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15話 ミランダ②


「えーリエト様、なんで急に逃げるようにいなくなるの?私たち英雄扱いだったのに」


「そうですよ。助けられた女性もエッチなお願いのひとつやふたつ聞いてくれるかもしれないじゃないですか!!!」


 ひとごみにまぎれたあと、すぐにアリアとルナのもとへ戻った。そのから二人はブーブーと文句を言っている。


 ルナにいたっては文句というか、もはや難癖…俺ってそんなふうに見えてるの?


「俺たちの目標はあくまで魔石探しだ。この街の英雄になることじゃない。あまり目立つと動きにくくなる。英雄ごっこはロン毛にやらせておけ」


「えーでもご主人様だいぶ目立ってましたけどね。君の最後の言葉を教えてやろうでしたっけ?」


 ものまねはよしてくれ、ルナ。こっちが恥ずかしくなる。あれは男の背後へ分身をしのばせるための時間稼ぎだ。




 領主の屋敷は5年前と同様のたたずまいだった。


 へんなトラブルに首を突っ込んだせいで遅くなってしまった。俺は2人をバカにできないな。


 屋敷を門をくぐると玄関にたどりつくまで疲れそうなくらいの広さの庭園が広がっていた。


「すごい広いわよ、リエト様見て!噴水よ。こんな家住んでみたい」


 アリアは庭園に入ってきてからずっとこんな調子だ。


 ルナはというと……


「ここの石像はつくりがこまかいですね。うん。じつにこまかい」


 うんうんとうなずいている。

 

 いや、ルナ。あなた自分は芸術がわかっているふりしているだけですねよ。いいんですよ、芸術感覚がないことを認めても。


 屋敷の扉をたたくと執事がでてきて、領主の部屋へと案内してくれた。


「お久しぶりです。リエト副隊長殿」


 特に前と対応は変わっていない。俺の悪名はまだ耳に届いてなかったようだ。


「いえ、私はもう副隊長ではありませんよ、領主様」俺はすぐに訂正した。


 それから魔石強奪の冤罪の件とミランダの街に魔王軍幹部がいる件についてこれまでの経緯を話した。


「うーん、国王がこのようなご判断をされたことはにわかには信じがたい。わかった。私にできることがあればなんでも協力しよう。ミランダの街を守るためでもある」


 ひとしきり話が終わった直後、俺の顔の前にひとりの少女が急に現れた。



「わっ」


 突然現れたことにアリアとルナは驚いていた。


 部屋に入った時から人の気配と物音がしていたがこの子か。


 透明になるスキルか?ある程度位置がわかっていたし、部屋を出る前に排除しようと思っていたが…


 少し愛想笑いをしてみせた。俺のあまり驚かなかった顔をみて少女はチェッと面白くなさそうな表情をした。


「こら。ロレッタやめなさい。客人の前でしょ。何度言ったらわかるんだ。こんなのでは今年成人したというのに、いつまでも子供のままだぞ」


 危ない、危ない。あやうく領主様の娘を傷つけるところだった。


「勝った」

 

 となりでつぶやく声が聞こえた。声の主はピーンと猫耳をたてたルナだった。


 よくみると、ロレッタはルナより童顔で、身長が低い。茶色がかった髪は肩あたりまであり、よく似合っている。胸は……ルナより少しこぶりに見える。


 あの、ルナさん。同じ年で自分より幼いロリっ子を見つけて勝利宣言するのはやめてもらいたい。それと女の子の価値は胸の大きさではありませんよ。


 うん。うん。と俺が深くうなずくと、隣に座っているアリアが不思議そうな顔つきで見てきた。


「この子はいたずらが大好きでして、いつもこんなことしているんですよ」領主様は付け加えた。


 よし。この子とは深くかかわってはいけない。


「魔王軍の幹部が見つかるまで、私が遊んであげるよ。明日はこの街の観光案内をしてあげる」


 しっかり話聞いていたのか。ちゃっかり明日の予定まで埋められちゃったし。


「領主様、このことは他言無用でお願いしますよ、それとロレッタちゃんも」


 一応口止めだ。領主は協力してもらうために話したが、できるだけ内密にしておいた方がよいだろう。


「ちゃんつけないで、子供っぽいでしょ」


 ロレッタがすぐさま呼び名の撤回を求めた。


「ああ、失礼した。ロレッタ」


「うん。うん。」ロレッタは納得したようにうなずいた。



 しばらくすると俺たちの入ってきたほうのドアからカチャッと音がした。


 俺が振り返ると、そこには先ほど広場で暴れていたヘルマンの姿があった。


「ああ、ヘルマン君」領主は親しげに声をかけた。


「お客さんがいましたか、失礼しました」


「いいや、話は終わったところだよ。中に入りなさい」


 ヘルマンはドアを閉めて去ろうとしたが、領主が呼び止めた。ヘルマンはぺこりとお辞儀をすると部屋にはいってきた。


 「紹介するよ。こちらが昔お世話になったリエトさんに、パーティーメンバーのアリアさん、ルナさん。今冒険をしているところだ。でこっちがヘルマン。うちの参謀、この街の財政を担当している。私の右腕だ。そうだね、英雄さん」


「その呼び方辞めてくださいよ。別に好きでやっているわけではないんだから」


 へー。ヘルマンは結構ノリノリで人助けしているように見えたが、意外と謙虚なんだな。


 アリアが前のめりになった。


「先ほどはかっこよかったです。サインください」


「もちろん。リエト様もかっこいいですよ」俺のほうをむくとボソッとつぶやいた。


 別に嫉妬してないよ?アリアさん。


「あなたもさきほどは十分かっこよかったですよ。なにやら2人おられたようですが」


 しっかり見られてたわけだ。わざわざ正直にスキルを話す必要もないだろう。


「ええ。二人に分かれることができるだけですよ」


「ほう。聞いたことがありそうなスキルだ」


「ひとりにひとつ固有のスキルといっても似たようなスキルはたくさんありますからね。ははは」


 一旦スキルの話はやめよう。


「ヘルマンさんはもともとは商人で?」俺は唐突に話題を切り替えた。


「ああ、お金を荒稼ぎしたあと、3年前にこの地へ流れ着いた。領主様にひろってもらったんだ」


「それで、冒険者さんはなんの用事でこの街に?」


「私たちは魔…」


 俺はアリアが言い終わらないうちに全力で口をふせいだ。


「ぼ、僕たちは枕、質のいい枕を探しにきたにゃー」


 ルナが必死にフォローしたが、さすがに苦しいか。突然語尾ににゃーついているし。


「枕ならさきほどの広場から少しいったところにいい寝具屋さんがある。種類も豊富だ。そこでそろえるといいよ」


 なんとか押し通せたらしい。危なかった。横を見るとアリアは自分のミスに気づいたのかシュンっと落ち込んでいる。


「では俺たちは寝具屋に行かないといけないから、ここでおいとまするよ」


 ルナは宿屋の名前を紙へ書くとロレッタに渡した。


「では、また明日観光案内よろしくお願いします」


 そういうと領主の屋敷をあとにした。


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