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13話 ランツ②

1月31日(日)よりミランダ編全8話を連続投稿いたします。時間があるかたはお付き合いしてもらえると嬉しいです。


 ディックは戦闘態勢に入った。


「ここは街の中心街、店の前だぞ。そもそもお前とやりあう気はない」


 バカなのかこいつは。副隊長クラスが街の中で戦闘すると壊滅的な被害が出る。街にめちゃくちゃにするつもりか?


「はあ、寝ぼけてるんじゃないぞ、場所を変えるぞ、ついてこい」


 それからディックのパーティーに引き連れられ、街のはずれの小さな丘へ行った。


 丘の途中までくると突然ディックは振り返り、俺のほうをにらんだ。


「ここなら邪魔ははいらねえ、続きをしようか。リエト、あのときとはちげぇ、命はねーぞ」


 ディックが再び戦闘態勢にはいった。



                 ☆



 ディックは入隊当初からの俺の先輩だった。なにをするにもディックのあとについていってた気がする。


 もともと、ディックはプライドが高く、負けるのが嫌いな人だった。何度バカにされ、からかわれてきたか。


 そのくせ酒と女が好きで、よく北地区の歓楽街へでては、酒場でトラブルを繰り返していた。俺は何度翌朝酒場へあやまりにいたことか。


 そのあとも先輩、後輩としての関係は続いていた。ディックが歴代最速で副隊長に昇進すると次第にかかわりもなくなっていった。


 今のようにいがみ合う関係になったのは、俺がディックの歴代最速を塗り替え、副隊長に就任してからだ。


 いがみ合うというより、ディックが俺に一方的につっかかってきたのだが……


 プライドの高いディックとしては、いままで下にみていた俺に越されたのが許せなかったのだろう。




 事件は俺が副隊長に就任して半年の第一部隊、第三部隊合同での魔獣討伐作戦のときにおこった。


 俺は副隊長として初めての大きな任務で大勢の兵士を引き連れ先頭にたった。


 村に着くと村は半ば壊滅状態で、そこら中が血の海だった。


「ひどい。みんな一匹として逃すな。打ち取れ」


 俺の号令とともに兵士たちが魔獣へむかっていった。


 ディック率いる一番部隊の力もあり、魔獣を村から退けることができた。そのあと俺たちは襲われた村人の救護にあたっていた。


 俺はふと遠くのほうにいるディックを見ると、ディックは膝から下のない血まみれの村人を見下ろしていた。


 

 あいつは何をしているんだ…いったいなにを…嫌な予感がした。いままで感じたことない。少し冷や汗が出る。


 俺が急いで近寄るやいなや、ディックは剣で村人の体を突き刺した。



「どうして……」


 俺の声に気づいたのかディックが振り返る。


「あ、この村人はどっちみち死んでた。苦しみながら死ぬよりか俺様が楽にしてやった」


「なぜだ?まだわからないじゃないか。国民をまもる部隊がどうして国民を傷つけるんだよ。そんなのおかしいじゃないか」


 俺は無意識のうちにディックへ剣を抜いて振りぬいた。ディックはさっと剣で受け止めた。


「へー、無能のくせに俺様に牙をむくとはな。お前はここで不慮の事故で死んだことにしよう」


「殺してやる、アイス…」


「ディック副隊長。あちらのほうに隊長がおみえで。」横から兵士が声をかけてきた。


「チッッ」


 ディックはそう言うと去っていった。


  

                 ☆



「殺してやる。アイスフィールド!!!」


 ディックが地面に手をかざすと一瞬にして地面が氷づけになった。


 王国が誇る氷の使い手ディックはへっとまっすぐに俺を見つめた。


 俺は以前この技を見たことがあったため、瞬時に足の裏から風を送り出し、高く飛び上がったため、氷づけにならずにすんだ。


「ひいいいい」


 後方からアリアとルナの声が聞こえるが、距離があったため大丈夫そうだ。


「へえ妙な技を使いやがる。おまえのスキルは相手の動きを止めるだけだったはずだが…」


「お前には決してわからんよ。ひとりよがった狭い世界でしかとらえられない、お前には」


「なにぃ」


「狭いといっているんだ。まずは魔石の一件。本当に事実をしらべようとしたか?まわりの意見に流されているだけじゃないか?クレイフェルトでもそうだ。君が買い付けた酒瓶には魔王軍による魔力がこめられていた。ちゃんと調べもせずに、街で配って、街民を苦しめたばかりか、買い付けまで行い、この街でも売ろうとしている。俺の目が黒いうちはその酒はうらせねーよ」


「ごちゃごちゃとうるせー。クラッシュドアイス」

 

 ディックの腕から出た氷の塊が襲ってきた。


「蓮風かまいたち」


 俺が腕を振り下ろしたあとにでたかまいたちは、目の前の氷塊をこなごなにした。


 ディックの驚いた顔が見える。


「てめえ、カリストの技を」


 ふっと俺は笑うと分身と唱えた。


「ちょこまかと動きやがって、無能がぁぁぁ」


 ディックは三体に分裂した俺に視点が定まらず、無作為に攻撃し始めた。

 

 はあはあはあと攻撃に疲れ、息が切れているのが見える。


「な、なぜあたらん。」


「おまえの攻撃は当たらんよ。どうだ?いままでさんざん無能とバカにしてきた俺に軽くいなされる気分は。真実から目をそむけてきた君にはもってこいだ。ここでお灸でもすえておくか」


 俺は黒い手袋をはずした。



 するとディックの後方のパーティーメンバーの一人がそっと弓を俺に向けてきた。


 くそ!!!またこの展開かよ。一対一を名乗っておきながらそりゃねーだろ。


 すると俺の後方から何かが飛んできたかと思うと、ディックのパーティーメンバーの弓に当たった。


 すると弓はたちまち地面にたたきつけられた。


「横やりは許しませんよ。」ルナの声がする。


 王宮を追放された時と同じ場面だ。でもあの時と違うのは……



 俺には仲間がいる!!!!!!



 そっと後ろを振り返ると、アリアとルナがぐっと親指をたてている。

 

「いくぞ!!!」


 俺は風スキルの最大出力で自分の周りに突風を吹かせ、風にのるようにディックへせまった。ディックは完全に出遅れたように氷をだそうとしたが、もう遅い!!! 


 「―破壊拳」


 俺の拳がディックおなかをとらえた瞬間爆発した。


 ディックは意識を失って後方へ倒れた。


 「きゃあああ」


 ディックのパーティーメンバーから悲鳴があがった。


 まさか負けるなんて思っていなかったのだろう。もう一度初心に帰って出直すといいさ。


 入隊したころのディックとの日々を思い出しながらあとにした。


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