10話 クレイフェルト②
翌朝俺は目が覚めると手に柔らかい感触があった。
プ二プニプニプ二
「ふにゃぁぁぁぁぁ!!!」
と隣で元気な悲鳴が上がった。
どうやら俺が触っていたのは猫耳らしい。
やはり触り心地がよい。んんん?俺の知る猫耳所有者は昨日出会ったルナしかいない。
悲鳴がしたほうをみると正解だったことに気づく。
ベットで体を起こすと、頭痛とだるさが急激におそってきた。
そんなにお酒は弱くないはずなのだが。そしてそんなに飲んだ覚えがない。
王宮にいたときから、いざというときに対応できないため、お酒はそんなに飲まないようにしている。
左腕に違和感を覚えた。見るとアリアが俺の腕を自分の胸につつみこむように抱いて寝ていた。
あたってる。あたってる。いろいろあたっているから。
しかし、アリアはともかくとして、なぜルナまで俺の隣で寝ているのだ。
昨晩のことを思い返すが、途中からの記憶がない。
寝ぼけ眼のルナを揺り起こす。ルナはどうかしたんですかといわんばかりの顔で俺を見る。
「昨日のこと覚えているか?どうしてここにいるんだ?」
「えええ、ご主人様、昨晩はあんなに強引で激しかったのに忘れたんですか?」
「んん。俺の中で猫耳に対する欲求がここまで強かったとは、知らないうちにロリっ子にまで手をだしてしまったとは、いかん、いかん。」
「誰がロリですと、僕はロリじゃない。」
しまった。つい心の声がつい漏れてしまった。
「冗談ですよ、昨日は酒場から帰ってきたあと、三人ともすぐ横になって寝ました。リエトさんは少しお疲れの様子でしたし。アリアさんは昨日はテンション高くて大変でした。リエト様は私のものって言って左腕をつかんだままはなさなくてね。おかげでベットに寝かせるのも一苦労です。ちなみに右腕には僕もいましたけどね。酒場からの帰り道はまわりからの視線がすごかったですよ。」
俺は知らないうちにハーレム状態になっていたらしい。周囲からどんな男が複数の女性をはべらせているか注目されるよな。はずかしい。
ふああと横でアリアも起き上がった。なんとなくだるそうだ。
「アリア。調子はどうだい?」
「だるさがすごくある。それと頭が痛い。それと、、、ウップ、、、吐き気がするわ」
アリアはけっこうなペースで飲んでいたからな。俺以上にだるさがくるのは当然か。
それにしてもここまでだるさがあるのか?
ふとクレイフェルトにきてからの昼間と夜の街の光景を思い出す。
「この街ってみんなだるそうなのはあの酒のせいか?」
「そうでしょうね。ここ数か月、あの酒が出回ってから以前の活気がなくなった気がします。なんでも、領主さまがこの街の名産品にしたいそうで、試験的にこの街の酒場に領主推奨品として出回っているのですよ」
ルナは耳をパタパタさせながら話をつづけた。
「昨日も帰るとき歓楽街でみませんでした?王宮の一番部隊の副隊長ディックという男がパーティーメンバーの女の子を引き連れてどんちゃん騒ぎをしたあげくポート・スイングを買い占めて、みんなに配ってましたよ。たぶん今日はみなさん特に元気がないかと」
二日酔いにしては少し被害でですぎている。意図的に仕組まれている可能性もある。
「少しきなくさいな、調査してみるか。」
俺は立ち上がると、外へでる準備を始めた。
「待って。待って。置いていかないで。」
アリアは苦しそうな声とともにトイレにかけこむや、いなや
ウエエエエエエエエエと吐いてしまった。
まあそうなるよな。アリアはお酒を飲むペースを考えたほうがいいかもしれない。
「俺だけで行くから、アリアは休みなさい」
「僕も一緒に行きますよ。面白そうなにおいがします」
ルナが当然行くかのように準備を整えていた。
「おいおい。遊びじゃないよ。それに危ないかもしれない」
「なにをするかは知りませんが、自分の身くらい守れますよ。言ったでしょう。喧嘩強いって。それに土地勘がある人も一緒のほうがいいかもです」
俺だったら女の子の一人くらいは守れるし、まあいいだろう。
「じゃあ、俺とルナの二人で行くから、今日は寝ていろ。」
アリアの苦しそうな返事が扉越しに聞こえた。
外へ出ると街は一段と活気を失っていた。
早朝ということもあるのか、夜と比べて行きかう人も覇気がない。
「これはこれは」
ルナが言ったことは正しいのかもしれない。
ルナと一緒に昨日の酒場へと向かった。ちょうど店主が遅めの閉店準備をしているところだった。
「おお。兄ちゃんたちまた来たか。残念ながらまた夜に店はあけるよ」
「昨日のお酒少し譲ってほしいのです。あと誰が販売しているのですか」
「お酒は銀貨3枚だ。それと店にお酒をながしているのはトビオという男だ。最近この街にやってきた商人でね。なんでも領主がお酒を大変気にいられてね。酒場へ流しやすいよう販売ルートを確保してもらっているそうだ。トビオの屋敷へはすぐ近くだぜ」
そう言って店主は地図を描いてくれた。
「そのお酒どうするんです?」
横からルナがさきほど購入した酒を見ながら不思議そうに話しかける。
「こうするんだよ」
俺は人通りの少ない通りにはいると、酒瓶を地面に置き、手をかざした。
【ターフェルミ・アラ・ドーラ】
そう俺が唱えると酒瓶が光った。
やはりそうだったか。
「なんなんです?それ?」
これは俺が入隊後に教えてもらった。王直属の部隊しか知らない魔力探知みたいなものだ。
「もともとスキルは魔力が源泉といわれていて、一定のスキル持ちは魔力を探知できる。酒瓶が光ったということはこのお酒には魔力が込められている。こんなことできるのは魔王軍しかいない」
「ルナいくぞ!!!」
「ちょっっと待ってください!!!」
ルナとともにトビオの屋敷へと足早に向かった。
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