1話 冤罪
新作です。しばらく連続投稿します。
「今回の件はいったい誰が責任はとるのだ」
玉座の間に王様の怒号が響き渡った。玉座の間には俺を含め、王直属の三部隊の隊長、副隊長の6名が早朝から集められた。
俺も朝食を食べに食堂へ向かおうとしていたところに招集の通達がきたのだ。先ほど前までは朝食を早く食べたいなどとのんきなことを考えていたのだが、王様の開口一番の怒号に数分前の考えなど吹き飛んでいった。
なんだ?なにか事件でもあったのか。俺の背筋から冷や汗が出た気がした。
周りを見わたすと、ほかの隊長、副隊長からも姿勢を正し、緊張しているのが伝わってくる。
ここクリシア王国は20年間魔王軍の侵攻なく安泰だった。20年前に勇者リベルト=フリーマンが命と引き換えに魔王の力を7つの魔石にわけて封印した。しかし、7つの魔石のうち5つは魔王軍幹部の手元にわたってしまい、各地に散ってしまった。うち1つ、紫色の魔石だけは死守し王宮地下に封印していた。もう1つはいまだに所在がわかっていない。7つの魔石が魔王軍幹部のもとにわたったとき、魔王が力を取り戻し、再び国家存亡の危機に瀕する。
そのため、亡き勇者のあとを継いで、王宮の魔石の警備、国家の守衛、残りの魔石の獲得を目的に王直属の部隊が結成された。一番部隊から三番部隊の三部隊で構成されており、クリシア王国内のスキルの適正を認められ、試験を突破した人だけが入隊できる。俺、リエトは現在、第三番部隊の副隊長のポジションである。
「今朝、王宮地下に封印してあった魔石がなにものかに盗まれた。一番部隊隊長なにか知っていることはないか」
再び王様の声が響き渡った。
「はい、今回の魔石強奪は昨晩に行われた可能性が高いです。昨晩、魔石が保管されている地下の部屋の守衛担当は第三部隊でした」
一番部隊隊長のこもった声が聞こえた。
あー、あの人本当にいつも仮面つけているんだな。王様の御膳くらい仮面外そうよ。誰も素顔みたことないんじゃないか。
「では、二番部隊隊長。知っていることはないか?」
「はい、魔石の部屋には結界がはられており、ある程度のスキルもしくは魔力がないとそうそう入れません。魔王の幹部クラスもしくは部隊の幹部クラスかが犯人だと思います」
さきほどより大きな声が聞こえた。
第二番部隊隊長。長い黒髪のポニーテールが似合っており、凛としたいでたちだが、俺は生真面目そうな彼女とは性格があわない。
「よかろう。では、最後に三番部隊隊長」
「はい、確かに私の部隊が昨晩担当でした。私は用事があったため、副隊長リエトと第三席カリストに現場は一任していました」
野太い声が聞こえた。
確かに昨日レオポルド隊長は用事があるとか言ってたな。
国王の視線が急にこっちを向いた。
「三番部隊副隊長、昨晩なにをしていた?」
「はい。昨夜、私は城壁の警備をしておりました、特に怪しい人の出入りはありませんでした」
実際、俺は一晩、警備の仕事でクタクタだ。昨日は魔石強奪とは全く縁がないほど、静かな夜だった。
「カリスト。カリストはどこだ」
王様が叫んだと同時に後方からバッタンと大きな音が聞こえた。振り返ると、玉座の間の扉が開かれカリストが入ってきた。
あの、金髪くん登場のタイミングが良すぎる。さては外で聞いていたな。
「三番部隊第三席、カリスト参りました。」
カリストが玉座の前で立膝をついているのが見える。
「では、話を聞こう」
「私は昨晩魔石の部屋の前を警備していた。夜が更けたころにそちらのリエト副隊長がやってきて、能力により動きを封じられました。そこからさきほどまで記憶がございません」
「本当か?」
「ええ、本当です。リエト副隊長が魔石を盗んだ可能性があります」
いや、こいつはなにをいっているんだ。俺はそんなことはしていない。第一魔石を持っていないし、ありかも知らない。
「魔石を奪って、魔王軍幹部に渡した可能性がございます。昨晩城壁の警備をしていたら魔王軍幹部を王宮に入れるのも簡単でしょう」
たぶん、嘘をついている。昨日持ち場へついてからはそもそもカリストと会っていない。
「君のスキルは触れた相手の動きを一瞬奪うものだと聞いている。もっとも剣とスキル主流の王国で触って発動するスキルは無能に等しい。信頼していた部下には容易に使えたか?」王様はこっちをにらみつける。
「王様、私はやっておりません。証拠・・・証拠もありません」
「証拠はさきほどの三番部隊第三席の言葉で十分ではないか」
なぜ、カリストの言い分だけがとおる?冷静に考えば誰がとったのかはわかるはずだ。王様もそれだけ必死なのか?
「魔石の強奪は王国を脅かしかねない。現在、不明の魔石1つを除いてすべて魔王軍にわたってしまった。王国破滅の危機だ。どう処分したらよいか。君の部下だろう、三番部隊長」
王様は俺のほうから視線をそらした。
「王様にお任せします。」
俺は、まわりを見渡したが、みな俺を敵視している視線を向けた。
なぜ、俺の言うことは信じてもらえない?今まで俺は入隊してからも真面目にこつこつと努力してきて、まわりの信頼もあったはずだ。そんな期待も背負って、副隊長になったときもみんなついてきてくれた。
一夜の出来事で、こんなにもあっさりと信頼はなくなるものか。俺への信頼などそんなもんか。俺をそんな疑わしい目でみないでくれ。
そうだ、リルルならわかってくれるはずだ。現在二番部隊副隊長だ。俺の幼馴染でもあり、同期の黒髪サイドテールの女の子だ。
「リルル…………」
俺はリルルの方を向き、声をかけたが、そっと目線の下におろされてしまった。
「そんな……」
誰も信じてくれない。くやしい。自分が情けない。
「ええい!今まで仕えてきた身だ、死刑か追放か選らばせてやる。」王様の声が一段と高くなった。
「俺はやっていない。信じてくれよ。レオポルド隊長」
「リエト副隊長。君には失望したよ」隊長は俺の顔をみて、そっと目をとじた。
「剣をぬけ、リエト。同期の私が直々に鉄槌をくだしてやる」
腰から剣を抜いたカリストが俺を見つめた
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