?
「みんな私が生まれたときからの付き合いよ。わが子のようにかわいがってくれるの。ちょっとまだ子供扱いされているのが癪だけど」
自覚あるんだ。
手にはさっきもらったであろうおもちゃが抱えられていた。
「あー。ありましたよ。ミランダ名物水まんじゅう」
ルナがひときわ大きい声をだす。
ルナは、水まんじゅうと書かれたお店に入っていった。
当然というようにアリアもあとに続く。
ロレッタとどっちが子供っぽいのかわからないな…
数分後、水まんじゅうを買ったであろう二人が店からでてきた。
ひととおり商店街をみたあと、ランチにすることにした。
「タンシチュー、タンシチューのお店があるよ。私出国して以来食べてないの。リエト様、お昼はタンシチューにしましょうよ」
アリアの目が一段と輝いた。さきほどたくさん水まんじゅう食べていたくせによくはいるな。
どうします?ほかのみんなも特に反対する様子もなかったため、お昼はタンシチューを食べることになった。
「どう?怪しい人いた?」
注文を終えたばかりのロレッタが話しかけてきた。
「んー。人が多すぎて探すのに時間がかかりそうだ」
この店に向かう途中も少し聞き込みをしたのだが、あまり良い情報は得られなかった。
「3年前から街は平和になったから、怪しい人なんてそうそう現れないわよ。いてもヘルマンさんが一撃だわ」
ロレッタは自慢げだ。
「そんなに以前は街は荒れての?」
アリアは首をかしげた。
以前のミランダをみていないと不思議におもうのも当然だ。
「魔獣がでては夜の間に暴れることはしばしばあった。なんでこの街に頻出するかはわからないが、俺もその警備で何度か呼ばれたこともあるくらいだ」
「壁ができてからは警備も楽になったというわけよ。その分街の見回りにも人を割けているから盗賊なんかも出にくくなったわ。もし、魔獣がでてきても、私がやっつけるんだから」
いったいロレッタの自身はどこからくることやら。
「あっ」
アリアが言うのと同時にべチャッとアリアの服にタンシチューがこぼれた。
アリアは白色の服を着ていたためか余計にシミが目立っている。
「はい」
ロレッタは鞄からすぐにハンカチを取り出してアリアに手渡した。
「ありがとう」
「これくらい大人の嗜みなんだから」
ロレッタは得意げだった。
アリアが服についたシチューのシミを落とそうとするが、なかなか落ちそうもなかった。
昼からも俺たちは聞き込みをしながらも観光を続けた。
「今日は楽しかったわ。またね。ばいばい」
ロレッタが俺たちに手を振るころにはもう夕日が沈みかけていた。
結局今日はなんの進展もなく、ミランダ観光を楽しむだけになってしまった。先が長そうだ…
宿屋に戻る直前、アリアがアッと小さな声をあげた。
「ハンカチ返すの忘れてた。私返してくる」
見ると手には昼間借りたロレッタのハンカチがみえる。
「暗くなると危ないから俺たちもついていくよ」
「そうですね。アリア道に迷いそうですし」
ルナも同調する。
再びもとにきた道を戻り、領主の屋敷へと向かった。
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